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あたし、
彼女の名前は
あたしが小学生の頃、ゆいこのいた学校に転校してきてからの付き合いだ。偶然、隣の席になったのがきっかけで、第一印象は『普通の大人しい子』。その印象は間違ってはいなかったようで、小学生の頃の彼女は運動も勉強も並みだった。
だから、『標的』になったんだろうね。その頃、彼女はいじめられていた。クラスのボス的な女の子、その子のことが好きな男子、あとはボス女子の取り巻き。そいつらから靴を隠されたり、あとは教科書を破られたりしてた。ゆいこが詳しく話してくれなかったから、それ以上にどんなことをされていたかは分からなかったけど。
あたしがそれを目撃したのは、転校してきて1週間後のことだった。校舎の裏で、ゆいこはボス女子とその取り巻きに詰め寄られていたんだ。最初はただ話しているのかと思ったけど、ボス女子がゆいこの頬を叩き、同じように取り巻き達も手をあげ始めた。それを見たあたしは頭がカーッと熱くなってーー
~~以下回想~~
「おい! 止めろ!」
当時、激しめな『正義』の女だったあたし。2階の窓からその光景を見つけて、ダッシュで辿り着く。ボス達はいきなり現れたあたしに目を丸くしていて。
「転校生!? なによ、あんたには関係ないでしょ!」
「関係ある! 今、その子のこと殴ってただろ!」
「はぁ? やってないし。気のせいじゃない?」
「ねぇ、寺次さんからも言ってやりなよ!」
取り巻きの1人が、ゆいこにそう言う。
「…………う、うん」
ゆいこはそれを否定せず、うつむき、頷く。怯え、震えながら呟くゆいこ。そんなのを見て、あたしの中の『正義』は熱くなっていく。
「っ、じゃあ! なんで震えてるんだよっ!」
「っ」
それを指摘されたゆいこは震える身体を抱きかかえた。彼女は止まって、止まってと小さな声で呟いていて。
「ほ、ほら! 本人も気のせいだって言ってるわけだし」
「そうよそうよ! 証拠はないでしょ!」
口々にそう言う取り巻きども。そして、極めつけは、
「さっさとどっか行きなさいよ! これは私達と寺次さんとの問題だから。関係ない人は首突っ込まないでよ」
ボス女子のその言葉で、あたしは完全にぶちギレる。こう言って、あたしはそいつらに殴りかかったんだ。
「うるせぇ!! あたしはその子の友達だ、ごらぁぁぁ!!」
~~以上回想~~
その後、担任教師から『同級生に手をあげたこと』を怒られた。勿論、いじめてた奴らはそれ以上にだけどね。それと警察官である両親からも『手をあげたこと』を怒られた。思えばこれが中学生の反抗期にも繋がっている気がするなぁ。
まぁ、そんなことがあったけれど、こんなきっかけのお陰でゆいこ……親友を得ることができた。小学校は勿論、中学、高校も一緒。クラスまで同じときたものだから「運命だねぇ」なんて、あたしはよく言っている。それに対して「腐れ縁よ、腐れ縁!」なんて返すゆいこの可愛いこと、可愛いこと。
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「ん……ん?」
「おはよ、さち。よく寝てたわね」
「ゆいこぉ……?」
目の前にいたのは、ゆいこだった。夕暮れの教室。どうやら自分の机に突っ伏して寝ていたようで、体がちょっと痛い。
「ほっぺた、あとになってるわよ?」
「え、うそ!?」
「……うそ」
そう言って笑うゆいこ。あたしはやーな嘘をつくゆいこに軽く怒って見せる。もちろん本気じゃないのは、ゆいこも分かっているようで、話を自然にすり替える。
「テニス部も、風紀委員の仕事もないからって、緩みすぎじゃない?」
「しょーがないじゃん! 最近、忙しかったんだからぁ……ふわぁぁ……」
「ふふっ、おっきいアクビ」
「っ、最近寝るの遅いからしょーがないのっ!」
「…………また、恋愛相談……?」
「そそ」
ゆいこには前にも話していたから察してくれたみたい。遅くまで友達の恋愛相談に乗っていたこと、その作戦会議をしていたことを話した。もちろんゆいこにも誰から相談に乗ってるかは言わない。『しゅひぎむ』ってやつよ!
そんなことを考えていると、ふとゆいこが口を開いた。
「…………あのさ、おともだちのこともいいけど、自分の体調も考えなさいよ」
「んー? なになにぃ? 心配してくれてんのぉ?」
「まぁ……多少」
目を反らしてそう言うゆいこ。顔が赤いのは夕暮れのせいだけじゃないなぁ? ふふふぅっ。
「…………なに?」
「なんでもなーい! ただ、ゆいこはかわいいのぅって思っただけぇ!」
「か、かわ……っ///」
「かわいいかわいい! うりうり!」
「や、止めなさいってっ///」
彼女のほっぺたを両手で掴み、もみくちゃにするあたし。抵抗する姿もかわいいねぇ。
「~~~~っ、もうっ!///」
「おっと!?」
あたしの手を振りほどき、ゆいこはあたしに背を向けた。
「帰るわよっ!」
「はーい!」
ゆいこに続くように、鞄を持って立ち上がる。ひとつ伸びをして、少し先を歩くゆいこに並ぶ。
「起こしてくれて、ありがとね、ゆいこ」
「別にいいわよ、さち」
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