危険走行、キヴォトスに限り合法   作:ブルパップこそアサルトライフルの究極形

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気付いたら一ヶ月も経ってた。
殆ど書き終えてたので慌てて投稿です、誤字脱字祭りかもしれない。
ここ好きとかあれば嬉しいです。特に食レポシーン。


予定よし

 真横から現れた人影。 そして直後、私を取り囲む三人。

 あまりにも驚くと声が出なくなり、腰も抜け、そして滑稽な面を晒すだけになると聞く。

 幸運にも、私は声が出なくなるだけで済んだが。

 

「え、えーっと……流石にびっくりしすぎじゃない?」

 

「……あ、あつ……あつあげ?」

 

「それをいうなら、カツアゲじゃないですか……?」

 

「か、カツアゲなんてしないってばー!」

 

「ええ、美食の道に同伴可能な人であれば尚更の事ですわ」

 

 取り囲んできたのは美食研究会の面々。 そして、私の肩を掴んだのは鰐渕アカリさんだった。

 多分、店内で食事を摂っているのはバレているだろうとは思っていたが、待ち構えているとは。

 肩に置かれていた手は片方は退けられ、片方はするりと腕を伝い、手首を掴んだ。

 

「突然で申し訳ありませんが――少し、お話に付き合ってくださいませ」

 

 


 

 

 任意同行気取りの誘拐は、徒歩七分程の場所にある茶屋までだった。

 道中聞かされた説明によると、百鬼夜行連合学園の学区から移り住んできた、とある頭のネジの飛んだ夫婦が創業した茶屋だそうだ。

 今は二代目であり、頭のネジは締まった息子さんが切り盛りしているらしい。

 暖簾をくぐれば、そこは青黒檀に似た色合いがベースの落ち着いた空間が広がっていた。

 ごねごねとハルナさんが店員さんと話した後、奥まったテーブル席に案内された。

 

「さて……とりあえず、注文をしてから切り出しましょうか。 塩大福とお茶のセットにしましょうか」

 

「この前竹味の信玄餅を出してたけど、もう無いの?」

 

「やっぱり、贅沢いちご大福に決まってるわよね! この前来た時は色々あって食べれなかったし……」

 

「では、この3種のおはぎを50セットにしまちゃいましょうか☆」

 

 とてもゆっくりじっくりとお話する予感がしてきた。

 眉間にシワを寄せる間もなく、メニューのアレも良いコレも良いという四方八方からの誘惑に頭が狂いそうになる。

 デカいパフェもあるが、今の私の胃には入らないだろう。

 

「じゃあ……芋けんぴで」

 

「ここまで来て芋けんぴなの!?」

 

「サーターアンダギーは、食べ切れる気が無いので……」

 

「揚げ物に限り、執念という点においてはやはり見込み通りみたいですわね」

 

 まって、見込みって何?

 ハルナさんが不穏な事を溢してる裏で、アカリさんが注文をまとめてしてくれていた。

 

 今、テーブル席の向かいにジュンコさん、ハルナさん、イズミさんが座っており、私の隣にアカリさんが座るという構図になっている。

 そして、ここのテーブル席はソファの奥側の人は壁と面するのだが、見事に私は壁に面する席に座っている。

 伝わるのかは不安だが、要するに私は席順によってアカリさんに許可を取らねば席から動けない席に座っているということだ。

 

――最初から詰みだった。

 交渉術レベル1ではあるが、私の愛車はなんとしてでも死守しよう。絶対に利用されないように、道開きの神を始めとした面々に祈った。

 

「……その、あの……シャーレの先生は?」

 

「あの後もお仕事があるからって、どっかに行っちゃったからここには私たち以外いないわよ」

 

 カランと氷がグラスに当たる。

 出されたお冷を無心で啜り、緊張で呻く胃に冷水をぶっかけてやる。

 サイドアームでも持っておけば気持ちは楽に済んだか済んでないか。 いや、どう足掻いても制圧されるか。悪いようにはされないと信じておこう。

 

「そういえば、お互いに一方的にしか存じ上げておりませんでしたわね」

 

「アカリが全部仲介してくれたからね〜」

 

「……」

 

「に、睨まないでくださいよ。 友達としかご紹介してませんから」

 

「……」

 

「凄く表情が分かりやすいねー」

 

 そこまで分かりやすかったなんて。

 ペタペタと自分の顔を触り、ほぐし、頭を振る。そんな分かりやすいわけあるものか。

 でも、よくよく考えるとバイクに乗ってる時はヘルメットを被ってるからずっとニコニコしてるのを抑えられてない気がする。日々の積み重ねのせいか。

 

「では、はじめまして。 私は黒舘ハルナと申しますわ」

 

「私は赤司ジュンコよ! 気軽に呼び捨ててくれていいからね」

 

「イズミって呼んでいいからね!ミメイちゃんもこれ食べる?」

 

「……新歓?」

 

「そういうわけじゃありませんから、安心してください☆」

 

 どこにも安心出来る要素なんてないのだが。

 お冷はすでに半分ほど無くなり、ほんのり緊張の糸も緩んできた。

 テロリストに囲まれてるけれど、それでも隣に座る彼女は一応友人なのだ。

 

「や……藪鮫ミメイです。 あ、の……バイクとか」

 

「ご注文の品を持って参りました。 おはぎに関してはこのあと追加のセットを持って参ります」

 

「わ……あ……ありがとうございます」

 

 話している途中で店員さんが注文の品を持ってきた。

 テキパキとした動きで品を置いていくと、各々が各々の頼んだ品を頬張り始める。

 釣られるようにして芋けんぴをもそもそと口に運ぶ。

 あっ、めっちゃ美味しい。

 芋の甘みと旨味、そして香りがふわりと口内に広がる。噛み砕いた瞬間に、カリッとした外とホクホクな中が綺麗に混じり合って、芋けんぴにおける一つの芸術的到達点に達している。完璧な温度や湿度管理、そして提供速度。出来たてだからこそ、そして何より茶屋だからこその芸当だろう。

 

「さて、腰を据えて話す用意が出来ましたし、本題に入りましょうか」

 

 ずっとしていた嫌な予感の答え合わせが始まるようだ。

 逃げたいな~なんて思ってアカリさんの方をチラ見すると、圧も何もなく、どこか読み取れない微笑みしか向けられなかった。

 犯罪の片棒、担ぎたくないな。 自分の犯罪(5500万)だけでもう両肩が重いし。

 

「今度、ミレニアムの方で品種改良の末に生まれた新しいクルマエビの特別展示が開かれるらしいんです」

 

 私知ってるんだよね、この人たち以前トリニティでマグロ盗んでた。

 その少し後に起こったエデン条約の一幕だとか、そこらへんの一件の衝撃が大きすぎて近隣住民の人達は割と忘れていたりするけど、私はハッキリ覚えてる。

 この人達ね、他の学区に忍び込んで、水族館からよくわからないマグロ盗んでたよ。

 薄暗い陰謀とかそういうの無くて、私利私欲で盗んでたんだよ。

 

「どうやら大きくて弾力感の強い引き締まった身から、大型のクルマエビーートラックエビと呼ばれていると聞きました。 美食を探求する者として、是非とも食べてみたく存じます……が」

 

「えっと……もしかして、食べれないんですか?」

 

「ええ、特別展示というだけらしく、何故か試食会はしないとのことで」

 

 それは大分もやもやする。

 ブランドの安売りをしない主義なのかどうなのか、それにしたって生殺しが過ぎるだろう。

 ぷりっぷりの大きい身を掻っ捌いて、刺身とかボイルとか蒸しとか天ぷらとか天ぷらとか天ぷらとか、色々と食べてみた過ぎる。

 特に天ぷらは絶対に食べてみたい。 一匹だけの展示じゃなかったら、天ぷらにして食べたい。二匹でも天ぷらにしたい。抹茶塩、塩、タレ、天つゆ、めんつゆ、ソース……六尾ぐらい欲しい。

 サクサクふわふわの衣に包まれた、大きくて弾力がある海老――食べれなかったらそれはもうエブリデイ後悔地獄間違いない。

 

「私もちょっと食べさせてくれるなら協力しよう」

 

「やはりアカリが見込んだ通りの人ですわね」

 

「見込み……ちょっと、友人として紹介しただけって言ってましたよね?」

 

「ええ、友人として紹介しましたよ。 揚げ物には目が無い友人としてですけど」

 

 やっぱりそうだ、ただ友人として紹介しただけじゃこうはなるわけないもん。

 軽く太ももをつねってやる。

 ……え、めっちゃ柔らかい。つんつん……つんつん……あっ、払い除けられちゃった。

 

「紹介はされていましたが、元々は計画に加えるつもりは無く——しかし、先程の店でメニュー外の物を食べていて、これはと思いまして」

 

「……具体的に、どこらへんが?」

 

「どのメニューにもない特徴を兼ねている……つまり、所謂裏メニューだろうと思いまして」

 

「待って、美食研究会たちが座ってた位置から私の丼ってそこまで見えるわけ——」

 

「通常メニューは、全て卵の天ぷらが一つだけで統一されているというのに、貴方は複数個食べておりましたわ。 その数は三回。 あの店にはトッピングなどで後から卵を追加する術はなく、追加することも不可能だとメニューの隅に明記されておりますわ」

 

 怒涛の指摘に思わず狼狽える。

 あの一回の食事だけでこんなに情報を突き付けられる事ってあるんだ。 芋けんぴを複数本口に押し込んで、ゆっくり店の事を思い出しながら考える。

 昔働いたりしたけど、卵の天ぷらの数が一つで統一されているのは本当の事だ。

 噛み砕いた物を嚥下し、お冷に手を伸ばす。

 てっきりこっちの事なんて見てないと思ったが、割と見られていたのだと眉が寄った。

 

「変なところで推理しなくていいですよ……そうです、確かにあれは裏メニューですけど……」

 

「大抵、裏メニューというものが提供される客というのは、その店に足繫く通う常連客。 聞いていた話、そして私たちが目の当たりにしたその揚げ物に対する情熱から、是非ともお誘いしたいと思いましたの」

 

 要するに、お前揚げ物ジャンキーらしいし良かったら一緒にトラックエビを捕まえて天ぷらにしようぜって事だろうか。天ぷら確定ではないと思うけど。

 別に駄目じゃないけど、私はそこまで戦闘が得意ではない。

 もしも強奪に参加したとして、足を引っ張る未来ばかり見える。

 戦車を爆破した件だって、あれは相手の質的な問題だ。

 

「動くチームは三つ――美食研究会総出でトラックエビを入手し、ミメイさんには私達を出迎えて追っ手を巻いてもらいますわ」

 

「……アカリさん、私の仕事が重いんだけど」

 

「腐れ縁といえども、この中で一番ミメイちゃんのことは知ってますからね――例えば、運転全般が得意だとか」

 

「いやバイクしか免許持ってないんですけど!」

 

 ただし、免許の有無と技能的に可能なのかは因果がない。

 気になる点が一つある。

 

「それで、三つ目のチームってなに?」

 

「フウカさんのことですわね。 ミメイさんには、私達とエビを給食部の元に運ぶだけで問題ありませんわ」

 

「えっ、違法性のある食材なのに引き受けてくれたんだ……」

 

「いえ。 特に何も知らせず、ただ良いエビを仕入れたから持っていくとだけ伝えておりますわ」

 

「詐欺だ……」

 

 こんなにもド派手な悪事に首を突っ込むことになるとは思ってもみなかった。

 ただでさえ、ゲヘナのゴーストライダーが運び屋だとか不名誉な憶測を立てられてる中、表の顔の方で運び屋をするだなんて。

 奇妙な因果だ。まるで皮肉めいているような気がしてならない。

 逆に言えば、表裏がないとも言えるが。

 

「というかアカリさんって、運転出来るよね? 人の車借り……うーん……?えっと、多分借りてたよね?」

 

「それはそうなんですけど、ミメイちゃんの方が走りに強いと思ったんです。去年も確か同好会の大会で」

 

「……その話はもう時効。やればいいんでしょ?」

 

 もそもそと芋けんぴを食べる手を止めた。というよりかは、食べ終えてしまった。

 お冷をグッと最後の一滴まで喉に通す。

 気持ちを切り替えて、目先に吊るされている餌を必死に求めるが吉だろう。

 

「では『トラック・イン・トラック(二重運搬)作戦』の日にまたお会いしましょうか」




トラックエビって何……?

遅れた理由は贖罪添い寝が書きたくなったからです。
後悔も公開もしてません。

閑話ネタ

  • メイド
  • 水着
  • 浴衣
  • 幼体化
  • これは作者の秘めたる性癖解放ボタン
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