通過者及び視聴済みの方のみお読みください。
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バレンタインも過ぎ、ゆいことイチャイチャラブラブな日常を送っている今日この頃。そのメールがあたしのスマホに届いたのは、日曜日の昼前のことだった。
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『温泉旅行ペアチケット当選のお知らせ』
この度、弊社主催のプレゼントキャンペーンにお申し込みいただき、誠にありがとうございます。
抽選の結果、当選されましたことをお知らせいたします。
おめでとうございます!
旅行の詳細につきましては、別途お送りするパンフレットをご確認ください。また、当選のお祝いとして、旅行中にご利用いただける特典をご用意しております。
旅行に関するお問い合わせ等ございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。
【連絡先】
〇〇旅行社カスタマーサポート
TEL: xxx-xxxx-xxxx
受付時間: 9:00~17:00
Eメール: [email protected]
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いつ、どこで応募したやつだっけ? 頭にハテナは浮かんでいたけど、1文目でその疑念がすべてどうでもよくなる。だって!
「温泉ペアチケット……っ!」
温泉、しかも、ペアである。なんて、あたしとゆいこにおあつらえ向きなんだろう!
「フ、フフフフフ……」
部屋で1人、不気味な笑みを浮かべるあたし。と、こうしちゃいられない。早速、ゆいこに連絡しなきゃ!
さちか『ゆいこ、ゆいこ! 大変だ!』
ゆいこ『どうしたの? さち』
さちか『なんと!! 温泉旅行のチケットが当たったよ!!』
ゆいこ『温泉旅行?! すごいじゃない!』
さちか『もちろん、ペアのやつ! 行くよね! ね!』
ゆいこ『ええ、もちろん』
さちか『やった! そうと決まったら計画立てよ、うちに集合ね! 待ってるよー!!』
ゆいこ『すぐ準備して向かうわ』
そこでスマホを手放し、あたしはリビングへと向かう。お菓子とかジュースとかあったかなぁって。それからお母さんにちゃんと許可は取らなきゃね。相手がゆいこだし、大丈夫だとは思うけど。
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すぐにゆいこは家に来た。手にはコンビニで買ったであろう袋を持っていて、走って来たのか、鼻の先が少し赤くなり、息を切らせていた。それだけ楽しみにしてくれたのだと思って、思わず頬がゆるんじゃう。よく来たねーとハグをして慌てるゆいこを愛でた後、2人であたしの部屋へと向かった。
自然に隣に座り、送られてきていた封筒を開ける。中学校の修学旅行を思い出しながら、あたしたちはパンフレットを開いた。
今回、当選したのは、『黒羊村』というところにある温泉旅館の一泊二日のペアチケットで、この中に夕食も朝食も含まれているみたい。部屋も豪華で、部屋の中にも露天風呂が付いている。その他にも、最新式ドライヤーやヘアオイルやパック、化粧水なども有名メーカーのものを取り揃えていて、エスプレッソマシンやワインやビールなども飲み放題らしい。まぁ、お酒は飲めないけどね。
距離的には、ここからだと電車で2,3時間ほどで無理ない範囲で行けるところ。電車のチケットもついているときた。
「お、おぉぉぉ、めっちゃ豪華だよ、ゆいこ!」
「えぇ、すごいわね。部屋に露天風呂がついている宿なんて滅多に行けないわよ」
「ねー!」
ゆいこもあたし同様に興奮してるらしく、いつもよりずっと声量が大きい。それにしても、
「部屋に露天風呂かぁ……」
口をついてそんな呟きが出て、咄嗟に口をつぐむ。聞こえていないかとチラリとゆいこの方を盗み見るけど、ゆいこはパンフレットに夢中で、電車のチケットもついていることに驚いていた。ほんとだねぇ、太っ腹だぁと適当な相槌を返す。よかったよかった、聞こえてなかったみたいだね。
「あとは……」
封筒を逆さにすると、チケットとパンフレット以外のものが出てくる。『黒羊村』を特集した観光雑誌とクーポン券だ。温泉饅頭、足湯カフェ、射的無料クーポンなどがあり、その中でも目を引いたのが、
「浴衣レンタルもある! うわぁ、めっちゃいい!」
温泉街。夜。浴衣で2人、街に繰り出す。考えただけでも、めちゃくちゃいい!
「……そうね。いいわね、浴衣」
ポツリと呟くゆいこ。ふとそちらを見れば、目が合った。
「……フッフッフッ、ゆいこさんは、今からさちさんの麗しい浴衣姿を想像してるのかね?」
「……か、可愛い恋人の浴衣姿、想像しちゃうのは仕方ないじゃない///」
そう言って真っ赤になるゆいこ。かわいいやつめ。愛しさが余って、あたしはゆいこに抱きつき、ほっぺたをスリスリする。
「え、えへへ/// そだね、うん、あたしもゆいこのかわいい浴衣姿楽しみぃ♡」
「……ふふ、さちってば。楽しみね♡」
「えへへっ、浴衣着て、いろいろ見て回ろ!」
「ええ、そうしましょう。ほら、さち、せっかくだし、雑誌も見ておきましょう」
「あぁ、そうだったそうだった」
ゆいこに促されるまま、あたしは雑誌をめくる。雑誌には、さっきのパンフレットに載っていた黒羊旅館の詳細とか、村にあるスケートリンク、温泉街のマップなど、さまざまな内容が取り上げられていた。この一泊二日の旅にあつらえたように、雪像祭りなんてものも催されるみたい。
あたし的に一番気になるのは、やっぱり温泉! 紹介文によると、黒羊村の温泉は美肌の湯として知られており、泉質は美容効果が高いとされるナトリウム・カルシウム塩化物泉。肌のターンオーバーを促進する働きがあり、保湿効果も抜群で湯に入ると、肌にふんわりと優しい感触が広がる。温泉に含まれるミネラル成分がお肌にうるおいを与え、キメを整えてくれるのが実感できるでしょう。そんな風に書いてあった。
「美肌の湯だって! よぉし、すべすべになるぞぉ!」
「すべすべに…………ふーん」
「ゆいこ?」
思案顔のゆいこ。どうかしたのと名前を呼ぶと、ゆいこはにこりと微笑み、こう言った。
「色々と楽しみね?」
「色々……? あ、は、い……///」
「ふふっ」
「うぅぅぅぅ///」
彼女の言わんとすることが十二分に伝わってしまい、あたしは顔を赤くするしかなかった。
「そ、それにしても、運が良かったよねっ」
誤魔化すように話題をすり替える。ゆいこも一旦は諦めてくれたようで、あたしの言葉に頷いた。
「本当ね……でも、運が良すぎてちょっと怖いくらいよ」
「まぁ、色んな怖い目にあってるからねぇ……その埋め合わせだよきっと!」
「それならいいけれど……まぁ、折角だもの。余計な心配なんかせず、全力で楽しまないと勿体ないわよね」
「そうそう! それにほら、なにかあったらまたあたしが守るからね!」
「ふふ。ありがとう、さち」
それからもあたしたちは旅行雑誌を見て笑い合う。どこに行こう、何を食べよう、何をやってみよう。目移りしながらも、あたしたちは2人、仲良く計画を立てたのだった。
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