一般モブ黒札くんの視点
――【終末のけっこう前】とあるアパート
ねんがんの よめシキガミをてにいれたぞ!
スケベ部の尽力により生まれた、従来の呪符から変化するものとは違った、最初から実体を持つ新型シキガミ。
霊体ではなく肉体を持つからこそ、低レベルからでも人と見紛うレベルの一品は、シキガミのレベルを上げる為に修羅道を歩むことが出来なかった俺たちヘタレの心に火を点けた。
金さえ積めば。理想の嫁が手に入る。
孤独な成金おじさんの求める夢みたいな話だが、紙嫁のクオリティを上げる為に悪魔との血で血を洗う闘争の世界に踏み入る必要が無いのは、痛いのが普通に無理な俺たちには救いであった。
「…………?」
「あぁ、ごめんごめん。ちょっと幸せを噛み締めてた」
終末シェルターに入るまでの繋ぎとして暮らす小さなアパートの中、只ひたすらに霊的アイテムの内職をこなす。ただのアパートでも結界により、防音・耐震・清浄に緊急用アガシオン壺まで用意すれば安心安全の霊場と言っていい。
ガンガン戦い悪魔の素材を集めてくる奴らと比較すれば安い物ではあるが、それでも霊的才能に溢れた【俺たち】の血や髪を素材に使用したアイテムは、現地組織にとっては万札を積み上げ買い求める高級品。数をこなせばサラリーとは比較にならない大金となる。
嫁が来るまでは一人きりで執念を燃やす日々だったが、彼女が来てからはただのアイテム作りすら飽きる事なく。彼女自身もアイテム作成系スキルを組み込んであるお陰で効率も2倍以上だ。
「もっともっと稼いで、更なるスキルを買ってやるからな……! ピグマリオン*1が嫉妬で血涙を流すほどに貢いでやるからな……!」
「(頷く)」
作業中の彼女を抱き寄せ、決意を込めて宣誓する。まだまだレベルが低く挙動はぎこちないものの、その体温と鼓動はまさに人間のそれだ。
ピンポーン
盛り上がってきたハートに水を差す呼び鈴の音。
同じアパートに住んでる黒札の友人と適当に遊ぶ約束をしていたので多分それだろう。玄関のアガシオンも敵だと反応しないので、鍵を開けて貰い声を上げる。
「開いてるから入って~!」
「お邪魔しま~す。よぉ遠也久しぶり! 元気しとったか?」
「あんたガイアに就職したから~って一言だけで碌に連絡もしないで!! 心配だから様子を見にきたのよ!」
\カカカッ/
【愚者 両親】Lv無し
「えっ……あっ……はわあーっ!」
アパートの一室に上がり込んでくる、見慣れた今生の両親。
嫁との触れ合いに浮かれ、完全に油断していた自分にはその歩みを妨げる判断が出来なかった。
そして現在のリビングの状況。
タオルの上にポンと置かれた血濡れの大型ナイフ。*2
生き血がなみなみと入ったカレー皿。*3
細切れにされた人間の頭髪。*4
科学薬品のボトルや箱に詰められた毒虫の死骸。*5
血文字が書かれた呪符で封をした、ドス黒く輝く液体の入った瓶。*6
そして毒虫に血と髪を加え擂鉢で潰し、混ぜ合わせる――身長133cmの虚ろな目をした幼女。なんだこれ。チャンスか?
驚愕に見開く両親の眼と、マイラブリーシキガミのレン(月姫)ちゃんのハイライトのない赤い目が交差した。
「遠也ッッ!! これはどういうことだ!!!!」
「こ……これはっ! そう……すごい金になるんだって!!」
BAD COMMUNICATION!! それは悪手じゃろ。俺。
混乱した頭は回る事なく、代わりに脊髄が出した返答は明快な動機だった。今欲しかったのは①の突如説得のアイデアがひらめくである。
両親の反応が【警戒】から【敵対】に変化した。
母がレンに駆け寄り、作業を止めさせその手や露出した顔や首などに
父はもうこちらに【組み付き】判定を仕掛けてきている。しかしこちらは腐っても覚醒者。非戦闘系でレベル1桁だが、それでも膂力は鋼板を引き千切るくらい余裕である。
つまり――振りほどくのに
「あの子は誰だ!? お前はここで何をしている!?」
「あの子は友達の妹(大嘘)! 調薬のバイトやってる!」
「薬品取り扱いの資格はどうなってる!?」
「…………」
【TALK】敗北。だってどう見ても違法行為だし、俺は免許あるけど幼女に手伝って貰うのは実際にアウトだ。素手だしゴーグル着用も換気扇設置もしていない時点で一般常識では現場猫案件である。
黙りこくった俺に振るわれる正義の拳。大して痛くもないハズのそれが、嫌に心に染み入る。多分良心に刺さったのだ。でも本当は問題無いのよ……。
しかしこの世界はアトラス製であり特に残酷に出来ていた。殴られた衝撃で揺らいだ体が本棚にぶつかり、ぱさりと本が落ちるのを受け止める。手に収まったその本に俺と父の目が向いた。
それはシキガミの作成にあたり、造形の参考にするために用意した書籍。ヒト科ヒト属雌性体の、二次性徴前の状態を克明に写した資料集……とでも言おうか……。
とっさにレンを見る。霊的に繋がっている俺たちは言葉を介さずとも簡単な意思の疎通は可能。
そして通じる。【よく見てた本だから拾っといた】ありがとう。でももういいんだ。
母がレンに問う。「普段あの子と何してるの?」レンは答える。「えっち」
「最後に言い残すことはあるか?」
「……ねぇよ」
絶望が心を埋め尽くす。通報されても警察関係者にだって俺たちがいる。なんとでもなるはずだ。ただ……死ぬ程ネタにされるだろう。
走馬灯のように思い返すのはこれまでの日々。神社での修行、高校生活、さらに前……前世の死、消せなかったハードディスク、前世の少年時代、幼少期、そして……
「思い出した」
前世の誕生、
自らの魂を知覚したことにより覚醒段階が一つ進む。自らの力の振るい方を思い出す。
これもまた運命の悪戯なのか、手に入れた力はこの瞬間、何よりも欲していた解決策だった。
「父さん、母さん、ごめん……【和解】」
権能から零れ堕ちた、まだまだ拙い力の欠片。ただそれでも、未覚醒者の精神に作用させるには十分に過ぎるもの。
両親の心に芽生えて急成長し大輪の花まで咲かせた敵愾心を消しさり、和を以て貴しとなすようコントロールする。俺は確かにこの瞬間、
「……ああ、何だか急にお前の全てを許してやりたくなってしまった。そうだな、可愛い息子だものな……友人の幼い妹に性的行為を働く腐れ外道のイカレゴミペド野郎でも、受け入れてやらないとな……」
「そうよあなた、お腹を痛めて産んだ息子だもの……ただ違法な毒物製造に子供を利用し性欲処理までさせる人間の範疇には収まらない蛆虫野郎なだけだもの……」
ただ記憶は弄っていないので認識は変わってくれないようだった。分かり合うって本当に難しい。そら悪魔にも頼るわと教えられた一日であった。
・影津遠也(かげつとおや)くん Lv8
「クロいいよね」「いい……」
生産だけで地道にレベルを上げる、痛いの絶対無理な俺たち。
何でみんな化け物と戦えるんだ…?アイテム作りだけでも生活安泰じゃん!
戦うことを知らない人間故に、土壇場での対応力が全く足りていなかった。戦闘勢なら無言で気絶させるしそもそも玄関で止めるだろう。
前世は堕天使ウヴァルだった。女神転生シリーズには多分未登場。まぁ個性無いし仕方なし
・レン(月姫シリーズ)
正確には続編の歌月十夜でロリの姿になってくれる、月姫でアルクェイドと一緒にいる黒猫。
原作では数百年生きてる夢魔なので、見た目を除けばアウト感は非常に薄い。
多分メルブラ(格ゲー)で知った人の方が多いと思われる。投げから投げが繋がって即死永パだったり、JAJB空中戦やJCの判定や捲り性能の高さでバッタゲーなどが思い出深い。
喋れるけど全く喋らない、極稀に大事なことだけ水橋ボイスで喋ってくれる、そんなロリ。ネコネコカワイイヤッター!
・堕天使ヴアル(ウヴァル)
ソロモン魔神47位。パワフルなラクダの姿で現れる元パワー。
男女や友人、敵対者との仲を取り持つことができ、過去未来知識セットも持つ。つまり能力丸被り勢の一柱。
唯一の個性はエジプト語がある程度喋れること。だが全言語をマスターしている奴がいる。カワイソ……
・アズマケイ
真女神転生NINEの主人公。今回の話とは特に関係は無い青年ハッカー。
小学生とショッピングモールでデートしている所を母と妹に遭遇するというシリーズ有数の修羅場に陥った男(女)。
しかも妹のクラスメイトだった。救世主級の才能の持ち主でもどうにもならず、目の前が真っ暗になりそうなところに悪魔が襲来!有耶無耶になり九死に一生を得た。
純一般人スタートで修行イベントも無く、ガーディアン等の異能も一切無し。にも拘わらずNルートでは創造神ヤルダバオートを打倒し、物質界を終わらせ全ての魂を新たなステージへ導くヤベー奴。やはりロリは悟りに通ずるのか……?