【宇宙から】ブルアカ✖️恩人三部作のクロスオーバー【キヴォトスへ】   作:財団先生

3 / 36
補習授業部編

 “ゼメルアは無事だろうか…”

 

 ヒフミとアズサの二人の仲睦まじい様子を見てついぞ会うことができなかった友を思い出す。いつか、どこかでと約束した戦友。

 

 ハナコ「あら、ゼメルアさんって誰のことでしょう?」

 

 彼女のことを口に出していたのかハナコに聞かれてたみたいだ。

 

 ハナコ「もしかして先生のコレですか?」

 

 彼女は小指を立てながら聞いてくる。

 

 コハル「えっちなのはダメ、死刑!」

 

 彼女の言葉に反応したコハルが口を出す。

 

 “いや、会うことができなかった戦友だよ”

 

 そう。彼女との関係を表すならその表現が一番しっくりする。姿は知らないけれどでも確かに地球を救った…と思う。

 

 ハナコ「戦友ですか?」

 

 “そう、戦友。二人で世界を救ったのさ”

 

 彼女に誇らしげに語る。私の作戦が上手くいったのかは分からないけど、成功したのだと信じてる。

 

 ハナコ「確かに先生のことですから世界を救っているかもしれませんね」

 

 コハル「そんなの嘘よ!だって先生は弱いじゃない!」

 

 痛いところをついてくる。私はエージェントなのにも関わらず、このキヴォトスでは弱い分類に入る。エージェントとしてのプライドなどこの世界に来てからへし折られるどころかスクラップになってしまっている。

 使えていた財団神拳もこの世界に転生した影響で、今まで鍛え上げた肉体は無くなり、使えなくなってしまった。使えたらよかったのに…。

 

 アズサ「先生は戦いでもしていたのか?」

 

 “うーん、正確には戦いが起こるのを防いだってところかな”

 

 私たちの話を聞いていたようで話に入ってきたアズサに私は答える。その答えに皆困惑の表情を浮かべた。

 私は彼女達にゼルメアとの話を語ることにした。アズサとヒフミのように敵対組織にいながら友となったあの日の些細なきっかけを。そして私の一世一代の大博打のお話を。

 

 “君たちは宇宙人って信じるかい?”

 

 コハル「そんなのいるわけないじゃない!」

 

 アズサ「コハルはうちゅうじん?というものを知っているのか?教えてくれ」

 

 コハル「アズサは宇宙人を知らないの?いい、宇宙人ってのはねーーー」

 

 コハルはアズサに宇宙人について説明をし始めた。

 

 ヒフミ「あはは…アズサちゃんは相変わらずです。ですが先生、どうして急に宇宙人の話なんかを?」

 

 “私の故郷の天文台のひとつに強力な通信電波を受信したんだ。この電波には未知の文字データが含まれていたんだ。このことをきっかけに私たちは宇宙人との交流が始まったんだ”

 

 ヒフミ「それはすごいですね。でも知らない言語を使う宇宙人とどうやってコミュニケーションをとったんですか?」

 

 “彼らは高度な言語解析、翻訳装置を有しているみたいでね、交信のたびに私たちの言葉を勉強していったんだ。その結果、違和感がない言葉遣いができていたよ”

 

 ヒフミ「すごい宇宙人なんですね」

 

 “ああ。そんなある日、私は残業をしていたんだ。その時にとある通信を受信したんだーーー”

 

 私はあの日のことを思い出す。

 些細なきっかけから始まった。当時の私は夜勤をしていた。

 

 ・・・

 “ふあぁ〜眠いなぁ…”

 

 大きなあくびをしながら資料整理と電波受信の監視を行っていた。時計を見ると2時半過ぎを指していた。

 

 “朝まで時間があるな”

 

 時計を見ながらそんなことを口にする。

 

『ハイ、ダレカイル?』

 

 突然のことで私は固まってしまった。まさか急に電波を受信するとは。

 

『ダレモイナイ? ハナシガシタイノニ』

 

 続けてそんな言葉を受信した。その言葉に私は慌てながらも丁寧に電波を送信した。

 

『こんばんは (先生)という者です あなたのお名前は?』

 

『コンバンハ ナマエハ ソッチノ発音ニアワセルナラ ゼメルア』

 

『いい名前ですね』

 

『アリガトウ』

 

 どうやら私のファーストコンタクトは問題なかったようだ。緊張していたのか少し腕が震えていた。

 私は沈黙の時間ができないように質問をした。

 

『性別とかはありますか?』

 

『ソッチノ言葉デイウト メス』

 

『女性、というんですよ メス、というのは地球じゃ動物に使う言葉ですから』

 

『ソウナノカ マチガエタ』

 

『それは仕方ないですよ』

 

『ソウカ オシエテクレテ アリガトウ センセイ ト ヨバセテクレ』

 

『先生だなんて大袈裟な。普通に名前でいいですよ』

 

 今回の通信でどうやら彼女は悪い存在じゃないと感じた。次の質問を返そうとしてーーー

 

『ちょっと待って オブザーバーが来た、通信を切らなきゃ』

 

『ナゼ?』

 

『僕は貴方と通信するのを実は許可されていないんです このことは内密でお願いします』

 

『ワカッタ ツギハイツ話セル?』

 

『明日の夜ですね、交代前に』

 

『ナラ ソレマデマッテル』

 

『じゃあまた、ゼメルア』

 

『ジャアマタ、センセイ』

 

 危なかった。バレていたら始末書だけでは済まされない。それほどまでに危険な行為だ。だけど、私はもう一度彼女と関わりたいと思うようになった。しかし…

 

 “キミの中では私は先生なのか…”

 

 少し頬を緩めた。

・・・

 

 ハナコ「それは素敵な出会いですね」

 

 “そうだろう、そうだろう。些細なことだったが宇宙人と友達になったなんて夢にも思わなかった”

 

 ハナコの言葉に興奮するように話す。その表情はにやけていて、嬉しさが伝わってくる。

 

 “こうして私は彼女との交流を始めたんだ。秘密裏に交信するのはとても楽しかったよ”

 

 ヒフミ「宇宙人と友達になるなんてすごいです先生。平凡な私にはとてもじゃないけど真似できません」

 

 “宇宙人だとか関係なかったんだ。彼女は彼女だった、ただそれだけのことだよ。彼女だったから友達になったんだ(ヒフミが平凡?)”

 

 アズサ「先生、宇宙人とは宇宙にいるのだろう?どんな姿をしているんだ?」

 

 “さあね。結局会うことができなかったから”

 

 ハナコ「ゼルメアさんはどんな見た目なんでしょう?宇宙人としてよく知られているグレイは全身銀色の全裸ですから彼女も裸だったりするのかもしれませんね」

 

 コハル「えっちなのはダメ死刑!」

 

 “彼女の容姿については目が二つ、鼻が一つあるという教えてくれた情報しかないからね。もしかしたらペロロさまのような姿かもしれないよ?”

 

 ヒフミ「ペロロさま!?ペロロさまの姿をしていたんですか!?」

 

 “ヒフミ落ち着いて!かもしれないってだけだから!”

 

 興奮したヒフミを落ち着かせるのにしばらく時間がかかってしまった。

 

 “彼女とはその後何度か交流してね。本当に楽しかったよ。私が住んでいた星の近くにまでやってきて、感想をもらったこともある。だけど、あの日の質問から全てが変わってしまったーーー”

 

『ネェ センセイ 地球の人って野蛮ナノ?』

 

 彼女の質問に私は一瞬戸惑ってしまった。少し考えながら返信する。

 

『うーん 時にはそうかも どうして?』

 

『こっちの偵察隊が地球ニハ兵器がタクサンあるって』

 

『あぁ 地球じゃどこの国も持っているんだ 残念なことにね』

 

『私タチのネイルードが地球人は危険デ こっちを攻撃スルつもりだって』

 

『ネイルードって?』

 

『軍人タチの中で一番偉いヒト ミンナその人の言イナリ 今宇宙船ニ兵器を装備しだしてる』

 

『そんな 地球の人はそっちと争う気はないのに』

 

 やばいと心の底から思った。戦争が起こるかもしれないと。

 

『私タチのほとんどノ人もソウ思ってる』

 

 その言葉に安堵した。戦争をしたくないのは向こうも同じらしい。

 少し私は考え込み。そして言葉を返した。

 

『確かに、地球の人たちは全員が平和主義とは言えないが だけど私の母は、自分の命を顧みなかった人の手で火事から救い出されたんだと言っていた 人ってのはそういうもんだ』

 

 そう。あの人のような人も沢山いる。この職場で沢山見てきたから。

 

『ソノ通りだと思う デモ、そうは考えられナイ人も中にはいるの 残念なガラね』

 

『少なくとも、君と僕は違う そうだろ?』

 

 “この日から雰囲気が悪くなっていった。上層部は戦争しようと画策し、ついには準備を始めた。このまでは本当に戦争が起こると私たちは確信した”

 “どうにかしたかった。戦いたくなかった。だから私達は策を練った。戦争をさせないために”

 

『戦争になるノ? 私、センセイたちと戦いタクナイ』

 

『僕もだ』

 

 少しの間、間隔が空いた。その数秒の時間すら長く感じた。

 

『ねェ、センセイ』

 

『何だい』

 

『私タチがネイルードを止めレバ 戦争は起きないカナ』

 

 その言葉に含まれていることに私はいち早く気づいた。

 

『本気で言ってるのかい』

 

 だからそう返すしかなかった。

 

『ネイルードは戦争を起こしたがってル 自分の権力がさらに増すカラ そっちのネイルードもそう思ってるハズ』

 

『確かにネイルードがいなくなれば、戦争は起こらないかも…… でも無理だ 不可能だよ』

 

『センセイ、このままジャ、私タチの両方に多クの死者が出ル……! ドウにかしないト』

 

『どうにか、ってどうするつもりなんだ?』

 

『こっちのネイルードに反発シテル人たちを集めて、何トカシテ引きずりおろすノ』

 

『そんなこと出来るのかい?』

 

 私は彼女にそう返した。この絶望的な状況でひっくり返す方法があるのかと。

 

『時間さえアレバ』

 

 そう。時間があればいいのか。

 私は気づけば返信していた。

 

『どれだけあればいい?』

 

『アト一週間は』

 

 一週間。この状況でその時間を作るのは難しい。だけど、この賭けに私は乗ることにした。

 

『分かった、君を信じる 僕が何とか時間を稼いでみるよ』

 

『ホントに?』

 

『うん 多分、うまくいくはずだ』

 

 そう、私が考えた策。それがうまくいけばきっと…。

 

『まさカ、キケンなこと?』

 

『いや ちょっとしたことさ、心配しないで』

 

 少しの間隔。私は大きく深呼吸した。そして平静を装って言葉を綴っていく。

 

『そうだ、このことがばれないように、ここの交信ログは全部消しておくよ』

『私もこっちのを消してオク』

 

『君に会えないのが唯一残念だよ』

 

『私モそう思う』

 

 泣きそうになりながら、それでも私は平然を装った。

 

『ネェセンセイ、全部終わっタラ マタ私と話してクレますか?』

 

『もちろんさ』

 

 さよならだ。ゼルメア。もう会うことはないだろう。

 

『それじゃあゼメルア、成功を祈ってる また、いつかどこかで』

 

『じゃあマタ、センセイ いつか、どこかデ』

・・・

 

 通信を終わらせて、私は一世一代の大博打を行なったんだ”

 

 ヒフミ「大博打ですか?それは一体…」

 

 “それはね、退職届を提出することだよ”

 

 コハル「先生、仕事辞めちゃったの!?どうして!?」

 

 “担当者の私が辞めることで現場が混乱して一週間は持つと思ったんだ”

 

 アズサ「なるほど。流石だ先生」

 

 “私の策は功を成したと思うよ”

 

 ハナコ「でも面白いですね。お二人はまるでヒフミちゃんとアズサちゃんを見ているようです」

 

 ハナコのその言葉に私は嬉しく思った。

 

 “そうだね。彼女達を見ているとゼルメアのことを思い出すんだ”

 

 そして彼女の言葉に私は同意した。敵対している組織に属していた。それでも絆を深め友達になった。

 ……私にとってエデン条約の件はあの日とかなり共通点がかなりあった。

 二人のことしかり、トリニティがゲヘナのことを野蛮だといっていたこともそして私が撃たれたことも。

 最初にエデン条約のことを聞いた時、ゲヘナとトリニティは犬猿の仲だと聞いた。だから問題が起こるかもしれないと。

 だけど私は不安など無かった。時間をかけてもいい。今は啀み合っててもいい。だけどいつか、ゼルメアみたいに種族の垣根を超えた友情を育めるだろうと。

 二人が仲良くしている姿を見て思い耽っていると、ハナコが耳元で話しかけてきた。

 

 ハナコ「部活動が終わった後、少しお話しませんか?」

 

 “分かった”

 

 私は彼女の言葉に二つ返事で答えた。

 放課後、補習授業部の部室でハナコと二人きりになっていた。

 

 ハナコ「こうして部室で二人きりだなんてドキドキしますね」

 

 “どうしたんだ?珍しい。分からない問題でもあったのかい?”

 

 ハナコ「もう少し先生とお話を楽しみたいのですか……本題に入らせて下さい」

 

 さっきまでの笑顔が嘘のように真剣になったハナコに私は正面から答える。おそらく彼女は分かってる。

 

 ハナコ「先生は、退職したことで一週間稼げたとおっしゃいましたね?」

 

 “ああ”

 

 ハナコ「でも、それだと少しおかしいのです。仮にも宇宙人と戦争ができるほどの大きな組織です。にも関わらず、貴方が居なくなるだけで機能が停止するとは到底思えません。先生、あの日何をしたんですか?」

 

 ハナコのあまりにも真剣な表情に言葉がつまってしまう。どうにかして話を逸そうにも思いつきそうにない。

 

 ハナコ「先生のお話にはおかしな点がいくつかあるのです。例えば、初めのほう。先生は夜勤をしていたっとおっしゃていましたね。であるなら、当然日勤の人も居るはずです。つまり担当者は貴方だけではありません。貴方がいなくなったところで代わりがいると考えられます」

 

 ハナコ「そしてこのお話には政治も関わっています。おそらく、先生の上司さんもおそらく戦争しようとしていたのでは?そんな状況で人が一人いなくなったところで問題など起こるはずもありません。ですが、一つだけ方法があります。そして、先生なら、その策を遂行してしまうでしょう」

 

 “……”

 

 ハナコ「ただ、退職届を出しただけでなく、先生は何かをした。相手を引き摺り下ろせるほどのことを。いえ、正確にはそうするように誘導したと言うべきですね」

 

 何も言えなかった。彼女が言っていたことは間違っていない。シャーレの先生という立場である今ならともかく、私は無数にいるエージェントの一人でしかなかった。だから当然代わりも多くいた。

 

 ハナコ「先生。教えてください。不安なんです。先生は言いました。『私の策は功を成したと思うよ』と。どうして断言していないんですか?」

 

 ハナコ「私自身、この結論はあり得ないと、おかしなことだと思っています。ですがどうしても想像してしまうのです。教えてください。先生、

 

 ーーー貴方は死んでいるのですか?」

 

 頭のいい彼女のことだ。ありえない話であっても察してしまうのだろう。だから彼女に答えよう。本当のことを。

 

 “……私はあの日、退職届を胸ポケットにしまった。そしてわざと上司の前で胸ポケットから退職届を出そうとした”

 

 “緊張状態が続いていたから上司は勘違いして護衛達に命令したよ。『撃ち殺せと』私の狙い通りに。無実の人間を殺したんだ。あの上司は今頃檻の中だろう”

 

 言い終えた私の前でハナコは静かに涙を流した。

 

 “どうして生き返っているのか分からない。だけど、第二の人生を先生として皆を支えていきたいと思っているよ”

 

 ハナコ「先生。教えてくれてありがとうございます。少しお願いがあります。しばらく抱きついてもよろしいですか?貴方が今、生きていることを確認したくて…」

 

 彼女はしばらくの間、胸の中で泣いていた。




SCP-998-JP - 外宇宙通信電波
by grejum
http://ja.scp-wiki.net/scp-998-jp

きっとどこかで、そしてどこかに、
by toki_amo
http://ja.scp-wiki.net/998-jp-tale
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。