シン・ドラゴンボール~無能神とは言わせない!界王神になったオレの奮闘記~ 作:ヤーター・ヤッタター
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ファイターズ級が終わり、いったんインターバルです。
微妙な雰囲気になってしまったが、とりあえずはあの世一武道会も一区切りだ。
悟空は疲れきった身体を休めるべくその場に腰を下ろした。後ろ手をついて両足を投げ出す。
「ファイターズ級の優勝おめでとう、素晴らしい戦いだった」
「オリブー。ヘヘ、サンキューな」
労うようにオリブーが話しかけてくる。悟空はそちらを見上げ、へらりと笑った。
「オレの目では追うことも危うかった。推薦選手であるキミも対戦相手だった彼も途轍もない戦士だ」
オリブーの言葉を皮切りに、他選手も口々に先ほどの試合の感想を言う。やはり多かったのは最後の超至近距離での立ち会いについてだった。
「一手誤れば重傷では済まないことはわかりきっているのに、両者とも戸惑いもなく踏み込んでいくものだから観戦しているこちらの方が冷や汗をかいたよ」
うんうんと同意する選手たちに、悟空は「あー……」とついさっきの出来事を思い起こす。当事者の悟空からしても極限の集中状態にならないとできないであろう立ち回りだった。
どちらが勝ってもおかしくないほどに拮抗した高揚感を思い出しかけるが、いかんいかんと振り払う。まだ
そんな悟空の様子に気が付いたのか、スタッフの1人が備え付けられたウォーターサーバーから水を汲んできてくれた。外部からの飲食は禁止されているが、脱水症状などにならないように選手控え室には予め最低限の備えがされている。
悟空はスタッフに礼を言うとそれに口を付けた。冷たい水が疲れ果てた身体に染み渡る。
『それではスパーキング級までの間、150タック*1ほどのインターバルを挟ませていただきます! 東銀河と南銀河の選抜連合歌劇団によるミュージカル短編をお楽しみください!』
キノコ頭の司会の男の声が響く。釣られて武舞台に目を向けた選手の1人が驚いたような声を上げた。
「なっ!? おいあれ! 南銀河で有名な歌姫じゃないか!? ほら、あの!」
「え、もしかして100以上の惑星の王が求婚を断られたっていう伝説の!?」
「さっき応援歌を歌ってた美女*2も出演するみたいだぞ!」
選手たちは我先にと演目がよく見えるように窓辺やモニターの前へ雪崩れ込む。
残った選手は悟空とオリブーだけだった。悟空は嫁以外の女性はそういう対象ではないし、オリブーも生前は既婚者だったのでそういったことに興味はない。残された2人は顔を見合わせて苦笑した。
「床では休まるものも休まらないだろう。あちらのベンチに行くか、個人用の控え室に案内してもらったらどうだ?」
「んー、そうだなぁ。ちょっと一眠りすんのもいいかもなぁ」
「では僭越ながら、わたくしがご案内させていただきます」
控えていたスタッフの申し出を有難く受け、悟空は膝に手を置いて立ち上がる。疲れ切った身体では立ち上がるだけでも一苦労だ。これは休息に入る前に復活丸を使用した方が効率がいいかもしれない。
こちらです、と案内するスタッフの後に続こうとした悟空は、ふと足を止めて振り返った。
「オリブー」
「ん? どうしたんだ?」
「……孫悟飯、って知ってるか? 25年ぐらい前に
何でもないように尋ねたが、悟空は自分の胸が早鐘を打っていることに気が付いていた。
オリブーは普段から大界王星に居住しているという話だし、肉体持ちの戦士ではない祖父のことは存在すら知らないかもしれない。けれどもう目を反らさないと決めたから、悟空は意を決して尋ねた。
オリブーが口を開くまでの僅かな時間がひどく長く感じた。
「孫悟飯? それはキミの息子の名前ではないのか?」
「──……」
きょとんとしたオリブーに、悟空は「知らないんならいい」と打ち切ろうとし、
「……あの、もしかして武泰斗殿の孫弟子であるお方でしょうか?」
「っ!! スタッフのおっちゃん、知ってるんか!?」
──欲しかった答えは、予想外のところから出てきた。
案内しようとして足を止めていたスタッフがおずおずと口を挟み、悟空は必死の形相でスタッフの肩を掴んだ。上から覗き込む形になった悟空が掴んだスタッフの肩が、軋む。
「は、はい。優しい瞳に白い口髭を生やした、
「おっちゃん、悟飯じいちゃんの友達なのか!?」
「ええ、その、懇意にさせて頂いておりまして、」
「なら、今じいちゃんは……!」
「お、おいキミ。少し落ち着け」
掴んだスタッフの肩を揺さぶりだした悟空をオリブーが引き剥がす。己が興奮状態だったことを自覚した悟空は一旦深呼吸をし、なんとか平静を取り戻そうとした。それでも心臓がバクバクと波打つ。
悟空の様子に目を丸くしていたスタッフは、合点が言ったように頷いた。
「悟飯殿がおっしゃっていたお孫さんというのは悟空選手のことだったんですね」
「っ!!」
「なるほど。つまり、キミは自分の息子に祖父の名を付けていたのか」
「え、あ、ああ。オラが名付けたんだ」
「そうか。素敵な名前の付け方だな」
そう言って微笑むオリブーに、なんだか毒気を抜かれた悟空は改めてスタッフに向き直る。
「悪かったなおっちゃん。肩、大丈夫か?」
「いえ、問題ございません。
スタッフは小柄な種族なのだろう。明らかに非戦闘員なその姿に、倍近く背丈が高い戦士に肩を掴まれるのは怖かったかもしれないと悟空は反省した。
眉をハの字にする悟空に、スタッフは困ったような笑みで返した。
「えっと、悟飯殿の現在ですよね」
「……ああ、知ってたら教えてくれ」
平静を取り戻したとしても、心臓の早鐘は変わらない。
悟空はなんとか表情を取り繕いながら、スタッフの言葉を待った。
++++
武舞台会場にはメインとなる選手控え室の他に、個人で休息を取ることができる個人用選手控え室も存在する。個人用選手控え室の殆どは小上がりのような構造になっており、入り口で靴を脱いでそのまま寝転がれるようになっている。
悟空は案内されたそのうちの1室で、靴を脱ぎ捨てて横たわった。
──「悟飯殿は、アンニン様の
天井を見つめ、先ほど教えてもらったことを思い返す。
──「アンニン様は地獄の浄化槽を支える炉の管理をしているお方でして、」
──「え、悟飯殿の気が感じられない? あの、気というのは……?」
──「ああ、なるほど。おそらくですが、アンニン様がおられる場所があの世とこの世の境界にあるからかもしれません」
──「この時期は炉の定期点検期間でして、アンニン様を含めてそちらの担当者は缶詰めになっているとか」
──「もし悟空選手が出場していることを知っていたのなら、是が非でも休暇を取って駆け付けていたと思いますよ。悟飯殿はいつもお孫さんのことばかり話されますから」
「……じいちゃん」
本当は今すぐにでも武道会会場を飛び出して会いに行きたい。謝りに行きたい。
でも、試合を放り出した孫を、きっと、祖父は叱るだろうから。
悟空は懐を探り、残り3粒になった復活丸の内の1粒を取り出した。
それを口に放り込めば、身体を蝕んでいた痛みが癒える。だというのに、何故かどっと身体が重くなった。試合中とは違い、今は緊張の糸が切れてしまっているからだろうか。
「……悟飯、」
名を口に乗せる。祖父と同じ名前、けれど、悟空が悩んで考えたその名前。
「 チチ 」
目を瞑れば、悟空の意識はあっという間に沈み込む。唇は動いただけで音にはならなかった。
悟空はそのまま、武道会スタッフが呼びに来るまで眠りについた。
++++
コン コン コン コン
「入りますよ、チュン」
一応ノックはするが、どうせ返事がないのはわかりきっているので気にせず扉を開ける。
人払いの簡易結界が張られている個人用選手控え室に入ったオレは、指を鳴らして部屋全体に防音の結界を重ね掛けする。遠隔の覗き見も防ぐことができるオレお手製の術式だ。
「インターバル中に上映されている演目、東に伝わる神話を基にした脚本のようですが、300万年くらい前のことがかなり湾曲されて伝わっていたみたいでした。当時使っていたわたしの偽名の役者が
オレの話にザマスさんは反応すらしない。
普段のザマスさんなら考えられない行動だが、それだけ余裕がないのだろう。控え室の中央、そこで出入り口に背を向けるようにザマスさんは膝を抱えていた。こんな状況でもザマスさんの靴は綺麗に揃えられている。
こういうところに性格が出るなぁと思いながらも、オレも靴を脱ぎ揃えて小上がりに上がり込んだ。ザマスさんの丸まった背中に背中を合わせるようにして座り込む。オレと頭2つ分は身長が違うのに座高はあまり変わらないって理不尽だろ。縮め。……おっと、邪念が漏れた。思考修正思考修正。
(まったくもう、しょうがないなぁ)
ぐぐっと背に体重をかけてみる。……決して足長ザマスさんへの僻みではないぞ。断じて違う。
ザマスさんはプライドが高くて孤高気取りで格好つけたがりのくせに、寂しがりでかまってちゃんなところがある。本人は自覚してないけど、1人で悩んでいるとドツボに嵌りやすいのだ。
だから落ち込んでいる時は、放っておくんじゃなくてそっと傍に居たほうがいい。
オレはそのまま黙って天井を見上げた。
防音の結界は外部に対する遮音機能もあるから、この部屋の中はとても静かだ。目を閉じれば部屋の壁に備え付けられた時計の音だけが静かに鳴り響く。カチ……カチ……という規則正しい音。宇宙全体を見ればあまりポピュラーな形状ではないが、オレの中にある前世の記憶の影響なのだろうか。なんだかとても落ち着く音だ。
「…………申し訳ありません、シン様」
ザマスさんが小さく口を開いた。
「『約束』を破り、操念術を乱用しました。シン様が与えてくださった
「いえ、危険性をザマスが理解しているのなら問題ありません。結果的にザマスが無事で何よりですし、
「…………」
「……ザマス」
正直、見ていてとてもハラハラしたことは確かだった。
スピリットは生きとし生ける全ての命が保有する魂の力だ。スピリットを利用する技は使用者が願いさえすれば、細かい部分はスピリット側で調整してくれる。だが、操念術はこの自動調整してくれていた動きを全て自分の意志で操っている。
簡単なように思えるが、実際は違う。突然「これから呼吸してください」とか言われても、当たり前の動作であればあるほど「あれ? 今までどうやって呼吸してたんだっけ?」ってなりがちなのと同じだ。無意識で行っている動作を意識下に置くってのはめっちゃ難しい。
少しのズレで四肢がまるごと弾け飛ぶような危険が孕んでいる技術ではあるが、それをザマスさんに教えたのはオレだ。ザマスさんがちゃんと危険性を理解してくれているのであれば、最悪の場合はオレが責任取るのが道理なのだから問題ない。
でも、ザマスさんが本当に謝りたいのはそれじゃないとわかっているから、オレはザマスさんの背中へかける体重を増やした。
「…………、……」
「…………」
「……、…………、……………」
「…………」
「…………………………申し訳、ありません」
──声ちっちゃ!
などとは茶化さない。長い沈黙の後のこれがザマスさんの精一杯なのだろうから。
「シン様からの指示も、試合も忘れて、わたしは孫悟空を殺そうとしました」
ぼそぼそと、時計の針の音で掻き消されてしまいそうなほどに小さな謝罪。
それでも、その言葉が上辺だけではなく、心からの後悔が乗っているとわかっている。
先ほどの試合、最後の攻防。
ザマスさんは
どんな重傷でも回復できる復活丸があるとはいえ、それは即死ダメージには効果はない。例え『契約』による魂の保護があったとしても、心臓を貫かれてしまえば輪廻の輪入りは避けられなかっただろう。
「思考や行動が極端に走りやすいのはザマスの短所です。でも、それは決断力があるというザマスの長所の裏返しでもあります。わたしへの謝罪は不要ですので、後程ちゃんと悟空さんに筋を通してきてくださいね」
「…………わかり、ました」
甘やかすだけじゃなくて時には突き放さないといけない。カミサマは自分勝手なだけではいけないのだから。例え職務上の格下である人間相手であったとしても、いや、だからこそ通さないといけない義理がある。
(ま、でも、孫悟空は気にも留めてないんだろうなぁ)
『ドラゴンボール』の記録を頼りにシミュレートするが、欠片も気にしておらずきょとんとする孫悟空の顔が目に浮かぶ。そしてそれに気まずくなって逆上して怒鳴るザマスさんの姿も。
ま、何事も経験だ。カミサマはカミサマだけでは生きていけないのだから、否が応でも人間に関わらなきゃいけない。これから『原作』に関わっていく以上、決して避けられないことだ。
(ザマスさんの人間ギライも大変だ)
オレは未だに自己嫌悪から抜け出せずにいるザマスさんの背に体重を預け続けた。
++++
(──ああ、変わらないな)
と、ザマスは背中の温もりを感じながらそう思う。
このお方は変わらない。
『神』とは完璧な存在でなくてはならないというのに、このお方は完璧じゃなくてもいいという。
不完全であったとしても、それでも大丈夫だと、このお方は受け入れてくださる。
ザマスは思い出す、あの日のことを。
初めてこのお方の心に触れた日。
このお方の心を覗いてしまった日。
誰よりも尊ばれるべきこのお方の──その
というわけで、次回からスパーキング級の前にザマスさん視点の過去回想が挟まります。
長いインターバルになってしまいますが、どうかお付き合いくださいませ。
あと、アンケートを設置したのでご協力いただければ幸甚です。
・アンニン様
アニオリ・ウェディング編とは職務内容が微妙に異なりますがちゃんと存在しています
分類としては閻魔大王や地獄の鬼と同じ元から地獄に存在している住人
数万年生きているけど見た目はピチピチギャル
拙作での出番の予定はありません
ネタが浮かんだのでそのうち出します(2025.07.02追記)
・拙作ザマスさん最大のキャラ崩壊ポイント
『人間ギライ』を神に属す立場として『正しくない』と認識している
(それはそれとして人間はキライ)
転生オリブーをオリキャラとして出してもいい? また、出すとしたらどのくらいのポジションがいい? ちなみに転生オリブーは前世の面影が全くないTS娘になります。 ※今のところはただの思いつきなのでアンケ結果の確約はできません。
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いや、要らん
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モブキャラでならいいよ
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出番の少ない端役ならいいよ
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次世代にガッツリ絡ませてもいいよ
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TS地雷です!!