今回は湊のお話。
あと普通にP3Rのネタバレありなのでお気を付けて下さい。
新入部員の蓮が初めての『仕事』を終わらせて数日。
試しに一個蓮がレポートを書いてみよう、という悠の言葉に同意した僕達は、資料兼アイデア探しの為に電車に揺られていた。
「幕の内弁当美味しい!」
「そこの店は魚介フルコース弁当もお勧めだよ、賢くなれる*1」
「へぇ、賢く……え、賢く……????」
僕が野菜スティックとサンドイッチを頬張りながら言う。
いや魚介フルコース弁当じゃないんかい、と蓮の視線がこちらを向いた。
……いや、気分じゃないから買ってないよ?今日はパンの日だったし。
「雨の日スペシャル肉弁当もお勧めだよ*2」
「今すっごく晴れてるのに??」
悠が可愛い弁当箱(自作)の唐揚げを食べながら続けた。
てかお勧めするならせめてそれを食べようよォ!?
宣伝にすらなってないじゃん!!
「てか———」
「あーん」
「あむ」
そんな叫びが聞こえそうな気がしたので、喋ろうと開いた蓮の口に野菜スティックを突っ込む。
行儀の良い蓮は吐き出したりもせず視線だけをこっちに向けて静かに野菜を咀嚼する。
「またすぐ電車乗るだろうし、その時に買えば良いよ」
「自分達は基本的に
「もぐ……そうしとく」
噛んだ野菜を飲み込んだ蓮が少し不服そうにそう呟いて、この話は終わった。
その後もとりとめのない話をする内に、僕達は目的の地区———百鬼夜行連合学院自治区へと到着する。
「日本がある……」
「日本というかむしろ江戸に近いよね」
ここの辺りは温暖な気候であるために、図らずとも欠伸が漏れてしまう。
「レッドウィンターなんて真冬だし、このくらいの暖かさが丁度いい……」
「だね。今日は一人で?」
「うん」
「あ、別行動なんだ」
悠と蓮は案内がてら大通りを回るけど、僕はまた別で用事があった。
「ちょっとね。友達が居るから、挨拶にでも」
「じゃあ、また後で連絡して欲しい」
「いってらっしゃい」
ひらひらと手を振る二人に頷いて、僕は一人駅を出た。
「……有里さんの友達って、どんな人なんです?」
「うんと……湊って睡眠が好きなんだよね。彼女———修行部っていう部活の子なんだけど、彼女も好きというか、趣味が合うって言う方があってるかな」
「へぇ……修行部って言うんだし、なんか『より良い眠りを』とか掲げてそう」
「よく分かったね」
「え゛」
「なんなら寝ながら盾を構えて寝ながら制圧するらしいよ」
「え゛っ!?」
住宅街を気の向くままに進んで、良い場所を探してみる。
彼女とは感性が近いから、多分一緒のところで落ち合うだろう。
「んー……こっち」
暖かくて良い日だからと、逡巡した脚は陽の当たる方へと向かってゆく。
その途中で、よく知る背中を見つけた。
「おはよう」
その言葉に振り返って、一人からは元気な、もう一人からは淑やかな応えが返ってくる。
「?……あ、湊だ!おはよー!」
「あら……おはようございます、湊さん」
勇美カエデと、水羽ミモリ。
彼女と同時に知り合ってからの仲で、二人とも修行部の名に恥じない目標を掲げている。
「今日はどうされたのですか?」
「新入部員のレポートのインスピレーションの為にね」
「そうなの!?湊にも後輩が出来たんだねー!どんな人なの?」
カエデの隣に並ぶと、ポケットに突っ込んだままの袖をちまっと握ってくる。
「うーん……スマートだけど面白い人だね、うん」
「そうなのですか……」
「今日は別行動だけど、今度来たら連れてくよ」
ミモリの読心術にどのような反応をするのかも、少し気になるし。
「あら、湊さんったら……私の
「ん、ごめん。でも気になっちゃったし」
「もう……でも、湊さんがそう仰るとは、私も気になってしまいます」
そう思案する彼女に、きっとすぐ会えるよ、と視線だけ合わせて歩を進める。
そうしていくつか角を曲がった先の小さな広場に、目当ての人は居た。
ぽかぽかの日差しがよく当たる小屋の縁側に、豊満な身体を持つ少女が安らかな顔で眠っている。
大きなバリスティックシールドを側に立て掛けて目を閉じるその姿は、どこかぬくぬくという擬音が聞こえてきそうだ。
「ツバキちゃん、湊さんが来てくれましたよ?」
眠る彼女の頭を優しく撫でながらミモリがそう言えば、ゆっくりと彼女は目を覚ます。
ぽやぽやの寝ぼけ眼で視線を彷徨わせ、僕のことを視界に入れるとその頬が緩んだ。
「おぉ〜〜……みなと、やっほ〜〜」
「やっほ。良い所を選んだね」
寝起きの声と顔からして、今日のスポットは大当たりのようだ。
確かに、風も強くなく静かで昼寝には良い場所だ。
彼女———春日ツバキと僕は、良き睡眠を追求する同士のような間柄だ。
多分異聞録学部を除いて、一二を争う位には関わりがあると思う。
それくらいにはシンパシーを感じたのだ。
「きょうの、べすと」
「ふふ、ツバキちゃんは絶好調ですね」
「先輩の選ぶ所、全部ぽかぽかだもんね!」
ゆるゆると胸を張るツバキの髪をミモリが手櫛で整え、石段にツバキが座り込んでにぱーと笑う。
三人の話し声をBGMに、僕も手で傘を作って空を見上げる。
……———光の輪の隙間で揺らめく雲を眺めていると、
こことは違う世界で過ごした一年、そこで出逢った大切な仲間達、最期の日に遺した『命のこたえ』。
そんな中ちらりと覗く太陽の光のせいで、思わず目を瞑る。
「———っ!?」
そうしてもう一度開いたその視界には、見慣れた風車。
風に乗って桜の花弁が流れていく、
もう二度と立つ筈が無かった場所———月光館学園の屋上。
蝶の羽撃きが魅せた夢だと直感的に理解した僕は、早く戻ろうと目を閉じる……が、開こうとした瞼が背後からの声ではたと止まった。
『———綺麗なもんだ』
低いバリトンの、どこか優しさのある声。
その声を僕は知っている。
頼り甲斐のある大きな背中の先輩。
命を燃やして、一足先に逝ったひと。
その声の方向に振り向こうとして、更に声が掛けられた。
『振り向くのはやめとけ。お前はまだ
「…………うん」
オルフェウスの神話を思い出す。
冥府から妻のエウリュディケを連れて帰ろうとしたオルフェウスが、ハデスとペルセポネの言葉を破り妻の方を振り向いてしまい、再度の別れを果たすという話だ。
恐らく、それに近いもの。
『きっと、あの影時間もどうにかなったんだろ?』
振り向いたら、そして目を開いたら僕はまた
「うん。きっと皆、それぞれの未来を歩んでる」
『そうか』
口を閉じた僕たちの間を、優しい風の音が響く。
その沈黙を破ったのは、彼の方だった。
『———後悔はしてるか?』
「え?」
『お前の選択に、その結果に、そして……今のお前の、その答えに』
それでも、それ以上に。
『俺はあいつらが心配でならねぇよ。俺より色んな事で後悔してそうだ……だから、自分のことを省みる暇もねぇ』
同じ選択をした僕のことを、支えてくれていたかのようだった。
「……僕は、後悔してないよ」
『…………』
「僕には僕の運命があった。皆にも皆の運命があった。僕はただ、その運命の終点が少し早かっただけ。そこに『こたえ』を見出すのなら……その終点までに繋いだ絆こそが、僕の『こたえ』だよ」
気付けば、そう言っていた。
胸の奥で満たされている光が、そこから見える幾つもの関わりが、アルカナのように、星のように答えを示している。
『……そうか。ならいい』
彼は、その言葉で納得したらしい。
『言いたいことはそんだけだ……じゃあな、有里。スカして死ぬんじゃねぇぞ』
「ッ———あ、荒垣先ぱっ」
ふっと離れる気配に思わず振り向くと、そのままぽん、と肩を叩かれる。
あの時と同じように、だけどあの時とは違う言葉で。
『……だから言ったろ、振り向くのはやめとけ……って』
▽オルフェウスの結末に流され、意識が遠のく……
▽その直前、自分の中で何かが輝いた気がした。
▽ペルソナ "ヘルズエンジェル"のスキル"ブラッディチャージ"が"ブラッディチャージ・改"に変化した!
「———?おーい、湊?」
目の前でカエデに手を振られて、漸く我に帰る。
気付けば月光館学園の景色はどこにもなく、先程まで居た百鬼夜行自治区の小屋の前。
「……ぁ、あ……ごめん。ぼーっとしてたみたい。どのくらい経った?」
「全然経ってないよ?一分とかそれくらいかなぁ」
「そっ、か」
若干上の空で答えながら、右肩を撫でる。
……まだ、
「……湊さん、貴女は……」
その様子を見ていたミモリがその先を言おうとして、そして僕の目を見て、やっぱりとやめた。
彼女が僕から何を読んだのかは分からない。
けど、その後に続いたのは、いつもの微笑みだった。
「湊さん、これから皆で百夜堂に行こうと思うんです。ご一緒にいかがですか?」
ミモリが肩にツバキが頭を乗せながらそう誘う。
……その三人の姿が一瞬だけ、あの時の光景と重なった気がして。
「……じゃあ、僕もご
「!やったー!じゃあ行こ行こ!」
ぱあっと元気になったカエデがミモリの両手を引っ張って。
それに従いながら、ミモリが小さくウインクをして。
トコトコと自分のペースで歩いてきたツバキが、ふと。
「みなとは」
「?」
「寂しい?」
ゆっくりと二人で歩きながら、ツバキの言葉を反芻する。
「……ううん、寂しくないよ」
「それは、なんで?」
「悠が居て、蓮が居て、修行部の皆が居て、独りじゃないから……だと思う」
「思う?」
「うん、思う。多分、もっと先の未来でこの日のことを思い出した時に、『あの時は寂しくなかったなぁ』って呟いたら、きっとちゃんと言い直せるよ」
ふぅーん、とだけ呟いた彼女は暫しの間視線をふよふよと彷徨わせていた後に一つ頷く。
「よく分かんないけど、分かった」
「そっか」
緩く微笑む彼女に僕の口元も少しだけ緩んで、僕達は少し遠くで聞こえるカエデの方へと足を進めた。
▽ここまでの物語を記録しますか?
>はい
いいえ
有里湊→素でかなりボケる
鳴上悠→いつもはマトモなのにふざけてボケるし、たまに(30%くらいの確率で)素でボケる
雨宮蓮→おいたわしゃツッコミ担当
現代人としての思考が抜けきらない為に、有里鳴上ペアのボケを捌き続けなければいけない蓮に敬礼
しょうがないもんね、二人はキヴォトス滞在期間が蓮よりも長いからギャグ調のノリに慣れちゃったもんね
多分この作品では基本蓮はツッコんでばっかりかもしれない
ところでこのエピソード、実は後半はこうなる予定じゃなかったって話でもします?
執筆開始時点では湊もペルソナ召喚してチンピラをボコす筈だったんですが、何がどうして突然荒垣先輩が出てきてしまったのか……
二人の会話がなんか変だな?とか原作と辻褄合ってるか?と思ったら取り敢えず脳みそ空っぽにして「まーたガッキーがオカン発動してるよ」くらいの軽い認識にしてお読み下さい()
【ブラッディチャージ・改】(オリジナルスキル、ヘルズエンジェル専用、継承不可)
使用時に自身の最大HPの45%を消費し、次の物理攻撃における攻撃力、クリティカル率、クリティカルダメージを上昇
また、次の物理攻撃時に対応物理属性の【ブースタ】【ハイブースタ】【メガブースタ】を自動で適用する
物理攻撃後、当スキルと物理攻撃時に消費したHPを全回復する
なんか主人公ズにして欲しい事を書き込む活動報告↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=332370&uid=276197
刈り取るさんの方の話(完結済)↓
https://syosetu.org/novel/349213
現地オリ生徒(覚醒者)とのストーリーが浮かんでしまいました。このストーリーについて意見をお聞きしたいです。
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見たい(本編同時空で)
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見たい(本編別時空、Ifストーリーで)
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見たい(全く別の作品として)
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