――英国【まだギリ穏やかなロンドン】
英国。16世紀の免罪符を巡る宗教改革時に、離婚したくて助けてクレメンス*1するも拒否られたヘンリー8世が革命に乗っかってカトリックを離脱。
イギリス国教会を作り国王がトップだよ大事なのは信仰だけだよ根拠は聖書以外認めないよルールでやっていくも宗教対立が頻発しまくり宗教熱が冷め、また移民国家なこともあって多宗教国家でもある英国は辛うじてメシアンの侵略を鈍らせることが出来ていた。
「何もかもが気に入らない……異教徒の猿と交わる冒涜者、人の王などに首長を預ける愚教、自らの力を邪法に傾ける売女、ドブネズミのように潜む字盲。天より授かりし崇高な使命を背負うこの身なれど、身にこびりつく穢れを忌まわしく思うのは避けられんな」
ロンドンの街を我が物顔であるく男――メシア教のテンプルナイトである彼は、自らを導いて下さる天使様の言うとおりに国家の首脳部に【熱心な啓蒙活動】を行い【あらゆる教化の為の行動】の正当性を手に入れた帰りだった。
そも、天使様に従い主の意思によって行われる自分たちの行動に、俗物の権力者風情が【許可】などと上からの物言いをする時点で間違っているのだが……所詮は未だに自ら頭を下げ我らに身を捧げようとしない程度の輩である。気にするだけ無駄だと割り切ることにした。
「おい。そこのお前たち止まれ。何者か答えろ!」
咄嗟に声をかけ足を止めさせる、突然現れたようにしか見えなかった修道服の二人組。【何の特徴も無い】美形の男と、神によって生み出されたのだと疑いようの無い金髪碧眼の美しい少女。
男は意外そうな顔で足を止め、こちらを見ると嬉しそうに微笑んだ。
「やあ、驚きました。メシア教のテンプルナイトの方ですかね? 私の名前はウォン・N・ハーウェイ。一度旅をしたいと思っていましてね。故郷からはるばるこの地に
「そこまでは聞いていない。それより……いや、いいからこのままついてこい。お前たちには果たすべき仕事がある。くだらん旅行など終わりだ」
「やはりそうなりますか。でもまぁ仕方ありませんね、私もより人々の為になる仕事をしたいと常々思っていますのでね。喜んでついていかせてもらいましょうとも!」
何が面白いのかへらへら笑う男と、一言も喋らずつまらなそうにしている少女。男は大したことが無いが、この少女からは凄まじく強い霊能力を感じる。
外見も相まって主が我らの為に遣わした聖女に間違いなく、少しでも早く母体としての仕事をこなさせてやらねばならない。こんな男と時間を無駄にすることが許される立場では無いのだ。
「天使様! 新たな聖母候補を連れて参りました。すぐに処置をお願いしたいのですが!」
「エレジー、数はどう?」
「見えてる分で全部よ」
つい先日に不信心者どもを処分して取り戻した教会にたどり着き、すぐさま天使様に声をかけ助力を願う。そうだ、ついでにこのどことなく不愉快な男も加工してしまわねば。
「何をぶつぶつと、お前――」
「【コンセントレイト】【マハムドオン】。同じことばっかりしてる気がするなぁ」
「【物理プレロマ】【スマイルチャージ】【デスバウンド】同じような連中ばかり殺して回ってるからでしょ」
◆
「【リカーム】」
「――はっ!? 何だ……? 何だ、これは!? どういうことか説明しろ!」
目を覚まし首を動かすと、周囲に散らばる天使様の死体、死体、死体。講壇に固定された私の上、十字架に逆さに吊られた首の無いヴァーチャー様の死体が揺れている。何という事を……!
「説明? より人々の為になる仕事をしたいと言ったではありませんか! なんてね。害鳥の巣を潰しただけじゃん。旅行にきたのは本当なんだぜ? なのに転移してすぐカスが寄ってくるんだから笑っちゃうよね」
「話す必要ないでしょ? 人を待たせてるんだから早くしましょうよ」
私をゴミでも見るような目で見下す少女に軽く応え、手に持ったヴァーチャー様の頭に何らかの邪法を行う男。そしてこちらに差し出した手の上には、ぬらりと赤く光りを放つ虫の複眼のような悪魔。
「こいつはウィンカーって名前にしたんだ。盲目の無知曚昧に
「私はアメリカ人だ……! 止めっ」
悪魔を手に笑いかける男。最後の一瞬、その姿がこちらを嘲笑う赤目の少年に見えた……
◆
「おれはしょうきにもどった!」
「これほんとに大丈夫なんか……? 別にどうなろうともいいんだけどさぁ……」
いざウィンカーくんを融合させ、【いい感じに思考が矯正される】と雑にポジティブな命令が実行されたところ、非常に不安を感じさせる仕上がりになってしまった。
その場の思いつきで作り出した新タイプの高級眷属【妖魔 ウィンカー】くん。魅了による洗脳は状態異常なのでパトラで解かれてしまうので、永続洗脳の手段として【融合】で宿主と一体化することでデフォルトの状態そのものを変更してやろうと試みたのだが、結果はアヤシイものだった。
「こうしてはいられない……! 世界にはまだまだ救われるべき人々が私を待っているのだぁぁぁぁ!!!!」
そして走り去っていくテンプルナイトおじさん。いちいち操作なんてしてられないので自発的に反メシアン活動をするようになっているはずだが、もう確認する術は無い。どっかいっちゃったからね。
「…………解決ヨシッ! 天使の素材はBP変換でいいか。本来の目標に戻ろう」
かんたん魔界送りシートでパパっと天使の死体をポイントに変え、本来の目的地【大英図書館】に向かう。デビチルガチ勢から改めて設定を聞き直したことで、デビライザーの製作には悪魔の助力が無いとほぼ不可能だということが分かったので、とある魔導書が必要になったのだ。
「大英図書館から魔導書パクってきたいんですよね。あとついでに読書ガチ勢からお金巻き上げられないかなって。メガテン世界だと核で吹っ飛ばされちゃいそうですしいいかなと」
「事前に相談すれば何でも許されると思ってない? まぁきちんと帰ってから検閲を受けるなら別にいいよ。ただしガイア連合とは関係ないようにすること。これからあちこちに支部を作ろうって話になってるし、海外志向の俺たちもいるから問題ないかもしれないけど……君問題児だから念のためね」
ショタオジとそんなやり取りをし、一応保険の手配もしたのちにショタオジにトラポートで【英国の方向】に適当に吹っ飛ばしてもらい、あとは【変化】で鳥になり気流に乗って、ある程度近づいてからは自前のトラポートで飛んだわけだ。そしておっさんを更生し現在に至る。
「異界化してる……面倒にならなきゃいいんだけどねぇ」
「まだGPも低いし、私たちでどうにもならない難易度になるかしら? 地域丸ごと異界落ちしてる訳でも無いんだし」
エレジーが丁寧にフラグを建ててくれたので、いよいよ覚悟をしてクソ広い図書館に侵入する。
侵入してすぐ、引き返そうとして不可能なのを確認。さらに同時に入ったはずのエレジーが居なくなっている。これは……嫌な予想が当たってしまった。
「困るんだよねぇ。せっかく私がいそいそと新たなキャンペーンの準備をしている時に。ためらいなくNPCに洗脳を連打するような和マンチ野郎は退場してもらうに限る。お前もそうは思わないかね」
「やはりいたか、月に吠えちゃうタイプのもの……!!」
「なんか恥ずかしい癖を持ってる奴みたいな呼び方は止めてくれるかな?」
顔が真っ黒に塗りつぶされた姿の司書が受付に腰掛け手を組み僕を待ち構えていた。ペルソナシリーズで登場したことがある以上、もしかしたらいるかもしれないと警戒していた……【ニャルラトホテプ】。
「先にここのルールを説明しておいてやろう。【脱出不可】【人間以外の侵入不可】【召喚不可】だ。本当はもっと仕込みたかったのだがね。まだまだGPが低いから、ボスを用意するだけでかつかつだったのだよ。きちんとギミックを解除するための仕込みもしていたというのに……つまらない。十分に死に値する理由だ」
大げさな仕草と共に指を鳴らすと現れる2体の化け物。アナライズすると【魔術師 ウェイトリー】Lv61、【物理耐性】でそれ以外全て無効という異常な耐性*2を持っている。ギミック付けと雑魚敵不在のリソースをかき集めたのだろうか。
「さて……様式美で一応聞いておく必要があるな。何か言い残すことはあるかね?」
「お前は一つ大きな勘違いをしている」
「ほう? 寿命が延びたぞ」
「僕たち人間の最大の力! それは生まれ持った才能でもチートじみたシキガミでも、ましてや使役する悪魔なんかでもない! それは……」
「それは?」
「仲間たちとの間に結ばれた、絆の力だッッ!! 【コォーーーール】ッッ!!!
――もしもしカヲルニキ?」
「貴様ぁぁぁあぁぁ!!!!!!おまっそれは反則だろう!!!」
通話(特別製一回使い切り異界対応通話呪符)を送ってすぐ、ビーコン役をこなすエレジーに向かってトラポートしてきたカヲルニキが異界に入ってくる。いつも絶やさぬ穏やかな微笑みが、今日は絶えており真顔だった。
「やあ。もうとりあえずすぐ死ね……【火炎ガードキル】【火炎ハイブースター】【コンセントレイト】【マハラギバリオン】【連続魔】【神話生物特攻】」
「【とうぞくの心】カード。あっ【メギドラオン】スキルカードじゃんやったぜ」
「そういうところだぞ人間……! そんなんだから人の心の闇から生まれる私は活動し放題なんだからな! 悔い改めろ!!」
くろまく()とボスのウェイトリー兄弟が消し飛び、異界も余波で崩壊。人類の絆の勝利だ! 夕飯はドン勝である。
「ふぅ……お疲れ様脳缶ニキ。今回は災難だったね」
「いえいえありがとうございますカヲルニキ。やっぱデカい図書館行くなら用心しておいて正解でしたね。ビッグベンが変形してグレートチクタクマンになって暴れたりするかとも思ってたんですが」
「そういう想像は頭の中だけで留めておくようにね。結局、何が目当てでここに来たんだい? 僕は聞いてないんだよね」
「【レメゲトン】です。ここに複数の写本があるらしいのでメシアンに焼かれる前に確保しておきたくて。あとグリモワール系がいくつかあるのも貰っちゃえって」
「……そうやって悪魔ばっかり呼ぼうとするから君は危険人物扱いされてるんだよ?」
心外である。報連相を欠かさず、いつも俺たちガイア連合の為に頑張っている僕を疑うなんて。仲直りや名誉回復を司る悪魔も沢山いるのでアドバイスでも貰ってみようか?
「あっそういえば。博物館の方もちょっと行っておいたほうがいいかなと思うんですよ。あそこに【妖蛆の秘密】があるんです」
「魔導書? 内容は?」
「主に【核爆発】と【アザトース召喚】と【さっきの黒いやつ召喚】ですね。あとはエジプト系の儀式についてとか……」
穏やかにスッキリとした笑みを浮かべていたカヲルニキが再び真顔になって、僕の両肩をガッと掴んだ。
「そういう大事なことは全部先に言おうね」
・デビライザー
ヴィネソフト社長を務めるソロモンの悪魔ヴィネが自らの【秘密を暴く】権能を付与し、弾丸型記録媒体にインストールされた悪魔データから【真名】を読み込み悪魔を召喚・使役する能力を持つ拳銃型デビルの一種で命を持っている。
神道系スキルの【封魔管】とはかすりもしてないヤンケ!まあシナリオは変わらなかっただろうけど、下調べ大事。
・レメゲトン
おなじみソロモン王の小さな鍵。【ゴエティア】なんかを含む一連の断片を集めた魔導書。実はミカエルの呼び方なんかも書いてあるが本作では72柱+魔術・錬金術知識とする。
・カヲルニキ
流石にちょっと怒った。でもこいつちゃんと読む前にショタオジに提出するんだよなぁ……!
・テンプルナイトおじさん
生まれ変わって明日に駆け出してしまった。データ的には真1のメシア教徒テンプルナイトLv22
多分名前はカイン氏。聖書由来の由緒正しい名前だなヨシ!