【カオ転三次】本霊デビルなの バ レ バ レ   作:ポポァ

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そろそろ紫陽花の頃なので初投稿です

TSじゃない女性黒札のお話が読みたいので書く(クリエイティブな思考)


小ネタ 理解のある彼くん

――とある居酒屋

 

 

 とある黒札が経営する居酒屋にて、一人の女性がカウンター席でめそめそと涙していた。

 美しい女性である。夜空を流したかのような長髪、余りを持たず、足りぬが無い芸術的調和に満ちた肉体。纏う空気は深山の清泉の如き澄み切った爽やかさと芳醇な果実の甘さがあり、流す涙さえ月光を映す真珠のよう。

 

「うぅ……ヒック……う”お”お”ぉぉぉう……」

 

 そしてワンプッシュで3つ束ねた枝豆から9粒をひり出し口に飛ばし、手羽先を骨ごと噛み砕き、大ジョッキで吟醸を流しこんでいた。

 開店準備中の昼過ぎから扉を抉じ開け店に入り込み、一目で抵抗を諦めた黒札店長がお通しをそっとカウンターの端の席に置いて以来、延々と枝豆チキン酒ループを5時間続けていた。

 

「天人ネキじゃん。どしたん? 話きこかー?」

 

 店長のグラサン越しの助けを求める目線に対し、ハンドサインで交渉を済ませた一人の女性黒札が語り掛ける。どしたん? と話しかける前に1時間自らの連れと飲食をした後のことである。

 

「……聞いてくれる? 実は、彼くんが、彼くんが……あ”あ”あ”あぁぁぁぁ」

 

「彼くんっていつも自慢してた人だよね? 一緒に修行するんだ~って前に言ってたけど、何か問題起きた?」

 

 この天人ネキと呼ばれる女性は、前世の知識を活かし幼少期から美容のケアを欠かさなかった。恋愛においても抜け目無く、地元一帯で最も自らに合う男を見出し、自らの美貌と成熟した人格を活かしコントロール。外見・人格・頭脳に異能の才能まで併せ持つ理想の彼ピを自らの手腕により創り出した女傑だった。

 前世との差異にもしっかりとアンテナを伸ばし、覚醒もジュネスが建つ頃には済ませ、さらなる美容・健康・パワーの為に己を高め続け、遂には仙人スキルツリーにヨガパワーを合わせ天人ルートを開拓した真なる意識高い系女子。それがこの枝豆チキンシュレッダーである。

 

「うん……終末を迎えてね? きちんと私と彼の家族を守って、安全も確保したから、いよいよ彼くんが私とずっと一緒にいるために寿命が無くなるまで修行するって言ってくれてね?」

 

「うんうん」

 

 散々自慢されたから知ってるし端折っていいよ。口には出さない。

 

「神主さんにおねだりして、2人だけの修行用の時間加速異界を準備してもらってね? ず~っと一緒に二人で修行してね?」

 

「頑張ったんだね~それで?」

 

 男を浚って時間の違う異界に閉じ込めるって田舎の怪異みたいだな。口には出さない。

 

「400年くらいしたら悟りを開いて解脱しちゃったあぁぁぁ!!」

 

 パリィンッ!!

 

「ご、ごめんね! グラス割っちゃった!!」

 

「……………」

 

 天耳通*1を持つ天人には、彼女が噴き出すのを誤魔化す為にグラスを叩き割ったのがお見通しではあったが、それを指摘せぬ程の冷静さはまだ残っていた。

 店内のテーブル席からもガタガタと音が聞こえたが、一睨みして落ち着かせる。

 

「そ……それで? その人はどうなっちゃったの?」

 

「どうもこうも無いよ!! 涅槃に入って灰身滅智に至って物質界からいなくなったよ!!」

 

「グッ……二、ニルヴァーナしてる……輪廻から卒業してる……」

 

「ど~してこんなことになるのよ!? グッドエンドを迎えてエピローグ読んでたら突然バッドエンドよ!? こんなことある!?」

 

「いや、クフッ……むしろ魂のグランドフィナーレだから……これ以上無いから……フフッ。大変だったね~?」

 

「軽々しく大変だったなんて言わないでよ!! ヤケ酒して不貞寝したら夢枕に仏陀が立って天部*2にスカウトされた私の気持ちが分かる!?」

 

 パリィンッ!!

 

「失礼、手が滑ってコップを落としてしまった。……分かる奴いるかよw

 

「あはははははは!! そ、それで? 何て返事したの?」

 

「私は現世で幸せを掴むんだって断ったわよ!! そしたらあのパンチ頭『本願*3ですね、分かります分かります』とか言って……あ”あ”あ”あ”!!!!」

 

「あっはっはっは! 大将、こいつに【喜劇】ボトルで奢ってやって! じゃあたしは恋人のところに戻りま~す!」

 

 そこに悲劇は無く、一つの魂が軛から解き放たれ、二度と苦しむことがない不生不滅の境地に辿り着いたという物語の終わりがあるだけであった。

 しかも善き人が正しく修行の果てに煩悩を死滅させ解脱に至ったのだ。これを専門用語でプラティサンキヤーニローダといいます。めでたしめでたし。

 

「……あちらのお客様からです」

 

「世界が憎い」

 

 ボキリと瓶先をへし折りゴブォ……ッと赤ワインを喉に流し込む。愛別離苦の諸行無常もまた仏教的には精神の成長を促す研磨剤であるが、血走った目からは悟りの片鱗さえ見つからなかった。それでも積み上がった徳で天国からは逃げられないのだが。

 

「店を出たら、あたし、横になりたいな♥。ヨナは?」

 

「!? 君が横になるなら、俺は……俺も横になる!」

 

「ちょっと、おいてかないでよ……」

 

「ミシェルもおいで、3人で1つに溶けあおうね♥」

 

 見せつけるように自らの男に抱き着き、満面の笑みでこちらに手を振りながら店を出ていくリタネキ。

 恋人の男(金札)の腕に抱き着き胸を押し当てながら、片腕で恋人の女(金札)の胸を揉みながら凱旋する勝ち組ムーブは、天女の泣き顔が明王の憤怒に変わる程憎らしいものであった。

 幼馴染の少年と少女をドラマティックに恋人にするために、わざとメシアンに捕まって人体実験を受けた女だ、メンタルが違う。

 

「あれは、この世界にあってはならないもの……命が始めたことは、命にしか終わらせられない。今の私なら、あるいは……?」

 

「やめろめろ!! おめーも数百年間修行したんなら大人になってくれよ! 彼氏さんが悟りを得るくらい一緒に修行したんだろ!? もっとこう、超然とした精神を得といてくれ!!」

 

「千年以上地獄で焼かれても1ピコも反省しない男の作ったワインがここにあるわ……」

 

「…………いや、それはそれってことでさ。深淵を覗き込んだってしょうがないじゃん? あれなんて底の底、コキュートスの住人だからほら。あれを改心させられたら徳だけで宇宙の王になれるくらいだから」

 

 圧倒的なレベル差がある相手を【TALK】で説き伏せるのは難しい。

 悪魔のように低レベルが口をきくだけで失礼とまではならないが、何百年も修行した者の人格は余人の言葉で揺らぐことは無い。何かしらのイベントクエスト又は戦闘が必要である。

 

「そ、そうだ! ならちょっと頼みがあるんだ! 色々あってさ、何人か覚醒した子供を預かれる場所を探してるんだよ! 天人ネキは教育とか得意だろ? 心の隙間を埋める為にもさ、子供との触れ合いとか良いって!」

 

「はぁー……。まあやる事無くなっちゃったから良いけどさ……彼くんの子供産もうにも義両親が感情の整理に時間が掛かるって言ってたし、暇つぶしにちょっと面倒みるくらい良いか……」

 

「よしよし助かるよ話は決まりだないやーよかった詳しい話もすぐメールで送るしすぐに頼むよじゃあ準備があるから今日は店じまい!」

 

「露骨に追い出そうとしてくる……貸し1だからな……」

 

「扉壊した分でチャラだよバーカ!!!!」

 

 そういうことになった。

 

 

 

 

――数か月後

 

 

「うぅ……ヒック……う”お”お”ぉぉぉう……」

 

 とある黒札が経営する居酒屋にて、一人の女性がカウンター席でめそめそと以下略。

 大将のグラサン越しの助けを求める目に応える勇者はおらず、店を守るために竜の顎に手を入れる心境で言葉を掛ける。

 

「あー、天人ネキさん? 今日はどのように? 子供たちに何かあったんですか……?」

 

「至高天に挑むため命を研ぐ無限の闘争へってヴァルハラに行っちゃったあぁぁぁ!!」

 

 パリィンッ!!

*1
世界すべての声や音を聞き取り、聞き分けることができる力。

*2
仏教における天上界、輪廻六道の最上位。帝釈天(インドラ)とか大黒天(シヴァ)とかが如来の護衛をしている場所

*3
仏が悟りを開く前(修行中)に立てた誓願のこと




・天人ネキ 天人Lv78
不屈の向上心とそれを活かす才能を兼ね備えたハイスペ女史黒札。
天人は寿命が近づくと悪臭と汚汁を垂れ流し地獄の16倍の苦しみを味わう(天人五衰)ので、寿命から逃げる為に鍛え続けた悲しき戦士。
とても尽くすタイプのクソ重い性格で、シキガミ彼氏は全く趣味では無く武器シキガミを持つ。
この事件の後【昇天(あげ)マンネキ】【妖怪監禁アセンション女】などと陰で呼ばれてキレる。
本霊は摩利支天であり、人や物を隠すのがとっても上手。天部も天職というかスタート地点である。
他人を悟らせるというのはシャカが即座に匙を投げ、慌てて降臨したブラフマーとレスバを繰り広げる程の難行であり、彼が解脱した瞬間天部では空を惑星を400周するほどの虹が覆い、億千万を超える聖鳥ハンサが湖から飛び立ち、ブラフマーの感涙がヒマラヤ山脈を5000兆回削り取るのを5000兆回繰り返す程流れ、シヴァの歓喜の舞が三千大千世界に震度56那由多をもたらし、十方世界無量無辺不可思議の諸仏如来の彼女を讃える声が宇宙を400回創り直すことを400回繰り返すことを400回行うことの400阿僧祇分くらいの間響いた(インド的表現)

・理解のある彼くん 覚者Lv―(無)
子供の頃から絶世の美少女に導かれ、全て満たされた人間の極めて穏やかで鷹揚な人格をしていた。
全てを与えてくれた恋人に報いる為に修行を決意するも、内容は彼女の趣味が多分に入った甘イチャ生活だった。
数百年の間神話級美人に献身的な奉仕を受けながらも精力的に修行をこなし、遂に命の答えを理解した彼くん。
愚者を超え、賢者を超越し、覚者となる。天部が騒然となる歴史的偉業である。
現在は無量空処に魂として漂いながら、いつか恋人の魂が輪廻を脱して再会できる時を待っている。
天人ネキ「違う、そうじゃない」
彼くん「チ〇コ弄ってくるの普通に修行の邪魔だな、と思ったら悟りました」

・黒札の居酒屋大将 Lv22
よそでやって欲しい(切実)
でも黒札高レベル女性なんて全員核地雷みたいなもんだし、嵐が過ぎ去るのを祈るしかないんやなって。
最初はお洒落なバーを目指していたが、営業しながら晩飯作って客と一緒に食ったりしてたら居酒屋になった。

・リタネキ
珍しい北米産黒札の一人。他の作者様の作品にもういるかもしれない元ネタガンダムNTのデビルシフター。
幼馴染二人と組んず解れつの関係になるために、未来視をフルに活かしてメシアン被捕縛チャートを組む。
加速的に終末に近づく世界、崩れ落ちた日常、連れ去られた幼馴染。狂った天使たちによる惨劇、教会の地下で行われる冒涜の宴、そして全てを焼き尽くす魔神フェネクスの炎――
完走した感想は、や っ た ぜ 。初心な二人の初めてを同時に手に入れる事が出来たので、脳みそグリグリされた甲斐がありました(ご満悦)

・子供たち
無限に湧いてくるメシアン過激派の被害者のうち、黒札のクローン個体。
黒札の血をひくことからおいそれと外部に出せず、事情通の保護者を求めていた。
TOKUを積んだ天女による極めて優れた教育の結果、知・武・勇を備えた超人集団になってしまった。
そして世界の歪みを正し、悲しむことのない宇宙を作り上げる為、愛する兄弟たちと共に新たな戦いのステージへ旅立つ。
天人ネキ「ちがう、そうじゃない」
オーディン「ヴァルキリーから弟子入りの希望者が……」
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