日野森家の長女は音楽に嫌われている   作:Lős

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後輩ができました

 

「花妃先ぱーい!」

 

 ポヨヨヨヨ〜ン。

 手を振りながら、後輩が走り寄ってくる。

 

「は、る、ひ、先、輩!」

 

 ポヨヨヨヨ〜ン。

 なんだろうね。

 何がとは言わないけど、そこまでポヨポヨはしてないんだけど、何故かポヨンポヨンって擬音が似合うんだよね。

 雰囲気なのかな。

 

「花妃先輩。もう、何してるんですかこんなところで!」

「え? 今日なんかあったっけ」

「学級委員は昼休みに集会があります! 朝のHRで聞きませんでしたか?」

 

 聞いたかも。

 

「集合場所に来てないから探してこいって、先生から言われてきたんです。集合時間になっちゃいますよ、早く行きましょう!」

「あー……」

 

 ガシッ、と襟首を掴まれてズルズルと引き摺られる私。

 これでも私、50kgくらいあるのにそれを片手って。

 恐ろしい。これが鳳家の血筋か。

 

「なんで学年の違うひなたが呼びに来させられるんだろう」

「私が知りたいですっ」

 

 ひなた―――鳳ひなたは私の後輩である。

 中等部から引き続き学級委員をやっているらしい、高等部の新一年生。

 学級委員の集まりで知り合って以来、今回みたいに何かと世話を焼いてもらっている。

 流石に本人には言えないけど、彼女の面倒見が良いというか、苦労人気質だから先輩の世話なんかを押し付けられているんじゃないかな。

 さぞかし手の掛かる兄弟姉妹に囲まれて育ったんだろう。

 具体的には、わんだほーいっ、な感じの。

 

「いい加減自分で歩いてください!」

「ごめん」

 

 

 雫ちゃんは無事に宮女中等部に受かった。

 で、当然のことながらASRUNの最終審査も通過した。今回の通過者、つまりグループの加入メンバーは二人で、雫ちゃんには真依ちゃんという同期ができたそうだ。

 真依ちゃんとやらは既に国民的アイドルになりつつあるペンギンさんに憧れてオーディションを受けたのだとか。

 会う度にペンギンさんもとい遥ちゃんの推しポイントを語られて、雫ちゃんはそれにしぃちゃんデッキで対抗していると。

 妙なところで張り合うのはやめなさい。

 

「花妃先輩って、どうして学級委員をやれているんですか?」

「なかなか言うね」

「だって、他に立候補者がいたら決意表明と投票で選ばれますよね? 去年からやってらっしゃるそうですし、私が知らないだけで先輩ってもっとちゃんとやれるんじゃないかと思って」

「ないない」

 

 私が何故学級委員をやっているのか。

 否、私はやらされているのである。

 

「他薦だよ、私は。なんか頭良さそうに見えて要領も良さそうに見えるんだって。特に今年はね、去年もやってたって話が出ちゃったからじゃあ今年も……みたいな感じじゃない?」

「……なんか、納得いかないです。私は投票で勝ち取ったのに……」

「私が学級委員でも、ひなたの努力の価値は変わらないよ」

「……自分で立って、歩いてから言ってくれたらもう少し格好良かったんですけど」

 

 イヤだ。

 私は家でお姉ちゃんしないといけないから。

 外でくらいダラけていたい。

 私は学校で後輩から姉力を吸い取って、それを家で妹たちに還元する。

 完璧なサイクルだ。

 

 

 

 

「はーちゃんっ」

「雫っ」

 

 ひしっ!

 

「……何やってんの?」

 

 熱く抱き合う私たちを冷めた目で見る末妹。

 刹那、私と雫ちゃんはアイコンタクトすら取ることもなく、がばりと腕を広げて志歩ちゃんに襲い掛かった。

 

「しぃちゃんっ!」

「志歩っ!」

「うわ何やめ―――」

 

 憐れ逃げ場を失った志歩ちゃんは為す術もなく私たちの腕の中に収まる。

 妹が二人。

 ここが楽園か。

 

「ちょっ、ほんとやめてって……! なんなの急に……」

「……ごめんなさい。けれど最近、あまり二人と会えていなかったでしょう?」

「まあ、そうだね」

 

 私と志歩ちゃんは特に変わらず。

 変わったのは雫ちゃんだ。

 

「レッスンで家に帰るのも遅くなって……もちろんそれも充実しているのだけれど、どうしても寂しくなってしまうの」

「分かる」

「花妃姉、適当に頷かないで」

 

 適当とは心外な。

 私は雫ちゃんの気持ちがよく分かる。

 

「やっぱりスキンシップが大事だよね」

「そうなの!」

 

 阿吽の呼吸で理解し合った私たちはまた志歩ちゃんに目を向けた。

 

「いや、分かんないから……全く、呼ばれたから何かと思えば」

 

 ジト目。

 私たちと目を合わせたままじりじりと後退していった志歩ちゃんは、後ろ手に襖を開けると自室に引っ込み、素早く襖を閉める。

 がたん、ごっ、とつっかえ棒をセッティングされたような音まで聞こえてきた。

 

 ……私たちは熊か何か?

 

 あの襖はしばらく開きそうもない。

 どうやらやり過ぎてしまったと、私は反省した。

 

「それはそうと、雫」

「なぁに、はーちゃん」

「今日の夜ごはん、鶏か豚どっちがいい?」

「鶏肉だと嬉しいわ! 遥ちゃんにオススメされたもの」

 

 妹は筋肉に目覚めてしまったようである。

 

 

 

 

 今日は花妃先輩の素行を調査します。

 昨日の先輩はあんなこと言ってましたけど、ここは宮益坂女子学園。

 一年間も学級委員を続けて、あのだらけきった中身が知られていないはずがないんですから。

 すなわち、二年生でも学級委員に選ばれた先輩にはそれなりの理由があるということ。

 

 昼休み。

 大抵の生徒はお昼ごはんを食べている時間。

 私もそうしたいのは山々なんですけど、先輩の様子を観察できるのはこのタイミングしかありません。

 料理長の拵えてくれたお弁当はまた後ほどいただきます。

 

「……」

 

 先輩の教室である2-Aにそっと顔を出してみます。

 ……花妃先輩もまだ昼食は摂っていないみたい。

 

「―――そう。それで、ここと今出した式が連立できるから……」

「あ、そっか。完全に理解した」

「ほんと? じゃあ、一応最後まで見といてあげる」

「ふふ、任せてって」

 

「!」

 

 先輩は、クラスメイトさんに数学を教えられていました。

 授業で分からないところがあったらしく、疑問が解決した様子の先輩は晴れやかな表情。

 

「……解けた! これ解けてるよね!」

「うん、合ってる合ってる」

「よしっ、ありがと」

「どういたしまして」

 

 昨日は “頭良さそう” に見えるから、なんて話をしていましたけど、この光景を見る限りそれが理由で学級委員に選ばれたわけではなさそうです。

 先輩も適当なことを言うんですから。

 

「じゃあ、お昼ごはん食べよっか。お腹空いた」

「あ、ごめんね待たせちゃって」

「全然」

 

 お昼ごはん。その言葉を聞いて、私のお腹が鳴ります。

 先輩たちには……気が付かれていないようでした。

 一瞬視線を向けられたような気もしますし、危ないところです。

 

「そういえば、この前は助かったよ」

 

 お弁当の包を解いていたクラスメイトさんが、ふと呟きました。

 

「この前……?」

「私の探し物、手伝ってくれたでしょ」

「ああ、あったね」

 

 探し物を。

 クラスメイトの手助けは学級委員の仕事でもありますからね。

 やはり、先輩にも見習うべきところが―――。

 

「まさか声の反響で物の位置を把握できるなんてね。あのときは驚いたよ」

「まあ、ちょっとした特技だよね」

 

 異能では?

 

 

 その後も昼休み中の先輩は、色んな人から声を掛けられていました。

 プリントを運ぶのを手伝ってくれたとか、コート内に入ってきたハチを特殊な声で追い払ってくれたとか、校内で迷子になった中等部生の案内を買って出たとか。

 

 なるほど。

 これで分かりました。

 

 先輩が学級委員をやっているのは、あれですね。

 先輩がお節介焼きだからです。

 私には少し真似できそうにない人助けも混ざっていましたけど、先輩の積極的な姿勢は見習わなくちゃいけませんね。

 

 こうして、私は花妃先輩の素行調査を終えました。

 

 

「ところで日野森さん。ずっと見られてるけどあの後輩の子、知り合い?」

「うん。そっとしておいてあげて。大好きなご飯も抜いて頑張ってるみたいだから」

 




感想評価お気に入りここすき等、ありがとうございます
お近づきのしるしにこの後の展開などまるで考慮に入れていないため何も信用できない百科風記事をお贈りします
よろしければ参考未満でどうぞ


日野森花妃

「この歌が少しでも誰かの力になれば……」
「みんなが楽しそうで良かった」

概要

(旧)
非常に広い交友関係を持つ大学三年生。
冷たい印象を与える顔立ちをしており、大学では高嶺の花として見られている。
実際は面倒見が良く、困っている人は放っておけない性格。
日野森雫日野森志歩とは姉妹関係。

(新)
誰とでも仲良くなることができる大学四年生。
長年の悩みが解消され、普段から笑顔でいることが増えた。
音楽活動を通して誰かの力になることを目標に、
楽曲作成を続けている。

プロフィール

性別        女性
誕生日       3/31
身長        170cm
学校        不明/大学
年齢        21→22
趣味        ライブ
特技        歌うこと(楽器の演奏も)
苦手なもの・こと  虫(蜘蛛を除く)
好きな食べ物    チョコ
嫌いな食べ物    ホワイトチョコ
一人称      

容姿

 水色のボブカット。青い瞳を持ち、次女と三女の中間を行くようなアーモンドアイ。右目に泣き黒子がある。他キャラクターより年齢が高いこともあって、印象だけで言えば大人美人。
 立ち絵では友人暁山優希にデザインしてもらったらしい赤いハイネックのトップスと、ダークグレーのスリットスカートを着用。リングのネックレスも掛けている。
 →妹の髪型と表情と目元、黒子の位置を変えただけの立ち絵(実質この人日野森雫の別衣装)

人物

 混合イベントでのみ登場。
 実の姉妹である日野森雫日野森志歩を始めとして多くのキャラクターと関わりを持つ。そして、交流のある全員からかなり好意的な印象を持たれていることからも、彼女の社交性が窺える。特にLeo/needの面々からは大きな信頼を寄せられており、ことあるごとに相談を受けている様子が混合イベント『―――』で明かされた。
 混合イベントでは必ず首を突っ込んでくるため、某ユニットビビバスの親世代と同程度の頻度でイベントストーリーに現れるものの、彼らと同じくどのユニットにも所属していない。
 キャラクターカードも存在しない。
 このキャラクターを推す 酔狂な プレイヤーは、日野森姉妹のどちらかがバナーとなったイベントにてイベントPの下3桁を331に調整することで、担当であることをアッピルする。
 尚、この誕生日についてはストーリー内で「早生まれ」「3月末」「愛莉と近いんだね」と言及されるに留まり、実際の日付は不明であることに注意が必要。身長についても非公式による推測である。
 →エイプリルフールイベントにて、前日3/31が誕生日であることが判明。

来歴

 元一年生組から考えて5歳差があり、年齢が近い瑞希の姉えむの姉とは親しい仲である模様。また現時点の情報でもLeo/needとはレオニ結成前である小学生の頃からの付き合いがあり、MORE MORE JUMP!の日野森雫とは家族関係、桐谷遥とはデビュー当時からの付き合い(?)がある。加えてVivid BAD SQUADの白石杏が幼い頃恐らくシブヤ公園で知り合っており、ワンダーランズ×ショウタイムの天馬司とも妹経由で長い付き合いであることが分かっている。25時、ナイトコードで。のメンバーである瑞希とも姉を通した交流があることを考えれば、全ユニットとのパイプを持っていることになる。
 それどころか、混合イベントのたびに他キャラクターとの絡みが判明するため、全キャラクターと本編開始前に知り合っていたとしても不思議ではない。全部この人がいたおかげかもしれない。
 ユニットキャラクターでもないくせにやたらと存在感を放ってくることで有名だったが、エイプリルフールイベントではとうとうエリア会話にまで出張ってきた。なんだこいつ。
 その際、いくつかの名言(迷言)を残していっている。代表的なものがこちら彼女、中々の姉力だね

余談

 上述の期間限定エリア会話においては、現実世界だけでなく各々のセカイにも出現してくる。
 また、一部ニーゴのキャラクターとの会話では謎の理解度を見せた。
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