危険走行、キヴォトスに限り合法 作:ブルパップこそアサルトライフルの究極形
降水確率0%、それでいて無風。
こんなに静かで澄み渡った夜は、ゲヘナ郊外であってもとても珍しいことだった。
平日と勘違いして外出して、知り合いと会って、ご飯を食べて、トラブルもあって……普段の何倍も濃い一日を過ごした。
だがそれも泡沫に過ぎず、帰る場所は未だ廃墟の錆びついたガレージに過ぎない。
カチカチと時計が回り、日付が変わった。
「さてと……行こうかな」
黒色に青いラインで統一した装備品を身にまとう。
鏡に映るのは、噂に聞く『ゲヘナのゴーストライダー』とやらそのままで、それでいて名実ともに同一だ。
部屋中央に鎮座する塊からブルーシートを剥がすと、黒く大きいバイクがただそこに鎮座していた。
角張ったデザインと、ややミレニアム学園よりの様式が素晴らしい……と言いたいのだが、これの設計デザイン組み立て全てが私が執り行っている。
結局のところこれらは自画自賛に過ぎない、それも全部。
「昨日走った時、たしかハンドルの滑り止めが足りなく感じたから、応急的にこれ巻いて……」
滑り止めテープを貼ろうとしたとき、ふと自身のグローブが目につく。
グローブの手のひら側がボロボロになっていて、買い替え時をとっくに通り越していた。 習慣的な動作で付けて、習慣的な動作で走りに出かけていたのだから気付かなかったのだろうか。
ご飯代を削って買い替えればよいのだが、もうこの時間になると大半の店は全て閉まっている。 今日のところはハンドル側にテープを貼ってやり過ごそう。
「これも壊れればおしまい……さて、行こう」
他と差を出すために選んだモトクロスヘルメットが、私の頭を覆う。
エンジンを掛けて、静かな駆動音と共に両輪が回りだす。
巷で聞くゴーストライダーの名の所以は、恐らく速度と色だけではない。
説明すれば長くなるのだが、簡単に話すと銃とバイクは通ずるところがあり、主にマフラーとサプレッサーの構造なんかが該当するといえば分かるだろう。 要するに様々な趣味を持つとは素晴らしいということ。
「トップスピードまでの時間、コンマ差で短くなってる……気温のせいかな」
暴力的な風切り音が耳元で鳴り、公道の安全速度を全て破り散らかす。
とうの昔にボロボロになった道を早く走る為には、技術力と慣れが必要なものだと認識している。
だがその問いは一年生の時に打破したものだ。
「そういえば、タイヤももうじき交換時か……ちょっと、ここらへんの道路ももう少し整備してくれたっていいじゃん……」
エンジンも温まってきた頃、ようやく綺麗な街並みに入る。
街の中でもこうやって制定された速度以上で走るだなんて、正直良い事ではない。 だがそれが私にブレーキをかける理由にはなりえない。
善き人間であれと言われても、善き人間の対比が存在しなければ善き人間は生まれない。 何故対比となる存在がいるのか? 答えは単純明快、私みたいな人間がいるからだ。
「にしても、ここらへんも静か……あっ、さっきのビルに停まってた車、久々に見るかも……」
夜も深まり、郊外でも都市というわけでもない微妙なゾーンは夜更かしする者も少ない——いや、騒ぐ声があったとしても私みたいな耳を塞ぎこんだ人間には聞こえてないだけだったらしい。
突如、背後から少し強めのライトを食らわされた。
縄張り荒らしと勘違いされたか、私の噂を知ってのことか。
どちらにせよ、彼女らにとって私みたいな目立つ存在は容認することはできないだろう。
「ただの軽バンだから、速度を速めれば撒けるけれど……あぁ、ガラスが……」
中にいた二人が、銃床で両サイドの窓ガラスをカチ割った。
身を乗り出して私目掛けてフルオートで乱射するが、跳弾すらも私のバイクを傷つけることはなかった。
背中に掛けていたフォルコメンを、バックミラー頼りで撃ち始めるが、相手の防弾ガラスはそう簡単に破れる物じゃない。
それにしても大分良いガラスだ、お前ら両サイドの窓ガラス割って良かったのか?
「バイクの主武装は高くつくし、今使うべきじゃない……となると、次の交差点で曲がろう」
いい事を思いついただけだ。
確かに速度に関しては確かな自信があるから、燃料をたんまりと使って自慢がてらすぐに加速してしまえば良い。
だがそれは最終手段だ、ただ損するだけだし、あくまで政治でもなんでもなくて趣味でやっているのだから好きにやらせてもらおう。
軽バンの皆様方には悪いが、少し利用させてもらおう。
「敵さん方に教えてあげよう。 この時間帯のバイパスはトラックが増えるんだと」
思い切りバイパスに侵入すると、正面にはトラックがいた。
思い返せば、割といい子にしていて逆走の経験はまだなかった。 そうそうする必要が無いのだから当たり前であるが。
トラックとトラックには隙間があるお蔭で、私のテクニックも合わされば軽トラぐらいなら追ってこれなくなる。
悠々と走ってそこから離脱しようとしたが、当然のように待ち伏せされていた。
こちらもまた軽バンなのだが、上に機銃を取り付けている点から鑑みるに割と怒っているのか、はたまた……。
「見つけたぞ、この覆面ライダー! ブラックマーケットで高く売ってやるよ、その首!」
「あぁ、もう賞金首になったんだ。 ねえ……もしも私が捕まったら、『ゲヘナのデュラハン』になる?」
「知・る・か!!」
金目当ての貪欲な奴らから、口径の異なるいくつかの銃口を向けられる。
バイクよりも私優先で撃たれるが、大抵プロテクターのお蔭もあって殆ど無傷。
すぐさま来た道を戻り、今度は正しい方向でトラックの後ろを追いかける。
今のバイクにしてからここまで本気で追いかけられたことはないが、自分の設計を信じて走らせるしか出来ない。
「クソクソクソ!!! オラオラ撃て撃て!! パンクさせちまえばこっちのもんだぞ!!」
「お前の夜目効くだろ、あいつのタイヤ殆ど装甲で隠れてんぞバカ!!!」
「……喧嘩してるけど、わりと当ててきてるのなんなの」
カンッという音で弾が弾き返されているのは分かるが、これでも一応凹んでいるから勘弁してほしい。
これ全部直すの私だし、結構今月カツカツだからやめてくれと願ってしまう。
「っ!」
一つの物が視界に映り込み、前方のトラックの扉に狙いを定める。
走行中に一点を狙うのは骨が折れるが、これさえ狙えば恐らく私の勝ちだ。
バンッ
ロックが甘かったトラックの扉が開き、たくさんの袋が落ちていく。
一部は破れて中身が飛び出し、一瞬にして道路が真白になっていった。
トラックの側面には大手小麦粉のメーカーのロゴがでかでかと描かれていた。
「おいお前ら撃つのやめ———ッ!!!」
ボンッッ!!!!!
思いっきり特大の爆破が巻き起こり、恐らく車まで引火しただろう。
背中に熱い空気が当たるが、直接的な被害は特に無く済んだ。
これで風紀委員会にとっ捕まえる口実を与えてしまったが、それは追々考えるとしよう。
流石にやりすぎたし、とんでもなく疲れた。
「はあ、おうち帰ろ……」
ろくにライトも付けず、大分遠回りして帰宅した。
あとがき書きたいこと多すぎる。
書き終えて即投稿なので誤字多い気がする、どこかのタイミングで直します。
推しの話したいんですけどそれよりもグレゴリオとやらのせいで泣きそうでした、というか泣きました、議長に泣きつきました。
閑話ネタ
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これは作者の秘めたる性癖解放ボタン