ミレニアムにいる高身長でボサボサの髪で目にクマがあって姿勢が悪くて妖怪MAX依存の生徒について。 作:不健康女好き好きマン
青空の下放り出されてから一年。お……私はすっかり大きくなって相変わらず勉学に励んでいた。今は細かい所作や一人称を修正中。なんだけど、ずっと“俺”を使ってたから一人称私の違和感がやばい。油断したらあたしとかあーしになるし、まだまだ意識して変えていかないといけない。
あとは身長が結構伸びて160ぐらいになった。でっかいね。周囲の子達より頭一つ抜けるサイズ感、列になった時一番後ろというのはなかなかに気持ちがいいものだ。
だがこの一年、最も変化したものといえばやはりエナドリ漬けで過ごしてきたということだろう。いやはや、銃弾をも弾き返す不思議パワーは思ったよりも素晴らしい。銃撃戦はしない一年だったものの、エナドリの効果が切れた後の倦怠感や喪失感をほとんど踏み倒すことができる。副作用ほぼなしで利点だけ享受することができるのはあまりにも爆アド、勉強もゲームも捗った。
おかげで成績優秀、ゲームの方もちょっとした大会で優勝できるぐらいのストリーマーになった。このままゲームで食っていくんだってたからかに宣言したら普通に友達に引っ叩かれた。『それならヘルメット団としてやっていく方がまだ現実的よ!』って。うーんこのゲヘナ倫理観。
ミレニアムの受験を見据えて勉強をしているおかげで、初等部の授業は暇で暇で仕方がない。けど、たまに覚え漏れとかがあったりするから全部ちゃんと聞いている。今日はなかった。うつらうつらと船を漕ぎ始めたところでチャイムが鳴って、今日の授業は終わりになった。適当に友達に挨拶をしてさっさと帰ってしまうのが私のルーティン。オンラインでゲームすることがほとんどだからね。
出来るだけ人通りの多い道を選んで施設の方へ歩く。ここで裏道を抜けて近道をしようものなら身ぐるみ剥がされて市中引き回しの後打首獄門にされても文句は言えないらしい。
小学生に危険性を啓蒙するとして、その言葉遣いはいかがなものか。もうちょっとなんかこう、手心というか……お化けが出るぞー!みたいな言い方の方がまだ伝わりやすいんじゃなかろうかと思うんだ、わたしは。
ほか自治区こそ治安維持機関が仕事している……というか仕事できるレベルの事件発生件数らしい加えてゲヘナの生徒はやたら頑丈で戦闘練度もそこそこ高い輩が多い気がする。いや、私のような戦闘が得意じゃない族はひっそりと息を潜めて生きているだけか。
ぽてぽてと斜め下を眺めながら歩くのはなれている。前世から受け継いできた貴重な技能だ。そんじょそこらの陰キャとは馬力が違いますよ。ええ、余裕の音だ!
まぁ、誰にも因縁つけられるようなことはしていないし大丈夫でしょう。人との関わりだって極力避けて生活しているぐらいだし———
「ぐえっ」
「オイ。アタシの事を見下ろそうとはいいどきょうじゃねェか。ええ?なんだァ?このやろう」
「別に見下ろしてるわけじゃないですよ。石ころを眺めながらあるいてただけで……」
「だ〜れ〜が〜石ころだってェ?!」
はい、因縁をつけられてしまいました。(1敗)
こういうことが起こらないようにそそくさとお家に帰る必要があったんですね(mgtn構文)
というかあのえっとわたし戦う力とか全然持ってなくてあのその大きい銃とかも重いしなんかなまらかっこいい六連式のリボルバーしか持ち歩いてなくてあのあのそうやって胸ぐらを掴まれるとぐえってなって苦しいと言いますか頭を下げないといけなくて腰が辛いと言いますかなんと言いますかとりあえず離していただけるとわたくしといたしましては非常に助かるのですがあっとそのとりあえずどしたん話聞こか?
「テメェどこ中だ?オイ」
「ちゅ、中学生じゃないです……」
「じゃあ高校かァ?!」
「高校でもないです……」
「じゃあなんでウチの制服なんか着てやがんだぁ?ええ?まさかお隣の学校から冷やかしに来たんじゃねぇだろうなぁ?」
「初等部だから……」
「声が小せえ」
「初等部だからですよ!!!!」
「えっ」
「えっ?」
いやえっじゃないが。なんなんだそのお前マジで言ってる?みたいな顔。確かに黄色い帽子をかぶってるわけでもランドセル背負ってるわけでも防犯ブザー持ってるわけでもないしなんなら中身は小学生か怪しいし見た目も小学生か怪しいけど!ほら!見よこの煌々と輝く学生証!ゲヘナ学園初等部五年門星エナ!普通の人間には興味ありません!この中に天使や悪魔、頭のうえに輪っかが浮いていない人間がいれば私の元に来なさい!いない?ちくしょう!
「あ〜〜……ッスゥ〜……ごめんね?五年生か……そっか……大きいね、すごい、うん、大きい。私あんまり身長高くないから憧れちゃうなー、なんて、えへへ。いやほんとにごめんね?!お姉さんちょっと中学デビューでつっぱりたかった時期というかなんというかどこ中だ!とか言ってみたかったというかなんというか見た目とか色々考えてみてちょっと初等部の子には見えなかったというかうんえっとその……」
「だ、大丈夫ですよ……見た目は自覚してるので……」
「じゃ、じゃあ!私はこれで!」
急に饒舌になったな?いやいや、進学してちょっとツンツンしたくなる時期あるよね。わかるわかる。私がまだ俺だった頃もそんな感じの時期あったもん、誰しもが通る道だし致し方ないよね。
ともあれ、なんとかこのまま解散できそうだ。私は早く帰ってパチモン*1の新作をやらないといけないんだ。じゃあ、私の家あっちだから!じゃあね!
いやはやしかし運がいいのか悪いのか。これも前世でゴール○タイガーを2回タップしてご利益を受け取ったからだろうか。黒塗りの高級車に跳ね飛ばされた時には流石に人生を諦めたけどなんか転生したし。今日もエナドリは美味しいし。ゲームも楽しいしタカキも頑張ってたし!
「まちなさい」
「「ヒィッ」」
「流石に初等部の子にあの話しかけ方は———あなたまで驚かなくてもいいじゃない。一応話は聞かせてもらう。風紀委員の仕事だから……」
「えっと、あなたは」
「ゲヘナ学園中等部、風紀委員の空崎ヒナ。ヒナでいい」
「そう、編入生だったのね」
とりあえず私に関する情報と状況を説明して、相手にも同じ事を聞いてあの子がこっぴどくお叱りを受け、ヒナさんが私の元へやってくる頃にはもう太陽が地平線の先へ消え、空に星が輝き始めていた。どれがデネブでアルタイルでベガなんだろうか。風の噂によるとヲタクに夏の大三角を尋ねるとだいたいこの順番で答えるらしい。私もこう答えるしね。まぁ、今は冬なんだけど。
「ちょっと怖かったですけど、一応は何もされなかったので……」
「そう。ならよかった」
「けど、助けてくださってありがとうございます。あまり武器の扱いとかにもなれていないので……すごく助かりました」
「……そう」
ヒナさんはすごく無愛想な人だ。声色は平坦だしあまり雑談的なことは聞かれなかったし。これに関してはまぁ私も人のことは言えないけどね。あとはこれに加えて身長差のおかげであんまり表情も見えない。けど、大きな羽がぴょこぴょこしてるのを見るにこう言われて嫌ではない、と思う。
制服の着こなしや腕章の位置がキッチリカッチリしているし、多分この人はすごくまともな人なんだろう。というか、この混沌を極めるゲヘナ学園で治安維持を行おうなんて心意気のある人は珍しい。はっきり言えば異端側、大規模な戦闘があれば身が危うい立場の上戦って身内以外に褒められたり感謝されることも少ないだろう。ヤンチャな生徒たちにとって風紀委員会とは存在だけでも煙たいもの、せめて私のようなよわよわざこざこの民ぐらいはキチンと感謝を伝えるべきだろう。
セミロングの白髪に隠れた顔にはどんな表情が浮かんでいるんか。
私が知ったとてきっと共感のできることではないけれど、せめて応援ぐらいはできたらいいなと思った。
「あのっ!本当にありがとうございました!じゃ、じゃあ!私はこれで!!」
「ええ、気をつけて」
まぁ、口に出して言えるほどの勇気もないんだけどね。応援してるぞ、ヒナさん!!
とにかく私は帰ってパチモンだ!!
ヒナ(過去)大体捏造。まだあんまし髪も伸び切ってないし実力も周囲にバレてない。まだ頑張って誰かと気さくに接しようという気概が残っていた頃。
続きました。過去がまだ数話続きそうですが付き合っていただけると嬉しいです。