危険走行、キヴォトスに限り合法   作:ブルパップこそアサルトライフルの究極形

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お久しぶりですね、ほぼ1年ぶり。今年の春から専門学生デビューしましたので、遅れた理由はお察しくださいませ。
……ブルアカ全然出来てないのに文章は完成しちゃったんだよね。


覚悟よし

――『トラック・イン・トラック(二重運搬)作戦』

 

 作戦の概要が送られてきた。あの場にいた時はふざけた作戦だと思うところだったが、これは"ふざけた"というよりかは"面白い"と形容するのが正しいだろう。

 とはいえども、その前に必要なものがある。

 調達には手間取るかもしれないが、頼りになりそうな人が丁度私のモモトークのリストにいた。

 

『イロハさん、一つ頼みたいことがあるんですけど――』

 

 


 

 

 連絡を待っていたら作戦当日の朝になってしまった。

 とはいえども私の出番までは余裕もある。

 カバーは出来なくはない範疇で済みそうでよかった。

 

 さて、お金が欲しいなら働くべし。何かが欲しいなら働くべし。

 人生は何事も上手くいくわけもない。すでに上手くいってないし。 

 どうも、私が万魔殿に頼んだ事が少し予想外だったらしく、タダで引き渡すわけにもいかない様子だった。しかし決して無理なわけではなく、対価として一働きを所望された。

 もちろん、元々タダでもらえるとは思っていなかったため仕事内容をきくことにした。

 

「ふわぁ……ぁ、早かったですね」

 

「来ちゃった」

 

「あっ、はい……早くついてきてください……」

 

 ゲヘナ学園に通っているというのに、一度も気に留めたこともなかった謎にデカい建物。ここが万魔殿の建物らしい。

 1年は高校生をしてるのに知らなかった。地図情報を送られた時に驚愕して電話を掛けそうになったぐらいには知らなかった。昔、この辺りを盗んだバイクのエンジンを吹かして明朝に爆走していたっていうのに。

 建物内部は外観から予想できた通り、豪奢な作りとなっていてこだわりが垣間見える。

 たいていの予算が注ぎ込まれているのではないのだろうか、とすら思えるが……スピードカメラといい、恐らくそんな気がした。

 しばらく歩いたのち、一際豪華な部屋にたどり着く。部屋の奥にはグラスを片手にして待ち受けている人物――確か、生徒会長である人だと思う。

 

「キキッ、随分と早く来たみたいだな。殊勝な心掛けだと褒めておこうじゃないか、藪鮫ミメイ」

 

「は、はじめまして」

 

「そう怯えるな、そこに掛けていいぞ」

 

 予想の2倍ぐらい偉そうな言動の人で、思わずどうしたものかと頭を抱えそうになった。全然この人について知らないし、イロハさんと連絡先を交換したあと何一つ調べなかったことを悔いた。

 ここってラスボス……もしくは裏ボスの城か何かかな……

 

「知っているとは思うが、何故か知らないと言うやつが多いから名乗っておこう。私こそゲヘナ学園の真なるリーダー、羽沼マコト様だ!」

 

「……マ、マコトさんですね、分かりました」

 

「マコト様でもいいぞ、様をつけると様になるからな」

 

「マコト様、はい……ご依頼ですね、承りました」

 

「まだ何も用件を話していないんだが」

 

 しまった、先走りすぎた。

 だが、たぶんその調子で大丈夫ですよ、とグッドサインをイロハさんから頂いたので恐らく平気。

 

「キキキッ……貴様の正体は既に把握している、イロハを向かわせた通りだ」

 

「それで、私を突き出したりはしないんですか」

 

「まさか。風紀委員会のやつらは気に食わん。だからこそ貴様をこちら側に引き込むべきだと判断したのだ」

 

 風紀委員会と生徒会が敵対してるのか……そういえば、時折風紀委員会が予算を生徒会に減らされて大変らしい、みたいな話は聞いたことがある。

 敵の敵は味方、ということだろう。

 賞金首を味方にするのは、些か危険な橋だとは思うのだが、本人が気にしていないのならお言葉に甘えよう。

 

「まぁ、これでマコト様の偉業が更に上の段階へ行くことは間違いないだろうな、キキッ」

 

「偉業を更に上……えっと、私は何をさせられるんですか」

 

「キキキッ……聞いて椅子から転げ落ちないように構えておくんだな」

 

 イロハさんの視線が明後日の方向にとことこ。そして眉が寄って、溜息が出る。

 ああ、なんだかすごく不安な気持ちになってきた。

 こんなに不安な気持ちになるのは最近頻発していて気が触れそうだ。だが、この感覚もマヒするのは時間の問題なのだろうか。

 

「これぞ万魔殿の秘策――宣伝トラックを走らせる!!」

 

「それって特徴的な音楽を流したり……」

 

 聞こえていなかったらしく、安堵しながら続きをしまっておく。危ない、万魔殿はそんな組織じゃない。高収入を謳ったりなんてしないはずだ。

 うちの学区で宣伝トラックを走らせたらどうなるのか想像がつくが……いや、その前に大事なことがある。

 

「ま、待ってください……バイクの免許しか持ってません!」

 

「そんなの一向に構わんぞ!!キキキッ!!!」

 

「みんな免許を軽視し過ぎてる、なんで……」

 

「いや貴方は免許あるのに速度制限無視してますよね」

 

 ぐうの音も出ない。

 出来ることなら音すらも置き去りにするほどの速さで走り去りたいけど、物理法則とかいうやつ邪魔過ぎる。

 イロハさん。私、高速道路の流星になりたいんですよ。83km/hとは言わずに300km/hぐらいを出しながら公道を爆走したいんです。

 もし市街地でそんなに出したら本当にお星さまになってしまいそうだけど、まぁ私たちって頑丈だし。

 

「既に裏手にトラックを手配しておいた。軽くゲヘナの人通りが多い辺りを一周してきたら、貴様が欲していた物もすぐ手に入るだろうな」

 

「……そ、それだけでいいんですか?」

 

「ああ、私のセンス溢れる車両と貴様の運転技術さえあれば私の存在をより一層強める事が出来るだろうからな!キキキッ!!我ながら冴えた案だとは思わないか!?」

 

「……さ、冴えてますね!」

 

 無理しないでいいですよ、という視線。

 ゲヘナの真のリーダーを自称しているが、思えばあのポスターといい思っていたよりも尊敬されていないのだろうか。

 かわいそうに……。

 

 そんなこんなで、トラックの元までイロハさんが案内をしてくれることになった。

 無駄に広い建物とはいえ、外からぐるりと回れば着くので迷うことは無いのだが、議長の意向から建物内部を見ていって欲しいとのことでそのようになった。

 表情からして嫌そうなのは、恐らく今が朝の6時とかそのぐらいなのが理由の一つだろう。

 

「……くぁ……」

 

「ふわぁ……」

 

 あくびが二連した。

 今が6時、つまり起きてから登校するまでを考えると起きたのは……そういうことになる。

 

「昨日、何時頃寝たんですか」

 

「昼頃から寝て、日付が変わる頃に起きて、軽く走って……」

 

「……ミメイさんって、学生ですよね」

 

「うん、でも昼間よりも夜のほうが元気出るんだよね」

 

「吸血鬼みたいですね」

 

 血色の悪い肌に、鋭い牙、血の杯のような瞳、ほっそりとした四肢に、優雅な衣服に包まれた野生。

 川を渡れず、招かれねば家にも入れず、ニンニクと十字架が苦手で、太陽に焦がれて灰になる、などと伝承が多い。

 確か、ゲヘナにおいて杭は心臓を貫くように打つのではなく、口を貫くように打つのが正解だった気がする。

 いずれにせよ、身体的特徴で言えば思い当たる人がいる。

 

「……妹が居てね、どっちかというと妹がそんな具合かな」

 

「把握してますよ。確か今はゲヘナ外――山海経の方にいらっしゃるらしいですね」

 

「やっぱり知ってるんだ。でも近況は知らなくって」

 

「……まぁ、調べたところ元気そうではありました」

 

 それならよかった、と無い胸を撫で下ろす。

 妹はお父さんに似てるから、きっと沢山の人達に迷惑をかけてる気はするけど、元気ならお姉さんは嬉しいよ。

 誤って酒を飲んだら寺院仏閣の四つは燃やしそうな妹よ、姉は元気だよ。

 

「さて、ミメイさん。あれを見てください」

 

「えぇぇぇぇ!?!?」

 

 そこで私が目にしたのは、えげつない量の電飾で飾られた10トンはあるだろうトラックだった。

 世間一般的にいう、デコトラと呼ばれるだろう厳つい外見にサイドパネルに議長と万魔殿の文字と……見てるだけでチカチカしてきた。

 

「あんなの朝から走らせたら迷惑じゃないですか!!」

 

「どの口が…、いえ、はい、今からゲヘナで瞬間風速的には一番迷惑なトラックドライバーになるんですよ」

 

 最悪な祭りだ。

 背中を押されて仕方なくトラックに寄れば寄るほど、威圧感と奇抜さに圧倒される。

 どういう感性をしていたら、ゲヘナの街並みでこれを走らせるという発想が生まれるのだろうか。……ああいう感性か。

 

「ああ、そうだ。これを」

 

「あ、鍵……普通だね」

 

「私の趣味ではないですからね。引き千切っておきました」

 

 気遣いが出来る戦車長だなんて、素敵だ……惚れてしまうやろが……。

 運転席に乗り込んだが、思っていたよりも席周りは整っていた。流石にここまで装飾する手が回らなかったのだろう。

 鍵を回すと、突如として音楽が流れ始める。宣伝用というよりかは運転席にしか流れていないようだ。

 ボーカル付きだし、ドゥンドゥンうるさいし、なによりも趣味に合わない。

 

「イロハさーん!!この✕✕✕✕((規制済み))な音楽止めても問題ない!?」

 

「え、まぁ、いいんじゃないですかね」

 

 よし止めよう、と思ったが重大な事実に気づいた。

 オーディオの操作端末がない。つまみとかそういうのも無い。備え付けの端末とかあるのかと探したけど無い。だからカーナビとかもない。どういう怠慢なのかは知らないが、エンジンと連動しているとみて間違いないだろう。

 あのバイト先で数十台は見てきたが、こんなのはそうそう見ない。逆に言えば一台二台は見た。

 眉間にしわが寄るのを感じつつ、片時も身から離さず持っている愛銃フォルコメンを握りしめた。

 

バキッ

 

ズザザ、ザ……ザザ……

 

ガンッ!!

 

……

 

「お〜……」

 

 銃床で思いっきりスピーカーを破壊する。

 バキバキになった上によく分からないコード類が千切れたおかげで、音はともかく運転席の照明も逝った。

 かなり快適。

 

「じゃあ、行ってきます……あ、無事に返したほうがよかったですか?」

 

「え、そんなトラックいらな……コホン、バキバキにして乗り捨てていいですよ。あとで集合地点をお送りするので、また1時間後にそこで落ち合いましょう」

 

 手を振り合って別れる。

 ミラー越しに万魔殿へ急ぎ足で戻っていくのを見届けてから、目の前の運転に集中をする。

 普段はバイクで公道を走っているが、こんなに大きいトラックとなると普段とは勝手が違いすぎる。

 だが……

 

「作戦の予行演習には、ちょうど良さそう……」

 

 アクセルをベタ踏みし、速度メーターが上がっていくのをチラ見する。

 60km、70km……速度にしては速さをあまり感じないが、恐らく風がないからだろう。それか視点が高くて実感がないからか。

 

「特にまだ何も起きてないけど、このままだったら……」

 

「テメェ!私たちのシマだと分かっててそんな真似してんのかゴラァ!!」

 

「やっぱり楽はさせてくれないんだね」

 

 後ろから軽トラに乗ったスケバンたちが追いかけてくる。

 荷台には固定銃座があるところから見て、ヤる気が感じられてとても元気そう。

 どこかで戦車が待ち伏せていないことを祈りながら、ギアチェンジした。

 

「ムカつく装飾まみれだな、撃て撃て!」

 

「そんなに言わなくたって……ッ!」

 

 ハンドルを思い切り切って、車幅ギリギリの路地を突っ切る。

 サイドミラーは犠牲となった。だが必要な犠牲だ。南無。

 スピードを数十キロ超過しながら大通りに出ると、朝の出勤通学で人が少しずつ増えて来ていて少し強引に行く必要があるそうだ。バイクならこれを全部避けながらで走るのだが……やはりバイクしか勝たん。

 圧倒的重量と速度による暴力で車を吹っ飛ばしながら突っ切っていく。暴力、やはり暴力は全てを解決する。

 

「おいアイツぶつけやがったぞ!追え!!」

 

「邪魔だな、テメェも退きな!!」

 

「ああァ?! どの面に向かってツバつけてんのか教えてやらぁ!」

 

 私がぶつけた子と私を追ってきた子で喧嘩が始まり——互いを見合い過ぎた結果、真後ろから突っ込んできた装甲車に弾き飛ばされて派手な爆発が巻き起こる。

 朝っぱらから何をしてるんだろうか。こぼれそうだった欠伸を飲み込みんだ。

 ああやって弾き飛ばされたやつらよりも、今は真後ろから迫ろうとしている鉄塊に意識を向ける必要があるのだから追悼の余裕はない。

 いや、死んではないだろうが。

 

「むしろ暴れたら万魔殿の印象が下がりそうなんだけど……」

 

「逆車線を走ってるそこのトラック!! 止まれー!!」

 

「あ、ごめん」

 

 夢中になりすぎて、逆車線を走っていたことに気が付いて無理のある車線変更を試む。

 派手な破壊音を伴いつつ、走っている乗用車を思い切り弾き飛ばして完璧な車線変更を決めた。ゲヘナ流免許皆伝じゃよ。

 にしても、装甲車と聞くから救急医学部の物だと思ったけど中にいるのってまさか風紀?

 いやいや……と思っていたが、グイっと並走まで追い付いてきた。

 

「ふん、そのトラックの悪趣味な装飾については言及してやらないから、今すぐ降りて同行してもらおうか!」

 

 開いたサイドウィンドウから除くのは褐色肌の生徒。服装から風紀委員会の人間であることは分かる上に、恐らくぎゅうぎゅうに三人ぐらいいる。

 ……風紀委員会もカージャックってするんだっけ、と思っていたが恐らく一人は救急医療部は同行させているような気もする。

 そうじゃなかったら逆に私が通報入れてたかもしれない。いや、それをしても真っ先に捕まるのは私か。

 

「……それって、任意ではなくて強制なんだよね?」

 

「少なくとも制御不能に陥って建物にツッコむことはないだろうな」

 

 チラリと狙撃銃の銃身が見える。

 まだ連絡は一切来ていないから勝機も何もないし、ここから逃げようとしたらタイヤを撃ち抜こうという魂胆だろう。

 回答の猶予をどれだけ与えてくれるのかも分からないが、私の脳裏に一つの物が過った。

 

「――――っての」

 

「おい、もっと大きい声で……」

 

「天ぷらが私を待ってるんだっての……!!!」

 

 迷いなくギアを最大に入れ直し、アクセルを強く踏み込む。

 ここではないどこかではトラックには大抵スピードリミッターが搭載されているらしいが、ここはキヴォトス。スピードなんてなんぼあってもいいんですよ。

 

「危険速度であろうと、キヴォトス(ココ)限り(リミって)合法(ゴーサイン)!!もっともっと唸れェ!!!!」

 

「はぁ!?どういう加速してんの、って」

 

バンッ

 

「~~~!! 当たらない!!!」

 

 脳内(ド頭)に滾るドーパミン、そして視野狭窄(ハードモード)

 可能な限り避けよ(慈悲をくれてやろ)うとは思うが、邪魔だったらそれを弾き飛ばしてしまおう。そうすれば全部(オール)存在してないも同然である。

 フロントバンパー(我が守護者)装飾(ムダ)がなんだったかは忘れたが、とりあえずエンジン(ハート)止ま(ブレイク)るまではぶつけても問題ない(モーマンタイ)(風紀)がどうだ()がどうだかわからないが、賞金首(幽霊)がいくら暴れまわったと(ポルターガイスト)しても賞金首(幽霊)であることには変わりないのだから問題ない(ノットギルティ)

 そして何よりも、私より遅い(弱い)のが悪い(ギルティ)のだから。

 

「くぅ~~~~!! バイクのがいいけど、トラックも悪くないなぁ!!!」

 

 しっかりと掴んだ(ステアった)ハンドルと、踏み込む(ブチかます)ペダルの感覚。

 10トン程度の巨体(バケモノ)をいとも容易く操れてしまう(ブチ当てられる)工業と科学(ゲヘナ)のワザに頭が上がらない。

 もっとも、輸送関係を楽にしようという叡智の結晶であって、市街をめちゃくちゃにするために生まれたわけではないのだが……

 

「ここで右!」

 

バンッ!

 

「左ぃ~」

 

バンッ!!

 

「右にいくと見せかけて、思いっきり左折ゥ!!!」

 

バンッ!!!

 

 トラックにしては、物理法則から考えもよらない動きでタイヤ狙いの弾を避けきる。速度つけ、他車両にぶつけて車体を逸らすという犠牲上等のやり方だが。

 とはいえ、流石にフロントバンパー(我が守護者)のヒットポイントはかなり下がってきている。もし車体に1弾当たってしまえば、重装甲とはいえど耐えら

 

バゴォ!!

 

「っ、よし!! 今回のは車体だったが、タイヤへ当てられたくなかったら大人しく投降しろ!!」

 

 ヤバい調子乗ってました。

 そうだよ、私ゴーストライダーとか言われて少し気が大きくなってたかもだけど、あくまでただのゲヘナの生徒。風紀でココまでデキるやつとなると、やはりさっきのは幸運でしかない。バイカーズラック。

 となれば、直に一周し終わるからと耐えに行くよりも、今は身の安全と確実性を優先すべきだ。

 

「どうだ、もうそう長くは走れないだろう!? これ以上被害を被りたくなければさっさと」

 

「羽沼マコトォッ!!! 羽沼マコトをよろしくお願いしまああああ」

 

キキィィイイイイイイイイ

 

「ちょ、それは流石にやめたほうが……」

 

 思いっきりハンドルを回し、火花を上げながらタイヤ痕を激しく遺してトラックを横滑りさせていく。

 前方方向、そして横方向の推進力が交われば当然行く先は斜め。そしてその斜めにあるのは……当然ながら、歩道、そして建物だ。

 

「うああああああっっ!!!!!」

 

 わざとらしい大声をあげながら、ドアを思いっきり開いて飛び出す。

 

ガシャアアアン

 

「……は、初めて建物損壊したかも」

 

 流石のゲヘナ生でも許されるのか分からないが、取り敢えず5階ぐらいある建物にトラックを突き刺した。どうやら私は白昼堂々の犯行を成してしまったようだ。

 私がトラックから飛び出した方向は、当然ながら風紀の連中相手に少しでも時間を稼ぐため、私がトラックで隠れる方向。

 シートベルトを素早く外して、遠心力で自らを吹っ飛ばすぐらい器用に出来ればもう少し……でも、身体が頑丈とはいえど痛いものは痛いかな。

 

「さて、さっさと逃げるか」

 

 マコトさん的には多分、普通に街宣して帰ってきてもらおう程度の考えだっただろうし、多分クライアントからバチボコに怒られるのは確定。ため息をつきながら、あの諜報能力相手にどこまで逃げられるものかと走り始める。

 

「……はっ、はっ……私、自分の足で走るの、苦手なんだけどな」

 

 せっせと足を動かして走るが、やはり普段激しく拍動しない心臓(エンジン)に負荷をかけていると苦しさがすぐに込み上げる。

 つうっと汗が頬を伝った時、1つ考えがよぎった。過ってしまった。

 

「……アレ、狙撃銃だった」

 

 ライフリングを駆け抜けた弾薬は、バゴォッと強い音を立ててトラックにヒットした。タイヤを狙ったのだから下部だろう。そして、上部に荷物を載せる場所があるのだから、当然下部には様々なパーツがひしめいている。

 ……燃料タンクとか。

 

ジジッ

 

 嫌な予感がした。聞こえないはずの火花の音が、まるで耳元で鳴った気がした。気にし過ぎが病んだだけに違いない。

 流石にこれ以上被害が拡大するわけないはずだと、自分に言い聞かせた。

 伝っていた汗は、酷く冷えていた。

 

「……走るッ!」

 

ドォォン!!!

 

 近くからの爆発音、ガソリンの匂い。

 振り向くことはしない。爆光が背を照らしたからだ。

 いやあ全く勘弁してくれ!! マコトさんトラックが爆発したから事故証拠は、まぁ、ゲヘナ的には隠滅できたと言って過言ではないけど、あのトラックに顔が印刷されてたんだよね。偉い人を爆破してしまったんだよね。

 マコトさん爆破エンド……。

 

「ぜぇ……はぁ……終わった、色々と……」

 

 かなり走って、騒ぎの一つもない場所にへたり込む。

 薄暗い路地裏で肩で息をして、天を仰ぐ。カラッとした晴天だ。

 

ぐぅ〜

 

 ……カラッとした天ぷら、食べたいかも。

 

「はひぃ……マップ見て、イロハさん居るとこ、探し……て……」

 

 ふらふらと立ち上がり、なんとか両足で立つ。きっと明日は筋肉痛。バイクに乗れるかななんて思ったけれど、ココまで頑張ったなら養生する1日も悪くないかもしれない。

 ……薄暗くて、細い路地から見る大通りは明るくて、それでいて、過去の情景を思い出す。

 バイク同好会に居た、バイクに詳しい痴女みたいな先輩と、勝負が大好きな無防備な先輩……色々と思い出して、思わず笑いが込み上げて――胸が締め付けられる。

 もう、全ては終わったことだ。

 

「……もう動けそうですか?」

 

 カツカツとビルの間で響く軍靴。気怠げな声でイロハが声を掛けてきて、そして大あくびをかます。探しに出向こうとしたが、あちらから迎えに来て頂けて思わず一礼した。

 朝早くからですからねご苦労さまです……と言いたくても、一度上がってしまった息を整えるのは時間がかかる。

 

「あ、話せなくても問題ないですよ。あれ、注文するだけして良い運転手が見つからずにホコリ被らせてて処分に困ってたので、綺麗に吹き飛んでくれて助かりました」

 

「えぇ……」

 

 そういうなら、まあいいか。バキバキにして乗り捨てても良いと言っていたが、粉々にして乗り捨ててしまってどうしようかと思っていたが杞憂だった。

 

「宣材写真が印刷されてたから……それ、爆破して……その……ぜぇ……はぁ……」

 

「誰も気にしないとは思いますが……さて、とりあえずどうぞ」

 

 突き出されたのはレジ袋。

 頼んでいたものとは全然違うもので目を見開くが、一旦受け取って中身を見る。

 とんかつ定食が美味しい店のハムカツと、温かいお茶だった。

 

「……あり、がとう」

 

「……食べたら、ちゃんと案内しますから」

 

 ふいっとそっぽを向く。

 もしやこれは……! なんて思ったが、向いた方向の人一人通れるか怪しい狭い路地にパトロール中の風紀委員が通っていった。

 ちょっと大事になってるなと察する。今後の身の振り方を考えなくてはいけなくなったが、それはこの首に高値がついたときからそうだ。

 

「……美味しい」

 

「テイクアウトしたやつ、イブキが喜んでくれたので。そのお礼のつもりです」

 

「揚げ物は人を笑顔にするから」

 

「ふふっ。そうかもしれないですね」

 

 柔らかな笑みに、薄らと射す日の光。

 ああ、やはり重ねてしまう。かの同好会活動日に。

 込み上げそうだった感情を押し込めるように、温かいお茶をぐいっと流し込んだ。

 私は、まだやらなくてはいけないことで満ちている。

 

「こっちから行きましょうか」

 

 そう言って先導し始めてくれたイロハさんに付いていく。なんだか赤くて、すごくもふもふしてそうに見えてきた。

 

「そういえば、どうやってあんな速度を出したんですか」

 

「アクセルをベタ踏みしました」

 

「……本当にそれだけですか?」

 

「え? ええと、はい」

 

 そう答えると、黙りこくってしまった。

 何か誤った回答をしたのかと内心焦るが、どうしたところでどうしようもない。

 気まずい静かな雰囲気のまま歩き続けること数分のうちに、何も変哲のない地下駐車場までたどり着く。

 いや、強いて言えば……天井が高い。軽トラック、キャンピングカー、とにかくいろいろなクルマが停められている中、高さが割とギリギリな車が鎮座していた。

 

――またトラックだ。

 

「……さて、これでしたよね」

 

「うん。さっき乗ったやつよりも幅が広め……なるほど……」

 

 デコトラは仕事用、本命はこの地味な普通の運送トラック。

 先ほど爆破したトラックも中々だったが、こっちのほうが少し大きい。荷台を改造したらきっと素敵な家にも出来そうだし、なんなら現住居よりも快適に……あれ、おかしいな目から汗が。

 

「いっそ、Aクラス(バイク)以外の免許も取ってみたらどうですか」

 

「戦車免許でも教えてくれるの?」

 

「私のサボり時間がなくなるから嫌です」

 

 ということは、乗用車とトラックも取ったらということか。別に取らなくてもキヴォトスにおいてはさして問題ではない。しかし、あると助かる事も多々あるのは事実。免許を取る過程である程度のパーツや走行の知識を詰め込まれたり、汚くない普通の配達バイトもかなりやりやすくなる。

 万年アルバイターとしては悪くない選択肢だ。

 

「……確認する時間がないから口頭だけど、この中に停められてる(・・・・・・)んだよね?」

 

「約束は守ってますから。一応、今回のはこの大きい方分の依頼で、中の分は」

 

「いろいろと終わったらまた仕事をして返す、だよね」

 

「話をちゃんと覚えていたり、ちゃんと分かる人で助かります。本当に……」

 

 苦労が若干滲み出ている声音に心配になりつつも、差し出された車の鍵を受け取る。

 報酬と対価は釣り合わせないといけないし、義には義を、仇には仇で返すのがモットーというもの。当然、私に出来る範疇にはなるけれども、それでも可能な限りやっていくのが道理。

 座席について、親切にも用意されていたカーナビを操作した。行き先は当然ミレニアムの某イベント会場だ。

 さて、長々と1つ目のミッションをこなしたがこれはあくまでも"下準備"に過ぎない。

 

「藪鮫ミメイ……『トラック・イン・トラック(二重運搬)作戦』行動を開始します」

 

 ハンドルを握り、ペダルを踏みしめた。




評価で、ミメイちゃんのキャラ薄いって来たから少しだけ濃くしてみようかな……と思っての怒涛のルビ。
ただ、ミメイちゃんは速度とバイクが絡まなかったら、好物が揚げ物なだけのモブ女子というイメージ多めで書いてるのであまり濃くしすぎるのも違うなと四苦八苦。
こういうのは全部を素直に受け付けなくても良い、という意見は尤もなのですが、本業(学生が使うような言葉ではありませんけども……)では人からのアドバイスや意見は素直に取り込んで技術や見せ方を向上させましょうと言われてるので完全にそれのアレだと思ってください。普段百合えっちしか書いてないので、尚更こういうのは意見取り込まないとかなって思ってまして……
もちろんこちらが不評でしたら全然直しますので、ご意見は積極的にお願い致します!!

あと完全に個人的なことで申し訳ないんですけど、今更シャニを始めました。高校3年生の時の担任がPで、折角ならいっそと思い……

閑話ネタ

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