【宇宙から】ブルアカ✖️恩人三部作のクロスオーバー【キヴォトスへ】 作:財団先生
シャーレの部室、今日のシャーレの当番はヒナだ。仕事を手早く終わらせた私達は、午後からゆっくりと休みを取ることにした。
ヒナ「こんなにゆっくりしてもいいのかな?」
“いいよいいよ。時には休息も必要だよ?”
毎日忙しいヒナには今日ぐらいゆっくりして欲しい。そのために、ラビット小隊や、アビドス高校の生徒を雇い、アコに頼み込んでヒナがいなくても事件を解決できるように手配している。
ヒナ「……そうね。久しぶりのお休みね」
“そうして欲しい。ヒナはいつもえらいね。お疲れ様”
ヒナ「そんなことないわ。風紀委員長として当然のことをしているだけ」
“その当然のことができているのがどれほど凄いことか……まぁ、今日ぐらいゆっくりね”
私も仕事で忙しかったが、この日の為に仕事を終わらせたのだ。ゆっくりしたい。
ヒナ「ありがとう、先生。一つお願いがあるのだけどいいかな?」
“何だい?何でも聞くよ?”
ヒナからのお願い。いつも一人で抱えてしまう彼女が私に頼み事をしてくれたのがとても嬉しい。
ヒナ「私があなたの為に演奏した日、先生は、演奏中に懐かしいって言ってたよね?」
それは、色々あってヒナがピアノを演奏してくれたことがあった。ヒナの演奏は素晴らしいもので、感動したものだ。同時に、あの日のことを思い出して懐かしくなった。
“そうだね。昔の懐かしい思い出を思い出しちゃったよ”
ヒナ「懐かしい思い出?どんなの?」
あの日、ヒナが演奏している姿を見て初めての演奏会のことを思い出した。私が今も尚、忘れられない演奏会。
“ある演奏会の思い出だね”
ヒナ「先生、よかったら私に教えてほしい」
“いいよ。これは、私がまだ、小学生の頃のお話だ。私は母に連れられて前職……財団の職場に連れてこられたことがある。その日はよく雨が降っていた。
母に連れられてやってきたのは屋外ステージがあるグラウンドだった。そこには100人前後の猿轡を装着させられたDクラス職員と、母の職場の研究者達が集まっていた。
私はわざわざ、雨天時に演奏するなんてと不思議に思いながら演奏会が始まるまで待っていたんだ。
演奏会が開始される時間、一人の男がステージに立つと、ビニール傘を差した。すると、ビニール傘からピアノの音が鳴り出したんだ”
ヒナ「それは幻想的ね」
“ああ。その雨音は美しい音色だった。今でも鮮明に頭で再生できるほどに。
リクエストを受けて、ビニール傘が最初に演奏したのはビゼーの『カルメン前奏曲』だ。
その明るい曲調と、テンポの良いリズムは、私の心はドキドキしていたよ。テレビでも聞いたことがあり、知っている曲だったから私も聞き入っていたよ”
ヒナ「どんな曲なのかな?」
“じゃあ、一曲弾いてみようか”
私は、シャーレの部室の隣にある仮眠室からピアノキーボードを持ってきた。そして、慣れた手つきでピアノキーボードの電源を入れる。
ヒナ「先生は、ピアノを弾けるの?」
“ああ。傘の演奏を聞いた後、興味を持ってね”
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド
ちゃんと音が鳴ることを確認した私は『カルメン前奏曲』を奏で始めた。
ヒナ「楽しくて、ワクワクする曲ね」
“この曲はCMなんかでもよく使われる世界で最も有名なオペラの一つとされているんだ”
ヒナ「ええ、印象に残るいい音楽ね」
“ああ。一度聞いたら忘れられない名曲だ。そんな曲を弾き終えたビニール傘は、2曲目に、別のリクエストである、リストの『パガニーニによる大練習曲第3番 嬰ト短調』。別名、『ラ・カンパネラ』を奏で始めたんだ。
私は『パガニーニによる大練習曲第3番 嬰ト短調』を奏で始める。ヒナは、その曲の美しい旋律に身を委ねているようだ。
ヒナ「この曲はおとなしい旋律ね」
“ああ。落ち着く音楽だ”
ヒナ「この曲、好きかもしれないわ」
“3曲目もまたリクエストから、モーツァルトの『ピアノソナタ第11番第3楽章』。『トルコ行進曲』と呼ばれる音楽を奏で始めたんだ”
私は、『ピアノソナタ第11番第3楽章』を奏で始めた。
ヒナ「頭に残る曲ね」
“ああ。この曲も有名だね”
ヒナ「特定のリズムが頭から離れないわ」
“演奏が終わる度、会場にいる全員がそのビニール傘に拍手と賛辞を送っていた。ビニール傘の『ピアノソナタ第11番第3楽章』の演奏は楽しそう、嬉しそうなものだった。
演奏を終えたビニール傘は、突如、反応を示さなくなってしまった。音楽を奏でず、リクエストにも応えなくなった。
ヒナ「どうかしたの?」
“ビニール傘は、およそ10分間の沈黙の後、ショパンの『練習曲作品10第3番ホ長調』。『別れの歌』を演奏し始めた”
私は『練習曲作品10第3番ホ長調』を奏で始める。
ヒナ「どうしてせつないくて泣きそうになるのかな」
“私も音楽で泣くなんて想像したことも無かったよ”
ヒナ「音楽でここまで表現できるなんて凄いわ」
“……ビニール傘が奏でる音色からは「満足感」のようなものが感じられた美しい旋律だった。誰も彼もがビニール傘に大きな拍手と、称賛を送ろうとし、私は席を立ってスタンディングオベーションをしようとしていたんだ。
だが、演奏を終えたビニール傘は、突然巨大な何かが衝突したように研究員の手から跳ね飛んだんだ。私はその光景に固まってしまった”
ヒナ「そんな……どうして?」
“傘は地面に落ちた傘は石突が粉砕し、中骨と骨組み3本が折れ、傘布に酷い損傷と表面には大きなタイヤ痕が浮かび上がってんだ”
ヒナ「どうしてタイヤ痕が?」
“会場が騒然とする中で、傘を持っていた研究者は即座に傘へと駆け寄り、損傷している個所の修復を施したものの、傘は二度とピアノを奏でなくなったんだ”
ヒナ「そう。ダメだったのね……でもどうして傘が壊れるようなことが?しかもタイヤ痕って?」
“……このビニール傘は、とある交差点で発生した交通事故の現場で発見されたものだ。その日は雨が降っていて、視界が悪く交通事故が起きやすい状況だった。だから事故が起きることもあり得ることだ。
当然、一人の少女の命を失ってしまうことも”
ヒナ「そんな……」
“交通事故にあった少女は当時10歳。イブキの一個下の年齢の子だ。彼女はピアノのコンクールに向かう道中だったようだ。事故現場にいた人達の目撃情報から、彼女が傘を差し、鼻歌を歌いながらスキップしていたみたいだ。相当、楽しみにしていたようだね。
そんな彼女のコンクールの課題曲は『練習曲作品10第3番ホ長調』、『別れの曲』だったみたいだよ”
ヒナ「どうして彼女の傘は音色を奏で始めたのかしら」
“もしかしたら、自分の音楽を聴いて欲しかったのかもしれないね。ただ、言えることは一つだけ。
晴れた心に傘はもういらない”
【後日談】
『曲』
“基本的に好き嫌いがなく、どんな曲でも演奏してくれるんだ。モーツァルトの『きらきら星変奏曲』やベートーベンの『運命』なんかも演奏してくれてるよ”
ヒナ「どんな曲なのか気になるわ」
“じゃあ、演奏しようか?”
ヒナ「先生、お願い」
“いいよ”
演奏後
ヒナ「どちらもいい曲だった」
“そうだね。どちらも有名な曲だ”
ヒナ「私も先生が教えてくれた曲を弾けるようになりたい。だから教えてほしい」
“!!ふふっ。先生、頑張っちゃうぞ!”
『傘の持ち主』
ブライト「SCP-548-JPか。確か先生は、傘の持ち主とは同級生だったのだろう?」
“まさか知っているとは思いませんでした。確かに同級生です。今でもよく覚えています”
ブライト「どんな子だったんだい?」
“綺麗で優しい女の子でクラスのマドンナ的な存在でした。でも少し不思議なことを言う子でしたね”
ブライト「不思議なこと?」
“『飛行機雲の上を歩いて行ったらみんな幸せになれるんだよ。でもみんな、飛行機雲への道が分からないだけなの』って”
ブライト「確かに意味不明だな」
“私なりに解釈しているが、煙は上に空に上がっていく。あの子はきっと火葬の煙を見て、見た先に飛行機雲があったのだろう。それであんなことを想ったんじゃないかって”
ブライト「日本では火葬が主流だったな。確かに考えられることだ。子供の発想力はバカにできないものさ」
“純粋だったんだなって今なら思える。私にもそんな時期があったんだなっとも。今ではそんな心も廃れてしまったが”
ブライト「純粋で、世界が輝いて見える多感な時期で、将来に希望を抱いて夢を見ていられ、自分に嘘をつかないで生きていられて、時間が無限にあると感じ、現実じゃなくて夢を見ていられた時期。
その時期にきっとあの子は飛行機雲を見てそう思ったのだろう」
“そうですね”
ブライト「それは、今の私たちのように社会や何かに惑わされて生きるよりずっと幸せなものだ。
大人にならないっていうのも、ある意味幸せではないかな?」
“否定はしませんよ。雨が降っていても晴れていても、笑っていられた時代にあの子は飛行機雲の先に行ってしまった。それはきっと幸せなことなんだと思います。
だけど、生徒達には大人になって欲しいです。複雑で、目の前が真っ暗になりそうで、絶望し、夢を忘れ、嘘を吐くようになり、時間に縛られ現実を直視する羽目になったとしても”
ブライト「それは残酷なことではないか?」
“でも、生徒達にはその上で幸せになって欲しいです。だって、私は彼女達が笑っている未来を私は見たいから”
タイトル: SCP-548-JP - 歌う雨音
作者: 29mo
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-548-jp
タイトル: それは、あまりにも。
作者: ichinasi234
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/548-jpsorehaamarinimo
タイトル: 私があまつぶになった日のこと
作者: Eqlipse
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/moonfoxdr548jp
タイトル: 思いを馳せた雲
作者: Seyleane
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/548jptalehikoukigumo