――デュエルアカデミア埃及特区校【多目的ホール】
「えー、それでは次は生徒会長の挨拶です。生徒会長お願いします」
新年度が始まり、アカデミアでは今日は始業式の日。
中等部と高等部の学生が集められたホールでは、新たに初等部から繰り上がってきた子供たちが、一部先輩の訳分からんとち狂った強さに恐れおののいている。
非覚醒でも分かるほどの存在圧は、校内全域に存在する結界による保護機能があってなお【命の格】が違うと思い知らされるもので、小さな声で「生きて卒業できるのかな」「父さんはまだ現実が見えてなかった」「○○ちゃんより強い生命とかいるんだ……」等と私語が交わされる。なお特に注意はされない。
そして心身が新しい環境に馴染めぬ動揺の中、舞台袖からステージに一人の女子生徒が歩み出る。
派手な女であった。輝くような――いや実際に輝きを放っている黄金の長髪はくるりとツインドリルに纏められ、体のラインを出すように改造された制服は、彼女の歩みに合わせて大きな乳袋を揺らしている。
妙に短いスカートからは濃黒のタイツに包まれた足が突き出し、ランウェイを歩くように堂々と中央のマイクの前に立ち、何故か孔雀羽根の扇子を開きビシッ!っとポーズをとった。
「見飽きた顔の皆様も、見慣れぬ面の雑魚共様もごきげんよう。生! 徒! 会! 長! ヴィクトリア・ジョーカー様ですわぁぁぁ!!!!」
在校生が皆何かを堪えるように俯き、進学組の顔が絶望に染まった。
生徒会長は学校の顔と言っていい。そんなポジションに明らかにユニークな女性(柔らかい表現)を配置する朗らかな校風(ソフトな表現)、そんな彼女が逸脱した物理的パワーまで兼ね備えている事。国際色豊かな教師陣が笑顔で彼女を大歓迎していること。スピーチの内容にF〇CKとか平気で入ってること。
希望と不安を胸にひとつ大人の階段を登った子供達は、踊り場が混沌に満たされていることに気づいてしまったのでSANチェックです。
「えーと、あと何でしたっけ? まぁいいか…………そうですわ! 今日は食堂に近づくと死にますわぁ! クラス分け後の挨拶が終わったら余所でメシ食うなりして帰れですわ。以上!」
近づくだけで死ぬなら前日に教えろ。せめて最初に言え。そんな大事な事忘れるな。まぁいいかで終わらす寸前だったじゃねーか。
新たな生徒たちは生徒会長の素晴らしい人柄により、急速に心を一つにしつつあった。
言うなれば運命共同体。互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う。一人が皆の為に、皆が一人の為に。だからこそアカデミアで生きられる。同級生は兄弟、同級生は家族。
「
ヴィクトリアじゃねーのかよ。
◆
――異界教室【サナトリウム】
異様な教室であった。
64平方メートルの、一般的な教室と同じ面積の空間、机と椅子が綺麗に並べて配置されている。
しかし、リノリウムの床を持つ空間の一歩外。まるで地獄の一部を間借りしたように、火と硫黄の池が燃え広がっていた。
壁を持たぬ特異な教室は黒板が無く、足付きのホワイトボードが前方に置かれ、さらに奥には燃え盛る池から巨大な牛神の偶像が聳え立ち、赤熱した腕に子供を抱くのを待ちわびているようだった。
「はい、じゃあここが君たちカスの幼体をコレクションするルームだ。なんか適当に……上手くやるように」
「はい先生! このクソみてーな部屋ふざけてんの? 弁護士を呼んでください!」
「弁護士を呼ぶためにはヒューマンライツが不足しているぞ。前世下手糞勢は大人しくデューティーをこなすように」
「まだ生きてるカスは一回死んで上手に来世したほうがいいと思いま~す!」
一人の女子生徒が犠牲になった。黄金魔牛像に投げつけられた彼女は、おもむろに立ち上がった魔牛像の踵落としにより、燃え盛る池の底に沈み二度と浮き上がることは無かった。
直前まで座っていた机の上に彼岸花の花瓶が出現し、リスポーンまでの時間をカウントするタイマーが表示された。やはりというか死は終わりでは無い。
「さて。ヒナ学級委員長、何かクエスチョンはあるかね?」
「正気なの?」
「こんなものだよ」
何処かの混沌の軍勢もこんなものだ。
パワーで押さえつければいい、そう思っている奴は素人だ。強い力にきちんと従う奴はLawである。頭Chaosは全てを度外視するので従える方法は契約のみだ。
「というか、女の子率高すぎない? 男子一人しかいないんだけど」
「それはみんなショタチn」
二人目の女子生徒が犠牲になった。突然の教師による暴行により、
「……先生?」
「言葉による惑わしは悪魔のコモンメソッドだ。耳をチルトするな」
「私たち人間なんですけど! ちゃんと人として生まれてきた人間なんだから前世で差別は止めて下さい!!」
「自覚は無いようだが、貴様らは前世のインフルエンスを強く受けている。黒札共と違って元々の人格がweakなのだ。分かり易く示してやろう、ヘビ持ってる奴は前にでてこい」
「「「「「「…………………」」」」」」
「なんでそんな条件で6人もヒットするのよ」
沈痛な面持ちで前に出てくる6人の少女たち。クラスには20人くらいしかいないので、3割近い人数がヘビを素手で持ち歩いていることになる。流石に異常といえるヘビャー率であった。
「いや、これはその、持ってないと落ち着かないというか。しっくりくるんですよ、ね?」
「そうそう、すべすべで手触りもいいし、大切な相棒なんですよ! 物心つく前からずっと一緒だって……」
「うんうん分かる分かる。覚醒もしてて賢いし、言葉も伝わるから可愛くて。流石に片手で2匹持ってるのはどうかと思うけど」
「はぁ!? 1匹ならよくて2匹なら悪いなんておかしいでしょ! それならクソデカキングコブラ担いでるこいつはどーなのよ!?」
「素人ですわね。蛇の大きさは幸せに比例するんですのよ。ね? カンナハちゃん?」
「わからん……それは人それぞれ違うからだ」
「喋るんだ……しかも公正な対応……」
素手で掴まれてるヘビたちは一様に大人しく、素手でヘビを持ち歩いてる頭おかしい女たちよりも賢いのではとさえ思えた。
「というか、結構みんな持ってるんだし、私たちは普通なんじゃない? 先生も価値観アップデートしていきましょうよ」
「黙れ手マン女」*1
「ちょっと変な呼び方しないでくださいよ!」
「猛毒の覚醒蛇持って登校なんてキッズでも1秒でおかしいとジャッジするぞ。貴様らは現役のカスだ。一旦死んでイントロスペクションしろ」
ルー先生の両手から
「流石に……殺すほどでは無いんじゃない? 毒有りとはいえ、ヘビ持ってただけだし」
「どうせ殺してもヘビをハブするのを止めたりしないぞ。それに釘をスタブしないと、そのうちワニに跨って学舎をうろつく奴とか現れるぞ?」
「それは問題ね!」
自由な校風とはいえ流石に限度はある。委員長は承認しなかった。
なおファラオ基準だと、本家アカデミアにはクロコダイルを背負ってルー語で喋り、目がオリハルコンの義眼の男*2がいるので余裕でセーフとなる。人それぞれ違うのも困り物であった。
「じゃあ他の奴はおいおいジェノサイドするとして……そこの黒一点、YOUは何しに現世に?」
「希望を与えられ、それを奪われる。その瞬間こそ人間は一番美味しいマガツヒを出す。それを貰ってやるのが、俺のファンサービスさ」
「名は戸升ヒカル。――おい、デュエルしようぜ」
「……とりあえず殺すか」
例え使命を抱かされ転生したとて、前世の影響を完全に無視する奴もいる。ある意味黒札に最も近い男であった。
食堂のお話は次回!
・切札勝子ちゃんLv40
名前が地味だからとヴィクトリア・ジョーカーを名乗る黒札とシキガミ嫁の娘ちゃん。なお切札は英語でトランプ
ホビー部のカードゲーマー黒札の娘であり、様々な試作品カードを玩具にして育った生粋のデュエリスト。
十分な強さがあり、分かり易く派手で可愛くて、目立つのが大好きなので生徒会長の座を獲得。マスコットとして慕われている。
ホビー部カードゲーム部門においても絶大な人気を誇る愛されっ子。色々隙だらけな金髪巨乳美少女が徹夜で統率者戦(MtG)してくれるのは麻薬みたいでやんした……
父親の本霊が堕天使アドラメレクであり、太陽パワーを受け継ぐ。バアル系列の為(Baʿal-ʾaddîr-meleḵ)とてもこの地と相性がいいようだ。
親友に砺汲田角子(れくたかどこ)ちゃんがいる。
・6人のヘビ女
ソロモン魔神のヘビもってる奴らの転生体。12分の1はヘビ持ちである。なおヘビライダーを含めるともう少し増える。
それぞれエリゴス、プルソン、アスタロト、ヴィネ、オリアス、アンドロマリウスの転生者。全員根はカス。
オリアスが右手に2匹もってる奴で、アンドロマリウスがでかいヘビ持ってる奴である。
困ったことにレベル上限は50を超える。アスタロトの転生者は上限99のヤバイ級の才能の持ち主。
全員非常に見目麗しい美少女だが、常に素手でヘビ持ってるので恋愛経験は無し。普通ショタに限らず逃げるよ。
・戸升(とます)ヒカル
全ての柵を無視してデュエルでMAGを稼ぐ為生まれてきた、ある意味本来の意味の転生者。
本霊はソロモンのNo.4ガミジン(サミジナ)。罪人特化のソウルマンサー。
育つとあらゆる質問に答える権能も身に付くので、審判にピッタリだったりする。
兄弟は居ない。
・ルー大シファ先生
一番カオスなのに目的達成の為、カオスな奴らを率いる必要があるのは結構な罰ゲーム。
でも目的達成に向けて真っすぐ邁進するのはカオスじゃないから寄り道するね……
あくまでこいつが自由を与えたいのはバニラ人間であり、悪魔や元悪魔はどーでもよかったりする。原作でも部下の今後については一切考えておらず放置している
DSJ閣下によると、人類に【自由な神々が導く世界で魂を研ぎ澄ます美しい日々】を送らせたいらしい。要はレベル上げろ
・カオス脳の一端に触れたヒナちゃん
父親はアレで相当大人しく過ごしているのだと知る。確かにLawかもしれねぇ……
このあと自宅に爆破テロをかました女生徒を見つけ張り倒すことになる。温泉掘りたい?もうあるだろ!
ファラオがレジャー通おじさんことクロケルの本霊と一緒に建てたクソデカリゾート温泉が特区にあったりする。
でもカスミちゃんって一個年上のメグの為に温泉掘りだけやっていける環境を全力で用意してるってだけなんだよね。尊くない?
今作のヒナちゃんパンチは【カナンの慈雨】の効果で衝撃特大威力だからね。耐えてください