危険走行、キヴォトスに限り合法 作:ブルパップこそアサルトライフルの究極形
「『神出鬼没、新たな都市伝説の始まりか。 ゲヘナのゴーストライダーに迫る』……ね」
クロノススクールの放送を見て、ヒナ委員長は一言で吐き捨てる。
『ゲヘナのゴーストライダー』――それは、短期間で一部の生徒間に熱狂的なファンを多く作った、謎の走り屋につけられた名前である。
深夜零時を回ると、突如として姿を表す黒く大きい車体の
毎回様々な箇所を音もなく走り去っていくため、一目見るだけでも豪運が必要だとか。
目撃例も多いが、それより詳しい話となると怪談のようなものばかり。
風紀委員会が目をつけている理由としてはただ一つ。
「まだ禁制品運輸の証拠も出てきませんね……」
「最初から"そうかもしれない"という建前で探しているんだから、仕方ないわ」
「それはそうですけど、まさか殆ど追えないだなんて。 まったく」
アコは束になった資料と向き合いつつ、ニュース内容に耳を傾けた。
『深夜に』『様々な箇所を』『音もなく走りさる』……この点を抜き出すと、走り屋というより運び屋に聞こえてくる。
となれば、尻尾を掴まれたら困るような、そんな物に違いない。
鮮度や売買価格に関わるため急いで運ぶ必要のある、極めて危険な禁制品である可能性を見出して一度調べることにしたのだ。
まだ一部人員を投下するだけであるが、被疑者の"活躍"によっては規模を広くしていく予定だった。
「まぁでも、速度だけでもあまりにも危険だ。 もし見つけたらとっちめてやる!」
「通る道に規則性を見つけたら、バリケードで道路を一時的に封鎖して様子を見たりしませんか?」
「大掛かりになるけど、それが一番手っ取……って、もうすぐパトロールの交代時間だ!! ごめん、行ってくる!!」
ドタバタとイオリが退出していった。
まだ危険の前兆がないだけ、風紀委員会の面々は心穏やかでいられる。
だが、ヒナ委員長はどこかふわついていた。
ふとした瞬間にエデン条約での情景がフラッシュバックし、眉間にシワが寄り、脂汗が頬に滲む。
「先生……ふぅ、きっと上手くいくわ」
『――という報せが出た為、ブラックマーケットの緊張度は上がっており――』
同時刻、シャーレオフィス内
当番の生徒と先生が、ただただ黙々と業務をこなしていた。
会話は必要最低限しか生まれていない。 だが、落ち着いてゆったりと仕事ができるぐらいの雰囲気であった。
ふとスマホの通知を見た時、思いついたように先生が立ち上がり、生徒の向かい側に座る。
「そうだ、一つ聞きたいんだけど。 サオリってゲヘナの方に最近行った?」
「ん? ああ、一度二度抗争に参加するように言われて参加した。 何か問題があったか?」
「ああ、そうじゃなくって……」
手元で書類の仕分けをしつつ、話を続ける。
「最近、風紀委員会の悩みの種になっているバイクに関する噂があるって聞いて。 もしかしたら、何か知っていないかなと」
「噂? そんなもの、いくらでも誇張されていく定めにあるだろうが……」
サインが必要な物だけを先生の方に押しやる。
計算が必要な物もある程度はこなしておく。 だが、検算が必要であると判断して次来る当番であるセミナーに回すとメモを貼る。
「そうだな、一番近い噂であれば先日賞金首になったゴーストライダーがそうかもしれない。 こんな金がどこから湧いてくるのか分からないが、かなりの大金だった。 ざっと……八桁か」
「そ、そんなに恨みを買われてるの?」
「恨み? ……いや、そんな話は聞いたことが無い。 早急に捕まえてほしいといった感じだ」
先生の眉間に深いしわが寄る。
カイザー社やニャオフードなど、会社の都合で様々な目に遭った過去があるからだ。
風紀委員会は身内で解決能力がある。 万魔殿なら、直接接触を図り、身内に取り込もうと画策する。
そう考えると、自然と外部勢力の方へ目が向いていく。
会社側の不都合になる為潰そうとしているのか、はたまた何かで恨みを買ったのか。
少なくとも生徒であるとしたら、何かの力になれるかもしれない。
「サオリはその子をとっ捕まえようと思っているの?」
「いや、もっと楽しそうなバイトがあったんだ。 グラフィックボードの護送らしく、拘束時間に対してしっかりとした給料も払われるらしい」
「あー、まぁグラフィックボード……うーん、護送なら平気でしょ。 うん、頑張ってね」
「……それで、あの……万魔殿の……ごめん、名前なんだっけ?」
「イロハです、もう聞くのは3度目だと思うんですけど……はあ、面倒くさい」
目の前に座っているのは、万魔殿の議員であるイロハさん。
トンカツ定職が美味しい行きつけの店があったのだが、普段の倍以上の人が押し寄せてきてしまった。
それで仕方なく、席数の都合上で相席することになったのだ。
正直、万魔殿とか今日まで完全に忘れ去っていた為、接し方が分からずに困惑するしかないのだが。
「話す話題が無いなら無理に話さなくてもいいですよ、幽霊さん」
「……え?」
突然の出来事過ぎて、箸が止まる。
いつ? なぜ? どうして? 疑問が頭の中でぐるぐると回る。
厨房の音も、客の声も聞き取ることが出来ない。 目の前にいる同級生の小さな一口だけ、何故か鮮明に聞こえた気がする。
か細い喉が上下して、私の顔をチラリとだけ見て再び料理へ戻った。
「嘘が吐けないみたいで安心しました」
「……どうやって知ったんですか?」
「シュタ……なんでもありません。 ただ情報を渡され、そして命令されてきただけということを知っていただければ構いません」
イロハから溜息がこぼれる。
ふわふわの白米を口に運ぶが、噛んでも噛んでも味がしない。 横隔膜が緊張で震える。
「ミメイさんで合ってますよね?」
「それ3回目……」
「ならおあいこです」
ちょっとした冗談と、追及するつもりが無さそうで若干緊張は解ける。
それでも相手が何をしてくるのか、あまりにも斜め上の組織からの接触に疑問が隠せなかった。
私に何かを運んでほしいとか? 私に何かをして欲しいのか?
ぐるぐると考えが巡っていても意外と箸は進むもので、半分ぐらい食べてしまった。
「さて、"偶然"相席になって手間が省けたので、少しだけお話……ああ、説明するまでも無さそうですね」
「え?」
視線の先を追いかけると、店内に掛けられていたテレビに行き着く。
クロノススクールのニュース番組、その中でも現在最もホットなネタを厳選してお伝えするコーナーだ。
まさか、という嫌な予感は嫌であるほど当たるものだ。
『神出鬼没、新たな都市伝説の始まりか。 ゲヘナのゴーストライダーに迫る!! さて皆さん、ゲヘナ生であれば一度は聞いたことがあるのでは!?』
「うっそ……」
「ちなみにこの写真は、170kmで走った時にスピードカメラ……まあ、オービスが撮ったのを高値で提供したものなんですよ」
「速ければ速いほど強いからね。 閃光手榴弾なんか投げた暁にはもうカッコよさまで付与されちゃうと思うんだ」
「うわ……やっぱゲヘナ生なんですね。 話し相手にはなるタイプのゲヘナ生……」
まともだと思われてたらしい。 誉め言葉として受け取っておこう。
ゲヘナ生がゲヘナしていなかったら、何を以てゲヘナ生と定義するのか。 いや、生徒手帳か。
「あっ……少し冷めてきちゃいましたね」
「でもサクサク感は変わらないんだよね~、おいし」
『――で、先日ついにブラックマーケットに賞金首のポスターが貼り出されました!』
「ッ!?!? っ、げほ、げほ……」
「やはり知らなかったんですか。 まぁ、正体は今のところ私たちにしか割れてないので平気かと思われますが」
「み、みず……」
「どうぞ」
急いで渡された水を飲む。
つい先日もバイトの為に寄ったりしたのだが、まさかそこから数日でこんな報せを見るとは思ってなかった。
手配に向けて、様々な資料が映されているのだがどれも不鮮明、ブレ、144p……殆ど参考にならない。
『見て下さい、この資料の無さ!! 無謀としか考えられませんね、姿どころかバイクもやや不鮮明、早いところ画質の改善が願われます』
「か、かわいそう……」
「そんなところに出す費用なんて考えた事がありませんでしたからね……はぁ、後で改善案を全部突っぱねる事に……はあ、面倒……」
「……え、取り付けはしたんですか!?」
「形式的に必要だったので、最安値のを取り付けただけです。 それと金額も……ああ、そろそろ出ますね」
何回か後回しにされた金額の開示がそろそろらしい。
もったいぶって出された金額は、一瞬で数え切れなかった。
1の位から順に数えてもなお、脳みそが理解を拒んで正確な数字を口に出せなかった。
「え、えっと、ゼロが6つと……?」
「……5500万円です。 世界で5番目に高いバイクぐらいなら買えますよ」
「それって4000万だっけ? 外に住んでたら欲しかったかも……」
「……案外冷静なんですね」
「現実味が無いというか……」
「はぁ……そりゃそうですよね」
『という報せが出た為、ブラックマーケットの緊張度は上がっており――』
あとは情報量の少ない画面がだらだらと流れ、次のコーナーに切り替わってしまった。
一通り現状を把握して、頭が痛くなる。
前回撃退してやったやつらに、とんでもないスポンサーが付いていたのか。 はたまた目立ち過ぎたから始末をしようとしたのか。 それとも———私の正体が、仇敵にバレたのか。
胃痛がとんでもないが、それでも万魔殿は敵対するつもりではなさそうで一安心だ。
「ただ今日は、接触を図れとしか言われてないのでこのままだらだら食べてサボるつもりです」
「追加で頼みます? ハムカツとか……」
「揚げ物好きなんですか……?」
その一言でここ一か月の食生活を見直す。
前にアカリさんと食べた時は味噌カツで、それよりも前も天ぷら、天丼、ソースカツ……なんだこのぎっとぎとの食生活。
残っていたキャベツを口に突っ込む。
「……そうかもしれないです」
「そうだ、持ち帰りって出来ますか」
「確か受け付けてますよ」
「なら、イブキが喜びそうなのでも買っておきますか」
伝票にいくつか書き込み、厨房へ回した。
おたがいの皿は空っぽになり、あとは持ち帰りの品を待つだけになった。
何とも言い難い空白の時間が流れているなか、思い出したかのようにスマホの画面を見せつけられる。
「えっと、モモトーク?」
「ええ、連絡先は確保しておけとの仰せだったので……はあ、まぁ何かあったら連絡してください。 どうしても身柄の安全は確保しないといけないので」
「……もしかして、私で何かしようとしてる?」
「勘づくのが遅いですね。 そうですよ、ちなみに逃げ場はないですから」
ガタッと店から音がする。
周囲を見渡すと、ざっと10人ほどの生徒が立ち上がって私の方を見ていた。
全員が携えている銃は同じ型で、同じ塗装が施されている。 つまりそれが意味することは、全員万魔殿側の人間であるという事。
ただの連絡交換にここまで人員を割くとは、どこまで念には念を入れるつもりなんだと呆れてしまう。
「……交換は勿論する。 けれど、私はただ走る事しか出来ないよ」
「それだけでいいんじゃないですか?」
仕方なくスマホで読み取ると、二人目の友達が登録された。
試しにスタンプを送ると、送り返される。
「……と、まぁ交換はしましたが、恐らく議長は何に利用するのかは特に考えてないと思います。 サボる為にも暇なときに緊急と称して呼んでください」
「……私が主に走るのって深夜なんだけど」
「はあ? 呼ばないでください、寝かせてください……さて、持ち帰りも来ましたから、帰りますね」
それだけ言って、万魔殿の人達は会計を済ませて去っていった。
店が一気にがらんとなる。
このまま座っててもやる事はないため、私はカウンターの方へ向かった。
「……店長、お勘定」
「あいよ~。 いや~、すまないねミメイさん」
「別に大丈夫。 ちょっとびっくりしただけ……というか、事前に連絡はあったんだ」
「まぁな~、でも事前説明は丁寧だったし~、それに報酬も割ともらえ……あっ」
「全く……それで機具を新しくできると良いね」
電子決済が済み、店を去った。
これで一旦プロローグ、もといプレリュードは終わり。
次から第一幕なのですが、予定が立て込んでるので遅れる。
話しそびれましたが推しはサオリとマコトとイオリです。 相互さんの描くサオリがカッコよすぎて復帰したらロビーで水着イオリが迎えてくれて、サオリガチャで天井の洗礼を食らって、その後すぐマコトも即天井して次の日ダブった。
ありがとうブルーアーカイブ、無課金でもこんなに回せるんだな(おめめぐるぐる)
閑話ネタ
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これは作者の秘めたる性癖解放ボタン