寺次優衣子と社幸華に関すること   作:藍沢カナリヤ

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1 日常(幸華視点)

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 あたし、(やしろ) 幸華(さちか)には親友がいる。

 彼女の名前は寺次(てらじ) 優衣子(ゆいこ)

 

 あたしが小学生の頃、ゆいこのいた学校に転校してきてからの付き合いだ。偶然、隣の席になったのがきっかけで、第一印象は『普通の大人しい子』。その印象は間違ってはいなかったようで、小学生の頃の彼女は運動も勉強も並みだった。

 だから、『標的』になったんだろうね。その頃、彼女はいじめられていた。クラスのボス的な女の子、その子のことが好きな男子、あとはボス女子の取り巻き。そいつらから靴を隠されたり、あとは教科書を破られたりしてた。ゆいこが詳しく話してくれなかったから、それ以上にどんなことをされていたかは分からなかったけど。

 あたしがそれを目撃したのは、転校してきて1週間後のことだった。校舎の裏で、ゆいこはボス女子とその取り巻きに詰め寄られていたんだ。最初はただ話しているのかと思ったけど、ボス女子がゆいこの頬を叩き、同じように取り巻き達も手をあげ始めた。それを見たあたしは頭がカーッと熱くなってーー

 

 

~~以下回想~~

 

「おい! 止めろ!」

 当時、激しめな『正義』の女だったあたし。2階の窓からその光景を見つけて、ダッシュで辿り着く。ボス達はいきなり現れたあたしに目を丸くしていて。

「転校生!? なによ、あんたには関係ないでしょ!」

「関係ある! 今、その子のこと殴ってただろ!」

「はぁ? やってないし。気のせいじゃない?」

「ねぇ、寺次さんからも言ってやりなよ!」

 取り巻きの1人が、ゆいこにそう言う。

「…………う、うん」

 ゆいこはそれを否定せず、うつむき、頷く。怯え、震えながら呟くゆいこ。そんなのを見て、あたしの中の『正義』は熱くなっていく。

「っ、じゃあ! なんで震えてるんだよっ!」

「っ」

 それを指摘されたゆいこは震える身体を抱きかかえた。彼女は止まって、止まってと小さな声で呟いていて。

「ほ、ほら! 本人も気のせいだって言ってるわけだし」

「そうよそうよ! 証拠はないでしょ!」

 口々にそう言う取り巻きども。そして、極めつけは、

「さっさとどっか行きなさいよ! これは私達と寺次さんとの問題だから。関係ない人は首突っ込まないでよ」

 ボス女子のその言葉で、あたしは完全にぶちギレる。こう言って、あたしはそいつらに殴りかかったんだ。

 

「うるせぇ!! あたしはその子の友達だ、ごらぁぁぁ!!」

 

~~以上回想~~

 

 その後、担任教師から『同級生に手をあげたこと』を怒られた。勿論、いじめてた奴らはそれ以上にだけどね。それと警察官である両親からも『手をあげたこと』を怒られた。思えばこれが中学生の反抗期にも繋がっている気がするなぁ。

 

 まぁ、そんなことがあったけれど、こんなきっかけのお陰でゆいこ……親友を得ることができた。小学校は勿論、中学、高校も一緒。クラスまで同じときたものだから「運命だねぇ」なんて、あたしはよく言っている。それに対して「腐れ縁よ、腐れ縁!」なんて返すゆいこの可愛いこと、可愛いこと。

 

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「ん……ん?」

「おはよ、さち。よく寝てたわね」

「ゆいこぉ……?」

 目の前にいたのは、ゆいこだった。夕暮れの教室。どうやら自分の机に突っ伏して寝ていたようで、体がちょっと痛い。

「ほっぺた、あとになってるわよ?」

「え、うそ!?」

「……うそ」

 そう言って笑うゆいこ。あたしはやーな嘘をつくゆいこに軽く怒って見せる。もちろん本気じゃないのは、ゆいこも分かっているようで、話を自然にすり替える。

「テニス部も、風紀委員の仕事もないからって、緩みすぎじゃない?」

「しょーがないじゃん! 最近、忙しかったんだからぁ……ふわぁぁ……」

「ふふっ、おっきいアクビ」

「っ、最近寝るの遅いからしょーがないのっ!」

「…………また、恋愛相談……?」

「そそ」

 ゆいこには前にも話していたから察してくれたみたい。遅くまで友達の恋愛相談に乗っていたこと、その作戦会議をしていたことを話した。もちろんゆいこにも誰から相談に乗ってるかは言わない。『しゅひぎむ』ってやつよ!

 そんなことを考えていると、ふとゆいこが口を開いた。

「…………あのさ、おともだちのこともいいけど、自分の体調も考えなさいよ」

「んー? なになにぃ? 心配してくれてんのぉ?」

「まぁ……多少」

目を反らしてそう言うゆいこ。顔が赤いのは夕暮れのせいだけじゃないなぁ? ふふふぅっ。

「…………なに?」

「なんでもなーい! ただ、ゆいこはかわいいのぅって思っただけぇ!」

「か、かわ……っ///」

「かわいいかわいい! うりうり!」

「や、止めなさいってっ///」

彼女のほっぺたを両手で掴み、もみくちゃにするあたし。抵抗する姿もかわいいねぇ。

「~~~~っ、もうっ!///」

「おっと!?」

あたしの手を振りほどき、ゆいこはあたしに背を向けた。

「帰るわよっ!」

「はーい!」

ゆいこに続くように、鞄を持って立ち上がる。ひとつ伸びをして、少し先を歩くゆいこに並ぶ。

 

「起こしてくれて、ありがとね、ゆいこ」

「別にいいわよ、さち」

 

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