寺次優衣子はムッツリです(PL様お墨付き)
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「…………ふーっ、今日も疲れたわね」
1日の終わり。髪を乾かし終えた私は、ベッドに横になった。おもむろにスマホを触り、無意識のうちにとあるフォルダを開いた。
「さち……」
それは私が撮り溜めている『さちフォルダ』。
何気ない場面で撮った2ショット。お出かけ先で撮ったピースで笑顔のさち。校外実習で行った幼稚園で子供たちと手を繋ぐさち。そして、
「…………」
画面の中には水着姿のさち。紺色のビキニタイプの水着。シンプルながら胸元と腰についたフリルが可愛い。それでいて、その……さちの胸とかお尻が強調されて、すごく……うん、まぁ、いいわよね。それは2人で買いに行った時、私がわがままを言って、選ばせてもらった水着だった 。本人は似合うかなぁなんて言っていたけど、信じられないくらい似合ってるし、可愛い。
「………………かわいいわよ、さち」
その画像を見ながら、私は想いを馳せる。妄想の世界へと旅立つ。
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もしも海にさちとふたりきりだったら。
「食らえ! ゆいこ~!」
「きゃっ」
海の水の冷たさを肌に感じた。その先には眩いくらい笑顔のさち。私にいきなり水をかけて、にししと悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「いきなり、なにするのよ!」
「えー? だって、海だよ、海! テンションあがるでしょ!」
「まぁ、それは……そうね」
都合のいいことに、この場所に他の人間はいない。私としては、さちの水着姿を誰にも見せなくないから、このシチュエーションが一番。正直、プールの授業も嫌だもの。
「ゆいこー?」
「あ、ごめん……ボーッとしてた」
首を振る。集中よ、集中。今はこの状況を十全に楽しむの。ひとつ息を吐き、さちと向き直る。すると、さちは、
「むぅぅ、ボーッとしないでよぉ! せっかくゆいこの選んでくれた水着着てきたんだからさ!」
膨れるさちの言う通り、彼女は写真の中の姿と同じ水着を着ていた。
「ほらー! くるりっ! どう?」
さちはその場でくるっと回り、得意気に笑う。
「どう……って……」
私と違い、健康的に少し焼けた肌。それになにより、いつも制服の上からでは分からないスタイルのよさが目に入る。私よりもはるかにある胸、本人は気にしてる少し大きめな、でも形のいいお尻。かといって太っている訳ではなくて、くびれもちゃんとある。
「似合ってるわ。それにスタイル、いいと思うわよ」
「フフフッ、やったぜ!」
私の言葉に笑うさち。またも悪戯っぽい悪い笑みを浮かべたさちは、
「どうだね、ゆいこくん。今なら素直に言えば、さちさんの体の好きなところを触らせてあげようじゃあないかー!」
「!」
その言葉に、私は一瞬硬直した。そして、ふざけた口調から一転、さちの雰囲気が変わる。
「ね、ゆいこ。あたしのどこを触ってくれる……?」
さちは不意に私の肩に腕を回して、抱きついてくる。豊満な彼女の胸の感触がダイレクトに肌に伝わってきて。甘く痺れる私の脳を溶かすように、さちは耳元で囁く。
「どこでも『好きなとこ』、『好きなだけ』触っていいよ♡」
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「…………んっ///」
開放的な気分になって、誘惑してくるさちもいいわね。
「他には…………あ、これ」
フォルダをスクロールしていくと見つけたのは、文化祭の時のさち。彼女はクラスの宣伝看板を持ちながらこちらへとピースしていた。そんなさちの格好はメイド服。所謂、ミニスカメイドで、あまりの可愛さに客が山のように押し寄せたって噂を後から聞いた。
まぁ、そんなさちを見せなくなくて、連れ出したのはいい思い出ね。
「……ふーん」
改めてその写真を見る。大人気になるのも頷ける可愛さね。弾けるような笑顔は勿論、素敵だし、下に履いているとはいえ、スカートの短さもまぁ、気にはなるわよね。まったく、風紀委員が聞いて呆れるわ。まぁ、さちは『正しさ』には拘る割には、こういうところ無頓着だから、しょうがないけれど。
でも、正直、さちはこういうメイド服よりももっとクラシカルな方が似合うと思うのよね。例えばーー
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もしもさちが私のメイドさんだったら。
「お嬢様、朝ですよー!」
「んっ……」
「ゆいこお嬢様、起きてください!」
明朗な声に、脳が覚醒していく。瞼を開けると、そこにいたのはうちのメイド・社幸華ーーさちだった。丈の長い暗い紺のロングワンピースに白のエプロン。まさに『メイド』さんといった風貌の彼女は、そのまま部屋のカーテンを開ける。
「おはよう、さち……」
「おはようございます、お嬢様」
「ん……んんーっ」
身体をベッドから起こし、ひとつ伸びをする。身体が少し痛い。
「」
「……さちは元気ね」
「はい! 元気ですよー? メイドさんの朝は早い、ですからねぇ」
そう言って、にこりと笑うさち。本当に彼女は元気で、昨日夜遅くまで互いの体温を感じ合っていたとは思えないくらい。
「………………」
「あ! お嬢様、髪乱れてますよ!」
「……別にいいじゃない、それくらい」
「ダメですよ! ご家族とはいえ、朝食の場には人目がありますからね、なおしますよー」
後ろ、失礼しますね。そんな風に言い、さちは私の後ろに腰掛ける。どこからか櫛を取り出して、私の髪を梳かすさち。慣れた、でも、丁寧な手つきで私の髪を触ってくれる。
「…………」
「今日はせっかくのお休みですからねぇ……たしかお買い物に行かれる予定でしたよね」
「…………」
「どんな服がいいですか? まぁ、お嬢様は可愛いですから、どんな格好も似合いますけど」
にこにこと楽しそうにさちは話す。こっちの相槌なく、話し続けられるのは流石。小さい頃から私の側にいてくれてるだけあるわね。
「……よし! 整いましたよー!」
「あっ」
軽い髪のセットが終わり、彼女は離れる。そのまま彼女は腰かけていたベッドから立ち上がり、クローゼットへ。クローゼットを開け、今日私が出かける時に着ていく服を身繕い始めた。
「んー、今日はあたたかいですから、うーん、こっちの方がいいかなぁ? それともーー」
「……ねぇ、さち」
「はい、なんですか、お嬢様?」
窓から射す朝日に照らされる快活な彼女を見て、不意に私の心に沸き上がる情動。こんな明るい彼女が昨日はあんなに乱れていた。その光景を思い出し、私は一歩一歩、彼女の方へ進む。
「え、え……? お、お嬢様……?」
せっかく開けてもらったカーテンを再び閉める。そのまま彼女の手を掴み、ぐっと部屋の壁へと押し付ける。私の方が背が低いから下からさちのことを見上げる格好になった。
「え、えっと……」
「ねぇ、さち」
「っ、はい……///」
いつもより少しだけ低い声で、私は彼女の名前を呼ぶ。それは2人の合図。『そういう』合図。
「出かける予定はキャンセルよ。今日はーー」
「あなたの声、たくさん聞かせなさい」
「は、はい……♡」
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妄想。それ即ち自由である。
だから、私はたまにさちで妄想をする。色んなシチュエーションでさちと……イチャイチャする妄想。虚しくならないのかと言われると、それまでだけど。それでもさちへの想いを伝えられない私にとっては、それは一時の自由で。
だから、今宵も更に『物思い』に耽る。嗚呼、きっと明日も寝不足だ。
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