シン・ドラゴンボール~無能神とは言わせない!界王神になったオレの奮闘記~ 作:ヤーター・ヤッタター
決勝戦が決着するまで4日間の連日更新をします。
……そのストック作り&年度初めの多忙で更新が遅れてしまいました。滅べ残業。
あと、せっかくならばと孫家週間*1に便乗することにしました!
悟空×チチ要素が皆無な
あの世一武道会・ファイターズ級もついに最後の戦いへ続く。
今まさに、準決勝・第2試合の決着がついた。
『まさに圧倒的! 前回優勝者を破った実力は底を見せない!
チュン選手、決勝進出ですッッ!!』
歓声が上がる。
パイクーハンさんを下した当初はまるで
ふっふ~ん、ザマスさんは凄いんだぞ! オレが外回りしてて盗賊に襲われた時とか、真っ先に迎撃してくれたりしてくれるんだからな! マジで頼りになる。
強さが全てとは言わないけど、ザマスさんほどの強い人だと一緒に飛び回ってて安心するんだよね。ぶっちゃけ第7宇宙ってどっかの
『連戦となってしまうチュン選手のため、20タック*1ほどのインターバルを挟ませていただきます。観客の皆々様、しばしの間、東の銀河にて一世を風靡いたしましたパフォーマーの応援歌をお楽しみください!』
あの世一武道会では連戦による不利を防ぐため、各銀河より選抜されたパフォーマーたちの演目が用意されている。それは楽器であったり、踊りであったり、一発芸であったり、様々だ。
あと、武舞台とかが破損したときの修復時間稼ぎとか。今のところだと、ザマスさんが武舞台に派手なクレーターを作った時とかも頑張って観客の
あ、タックってのは全王様公認の時間の単位ね。1タックが地球時間換算でおおよそ0.5分弱ぐらいかな。
実は、あの世で肉体が与えられるのは戦士だけじゃなかったりする。治安が悪い分、あまりその資格を得られるほどの突出した逸材って多くないけど、こういった文化面も大事にしていかないとな。
オレはあまり得意分野じゃないから、主に界王たちにお願いしている部分ではある。特に東の界王はこういった芸術面の保護に精力的だな。いま歌ってる東銀河の人とかめっちゃ上手い。
第1宇宙*2ほどとは言わないけど、せめて第2宇宙*3ぐらいに治安が安定していれば、こういった文化面の発展も望めるんだけどなぁ……。
うん、第7宇宙の為には早急に
そのためには孫悟空の名を知らしめないといけない。オレは『ドラゴンボール』の
だから、まずはオレにとって1番身近な筆頭従者であるザマスさんに孫悟空を知ってもらわないといけない。
「チュン、決勝進出おめでとうございます」
「ありがとうございます。当然の結果です」
「ふふ。次はついに悟空さんとの試合ですね」
「……はい」
視線を走らせれば、孫悟空は他選手と交流している姿が見える。オリブーさんとさっきの準決勝で孫悟空と戦った選手、あとはスパーキング級・初戦で孫悟空と当たる選手とも話しているみたいだ。
う~ん、流石のコミュ強。
「チュンも試合前に交流してみては?」
「いえ、わたしは不要です」
う~ん、コミュ障。
意外と人見知りするよねザマスさん。まあ決勝戦の直前だし、調子崩すのは良くないか。向こうはこっちをチラチラしてるからできれば話したいんだけど、ザマスさんってばあの世一武道会始まってからずっとピリピリしてるからなぁ。人間ギライも大変だ。
考えすぎで暴走することもあるし、もっと肩の力を抜いたらいいのにね。
++++
『観客の皆々様、ついにこの時がやってきました! 思えば初戦から大番狂わせが起こり、どうなってしまうのか予測不能な展開が続きました!
そんな中、ファイターズ級・決勝戦へと駒を進めたのはこのお2人──北銀河出身・孫悟空選手と、南銀河出身・チュン選手ですッ!!』
ドン! ドン! ドン! ドン!
ファイターズ級・決勝。今までの試合とは違い、開始前にはまるで鼓舞するかのような太鼓の音が鳴る。
溢れ出すような歓声と太鼓のリズムの中、武舞台の中央に2人の選手が転移してきた。
『今大会の推薦選手である悟空選手は北の銀河にある地球という星を救い、北の界王様直々に肉体を与えられた戦士であります! 今大会でも推薦選手の肩書に負けない怒涛の戦績を残してきております! はたしてこの勢いのまま、ファイターズ級・優勝を飾るのでしょうかぁッ!?』
悟空の身に纏った山吹色の胴着は、太鼓の音に負けぬ存在感を示している。
『相対しますは今大会・初出場! 司会のわたしも後から知りましたが、実力に納得のスパーキング級前回優勝者・シェン選手のお弟子さんという肩書き!! 初戦にてファイターズ級前回優勝者を破ったダークホースであるチュン選手はこのまま優勝まで突き進んでしまうのかぁッ!?』
対するは黄緑色の現代的な意匠を身に纏うチュン。対照的な服装の2人はそれぞれ観客の歓声に動じず、互いを見据えていた。
「うし……よろしくお願いします!」
気合を入れるように悟空は両手を合わせ、礼を取る。今大会初戦では片言になってしまったそれも、既に慣れたものとなっていた。
悟空の礼に、チュンの表情がピクリと動く。
「…………、………………。……チッ」
チュンは分厚いゴーグル越しでもわかるほど不服そうに舌打ちをすると、姿勢を正し、胸に手を当てた。
頭を下げることはなかったが、確かに返礼したチュンに悟空は面食らった。
「おっどれぇたぁ。おめぇが礼を返してくれるとは思わなかったぞ」
「……わたしはあのお方の弟子としてこの場に立っている。あのお方の顔に泥を塗る行為はしない」
「おめぇ、真面目だなぁ」
「…………」
思わず笑う悟空にチュンは不快そうに眉をしかめる。
「あと、おめぇシェンのことが大好きなんだな。控え室でもずっとシェンと一緒にいたし、その恰好もお揃いだろ? オラの胴着も基は亀仙流っていうオラのお師匠様の流派でさ……」
「──そう言うキサマは、」
悟空の言葉をチュンが遮る。
「
「……ぇ」
『それではファイターズ級・決勝戦、始めぇ──ッッ!!』
銅鑼の音が轟き、同時にチュンは悟空へと飛び掛かる。
チュンの鋭い手刀が悟空の首筋を狙い、悟空は咄嗟にそれを跳ねのけた。だがチュンはその動作を読んでいたかのように払う悟空の腕を掴み取り自重を利用して回し投げる。バランスを崩した悟空は石畳に片手を付き、後転の要領で飛び退いて距離を取った。
「お、おい! 誤魔化すって何を……」
だがチュンはすぐに悟空の懐に潜り込んだ。
未だ体勢を立て直していない悟空の顎を狙いチュンは掌底を繰り出す。咄嗟に後ろに仰け反ることで衝撃を逃がし、悟空は姿勢を低くしてチュンを足払いする。チュンはするりと距離を取りそれを避けた。
「ふん、心当たりがあるから動揺しているのだろう」
「なっ……」
「隙だらけだ」
距離を取ったことを生かし、充分に溜め動作を行った回し蹴りが悟空の腹を捉える。悟空はえずきながら武舞台を転がり、受け身を取ってすぐに立ち上がる。
チュンは構わず追撃した。
『おおっと!? これは試合開始から凄まじい応酬でございます! 準決勝までの受け身な試合とは異なり自分から勝負を仕掛けたチュン選手の猛攻を、悟空選手が必死に捌く! 悟空選手、なかなか攻勢に出られませんッ!』
「準決勝の試合、なんだあの体たらくは。まるで試合に集中してはいなかった」
「……ッ!」
精鋭を欠く悟空と変わらぬ鋭利さを保つチュンの応酬は、すぐにチュン側に傾いた。顔面を狙ったチュンの拳を悟空は寸でのところで受け止めるが、チュンは拳を振り抜いてその腕ごと悟空を薙ぎ払った。
ゴーグル越しでもわかる凍り付くような目が悟空を射抜く。
「キサマがあの世に来てからこの武道会が始まるまで、数日の時間があったはずだ。なのに、キサマは『武道会に向けた鍛錬』などと嘯いて目を反らし続けた」
「何を……ッ」
「
──それがキサマだ、人間」
++++
ザマスは自身の言葉に困惑した顔をした悟空を見る。
──「ザマスは孫悟空という人間の内面を見極めて来てください」
(……内面、か)
ザマスは目の前にいる人間の
その印象として、この人間は
(何も考えていないようで、独自の思考で独断専行するきらいがある。何も感じていないのではなく、己の心情を開示しないだけ。内面……精神面が読みにくい人間だ)
ザマスは『神』に属す存在だ。シンの筆頭従者になる前は第10宇宙にて界王を務め、実際に担当銀河に住まう人間たちを管理していた。だからこそ人間相手の読心術など息をするように容易い。
そのザマスをして、この人間の
(何故、シン様はこの人間を選ばれた?)
あの世一武道会自体が、『有事の際の臨時戦力の選抜と強化』を目的としている。
他にも関係者しか知らない裏目的はいくつかあるが、大界王星入りした戦士たちにも知らされているような表向きの目的はこれだ。
だが、シンは過去にあった『有事』の際にその戦士たちを駆り出そうとはしなかった。成り行きで現地民の人間と協力することはあったが、それでもシンは人間を庇護対象とし、戦力と数えることはなかった。
(その庇護対象としているはずの
──敬愛するこの第7宇宙を統べる主君の筆頭従者として、ザマスは見極めねばならない。
ザマスは攻撃の手を緩めない。再び懐に飛び込み、今度は喉を狙う。寸のところでかわされカウンターを叩き込まれるが、その拳は清廉さに欠け容易く受け流せるぐらい力ないものだった。これならば第1試合でこの人間が戦った相手の方が余程いい拳をしていた。
その後に続く悟空の反撃もザマスは軽くいなし続ける。
「種族:サイヤ人、生まれ:惑星ベジータ、父親の名:バーダック、母親の名:ギネ、本名:カカロット──」
「なっ……なんだよおめぇっ!!」
「キサマの経歴だ」
それまで身体を反らすだけで避けていた攻撃の腕を掴み、殴る勢いをも利用して武舞台に投げる。勢いよく石畳に打ち据えられた悟空の腹に追撃を行うと、悟空は転がってギリギリで避け、素早く立ち上がる。
だが、完全に体勢を立て直す暇をザマスが与えるわけがなかった。防御も出来ずに脇腹に蹴りを食らった悟空は、武舞台に亀裂を入れながらバウンドし、勢いよく背中を石畳に打ち付けた。
『悟空選手、なすすべなくダウン! カウントに入ります!
「わたしの本来の役目は管理側なのでね。
キサマは確かに逃げなかったのだろう。勇敢に立ち向かい続けた……
武舞台で呻く悟空を、ザマスはゴーグル越しに嗤った。
「~~~~~~ッ! さっきから!!」
脇腹を抑えながら立ち上がった悟空が吼えた。
「わけわっかんねぇことばっかり言いやがって……!」
「本当に?」
「ッ……!!」
間髪入れずに返せば悟空は押し黙ってしまう。おそらくだが、薄っすらとは気が付いているのだろう。まだ己の中で言語化できていないのか、それを直視しているわけではなさそうだ。
だが、ザマスの言葉を否定しきれないと本能的に理解しているようだった。
『悟空選手が復帰いたしましたが、どうやら膠着状態が続いております! こちらに選手たちの音声は聞こえないため詳細はわかりませんが、どうやら言い争っている様子です! いったい何があったのでしょうか!?』
拡大スクリーンに映されるのは選手たちの試合映像だけ。遠い観客席にはザマスと悟空の会話は届かない。
それでもあまり時間をかけては不審に思われてしまうだろう。現に、観客たちの中には怪訝な顔をしている者もいる。
(もう少し揺さぶりをかけたかったが……そろそろ核心を突かせてもらおう)
++++
悟空は自覚していた。
別に体調に問題があるわけではない。気だって少しは消耗しているがまだまだガス欠には程遠い。蹴られた脇腹は痛いが復活丸を使うほどではない。
だが悟空は、自分が本調子ではないと気が付いていた。本来なら何があったとしても目の前に敵がいれば戦いに集中するはずの自分が、戦いに集中できていないことを自覚していた。
それがいったい何故なのか、悟空はわからない。
わからな、かった。
「なら答えろ。試合にも集中せず、散々目を反らして見ないふりをし続けたのに、今更焦っているその理由を。
──
その言葉で、
悟空の中のピースが嵌る感覚がした。
(……そうだ、オラは)
探している。
当時はそれを感じる技術を持っていなかった。そんな
だが今の悟空は、例えどれほど時間が流れていたとしても、知らなかったのだとしても、それがわかると断言できる。
暖かく、優しく、頼もしく、大好きな──
(そうだ、確かにオラは、目を背けてた……)
──原初の罪。
悟空が知らずに犯してしまった、1番始めの
(悟飯、じいちゃん……っ!)
あの世のどこを探しても、
大好きな
感想とかここすきとかで様子を見た感じ、皆さん悟空さ曇らせに寛容そうなので、性癖のままに曇らせてみました!
あの世一武道会編が始まってからずっと種を仕込んでいました。
次回、明日5月8日(木)05:08更新予約済みです。
※拙作ではアニオリ・ウェディング編は「なかったこと」として扱っているため、悟空さは原作少年期に占いババの館で悟飯じっちゃんに会ったのが最後です。