シン・ドラゴンボール~無能神とは言わせない!界王神になったオレの奮闘記~ 作:ヤーター・ヤッタター
「ロイ」「コジロー」「チェン」「ロン」
前者2つは中の人繋がり、3つ目は元ネタの元ネタ、最後が
結構ギリギリまで迷いました。
前回から時間軸がちょっとだけ遡ります。
あの世一武道会はあの世で200万年続く伝統ある武道会、になっている。
表向きな主催者は大界王となっているし、閻魔大王以上の役職者たちは実際の発案&責任者が更にその上の神である
長く続いていることもあり、どうしても『慣例』というものが出来てしまっている。まあ、堅苦しい武道会を嫌った
その『慣例』のうちの1つに『推薦選手は第1試合に出場する』というものがある。
『あの世一武道会・初戦の第1試合を始めさせていただきます! それでは両選手にご登場いただきましょう!』
「さっそくオラの出番か」
孫悟空は手慣れたようにストレッチをし、身体をほぐしている。『原作』で見たことあるやつだ!という内心を押し隠し、「頑張ってくださいね」と当たり障りなく声をかける。
「おう、行ってくる!」
ニカッと笑った孫悟空の足元に光の輪が浮かび上がる。先ほどと同じ、武舞台へ移動するための転移陣だ。転移陣は一瞬で足元から孫悟空の頭までを包み込む。
武舞台中央に転移された孫悟空とその対戦相手を遠目にしながら、オレはかつて漫画の向こうでしかなかった孫悟空の戦闘シーンが見れることへの歓喜を隠すのに必死だった。
(動いて喋ってる孫悟空を見るだけでもテンションがヤバいのに、間近で戦っているところを見れるなんて……あの世一武道会を始めて本当に良かった!!)
『
武舞台では司会の合図により結界装置が作動した。
上空に浮かぶ装置から巨大な魔法陣が広がる。規則性のある幾何学的なその文様は武舞台と同じ大きさまで広がったあと、魔法陣を縁取るように光が地面に落ちる。複雑に絡み合いながら武舞台外縁まで辿り着いたその光は、今度は武舞台と観客席の間、緩衝地帯として設定されたその空間に広がり、別の文様・魔法陣を描く。そうして描かれた魔法陣は今度は結界装置と同じ高さまで上空へ浮かび上がって──消えた。
結界装置の起動も問題なく終わったらしい。現在は不可視となっているが、見る人が見ればそこに高密度の『壁』があることがわかるだろう。昨日の予選でも問題なく起動していたと報告を受けていたが、今日も大丈夫そうで安心した。
「さて、お手並み拝見だな」
「ふふ、そうですね」
パイクーハンの言葉に頷く。
(……みせてくれ、
++++
独特の浮遊感。
自分で瞬間移動したときとは違うこの感覚も、本日3回目だ。武舞台中央に転移した悟空は、同じく目の前に転移してきた対戦相手を見つめた。
『今大会・推薦選手である悟空選手に相対しますは、同じく北銀河出身・オリブー選手です! オリブー選手は過去にファイターズ級の優勝経験もある今大会の注目株の1人でございます! 一体どのような試合を見せてくれるのか、今から楽しみでなりません!』
体格は悟空より上背があり、分厚い筋肉を纏っている。
悟空を見つめ返した対戦相手・オリブーは穏やかな笑みを浮かべ、両手を合わせて姿勢を正した。悟空は少し驚きながらも、ニッと嬉しそうに笑い掌を合わせる。
「オリブーだ。よろしく頼む」
「オラは孫悟空だ。こちらこそヨロシクオネガイシマス」
こうして戦いの前に礼をするのはいつ以来だっただろうか。かつてを思い出しながらの久しぶりの礼は、少し片言になってしまったかもしれない。ちょっと誤魔化し気味に笑った悟空に、オリブーは視線で気にしていないと苦笑を返す。
ちょっと緩んだ雰囲気も、オリブーが穏やかな笑みを消して構えたことで霧散した。闘志を漲らせたその姿に悟空も負けじと腰を落とし構えを取る。
戦いを前にした戦士たちの張りつめられた空気に、司会の男は銅鑼を構えた大会スタッフに目配せをすると、勢いよく手を振り降ろした。
『それでは、初戦・第1試合、始め──!!』
響き渡る銅鑼の轟音──それが終わるよりも早く、衝突。
まずはお互い小手調べ。軽く拳を交えながら、相手がどのような手札を持っているのか探る。まだ様子見で本気ではないとわかるが、それでも1発1発が重い。堀の深い顔と組み合った拳越しに見合い、お互いに不敵な笑みを口に乗せた。
『何の因果でしょうか! 実は、オリブー選手は悟空選手の育った星である地球にて、かつて世界を救った英雄として神話に刻まれるほどの戦士でございます! その功績に違わず、衝撃波が生じるほどの重厚感のある攻撃と、羽のように軽く素早い身のこなしが特徴のパワー・スピード双方を兼ね備えた実力者!
現在は互いに相手の出方を伺っている様子──だというのに流れるような連撃のぶつかり合い! これぞまさに拳での語り合いでしょうか!? オリブー選手は新たに現れた同郷の後輩選手に何を語り掛けているのでしょうかぁッ!?』
服装は馴染みがなかったが、同じ北銀河出身と聞いてもしかしたらとは思っていた。やはりオリブーは悟空と同じ地球出身らしい。ならば予選で戦った選手のように予想外のヘンテコ技はかけてこないだろう。地球人相手の組手は幼いころから数えきれないほど繰り返してきた、慣れた相手だ。
悟空は1歩距離を取り意図的にオリブーの攻撃リズムを崩す。この程度で隙ができるなどとは欠片も思わないが、今はほんの少しでも意表を付ければいい。
悟空は反転、地を蹴ってオリブーに肉薄した。
「はぁッ!!」
オリブーの死角となる位置から拳を繰り出す。当然の如く防がれるが、これは想定の範囲内。防いだ腕を絡み取るように掴み、悟空は一回りは大きい体格の対戦相手を上空に投げ出した。
「なんの、これしき!」
追撃しようと飛び出した悟空を体勢を立て直したオリブーが迎え撃つ。
『おおっと!? 悟空選手とオリブー選手、空中戦に移行しました! エネルギーを制限されたファイターズ級では空を飛ぶことですら緻密なエネルギー配分が必要となります! 依然変わらぬ攻防を繰り広げているように見受けられますが、本来はファイターズ級での試合に不馴れな悟空選手の方が不利な条件です! 果たして戦場を変えた悟空選手の意図とは一体……!?』
司会の言う通り、悟空はまだ完全にファイターズ級の制限下に慣れているわけではない。感覚的に初めて界王星で修行していた辺り*1にまで弱体化している。
それでも悟空はその頃には舞空術を完全に修めていた。確かにいつもの感覚で動けば枯渇してしまうが、悟空には弛まぬ努力によって磨かれた高い順応力がある。昨日の予選での戦いですでにこの制限下での舞空術の扱いはモノにしていた。
むしろ、空中戦で不利なのは──
「へへっ、思った通りだ」
「何……?」
「おめぇ、空中戦の方が地上戦よりちょびっとだけ苦手だな。おめぇの拳は重いけど、それを支えるのはその両足だ。足が付かねぇ空中戦だとほんの少しだけその威力が落ちてるみてぇだ」
重い攻撃も軽い身のこなしも、地を踏みしめる両足があっての
悟空の言葉に動揺するオリブーに構わず、悟空は蹴り技を交えた連撃を与える。重心を崩すような衝撃を連続で与えられ、オリブーの軸がぶれる。バランスを崩したオリブーが建て直すよりも早く悟空は追撃する。辛うじて防ぐことはできたが、少なくないダメージがオリブーに蓄積し始める。
オリブーも隙を見て地上戦に戻ろうとしているが、悟空がその隙を見せることはない。
「くっ……!」
『オリブー選手、これは苦しいか!? 悟空選手の猛攻を防ぎきれません! 先ほどまで拮抗していた戦況は悟空選手有利に傾き始めてしまったか!? 同郷対決の軍配は、悟空選手に上がってしまうのかぁッ!?』
「まだだ!!」
オリブーは勝負に出る。攻撃を繰り出したあと、隙にもならないその微かな動作に境目を狙い、悟空を地に叩きつけようとその剛脚を振り下ろした。
だが大振りとなってしまったそれが命取りだった。
「なッ!?」
オリブーの蹴りが
大きく体勢を崩したオリブーに背後へ瞬間移動していた悟空の鋭い蹴りが突き刺さる。脇腹を捉えたその蹴りはオリブーを場外──結界の外へ突き抜けさせた。結界を越え、武舞台と観客席の間へ投げ出されたオリブーは、緩衝地帯に張り巡らされた超高重力に絡め捕られ墜落し、地に倒れ伏せた。
『オリブー選手、場外!! カウントに入ります!!
「ぐ、ぐぉぉ……ッ!」
オリブーは必死に
無情にも司会のカウントが進んでいく。
「ああああああああああああああッッ!!!!」
オリブーは雄叫びを上げる。身体能力の底上げを狙って気を解放し、練り上げる。
──だが、間に合わなかった。
『──
歓声が、勝者である悟空を包んだ。
++++
「完敗だ、手も足も出なかった」
「そんなことはねぇさ。おめぇは強かった」
選手控え室、転移で戻ってきた2人の選手は互いに健闘を讃えていた。
試合直後のオリブーは最後の足掻きにより気を使い果たしてしまい、立つこともやっとの状態だったが、復活丸を使用することでなんとか顔色を取り戻していた。
「そう言ってもらえると嬉しいよ。キミみたいな強い戦士なら尚のことね」
事実、オリブーの拳は重く、鋭かった。単純な地上格闘技術だけなら悟空から見てもかなりの上位に入る実力者だったのだろう。先ほどは「空中戦が苦手だ」などと指摘はしたが、その空中戦だってかなりのレベルだった。地上戦と空中戦の違いは本当に僅かな差でしかなかったのだ。
「あの世にはおめぇみたいなつえぇ奴がいっぱいいるんだろ? すっげぇな、オラ、ワクワクしてきた!」
「ははは、強敵を前に胸を高鳴らせるか。本当にキミは頼もしいな」
悟空はあまり意識をしていないが、ファイターズ級・初戦突破──つまりベスト4に進出しているので、悟空は既に大界王星へ立ち入る権利を得たことになる。これから出会えるであろうまだ見ぬ強者たちに悟空は胸を高鳴らせていた。
──おめぇともまた戦いてぇし、他の奴とも早く戦いてぇ!
悟空はいつもの調子でそう口にしようとした。
「キミのような素晴らしい戦士がいて、
だが次に続いたオリブーの言葉で悟空は言葉を詰まらせた。
「え、それって……」
「キミの息子のことだよ」
オリブーは少し悪戯染みた顔で笑う。
「『大界王星特権』ってやつでね。大界王星への立ち入りを認められた戦士は、希望すれば故郷の星の現状について教えてもらえるんだ。場合によっては映像をリアルタイムで確認できる。……見ていたよ、セルゲームのこと」
──だからキミのことは、前々から知っていたんだ。
そう言ってオリブーは息をつく。少し臥せられた視線はすぐに悟空に戻された。
「傷ついても、間違えてしまっても、諦めることなく前を向く。そして、強敵に打ち勝った。キミは、キミたちは本当に素晴らしい。映像越しでさえオレはセル相手に『勝てない』と絶望してしまっていたんだ。かつては英雄と謳われたというのに、情けない限りだよ」
それは何かが吹っ切れたかのような、清々しい笑みだった。
困惑する悟空を余所に、オリブーは続ける。
「だから、うん、決めたよ」
「何をだ?」
「今大会の全てを見届けてから、オレは『次』に進もうと思う」
「『次』??」
「まあ、つまり……
絶句する悟空に、オリブーは、かつて
「オレが死んでから、どれくらいの時間が経ったのかな。『大界王星特権』で覗き見た地球は、もうかつてオレが生きた時代からは考えられないくらい発展していた。オレだってあの世でずっと研鑽してきたけど、やはり現世のほうがずっと前に、次に進み続けている。キミや、キミの息子たちのようにね。もう過去の英雄は必要ない、頼れる戦士たちが地球にいる。
輪廻の輪に入れば今のオレという存在はなくなるだろう。記憶も自我も、何もかもが無に還る。けれど、それは終わりじゃないんだ。……次に生まれるのが地球じゃないかもしれないのは、少し惜しいがね」
++++
「すまなかったな、悟空」
他の選手にも挨拶してくる──そう言ったオリブーと別れた悟空は、備え付けられたベンチに座りながら第2試合が行われている武舞台を眺めていた。
そこに声をかけてきたパイクーハンが隣に座る。
「パイクーハン?」
「先ほどの話、聞こえてしまっていてな。……まったく、オリブーのやつ。浮かれるのは仕方ないが、あの世に来たばかりの悟空相手にする話ではないだろうに」
「浮かれるって、オリブーがか?」
「ああ」
パイクーハンは頷く。
「オリブーのやつはだいぶ前から己の限界が見えてしまっていてな。だが『自分より強い地球の戦士が現れるまでは』ってずっとあの世にいたんだ。奴の後輩に当たる武泰斗もなかなか見どころがある戦士ではあったが、それでもオリブーの方が強かったからな。長年待ち望んでいた自分より強い戦士が──悟空が現れて、嬉しかったんだろう」
「…………」
視線は2人とも武舞台へと向けられている。特に悟空は、第2試合の勝者が次の対戦相手となるのだ。
だが、2人の意識は先ほどのオリブーの話に向いてしまっていた。
「あの世の世代交代ってやつだ。ま、滅多にないがな。わたしも他の戦士も千年万年単位で修行している奴の方が多い。中には億年単位のやつだっている。あまり気にするな」
「……そっか」
「それよりわたしもキミも、次の試合に集中しよう。──わたしも次は油断できそうにないからな」
そう言って武舞台から視線を外したパイクーハンを追って、悟空もそちらへ首を向ける。
そこにはシェンと──
「あり? あいつ、シェンの兄弟かなんかか??」
シェンと似たような黄緑色のパーカーを着ている。若干オーバーサイズのシェンと違い、身体に沿ったシャープな形だ。室内でもフードを被っているシェンとは対照的にそのフードは下ろされており、
総じて、シェンとどこか似た印象を持つ選手だ。
「わたしの初戦の対戦相手であるチュン選手だ。先ほどシェンに聞いたところ、シェンの同族で弟子のような立場らしい。ファイターズ級だけの参加のようだが、かなりの実力者なのは間違いないだろう」
「へぇ、あいつも強そうだな」
気を抑えているのか気配が掴みにくい選手だ。だからこそ、悟空ですら意識を向けねば存在に気が付かないくらい気をコントロールしていたからこそ、その実力がわかる。
「毎回、新たな強敵に出会えるのがあの世一武道会だ。前回戦った相手が新しい切り札を用意して現れることも珍しくない。お互い油断は禁物だな」
「へへっ、そりゃそうだな!」
まだファイターズ級の第1試合が終わったばかりで、あの世一武道会はまだまだ続く。
悟空は改めて、まだ見ぬ強者たちに胸を踊らせた。
前回の感想で疑問に上がっていましたが、チュン選手の参加は主人公も事前に把握していました。
パイクーハンvs.チュンまで辿り着けなくて無念。
・大界王星特権
大界王星への立ち入りを認められた善良な戦士にのみ許された特権
故郷の星を始めとした現世の様子を覗き見ることができる
元々は主人公が『孫悟空があの世に来た時に家族の様子を見れた方が嬉しいかもしれないな』と思い設けた制度*1
この特権目当てに大界王星入りを目指す戦士もいるとかいないとか
・オリブー
純粋な地上格闘技術だけならあの世でも上位に入る実力者だが、気の総量やコントロール技術などで長年伸び悩んでいた
悟空という自身を超える逸材が同郷から現れたことにより、数千年に渡るあの世での研鑽に日々に一区切りをつける決意を固める
アニオリの彼と異なる決意をしたのは、あの世が戦士たちの修行場として洗練された結果、魔境と化してしまっていることも一因かもしれない