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『大水槽エリア』。
名前の通り、部屋自体が前の2つの展示スペースよりもずっと広く、見上げるほど巨大な水槽が目の前でその存在感を放っている。何種類もの魚が泳いでいて、アジやイワシ等の回遊魚がひっきりなしに動いていた。なかにはエイやサメといった大きな生き物もいる。水槽内の床から泡が湧き出ているのは、水槽内の環境を維持するためなのかしら。立ち昇る泡が光を反射し、群青の中で白く輝いて酷く美しく見えた。ふと上へ上へ向かっていく泡の行方を目で追うも、水槽が大きいからか見失ってしまう。巨大な大水槽に圧倒され、ただただ見上げていると、緩やかな速度で近づいてくる生物がいるのが分かる。
「あ、ジンベエザメだ」
「えぇ、大きいわね」
20m以上あるであろう体は、こんな大きさの水槽でも一番目立っていて、彼を認識した後だとどうしても視線を外せない。ゆっくりとした動きでガラスの手前まで来たジンベエザメは、私達の前で動きを止める。そして語りかけるように平べったい口を開いた。
「<問い>」 「<彼女のことが好き?>」
もう質問されるのには驚かない。ただ、まるで今の私の心の内を見透かしたような内容だったのは驚いた。さっきまでの私なら、きっと本心を隠し、誤魔化していたでしょうね。でも、今はーー
「す、好きよ…………うん、大好き」
こうして言える。私の本心を。
「うん、好きだよ。とっても好き」
彼女もそう答える。その言葉には迷いなんてなくて、そのことで私の心はさらに色めき立つ。まるで夢でも見ているんじゃないかしら。そんな風に思ってもしまう。それだけ今のこの状況は、私にとっては奇跡みたいな状況で。そんな私の心中など知ったところじゃないさちは、更なる追撃を仕掛けてくる。
「えへへぇ、いいね。こういうの」
照れたように頬を染めたさちは、照れ隠しなのか顔が見えないくらい近くにすり寄ってきて言う。
「ゆいこ、好き♡ 好きだぞぉ♡」
「さ、さち……! えへへ」
あぁ、幸せ。じんわりと心に熱が広がっていく。
「私もさちが好きよ。誰よりも大好き、だから……///」
そんな素直な言葉を伝えられてるのは私らしくもないけど、そんな自分は嫌いじゃなかった。
「ふふん! どう? ジンベイザメさん、思い知ったか!」
「も、もう、聞かれるまでもないことなんだからね!///」
私達の答えに満足したのか、ジンベイザメはゆっくりと水槽の上部へと泳いでいった。これまでの感じからすると……。
「あ、やっぱり」
次のエリアへ進むための通路が出現している。ここには何もなくて先に進め、そんな意図なのでしょうね。私達は一瞬、視線を交わしてどちらからともなく歩き出した。
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通路はやっぱり暗い。ただ今までのものとは少し違っていて、緩やかなカーブをえがく壁と天井はアクリルガラスでできており、その向こうは水で満たされている。まるで水のトンネル。キョロキョロと辺りを見回しながら歩く。
「えへへ……恋人、恋人かぁ……えへへへへ……」
想いを伝え、それを受け入れてもらった私の内心はご機嫌。勿論、態度には出さないけれどね。
「あのぉ……ゆいこさん、ゆいこさん」
「ん? どうしたの、さち?」
「ご機嫌なのは分かるけど……ちょっと照れる、かも」
「~~~~っ///」
慌てて口をつぐむ。無意識の内に言葉を発していたようで。
「………………さ、さち。私なんか言ってた?」
「……恋人かぁって、にこにこしてた」
「~~~~ッ」
顔から火でも出そうだった。もうっ///
「あははは……」
「…………さちだって、ちょっと口元緩んでるわよっ」
「へ? う、うそっ!?///」
私の指摘に、さちは通路に自分の顔を写そうとしていた。私も彼女とは反対方向を向き、自分の表情を確認する。あんまりにも緩んでたら、さちに呆れられちゃうもの。
「ん?」
ふと何かの影が私達に落ちた。どうやら天井を大きな魚が通ったようだ。2人で上を見上げた拍子に、さちのかけていた眼鏡がふっと落ちた。
「おっと!」
それを拾おうとさちがしゃがんだ時、トンネルの天井に何かの映像が映し出された。映し出されていたのは、さちだ。それからその隣には白衣の男性もいる。その人に向けて、さちは何かを訴えるように叫んでいた。ただ音は聞こえない。あれは……?
「よし、壊れてない!」
「あ……さち、大丈夫?」
「うん」
「ねぇ、さち……今の、見えた?」
眼鏡をかけ直したさちにそう訊ねた後、今の映像について言及する私。さちは見ていないのか首を傾げる。私は一瞬見えたその映像について、説明をした。
「白衣の人……うーん、気のせいじゃないかな」
少し考えた後、さちはそう返答した。さちは隠し事が苦手。それはもう分かっていて、だから、何かを隠してるんだろうことは分かる。けれど、きっとさちは私を害するようなことはしない。この隠し事もきっと考えてのことなんだろうって。さちを信じて、私も気のせいねと口にし、自分を納得させた。
「それより、ほら! クラゲエリアだってさ! いこいこ!」
「えぇ、そうね」
さちに手を引かれ、私も進む。
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『クラゲエリア』には沢山の水槽があった。勿論、さっきの大水槽よりは小さいけれど、それでも様々な形の水槽に少し心が踊る。見れば、丸い傘のクラゲや指先ほどの大きさしかないクラゲ。はたまたとても長い触手をもつクラゲ。色々な種類のクラゲがそれぞれの水槽の中で、ふわふわと漂っていた。一つの水槽は、演出のためか赤いライトで照らされている。光がクラゲの半透明な体を照らし、まるでクラゲそのものが発光しているようだ。 ゆっくり、ゆっくりと揺蕩う彼らに満ちた空間は、どこか時間の流れが遅く感じる。
「ほわぁぁ、幻想的だぁ」
さちはそう言って、ため息を吐く。感嘆してるみたい。そんな彼女の言葉に頷き、会話を続ける。
「……ふふ、クラゲってふよふよしてて、ちょっと可愛いわよね」
「分かる! ロマンチックな光景」
輝く水槽の前で、私達はしばらく静かに佇んだ。無言。だけど、それが全然嫌じゃないし、気まずさなんて欠片も感じない。むしろこの瞬間が……。
「こういう光景をさちと2人で見られて……すごく幸せだわ」
ポツリと零れた言葉。それを聞いて、さちは一瞬ビックリした顔をした後、その表情が緩む。どうしたのかと訊ねると、さちは少し照れたように笑った。
「あ、あのね、ゆいこ……あたしも今、ちょうどそう思ってた……///」
あぁ、本当に……。
「さちと同じで、うれしい……///」
「うん……」
どちらからともなく繋いだ手をきゅっと強く握る。少し冷たい私の手。体温が元々高いさちの手。互いの熱が混じり合って、やがておんなじ温度になった。
「………………」
「………………」
水槽をぼーっと見つめながら、次の質問を待つ。今度はクラゲにされるのかしら、なんて思っていると、ふと影が落ちた。水槽の中に注意が向いていたせいで、少し遅れて気づく。影は水槽の中ではなくて、私達の背後にいたその『ナニカ』のとのであると。
「っ」
振り返るとそこには『水たまり』があった。けれど、染みからふわりと何かが現れたことで理解する。大きなクラゲだ。 色はこの夜の水族館の暗闇に溶け込むような黒。巨大な傘の下からは、長くてしなやかな触手を垂らしている。 一見すれば、ただのクラゲ。けれど、それでもそれが敵であると認識したのは、私達を睨む黄色い瞳と視線が合ったからだった。
「…………出た。こいつが……」
「何よ、これ? クラゲ……?」
「分かんない。でも、ハッキリしてるのは……こいつから逃げなきゃってこと」
「に、逃げる……? う、うん、わかった、さちがそういうのなら、逃げましょ!」
混乱はしてるし、恐怖だってある。それでも博物館の時と違って、おかしくならずにそんな判断をできたのは、きっとーー
「行こう! ゆいこ!」
ーーさちの手が私を繋ぎ止めていてくれたから。
走り出そうとした瞬間、その『クラゲ』がすぅぅっと息を吸った。周りの空気を吸引してその傘は膨張し、フロアの天井に届きうる大きさになる『クラゲ』。それは問うてくる。
「<問い>」 「<自分のことを愛せる?>」
これまでと同じフレーズだったから、これが質問であることはすぐに分かった。けど、音が妙に歪んでいる。ノイズの混じった不協和音、まるで自分の体の内側から響くかのようなその問いは、私達の足を止めるのには十分で。
「ゆいこ!」
「っ、うんっ」
さちの声に我に返れた。逃げる場所を探すため、周囲を見渡す。けれど、今までのような通路はない。ううん、きっと前の3つの部屋と同じように、質問に答えなきゃならないんでしょうね。
「……わ、私は……」
「ゆいこっ、避けてッ」
「え…………?」
質問に答えようとした私。だから、対応が遅れた。気づけば、私の目の前には『クラゲ』の触手が迫っていた。
「あ……」
目の前の光景がスローモーションに見える。迫ってくる触手の1本1本がよく見えてしまう。だから、痛烈に感じる死の気配。
「ゆいこっ!!」
止まった世界を壊したのは、さちだった。彼女は私を突き飛ばし、目の前に飛び出す。その動きはまるでこうなることを予期していたかのよう。ドンッと揺られ、倒れた私の目の前で、さちは触手に捕まれてしまう。そこからは声を発することもなく、あっという間だった。さちの体が無数の触手に飲み込まれ、見えなくなり、頭も埋もれていった。残るのは彼女の右手だけ。その右手も徐々に飲み込まれていく。
「さち……さち…………さちっ!!」
私も巻き込まれるかも。頭に過った考えは一瞬で消える。躊躇などするはずもない。私はさちの右手を掴み、
「あぁぁぁぁぁっ!!」
一気に引っ張る。その触手には見た目ほどの力はなかったようで、抵抗もほぼなく引き抜くことができた。思ったよりずっと軽い力で引っ張り出すことができたことで、勢い余って引き抜いたさちごと、ごろごろと後ろに転がる。
「っぷはっ!? し、死ぬかと思ったぁ…」
私の胸の中でそう言うさち。その姿を見て、気持ちが溢れてきて、私は思いっきりさちを抱き締めた。
「さち、さち……! よかった……!」
「んっ……ありがと、ゆいこっ…………って、どうやら余韻を噛み締めるのも待ってくれないみたいだよ」
「……っ」
そちらを見ると、『クラゲ』はゆらゆらと触手を這わせ、にじり寄ってきていた。そして、またない口を開き、問う。
「<問い>」「<<自分のことを愛せる?>」
おぞましい声が頭の内側に響く。たじろぎそうになる。けど、
「……うん、愛せるよ。だって、自分を大切にしなきゃ、ゆいこが悲しむから」
彼女はそう言う。近寄ってくる化物を前にしても堂々と答えるさちの姿を見て、私の心も次第に落ち着いていく。ひとつ息を吐いて、私は今思っている素直な気持ちを言葉にする。
「私も愛したい。さちが好きだって言ってくれた私のことを、愛したいって、思ってる……だから、愛せるわ」
カタリ。私達の答える声が闇に消えると同時に、なにかの音がした。周りを見渡すと、『クラゲ』の向こう側、エリアの奥に通路ができていた。
「! ゆいこ、行こうっ!」
「うんっ!」
2人手を固く繋ぎ、駆け出す。視界の端に影がチラつく。行く手を阻もうと肩に触れ、足に巻きつく触手たち。それらをなんとか振り払い、エリアの奥へ進んでゆく。迫る触手が肌に触れる度、心の柔らかいところに直接触れられるような不快感が体を駆け巡る。得体の知れない恐怖がのぼりつめ、何度も立ち止まりそうになった。 それでも私達は走り抜く。互いの手を包む熱だけを頼りにして。
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その通路を抜けると、行き止まりだった。一層暗く、今まであった最低限の明かりさえもない『深海の世界』。扉で区切られている訳ではないけれど、あの『クラゲ』は追ってきていないみたいね。私とさちは呼吸を整えながら辺りを見渡す。 今までの中で一番狭いエリアで、私達を囲うようにただ大きな水槽が存在していた。
「「はぁぁぁぁぁ……」」
2人でその場にへたりこんだ。手を繋いだまま、言葉を交わす。
「大丈夫そう……かな?」
「だ、大丈夫そう、ね……? はぁぁ、びっくり、したぁ……」
「う、うん……怪我はない? ゆいこ?」
「うん、平気。さちの方こそ、大丈夫だった……?」
「うむ! この通り元気!」
そう言って力こぶを作るような動作をするさち。その腕からはぬたーっと『クラゲ』の粘液が滴り落ちる。
「……まぁ、ぬるぬるして気持ち悪いけどねぇ…」
「良かった。……ふふ、帰ったらシャワー浴びて、しっかり洗い落とさなくちゃいけないわね」
「ねー」
ごろんとさちはその場に寝転がった。疲れたぁぁ、と気の抜けた声をあげながら、続ける。
「また中学校の時みたいに一緒にお風呂入…………あっ///」
失言だったという風に、さちは口を両手で塞ぐ。粘液が口についたのが不快だったのか、慌てて手を口元から離した後、
「なし、今のなし……///」
ボソボソと呟いた。寝転がったままのさちの顔をふと覗き込む。この暗闇でも分かるくらいに、真っ赤で。何かを想像しているのが分かった。だから、
「っ、…………なしにしたくない///」
「ゆ、ゆゆゆ、ゆいこっ/// な、なんで乗ってくるのっ///」
私は寝転んださちに跨がり、顔を近づけ告げる。後から思い返すと、それは私らしくもないかなり大胆な行動。きっとあれね、吊り橋効果とか、そういうの。ともかくここで引く選択肢はなかった私は、少し強引に顔を寄せていく。
「……だめ、かしら?///」
「……………………い、いいけど/// 洗いっこは、なしで……お、おねがいしますぅ……っ」
「……分かったっ、今のところは……なしでいいわ」
一緒にお風呂に入る言質をとった。十分すぎる成果を得た私は、ゆっくりと彼女の上から退く。
「~~~~っ、て! こうしてる場合じゃないっ! 早くここから脱出しよう!」
変な空気になりかけたところを、さちは強引に断ち切った。私もそれに乗らせてもらうことにする。
「そ、そうだったわね! もうすぐ出口のはずだけど……えっと……」
キョロキョロと辺りを見渡すと、天井に一筋の光が射していることに気づいた。それはこの真っ暗闇でも目立たない淡くかすかな光だった。その下をいくつもの影が流れて過ぎ去ってゆく。深海魚かしら? その群れにぶつかった小さな泡は弾け、形を残さず消える。 波のない水槽で何かが揺蕩う。 揺らいで、あふれそうになった。
あぁ、私は『ここ』に来れてよかった。彼女に打ち明けられてよかった。そして、さちと恋人になれて本当によかった。
不意に周囲が明るくなったことに気づく。水槽を照らす光が徐々に強まっているみたい。水底から空を見上げる。白んだ明かりが水面で揺れて、太陽光が差し込むようだった。
アクアリウムの深海に、2人だけの朝が来た。
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「あ、れ……?」
目を開けると、白衣の男性に見下ろされていた。白い天井と、白いカーテン。混乱はしていたけれど、ここが病院のベッドの上だとすぐに思いいたった。ゆっくりと、体を起こす。
「おはようございます、体調はいかがですか?」
「え、えぇと……」
「あっ……」
聞き馴染みのある声。まだ私の動きは緩慢だったから、視線だけを動かすと、近くのパイプ椅子に座るさちと目が合った。言葉を発する前に、白衣の男が前のめりになる。至近距離からその人に覗き込まれた。思わずたじろぐ。
「特に問題はなさそうですね。ご無事で何よりです」
私の無事を確認した後、距離のおかしい医者?のような人は早口で、状況を説明してくる。
「実は社さんが貴方を起こすのに協力してくださったんです。どうやら『夢のクリスタライザー』のせいであなたが昏睡状態になってしまったようでして。ああ、一部始終は見ていましたから説明は結構ですよ。それじゃあ、あとはお二人でご自由に」
私がすべてを理解できずに固まっている内に、その人はすぐに病室を出ていった。まるで実験は終わりとでも言うように、こちらから一切の興味をなくしたようだった。
「………………」
病室にはさちとふたりきり。先に沈黙を破ったのはさちで。
「おかえり、ゆいこ」
「……あ、えっと……ただいま、さち」
「………………体、なんともない?」
「う、うん、大丈夫、だけれど……えっと、……夢じゃ、ないのよね……?」
「うん、今までのがゆいこの夢で、こっちが現実」
さちはそこまで言って、パイプ椅子から立ち上がる。おもむろにこちらへ向かってきて、改めて対面するとーー
「えーーんっ、ゆいこ起きて、よかったよぉぉぉ、ゆいこ、ゆいこゆいこぉ……」
まるで子供のように、大粒の涙を流しながら泣き始めたのだった。ぎゅーっと強く抱き締められる。痛くはない。彼女の思いが伝わってきて、あったかさが心に広がっていく。
「…………ありがと、さち。夢の中まで、迎えに来てくれて……大好きよ」
「うんっ、うんっ……あたしもぉぉ」
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しばらくして、やっと落ち着いてくれたさちは、赤くなった目元をごしごしと擦りながら言った。
「……心配した。夢の中まで迎え行った」
頬を膨らませるさち、かわいい……じゃなくて。
「ごめんなさい。でも、私もなにがなんだか……」
「そういうのはいいの!」
「え、えっと……?」
「頑張ったんだよ! ゆいこを連れ戻すのにっ!!」
一瞬、さちが何を言いたいのか分からなかった。けれど、次の行動で私はすべてを理解する。
「だから…………んっ」
「!!!」
目を閉じ、軽く唇をこちらへ向けて突き出してくるさち。理解した。これは……っ!!
「…………っ」
キョロキョロと辺りを確認する。当たり前だけれど、ここには私達しかいない。うん、よし……っ///
「…………ん」
夢の中と同じ。ただ唇を合わせるだけのキス。けれど、夢の中よりもずっと彼女の熱を感じた。
「…………………っ、さち」
「うん……ゆいこ」
名残惜しい。けれど、きっとこれからも……。
だから、今はさちにちゃんと気持ちを伝えよう。
「ありがと、さち」
「うん」
私のありがとうを受け取ってくれたさちは、また微笑む。
「大好き、ゆいこ♡」
「私も……大好きよ、さち♡」
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私達はその病室で会話を続ける。さちは穏やかな表情で微笑み、私もそれに答える。無機質なはずの白い病室は、あの夜の水族館とは対照的だった。明るく、どことなく晴れやかで、そして穏やかな雰囲気が流れていた。
窓の外を鳥がよぎった。ふとそちらへ視線を向ければ、窓枠を満たす青の中で大きな雲が気持ちよさそうに流れていた。
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END『ねむるアクアリウム』
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