最低値で行く少女育成計画〜目指せ百合ハーレム〜 作:いにみにまみもー
彼女はとても美しかった。
それこそ神が遣わせた天使─────いや、女神かと信じてしまいそうになるほどには。
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桜川家は親を含めた九人家族で構成されている。
母、桜川
父、桜川
長男、
次男、
三男、
長女、
次女、
三女、
そして四女、
こんなにも家族が多いのは意図したものではなく、ただ両親がやることやっていたら妊娠出産を繰り返していたというだけの話だ。
少なくとも桜川家三女、鈴蘭にはそう見えた。
家族の中で六番目に生まれた鈴蘭は、親よりも姉に世話をされることが多かった。
両親は互いに愛し合っていた。もちろん子供のことだって見ていた。だが、仕事が忙しくなれば子供のことが疎かになってしまっていた。
だから鈴蘭を実質的に育てたのは長女・椿と次女・天南だった。
勉強を教えたのは天南で、それ以外を教えてくれたのは椿だった。他の長男次男は、構うことはあっても教えることはなかったように思う。どちらも勉強で忙しそうだった。
それは椿や天南にも言えたことだが、それでも時間を捻出してくれたことには感謝している。
唯一三男と話す機会はあったが、無口なタイプなのかあまり会話らしい会話は出来なかった。
多分趣味も合わないのだろうと当時の鈴蘭は思った。
そんな中、鈴蘭が五歳か四歳頃のこと。
四女、小百合が生まれた。
仕事が忙しくてもやることはやっていたらしい、とは天南の言葉だったか。天南はなんやかんやで口が悪いが思いやりは強い、とは椿の言葉だった。
初めての妹。初めて見る赤ちゃんは、大層綺麗な子に育つことを思わせる子だった。まるで天使か何かと思ったほどだ。
桜川家は顔も頭も身体も良いらしい。実際に本人たちに聞いたわけではなく、友達の親が言っていたことを友達伝いで聞いただけだが、なるほど小百合を見てみれば納得だと鈴蘭は思った。
大人になれば、誰もがびっくりするくらい美しい人になるのだろうと鈴蘭は考えた。
─────その認識が甘かったと思うようになるのは、小百合が五歳になる頃だった。
彼女は美しく育った。あまりに美しすぎて、ありとあらゆる人を魅了し、魅惑し、
彼女の通う幼稚園は、彼女の信奉者で溢れた。五歳児に信奉者? と思うかもしれないが、とにかく信奉者なのだ。
ある者は彼女を守ろうとする。ある者は彼女を監視する。ある者は彼女の近くに侍ろうとする。ある者は彼女を独り占めしようとする。
ある者は、ある者は、ある者は─────大人も子供も関係なく、彼女を求める。
彼女の信奉者は、まるで虫のように花という名の小百合へと集る。あらゆる者を惹きつけてやまない、文字通りの意味での魔性の女。それが小百合なのだと鈴蘭は理解できた。
今はまだ良い。小百合はまだ幼く、何が良くて何が悪いのか自覚が出来ていない。これから教えて導けばいくらでも変われるし、抑えることも出来るだろう。
問題なのはこの状態が『正常』なのだと錯覚したまま育つこと。
このまま育てば、小百合が危険だ。それは二つの意味での危険だった。彼女自身が危険な存在になるという意味と、彼女に危険が迫ることになる、という意味で。
姉たちも、兄たちも、今の小百合に危機感を覚えている。
親は残念ながら当てにならない。小百合は今までの兄弟姉妹とは違って物覚えが悪いからか、小百合の面倒を全て姉妹に押しつけたからだ。代わりに仕事に集中するようになったが、いわゆる責任逃れというやつだと鈴蘭は思う。
私達でどうにかするしかない。
そう思うも、遅かった。
小百合が事故に合い、下半身不随となった。
原因は車の衝突だったという。最悪死ぬかもしれなかったことを考えれば、まだ良かったと言うべきなのだろうか。
流石の両親もこのことには重い腰を上げて事故を起こした運転手とお金のことを話し合うことになった。
小百合の身体はお金では治せない。そういう身体になってしまった。
そうなってしまったのは車の衝突が原因だ。しかし、本当の元凶は別にいる。
そうしたのは、他ならぬ次女・天南だった。
彼女もまた、小百合に溺れた者の一人だった。溺れた彼女はあろうことか小百合を自身に依存させるべく事故を起こして下半身の自由を奪った。
言い争っている長女と次女を見て、鈴蘭は事態の真相を知った。
最初、あり得ないと思った。いくらなんでも、そのようなことが出来るはずがないと。
いくら桜川家が裕福で、高い能力を持つといっても限度がある。誰にもバレずにそのようなことをするなんて、どう考えても不可能だ。
─────この世界に魔法少女という存在がいなければ、それは正しかったのだろう。
二人は魔法少女だった。嘘か真か、それは二人が魔法少女に変身して見せたことではっきりとした。隠れて様子を伺っていたが、それは正解だったようだ。
更に驚いたのは乱入してきた次男の恵次。なんと彼も魔法少女だったのだ。最も、姉二人とは違って候補生という奴らしいが、そこは問題ではない。
散々言い争い、そして最終的には外での争いにまで発展したようだが、そこから先のことは鈴蘭は知らない。魔法少女の身体能力は異常だったし、何よりこれより先のことを知る必要性を感じなかった。
わかればいいのは、姉二人と次男は魔法少女であることと、小百合の身体を壊したのは天南であること。
その日は夜分だったので、翌日に小百合へ真実を伝えに行った。
小百合をこんな目に合わせたのだ、嫌われてしまえばいい、と。
小百合のことで暴走しているとは自覚していたが、自分でも止めようとは思えなかった。
病室で寝転がり、既に起きていた小百合に真実を伝えた。魔法少女のことは省いたが、要は天南が仕出かしたのだとわかればいい。
それを聞いた小百合は、
「そうなんだ」
と、酷く薄い反応を示した。
そして続けて、
「なら、許してあげないと」
そう言った。
最初、何を言っているのか理解できなかった。
許す。なぜ? あなたから足を奪ったのに。
意味が分からなかった。
「だって……その」
小百合は、自身の胸の内を、誤解のないようにゆっくりと話しだした。
「お姉ちゃんのことを、誰も許してくれない、なら……誰かが、許してあげないと……いけない、って、思うから」
「だから、私は許すし……怒って、ないよ……?」
小百合はそう語ってみせた。
その時の小百合の表情は、まるで聖女のように慈愛に満ちていて。
それを向けられているであろう姉に、強い嫉妬心が芽生えたことを鈴蘭は自覚した。
■■■■■
あれから六年。
小百合は11歳となり、ますます美しさに磨きをかけていた。
下半身不随となったことで車椅子生活を余儀なくされ、しかしそれが彼女の神秘性を引き上げより他者を魅了させた。小学校に通い始めてからは友達が沢山出来たと嬉しそうに家族に報告しているくらいだ。
そこには次女・天南も含まれている。
小百合が言った通り、彼女は自身を陥れた天南を許した。いや、そもそも許す許さないの問題ではなかったのだろう。
もとより気にしていない。ひどいことをされたというのに、身体は傷ついても心には傷一つない。
そして、天南の望んだ通りになることもなかった。
小百合は出来る限り自分のことは自分でしようとした。とはいえ物理的に不可能なこともあるので、そこは椿も鈴蘭も手伝った。主に階段などの移動方面で。
小百合は鈴蘭の望んだ通りに怒ってはくれなかったが、それでも良いと思うことにした。
彼女は変わらず無垢で、純粋で、何より家族のことを愛していたから。何も変わることなく過ごせている。
しかし彼女に集る虫は増える一方だった。いくら取り払ってもきりがない。友達が沢山出来るのは良いのだが、それでも節度を持ってほしいとは思ってしまう。
とはいえこれはもうどうしようもない。この六年間でどうにかしようとはしたが、年月を経ても悪化する一方だったからだ。しかもそれが悪いことかと言えばそうでもないのが余計に拗らせている。
むしろ、今では兄弟姉妹すら警戒しなくてはならない対象だった。特に兄弟は、本当に
そんな、檻の中で猛獣に囲まれている状況の中でも小百合は変わらない。気付いていないのだろう。こう言ってはあれだが、小百合はそこまで頭が良くないから。
彼女を守れるのは私しかいない。そう、鈴蘭は決意を固めていた。
「お姉ちゃん」
「ん、何?」
「これの名前、決めてほしいの」
「魔法少女育成計画?」
「うん。友達が、皆やってるって言うから」
「ふーん……ちょっと貸してね」
「小百合だし、安直に考えるならリトルリリィ? でももう少し捻りたいから……」
「逆にしたらリリィリトル……リリィはそのままでリトルを変えて……うん、これで良し。はい、小百合」
「リリィ・リドル……ありがとう、お姉ちゃん」
「どういたしまして」
「お姉ちゃん」
「どうしたの?」
「皆で、アバターを見せ合うことになって……その、どうしたら良いかなって」
「どうしたら……どんなアバターにしたら良いかってこと?」
「うん」
「これ、私が決めていいの?」
「良いよ。お姉ちゃんだもん」
「……そう。なら、どんなのが良いとかある?」
「えっと……特にない、かも」
「なら、私のイメージで似合いそうなのにするけど、良い?」
「うん。おまかせ、します」
「じゃあ任せて。少し時間が掛かるだろうから、部屋で待っててね」
「はーい」
「……行ったわね。それじゃあ……ふーん、結構種類があるのね。かなりやり込んでたのかしら」
「へぇ、下も選べるんだ」
「角、耳、尻尾……そういうのはあの子に似合うだろうけど、何か違うからボツ」
「小百合には姿を見せてほしくないし、黒いフードを付けましょう。あと露出もそこまで高くないと嬉しいから同じ感じのを……黒いケープコートね。これとか良さそう」
「これとこれ、あとこれもつけたら……黒い装いで白い服を覆い隠す魔法少女の完成、と」
「さて、あとは……このスマホから情報を抜き取ったら、あの子を呼びましょう」
桜川 鈴蘭
『自分のことを一番まともだと思っている情報収集系ヤンデレ。なお他の姉妹や兄弟も同じことを思っている。
仮に小百合が独り立ちしようとすると、表面上は快くするが裏では盗聴器や監視カメラなどを仕込むタイプ』
桜川 小百合
『姉とか兄相手だと何も疑わずにスマホとか渡しちゃうタイプ。パスワードも教えてしまう』
魔法のポテンシャル
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