【宇宙から】ブルアカ✖️恩人三部作のクロスオーバー【キヴォトスへ】   作:財団先生

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カンナ編

 屋台の一角。そこで私は、カンナとおでんを食べていた。

 疲れたOLにしか見えない彼女には、疲れている様子だった。

 そんな様子を見た私は、彼女をこの屋台まで連れてきたのだ。

 

 “今日は奢りだから沢山食べな”

 

 カンナ「先生、ちょっといいですか?」

 

 “どうしたの?”

 

 カンナ「……少し聞いて欲しいことがあります」

 

 カンナが思い詰めた表情で私に振り向いた。その表情に既視感があった。

 

 “何かあったの?”

 

 カンナ「財団ヘイロー事件の時のことです。あれは本来、私達ヴァルキューレが解決するべき案件でした。ですが、先生に頼ることしかできず、避難誘導することしかできませんでした」

 

 カンナが語った事は財団ヘイロー事件のこと。あの時、住民の避難誘導をヴァルキューレ警察学校や、風紀委員会、正義実現委員会に頼んでいた。

 

 カンナ「私はあの事件で何もできませんでした。先生達が事件解決に奔走する中、協力することすらできませんでした。解決することもできず、協力もできなかったことを私は不甲斐なく感じているのです……」

 

 それは、弱音であった。普段の彼女では考えられないほどに弱っていた。彼女の顔に既視感があった理由を理解した。力及ばす無力感で心が折れそうになった時の私の顔と同じだった。

 私は彼女を元気づけるために、とあるお話をすることにした。生と死の分岐点に立った正義のお話を。

 

 “私の前職でのお話なんだが、実体がなく、だけど存在しているとある交通整理人形があるんだ”

 

 カンナ「先生、急になんのお話を……」

 

 “今は、私の話を聞いて欲しい”

 

 カンナ「……分かりました」

 

 “この交通整理人形は、見えず、触れることが出来ないが、監視カメラを通した時だけ視認することができるという人形だったんだ。

 ひとつのところに留まらず、不定期的に出現と消失を繰り返すし、カメラに写っている間、交通整理人形は手に持った警棒を振り続けている。そんな人形だ”

 

 カンナ「不思議な人形ですね。でもどうしてこのお話を?」

 

 “交通整理人形の異常は、『見えない、触れない』の他に、『自分の目の前まで来た人の通行を妨げる』というもう一つの異常性を持っているんだ。

 この人形が目の前に来ると、通行人は「なんか忘れ物した気がする」「なんとなく止まってみよう」などと思いはじめ、Uターン、迂回、あるいはその場で立ち止まったりするんだ。その通行人が進むのをやめた直後、交通整理人形のすぐ後ろで事故が起きてしまう。

 つまりこの交通整理人形は、事故・事件が起きる前触れに現れ、通行者を避難させているんだ”

 

 カンナ「交通事故から人を助ける人形ですか……」

 

 “そんな交通整理人形だが、悲劇が起こってしまったんだ。ある日のことだ。私の前職……財団の研究所の1つで財団ヘイロー事件のような事件が起こったんだ。この時、避難中の職員が規定の避難ルートを迂回していたことが発覚した。職員へのインタビューでは「気付いたら別の道を走っていた」と述べたことをきっかけに避難ルートにあたる廊下の監視カメラの映像を確認することになった。その画像には交通整理人形が写っていた」

 

 カンナ「なるほど、いつものように人を助けに来たのですね」

 

 “いつものように棒を振り、彼の異常によって、画面奥から避難する職員が、規定の避難ルートである廊下を横切り、迂回し避難していく。そんな映像が流れるが、突然、画面が暗転してしまう。

 しばらく暗転した画面が、正常に戻ると、映し出されたのは交通整理人形の棒を持った腕のみが廊下に残った様子だったんだ。これ以降、交通整理人形は出現しなくなってしまった。

 

 カンナ「まさか巻き込まれて……」

 

 “おそらくは。彼は職員達を安全に逃すために戦い、立ち向かったんだ”

 

 カンナ「立派なんですね」

 

 “ああ。立派な生き様だ。その後、とある場所の電柱柱にメッセージが添えられていたのを回収した。内容は

 

 『お元気ですか? 年の瀬も近づき、こちらは大忙しです。

 ところで夏ごろに、わたしたちの仲間が一人来たと思います。

 ちょっと人見知りするけど、お調子者で、目立ちたがり屋で、とても正義感の強い彼。

 もし会えたら、そろそろ戻ってきてほしいと伝えてください。

 みんなで一緒に新しい年を迎えましょう。みなさんの迎える新年も良いものでありますように。

 

 酩酊街より 愛を込めて』

 

 私たちの仲間とはおそらく、交通整理人形のことだろうね。その彼を待っている人達からのメッセージだったんだ”

 

 カンナ「人見知りで、お調子者で、目立ちたがり屋で、とても正義感の強い彼……正にその通りですね」

 

 “そうだね”

 

 カンナ「……私は職務を全うした彼が少し羨ましく思います」

 

 再び顔を暗くした彼女に、このお話を本題を話し始める。

 

 “財団ヘイロー事件の時、カンナ達は市民達の避難誘導をしてくれた。その結果、救われなかったかもしれない命を沢山救ったということになる。

 私にとってそれはとても嬉しいことだったんだ”

 

 カンナ「先生。ですが、私は先生に何もすることが出来ませんでした」

 

 “そんな事はない。君達が民衆を避難させた事で私達は全力で事件解決に取り組むことができたんだ。戦う時にも、市民が巻き込まれる心配をしなくてもよかったから皆、全力で戦えていたしね”

 

 カンナ「私は先生の役に立っていたのですか?」

 

 “ああ。その避難誘導は結果的に最小限の被害で済むことになった。カンナ達は私達と共に事態解決にあたっていたんだよ”

 

 “それにね、避難誘導をしている君達は、交通整理人形と同じ結末を辿るかもしれない。それにもかかわらず市民の安全のために戦っていた。それはすごく立派なことだとおもうよ”

 

 カンナ「先生に言われると少し楽になった気がします」

 

 “私は先生としてではなく、一人の人間として、あの事件で必死になって民衆を安全な場所に避難誘導したカンナ達を交通整理人形に負けないくらい立派なんだと心から思っているよ”

 




タイトル: SCP-572-JP - 誘導する警備人形
作者: Amateria68
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-572-jp
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