ボクと冒険者さん   作:テムテムLvMAX

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ボクと冒険者さん

 こんにちは、いきなりですがボクはとある冒険者さんの荷物持ちをしています。ボクの名前はエルンスト、王都より遠く離れた村出身です。

 その冒険者さんは村から追い出されて路頭に迷うボクを見つけて、荷物持ちと言う仕事と居場所をくれた恩人なのですが……とびっきり人当たりの悪い善人と言うのが正当な評価でしょうか……ですけど、悪い人ではないんです、犯罪は一度もしてませんし、捕まったこともないんですよ! そもそもそんな態度なのも理由があって……おっとと、この先はまた後で……でもその態度のせいで何度も憲兵さんのお世話になりすぎてるんですけどね、本当に捕まったことはないんです。

 

 あの人の名前は、サルコン・ダナー。とても厳しい顔つきの悪ぶるお兄さんです。悪いように見せている良い人です。体が大きくて頼りがいがあるんですよ! ボクの背丈の2倍ですよ2倍、凄いでしょ? あ、ボクが小さいだけなんでした……

 

 んんっ、とにかく、この物語はボク、エルンストがサルコンさんと冒険してきた事をまとめた物語なのです、出会いと別れ、そして波乱万丈で血湧き肉躍るようなサルコンさんの冒険話を盛り込んだ物語ですから、どうか皆さんが楽しめるようにボクも頑張って語りましょう! 

 

 

 

 

 

 

 

 そうですね、まずは出会いから話しましょうか! 

 あれは随分前、何年も前の話です、ボクが村から追い出されたあの日の事です。

 

 その日は冬の入り口といわれる日で、村では冬支度が始まっていました。男は薪を割り、女は服を編む、村の皆が忙しく働いて厳しい冬を乗り越えようと準備していたんです。その時ボクは16歳、大人と同じ扱いをされる年齢でした。

 ボクも皆と同じように服を編んで冬のための支度をしていたんですが、これが中々難しくて、何度か材料の糸を駄目にしてしまったんです。

 

 ですから、丸太を組んだ温かみのある小屋に木製の機織り機があって、そこで母と二人並んで服を織っていた時に母はボクにこう言いました

 

「エルンスト、上手く織れないのね……それなら気分転換に薪割りを手伝って来なさい」

「はーいママ」

 

 母は微笑みながらボクにそう言ったんです、いつもの笑顔でした、だからボクもいつものように返事をして、母の言葉に従って外で薪割りをしている父の所へ行きました。

 外は雪が少し舞い、遠くの山は雪化粧をしていて、まさに冬の前触れが目に見えるようです。

 父は大きな輪切りの丸太を土台にして、一回り小さい丸太を斧で一つづつ割り、冬が近いのに汗を拭いながら半袖で作業をしていました。

 

「パパ、手伝うよ」

「それならそこの薪、束ねて倉庫に持っていってくれ」

 

 父が割った薪を麻縄で束ねて、家の裏にある倉庫へ運び込む、全部運び終わる頃にはすっかり太陽が山に隠れていて、冷たい風が吹き始めていました。

 薪を運び終わってから家に戻ると台所で父が野菜を刻みながらボクを出迎えました、母は食器の準備やテーブルの飾り付けをしています。母は花が好きで、夕食は毎回花を飾ります。

 

「おかえりエルンスト、今日は冷えるからな、暖かいシチューにするよ、父さんが採ってきた鹿がまだ余っているから、鹿シチューにしような、好きだろ? 鹿シチュー」

「やったー!」

「まぁエルンスト、はしゃぐのは良いですけど、もう少しお淑やかさを身に着けましょうね」

 

 ボクの大好物が夕食に出て、お腹いっぱいの大満足でその日は笑顔で終われる、そう思っていたんです。ここまでは普通の家庭の話、ですけど、ここからがどうやってボクが村を追放される流れになると思います? 

 

 ……その日、ボクの村に一人の神官様が来たんです、夜の闇が辺りを飲み込み、空には月の光だけ。そんな時間に一人でふらりと現れたんです。神官様と言えばボクたち村人よりも立場が上の人間です、村長が急いで出迎えて、もてなしました。ボクは興味本位でその神官様を見に行ったんです、村長がいつものちょっと偉そうな態度ではなくて、低姿勢だったのは笑いものでしたね。

 話が逸れました、で、その神官様を見に行った時です。

 

「おや? あなた、悪魔憑きですか?」

「え? なんですと?! エルンストが悪魔憑きですと!? そんなバカな……この娘は健康そのもの、村の元気印ですぞ……?」

 

 神官様の言葉に村長は激しく動揺してましたね、ボク自身はその当時悪魔憑きの意味を理解して無くて、大人たちが勝手に騒いでると言うような印象を受けただけでしたね。

 ともあれこの神官様が悪魔憑きと言い出したので村長は神官様に狼狽えながらどうすれば良いのかと質問し、その答えは、今思えば、おかしな答えだったわけですが。

 

「その子を村から追放なさい、悪魔はとにかく陽の気配を嫌います、元気であればあるほど悪魔に憑かれやすいのです、一人が悪魔に目をつけられれば、二人、三人とその被害は広がり、やがてこの村は無くなりましょう」

「なんですと! 悪魔は追い払えないのですか!? 神官様ならば悪魔を追い払えるとそう聞いておりますが……?」

「この村にそれだけの資金があるとは思えませんが」

「ぐぬぅ……」

 

 いかにもそれっぽく、堂々と語る神官様の言葉に村長はすっかりその気になり、それとボクが大人と言える年齢になっていた為に、意外にもトントン拍子にこの話が進んでしまったのです。

 村長を含め村の大人たちは神官様の話を信じ込み、渋る父と母を毎日説得をしに来るようになった訳ですよ、溜まったもんじゃないです。

 毎日毎日毎日毎日、入れ替わり立ち替わり説得されるのは心底面倒で、父と母に申し訳なくなってきて、ボクは決心して

 

「ボク、村から出ていくよ、偉い人がそう言うなら、そうなんでしょ?」

 

 父と母は目を見開いて驚いて、二人は互いに目を見合わせてから、ボクに優しく話しかけ

 

「エルンスト……お前……ごめんな、父さん何もしてやれなかった……」

「エルンスト、あなたは立派な子です。だから……ごめんなさい。村のためになんて言いたくないから。そうね、外の世界であなたの居場所を見つけなさい、きっと良い人に出会えるように毎日おまじないするからね」

 

 快くは無いけれど、せめて無事と幸運を祈る。二人は最後にそう言ってくれた。村を出る準備をして色々と持っていこうとしたらあの神官様が口を挟んできた。

 

「お待ちなさい、村を出るのはいわばこの村との縁を断つこと。この村と縁を保つものは持っていくことはなりませんよ」

「なんと! ですが神官様……それは、それは、この娘を外へ捨てるのと同じですぞ!」

 

 村長は神官様に食ってかかるけど、神官様も頑なに意見を変えなかった。ボクとしてはもうなんでも良かった、皆と両親に迷惑を掛けたくないという思いだけで動いていたから。

 

「分かった、じゃあ、全部置いてくよ」

「よろしい」

 

 そうしてボクは服だけ着て村から追放されたのでした。

 そして村から追放されたボクはついにサルコンさんと出会うのですが、これはまた次回ということで。

 

 

 

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