【宇宙から】ブルアカ✖️恩人三部作のクロスオーバー【キヴォトスへ】   作:財団先生

33 / 36
ミカ、サオリ編 起

 私はミカとともにトリニティ校舎の草むしりをしていた。

 

 ミカ「ごめんね、先生。手伝ってもらって……」

 

 “気にしないで。君の様子を確認したついでだ”

 

 ミカはエデン条約の時の一件の罰の一環として草むしりやプール掃除などを命じられている。

 私個人としてはこの程度の罰で良かったと思う。財団ならばDクラス職員か、死か……少なくとも、ミカの立場は職員は地獄だっただろう。

 

 ミカ「そろそろかな。たくさん溜まったし、このゴミ袋を出しに行こう?」

 

 ミカは草がたくさん溜まった袋を抱えながら歩き出す。私はその後をついていくのだった。

 

 ゴミ捨て場ではゴミ収集が始まっており、職員達がゴミの回収を行なっていた。

 

 ミカ「待って!」

 

 ミカは走って職員たちの方へ向かう。

 

 サオリ「ん?ミカじゃないか」

 

 ミカの声に反応したのは、ゴミの回収をしていた一人、サオリだった。

 

 ミカ「あれ?サオリ?」

 

 “サオリか。今日はゴミ収集のアルバイト?”

 

 サオリ「先生もいたのか。ああ、今アルバイト中だ」

 

 “それはお疲れ様”

 

 どうやらサオリはアルバイト中だったみたいだ。

 

 キーンコーンカーンコーン♪

 

 学校のチャイムの音が鳴る。時計を確認するとどうやらお昼休みのようだ。

 

 “12時か。お昼にしよう”

 

 ミカ「やったー、お腹すいたー」

 

 サオリ「では私はこれで……」

 

 職員A「おや、先生と生徒さんじゃないか。嬢ちゃん、お友達か?」

 

 サオリの後ろから話しかけてきたのはごみ収集の職員の一人だった。

 

 サオリ「!」

 

 職員A「今はお昼休みだ。お友達とご飯でも食べてきなさい」

 

 職員はそう話した後、去っていった。

 

 “サオリ。一緒に食べよう?”

 

 サオリ「ああ。先生、世話になる」

 

 ミカ「先生。私、行きたいカフェがあるんだ」

 

 “そこに行こうか。奢るよ”

 

 ミカ「いいの?ありがとう」

 

 サオリ「先生にそんなことさせる訳には……」

 

 “いいんだよ。行こうか”

 

 サオリ「あ、ああ」

 

 ミカ「こっちだよー」

 

 ミカに連れされてトリニティにあるカフェにやってきた。席に座り、注文を終えた。

 

 ミカ「ありがとね、先生」

 

 “構わない。……サオリもそんな顔をしないで、ね?”

 

 サオリ「……先生。私はあなたを殺そうとした。私は現に脇腹を撃っている。そんな私に……」

 

 “気にするな……と言っても気にするんだろう?”

 

 サオリ「ああ。私は先生に何もしていない」

 

 “それは贖罪という意味かな?”

 

 サオリ「ああ」

 

 ミカ「……私もサオリの気持ちが分かるよ。ナギちゃんやセイアちゃん、パデル分派の皆に迷惑かけちゃった」

 

 “自罰的になっちゃダメだよ。その先は誰も救われない。君たちに彼のようになって欲しくないんだ”

 

 ミカ「彼?」

 

 “……財団の職員の一人だった男の話だ”

 

 彼女達に話そう。己の罪に向き合っているつもりで本当の意味で向き合っていなかった一人の男の話を。彼のようになって欲しくないから。

 

 “始まりはある一人の職員、エージェント・蒼井が休暇中に、趣味の写真撮影のために緑地帯を散策していた時、木々の間から教会が突然現れたんだそうだ”

 

 ミカ「うえぇ、教会かぁ……」

 

 “シスターフッドとは関係ないよ?教会自体は似ているようだけどね。シスターフッドの教会って、尖り屋根の十字架とか、西日が差す様が、実に荘厳だよね”

 

 ミカ「それは否定しないよ?」

 

 “まあ、それでエージェント・蒼井は教会に何枚か撮っている内に、中がどうなっているのか気になってきて、玄関の扉が開いていたから覗いたんだそうだ。

 中はがらんとして、人影はなかったみたい。だけどエージェント・蒼井はその教会の神聖な雰囲気に、思わず気圧されたそうだ。それで引き返そうとしたら声をかけられたそうだ。

 

 『聖カタリナ告解教会へようこそ』

 

 って。誰もいなかった筈なのに気がついたらシスターが祭壇の前に立っていたようだ”

 

 ミカ「ゆ、幽霊じゃんね」

 

 サオリ「いや、エージェントですら認識できないほど隠密に長けていたのでは?」

 

 “……シスターの名前はカタリナというらしい。シスター・カタリナにエージェント・蒼井は覗きを謝ったそうだ。そんな彼に彼女は

 

 『教会は万人に開かれております』

 

 と言って微笑んだそうだ。エージェント・蒼井曰く、綺麗で、優しそうで、どことなく、彼の恋人だった人に似ていたそうだ”

 

 ミカ「なんか、シスターフッドが言いそうなセリフじゃん。嫌だな。でも恋人かぁ、いいなぁ」

 

 “エージェント・蒼井は懺悔室まで案内されたようだ。どういう訳か知らないうちにそのような流れになったみたいだ。そして、彼女と差し向かえになった時シスター・カタリナは エージェント・蒼井の昔のあやまちを言い当てたんだ。

 

 ミカ「昔のあやまち?」

 

 “ああ、エージェント・蒼井はそのあやまちから罪の意識に苛まれていたようだ。そんな彼にシスター・カタリナは続けた。

 

 『神は七度悔い改める者を、七度お許しになります。ここで償いをなさい。さすれば神は貴方のあやまちを帳消しにしてくれるでしょう』

 

 そう話したんだ。

 

 ミカ「あやまちを帳消し?何かの例え?」

 

 “いや、文字通りの意味だ。例えば、サオリが私を撃ち抜いたこともこの脇腹の銃痕ごとなかったことになる”

 

 サオリ「それはっ……だが、そんなことありえない」

 

 “いや、あり得るんだ。私の世界では、神も居るし、現実改変も絵空事ではない。エージェント・蒼井も真実だと確信したそうだ”

 

 ミカ「先生の世界ってよく滅びなかったね」

 

 “いや、何度か滅んだけど。じゃなくて、エージェント・蒼井は急に恐ろしくなって教会を飛び出したようで、聞きそびれたようだ。ぐずぐずしてると、彼女の提案を受け入れてしまいそうでな、とも話していたよ”

 

 サオリ「……それが本当なら、魅力的だな」

 

 “だが、シスター・カタリナが出現する条件がある。条件が合わなければ、シスター・カタリナに会うことはないんだ”

 

 ミカ「それで、その条件は?」

 

 “1つ、入場者が殺人罪、過失致死罪、強姦罪を犯したことがあること、2つ、入場者が単独であること、途中で第三者が入ってきたらシスター・カタリナは消失する。3つ、教会内に入場者がいない。これはこの上記に通ずるものだね”

 

 ミカ「全部、重罪だね」

 

 サオリ「エージェント・蒼井も条件に合っていたのか」

 

 ミカ「でもどうして?」

 

 “……エージェント・蒼井のかつての相棒にして、敵対組織のスパイだった人を殺したんだ。そしてその人は彼の……エージェント・蒼井の恋人だった”

 

 ミカ「裏切り者……か」

 

 サオリ「……アズサ」

 

 “彼の恋人であり、スパイであったエージェント・片岡。いや、片岡理奈が行おうとしていたことは財団ヘイロー事件と同じ……もしかしたらそれ以上の被害になるかもしれないものだった。最悪、世界が滅んでしまうと考えられていたからね。

 だから、殺したんだ。だが、彼はそのことをずっと悔やんでいたようだ。己の罪と思うほどに”

 

 ミカ「そんな……」

 

 サオリ「当然と言えば当然だが……しかし、あまりにも……」

 

 ミカ「結局、『償い』って何をするの?」

 

 “シスター・カタリナの言う『償い』の正体。それは『拷問』だよ”

 

 ミカ「ご、拷問!?」

 

 サオリ「つまり、苦痛を持って罪を償え、というわけだな。私も同じようなことをされていたものだ」

 

 ミカ「サオリ、さらっと重いこと言わないでほしいな」

 

 “サオリ、二度とそんなことはないから。私が許さないから。

 ……シスター・カタリナの『償い』を了承した時、了承した者を異空間に飛ばし、そこで拷問を行う。その場所はGPSですら反応しない場所で助けがこない。唯一、通信機だけは繋がるようだけどね。

 拷問は死ぬまで行われる。そして、死んだ後、蘇えり、再び拷問される。この拷問は死んでも続くんだ。シスター・カタリナの言う神が許すまで”

 

 サオリ「あの苦痛を何度もか。きついな」

 

 ミカ「シスターフッドみたいだね」

 

 “ミカ、『過去の』が抜けてるよ。……普通はそんなことされれば精神が持たない。そんな教会にエージェント・蒼井は、再び足を踏み入れた。己の贖罪のために”

 

 ミカ「罪の意識に耐えられなかったんだね。少し分かる気がするよ」

 

 “彼は初めてシスターに会った時のことを話していた。

 

 『初めて会った時、シスターに、こう言われたんだ。 「片岡様を殺めてしまったこと、後悔なさっておいでなのでしょう?」って』

 

 『かつての相棒、エージェント・片岡は敵対組織のスパイだった。俺の説得に応じず、重大な違反を犯そうとした。あのままでは、世界が滅んでいただろう。仕方なかった、後悔なんかしていない。つもりだったのに。はは、シスターに一言指摘されたら、あっさり気付いちまった。ずっと、自分を誤魔化していたことに!』

 

 ……相棒であり、恋人でもあった人を殺したんだ。理屈は理解していても心は悲鳴をあげていたのかもしれない”

 

 サオリ「それほどまでに彼は罪悪感に苛まれていたのだろうな」

 

 “そうだろうね。私も分からなくはない。彼は『償い』を受けることになる。

 1回目は火を使ったものだった。2回目は鋼鉄の乙女。3回目は吊し上げられ、4回目は身体を上下に引っ張られ、5回目は水責め。

 できるだけ苦しめるようにできている拷問を何度も何度も受けた。

 

 ミカ「うわぁ、殺す気満々じゃんね」

 

 サオリ「私が経験した拷問より殺意がある。目的が苦しめて殺すことだからだろう」

 

 “その苦しみからか、弱音を吐くほどだ。彼が所持していた通信機からの記録では257時間19分も拷問されていた”

 

 サオリ「流石に私でも耐えることはできそうにないな」

 

 ミカ「そんなにも恋人のことを愛していたんだね……」

 

 “エージェント・蒼井ら通信機のバッテリーが切れる前に後輩であるエージェント・戸神にメッセージを残していた。

 

 『通信機のバッテリーが切れかかってる、これが最後の通信になりそうだ。それに、さすがに限界みたいだ。この化物の顔が、理奈に見えてきてる。何だか、この償いが永遠に終わらないとしても、それはそれでいいような。理奈と一緒にいられるなら。そうだ、伝言頼めるかな。かわいい後輩の、エージェント・戸神に。不甲斐ない先輩からの、最後の助言だ。いいか、お前は。

 

 俺みたいになるなよ』

 

 エージェント・蒼井は20年と3ヶ月後に『償い』を完了することになる。

 

 ミカ「そっか、彼は救われたんだね」

 

 サオリ「彼が殺した恋人のエージェント・片岡も生き返りハッピーエンドで終わったのか」

 

 “……それならどれほど良かったか”

 

 ミカ「え?」

 

 “最初に言っただろう?『自罰的になっちゃダメだ』って。これは己の罪に向き合っているつもりで本当の意味で向き合っていなかった一人の男のお話なのだから”

 




 タイトル: SCP-606-JP - 拷問教会
 作者: ykamikura
 ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-606-jp
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。