悪役令嬢に転生しても、腐女子だから全然OKです!   作:味噌村 幸太郎

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19 ワールド・イズ・マイン

 

「ユリ様、ユリ様……起きてください」

 

 私の肩を揺さぶるのは、有能な執事のカデルだ。

 

「う、眠っていたか……。今、何時だ?」

「もう朝ですよ。それに今日は12月の24日。大切な日なのでしょう?」

 

 それを聞いて、一気に目が覚めた。

 ここ最近、ずっと助手のオリヴィアと徹夜で原稿を書いてたから、なかなか眠れず。

 玉座で寝落ちしてしまった。

 

「そうだったわね。今日は聖夜! 決戦の日よっ!」

「ええ、コミケがついに開催されるのですね……」

 

 何度も自身の魔法、”コピー”で同人本を複製させたので、カデルの”マジックポイント”は毎日、枯渇していた。

 そのため、最初出会った頃より、頬がこけてしまった。

 

「無理をさせてすまんな……カデルよ」

「いえ、これもこの国のため、いや! ユリ様にお仕え出来るのが嬉しいからです!」

 

 と眼鏡の下から涙を流す。

 良き忠臣を持ったものだわ……。

 

  ※

 

 玉座から立ち上がり、赤い絨毯が敷かれた階段をゆっくりと降りる。

 すると、近くで待機していた我が弟子たちが、床に膝をつき頭を下げる。

 両手には今回のコミケで販売する、各々の同人本が並んでいた。

 

 アランは正統派な百合。オリヴィアはモブおじさんとショタっ子BL。

 それにザリナは、ちょっと変わった”ふたなり”もの。

 

「「「陛下! どうぞ、ご覧ください」」」

 

 私は静かに頷くと、彼らの薄い本をありがたく頂戴する。

 どれも上手に出来ている。育てた甲斐があったってもんね……。

 それら三冊の同人本を手に持つと、宮殿からバルコニーへと抜けていく。

 もちろん、弟子である彼ら4人も私のあとを追いかけてくる。

 

 宮殿から外へ出ると、そこは大勢の国民で溢れかえっていた。

 城下町の人間たちが皆、この日のために集まってくれたのだろう。

 興奮した国民は、私を見たいがために家の屋根に登っている者までいた。

 

「「「百合っ! 百合っ! 百合っ!」」」

 

 と左手からは、男性陣の熱い叫び声が……。

 

「「「ビーエルっ! ビーエルっ! ビーエルっ!」」」

 

 と右手からは、女性陣の凄まじい叫び声が聞こえてくる。

 正直、男性陣の声をかき消してしまいそうだわ……さすがね。

 よく見れば、みんな手になにかを持って掲げている。

 卑猥なBLの抱き枕やうちわ。ナイスですわぁ。

 

 興奮した民衆の声を止めるように、カデルが右手を掲げる。

 すると、一斉に静まり返った。

 

「これより、ユリ・デ・ビーエル女王陛下による演説を始める! しかと聞くが良い!」

 

 私は一歩前に進み、民衆に向かって叫んだ。

 

「今日のためによくぞ集まってくれた! 私も嬉しい!」

 

 そう言うと、たくさんの歓声が上がる。

 

「女王様っ! BL文化を広めてくださり、ありがとうございます!」

「私たちのような国民にまて、高級な紙やペンを配って下さるなんて……」

「ユリ様はショタの扱いはどちらです!? 女装ですか? それともありのままが良いですか!」

 

 最後の質問は、後者ね。

 

「諸君らに聞きたい! 煩悩は108個あるというが、それだけで足りるか!?」

 

 私の問いに民衆はざわめき出す。

 

「良いかっ! 煩悩などいくらあっても足りないと私は思うっ! なぜなら全て作品に使ってしまうからだ! 煩悩を高めるのだっ! 自分という性癖を受け入れようじゃないか!」

 

 隣りで聞いていたカデルが私の話を聞いて、思わず涙をこぼす。

 

「名言にございます、陛下」

 

 それに続いてアランとオリヴィア、ザリナまで涙を流している。

 

「今日はその煩悩を解放すべき一日だ! 第一回コミックマーケットの開催をここに宣言するっ!」

 

 私の演説に感動した民衆は、みんなで号泣していた。

 抱きしめ合う人たちも見える。

 

 この世界、案外ちょろいもんね。

 

  了

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