【宇宙から】ブルアカ✖️恩人三部作のクロスオーバー【キヴォトスへ】   作:財団先生

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ミカ、サオリ編 転

 注文していた商品を食べ終えた後、私は話を再開した。

 

 “話を続けようか。もし私が償いをするのならば彼のような償い方がいいのではないかと考えている。

 最初はとある廃デパートを取り壊したのにも関わらず、翌日に完全に形状を復元していたことがきっかけだった。

 この廃デパートの内部調査のために一人の男を調査員として派遣したんだ”

 

 “調査員の彼にはこの廃デパートの異常性を伝え、同意の上で記録のためのカメラとマイクを持たせ、調査を行ってもらった。

 

 ミカ「異常性?」

 

 “そう。異常性については後で話そう。”

 

 ミカ「えー、残念」

 

 “気を取り直して。記録映像ではまず、調査員がデパート内部に侵入するところから始まった。

 

 博士『まずは1階の探索をしてください。気になる物を見つけたら即座に報告してください』

 

 内部調査のために博士からの指示を受け、調査を開始した。

 

 調査員『あー……えっとエレベーターがあるな。でも動いていないみたいだ。俺の知ってる店の支店が幾つもあるな、人は居ないが』

 

 調査中、アナウンスが流れる。

 

 本日はご来店頂き誠にありがとうございます。心ゆくまでお楽しみくださいませ。

 

 調査員『アナウンスだけ正常に動いてるのか?』

 

 そのアナウンスに調査員は疑問を抱いた。何もかもが止まっているはずの廃デパートで唯一生きているアナウンスに。

 

 博士『声に特徴はありますか?』

 

 調査員『ちっちゃい女の子の声だ。なんかおかしいな、子供がアナウンスなんて』

 

 アナウンスを不思議がる調査員を尻目に再びアナウンスが流れた。

 

 お知らせです。調査員さん、お母さんがお待ちでした。

 

 調査員『えーと……? これはつまり?』

 

 博士『異常性についての説明は受けていますね?』

 

 廃デパートの異常性。それは廃デパート内部に人間が侵入すると3分毎に『お知らせです。[対象A]さん、[対象B]さんがお待ちでした』という内容のアナウンスが放送される。

 対象Aは廃デパート内部に侵入している人物を差し、対象Bは選定された対象Aと直接、間接を問わず面識のある人物が選定され、「家族」や「友人」などの言葉を用いて一度に複数人が指定される場合がある。

 そして、このアナウンスが完了すると対象Bは対象Aに関する記憶を失い、どんな手段を用いても対象Aを知覚出来なくなる。

 上記の文章以外のアナウンスが放送される場合もあるが、それらに異常性はない。

 つまり、アナウンスに名前を呼ばれた対象Aは対象Bから永遠に忘れられる異常性があるということだ”

 

 サオリ「この男は自分の母親から忘れられたのか」

 

 ミカ「この男の人は異常性を把握していているのに、どうしてこの調査に同意したのかな?忘れられたい何かがあったのかな?」

 

 “母親から忘れられた調査員だが、調査は続行される。今回の目的は内部調査及び対象Bに該当する人物が居なくなった場合のアナウンス内容の調査だからだ。

 

 調査員『ああ、ああ……まぁ、 そうか……次はどうするべきだ?』

 

 博士『支店のキッチンが動くかどうか確かめてくれますか?』

 

 調査員は近くにあるレストランの支店に立ち入り、調査し始めた。

 

 調査員『おお、食品は全部サンプルだな。水も置いてあるけどそれも粘土かなんかで作られてる。キッチンに向かうぞ』

 

 調査員がレストランのキッチンに侵入する。

 

 博士『色々動かしてみてください』

 

 調査員は指示通り周囲の設備を利用しようと試みるが、電気も水道も通っていないため、利用できなかった。

 

 調査員『ダメだな。レンジも水道も繋がってない』

 

 お知らせです。調査員さん、弟さんがお待ちでした。

 

 調査員『容赦ねぇな。……おい博士、どこも動かないみたいだぞ』

 

 博士『分かりました、2階へ向かってください』

 

 調査員は2階へ移動し始めた”

 

 サオリ「次は弟に忘れられたか」

 

 ミカ「本当に容赦ないね」

 

 “調査員は2階に到着した。

 

 調査員『当然っちゃ当然だけどエスカレーターは動いて無いな』

 

 博士『1階と同じように大まかに探索してください』

 

 調査員『了解。見た所、果物野菜コーナーって感じだな』

 

 調査員は2階の探索を開始したと同時にアナウンスが流れる。

 

 お知らせです。調査員さん、被害者の娘さんがお待ちでした。

 

 調査員『あぁ……なんつーか……』

 

 博士『休憩は認められていますが、調査は速やかにお願いします』

 

 調査員『おう……調査といってもな……多分全部サンプルだろ、これ』

 

 調査員が2階の探索を再開した”

 

 ミカ「被害者?」

 

 “この男は一人の男を殺し、死刑囚となった犯罪者だ”

 

 サオリ「殺人……か。それが忘れられたいことなのか」

 

 “2階の調査中

 

 お知らせです。調査員さん、研究員さんがお待ちでした。

 

 博士『こちらの研究員です。何も無ければ3階に上がってください。

 

 調査員『あぁ、だよな。聞き覚えの無い名前だったから驚いたよ。3階ね、了解』

 

 調査員は3階への移動を開始した。その道中、調査員は博士に質問した。

 

 調査員『放送室には入れないんだっけ?』

 

 博士『はい』

 

 調査員『そうか……あのアナウンスなんだけどさ、なんか違和感があるんだよな』

 

 博士『詳しく聞かせて貰えますか?』

 

 調査員『あーその、ここって人が居ないじゃんか。だからその、アナウンスが鳴るのは異常だよな。遠隔音声か、そうでもなきゃ幽霊かなって思うんだけど、ハハハ……その割にはアナウンスの度に、本気で呼ばれてるような感じがするんだ……伝わったかな』

 

 博士『現状ではなんとも言えません。もし更に何か感じるようであれば報告してください』”

 

 ミカ「本気で呼ばれてる?アナウンスに意思を感じるってことかな?」

 

 サオリ「アナウンスにも何かしら秘密がありそうだな」

 

 “調査員は3階に到達した。

 

 お知らせです。調査員さん、親戚の皆さんがお待ちでした。

 

 調査員『…………3階は服売り場だ。レディースが多い』

 

 博士『了解です。探索して何かあれば報告してください』

 

 調査員『分かった。あと、さっき報告した感情は今も感じてる。語りかけられてる気分だ』

 

 博士『記録しておきます』

 

 調査員が3階の探索を始めた”

 

 サオリ「『親戚の皆さん』か。一気に忘れられてしまったな」

 

 ミカ「やっぱりアナウンスに何かしらの意思があるのかもね」

 

 “3階の探索中にもアナウンスは流れる。

 

 お知らせです。調査員さん、同居人さんがお待ちでした。

 

 調査員『子供の声は苦手だな。女の声ともなるとかなり苦手だ』

 

 博士『同居人との関係を教えてくれますか?

 

 調査員『 あいつか、仲良かったな……もしかして、俺と深く関わってる人間だから、優先的に呼ばれちまったのかな』

 

 博士『考慮には値すると思います』

 

 調査員『ん、分かった』

 

 調査員が探索を続行するが、調査員は初めて弱音を吐いた。

 

 調査員『もう気付いてるとは思うんだけどさ』

 

 博士『何がですか?』

 

 調査員『俺はこの調査に志願した事を後悔してる。「忘れて貰えるなんて最高じゃねぇか」なんて軽い気持ちで志願したんだ。「そしてそのまま死ねるのなら理想だな」とも思った。でもさ……皆が俺を忘れていく、皆が俺を感じられなくなる。怖くてたまらないね。嫌になって来たよ』”

 

 ミカ「そう……だよね。やっぱり、忘れられたくないよね。ナギちゃんやセイアちゃんに忘れられるなんて耐えられないもん」

 

 サオリ「私もミカに同意だ。アリウスの皆に忘れられるのは……辛いな」

 

 “そうだと思う。だけど、これは調査の一環だ。だから博士は調査員に言う。

 

 博士『調査の中断は出来ません。私達があなたを知覚不能になった時に備え、あなたと面識の無い警備員がデパートの入り口に待機しています』

 

 調査員『いやいや、脱出しようなんて思ってねぇよ。ただ、これは本当に地獄だ。どんな性悪野郎がこんなシステムを思いつくんだか』

 

 お知らせです。調査員さん、知り合いさんがお待ちでした』

 

 博士『財団の人間です』

 

 調査員『分かった。3階はあらかた映像に収めた。4階に向かって良いか?』

 

 博士『お願いします』

 

 調査員が4階への移動し始めた”

 

 ミカ「ほんっと、そうだよね。こんなシステムを考えるなんてどうかしてるよ!」

 

 サオリ「何を目的にこんなものを作ったんだろうな。少なくともまともな人間じゃないのは確かだ」

 

 “人間じゃなくて鬼だけどね。あいつらまともな感性してないし”

 

 ミカ「先生も人でなしって思ってるんだね」

 

 “そういうことじゃないけど……まあ、いいや。

 調査員が4階へ向かう道中、博士に疑問を投げかける。

 

 調査員『なぁ、アナウンスが速くなってないか?』

 

 博士『いえ、ラップタイムは正常ですが。何か感じましたか?』

 

 調査員『なんだろう、アナウンスが焦ってんのかな……言葉にし辛い。アナウンスを読み上げる速度はどうだ? 速くなってないか?』

 

 博士『……それは記録対象外でしたね。可能性はあるかも知れませんが、音声記録を持ち帰ってくれない事には分析出来ません』

 

 調査員『了解、最後まで調査するよ』”

 

 ミカ「アナウンスに人間味に溢れているみたいだね」

 

 サオリ「今までは機械だと思っていたが、もしかして人間がアナウンスをしているのか?いや、しかし……」

 

 “調査員が4階に到達した。

 

 お知らせです。調査員さん、博士さんがお待ちでした。

 

 調査員『四階は本屋とか文房具とかが売られてるな。んで、今のアナウンスは?』

 

 調査員『博士?おい博士ー?……あぁ、なるほど。今のアナウンスでもうお別れか。まぁ、どうせ代わりが居るだろ?……探索を続けるぞ?』

 

 お知らせです。調査員さん、同級生の皆さんがお待ちでした。

 

 調査員『焦ってんのか?そんな一気にやるこた無いだろ……?……考えたんだが、お前やっぱり……』

 

 研究員『 すみません、博士と交代しました。

 

 調査員『え、ああ。よろしく』

 

 研究員『交代の最中に何かおかしな点はありましたか?』

 

 調査員『アナウンスが1件来たよ、俺の同級生は俺のことをすっかり忘れちまったみたいだ。思い出がありありと浮かぶな。こんな時に限って楽しかった思い出がゴロゴロと……』

 

 研究員『把握しました。』

 

 調査員『さっきの博士は……俺に関する記憶を全部失ってるんだよな? じゃあ俺が報告した事は全部報告し直した方が良いか?』

 

 研究員『いえ、音声は記録中ですので大丈夫です』

 

 調査員『 そうか。ざっくり言うと、俺はあのアナウンスが人間味に溢れてるように聞こえる。他は……そうだな、アナウンスが早くなってるように感じてる。子供の高い声だからそう聞こえるだけかもしれん』

 

 研究員『分かりました、4階の探索を行ってください』”

 

 ミカ「ついに博士にまで忘れられちゃった……それに同級生の全員にまで」

 

 サオリ「目の前で忘れられるのを見せられては耐えられないな」

 

 ミカ「でもやっぱり、アナウンスに人間味に溢れてるみたいだね」

 

 サオリ「やはり本当に人間が?」

 

 “調査員が4階の探索を始めた。

 

 お知らせです。調査員さん、被害者一族の皆さんがお待ちでした。

 

 調査員『……あぁくそ。恨んでくれてたって良いから俺を忘れないでくれ……』

 

 調査員はしばらく立ち止まってしまった”

 

 ミカ「ついに立ち止まっちゃった……」

 

 サオリ「恨んでくれていいから忘れないで……か。想像以上に忘れられるというものは辛いことなのだな」

 

 “調査員はしばらくして調査を再開した。

 

 調査員『書籍とかは全部見て回る必要あるか?』

 

 研究員『概ね映像に収まっていれば結構です』

 

 調査員『分かった』

 

 調査員が書籍コーナーの調査を終え、文房具コーナーに立ち入った。

 

 お知らせです。調査員さん、警察の皆さんがお待ちでした。

 

 調査員『おい、お前はどういう優先度でそれをやってんだ?』

 

 研究員『調査員、誰かと話していますか?』

 

 調査員『アナウンスとだよ。無意味だろうけどさ』

 

 研究員『そうですか。先程「人間味」というワードを報告していましたが、現在はどうですか?』

 

 調査員『現在も変わらずだ』

 

 研究員『分かりました。概ね探索が完了したら報告してください』

 

 調査員が文房具コーナーの探索を開始した。

 

 お知らせです。調査員さん、同僚の皆さんがお待ちでした。

 

 調査員『……このアナウンスに話しかけるのは無しか?』

 

 研究員『可能な限り不要な発言は控えてください。それでは5階に向かってください』

 

 調査員『分かったよ』

 

 そして、最上階である、5階に到着する”

 

 ミカ「最上階……おそらく何かあるはず……アナウンスの謎が分かるかも」

 

 “5階には3つの扉があった。

 

 調査員『ボイラー室と、空調室みたいなのと、ちょっと新しめの扉があるな』

 

 研究員『その新しい扉が放送室です。扉の上に「放送室」とプレートが掛かっているはずです』

 

 調査員は放送室であろう扉の前に立った。

 

 調査員『なんか、書いてあるぞ?』

 

 研究員『読み上げてくれますか?』

 

 調査員『ああ、赤いマーカーで「迷子通知システム(自動) 停電中でも動くようにハードウェアを人高性能にしました。 -如月工務店」って書かれてる』

 

 研究員『記録しました、ありがとうございます』”

 

 サオリ「如月工務店?先生は知っているか?」

 

 “知っている。一言で言うなら『人でなしの集まり』だ。関わらないことをオススメするよ”

 

 ミカ「先生にそこまで言わせるなんて相当なんだね……」

 

 “2つの意味で人でなしだからな。

 調査員は放送室の扉を何度か開けようとするが、開くことはなかった。

 

 調査員『まぁ、無理だな』

 

 研究員『分かりました……内部調査は以上です。以降は対象Bに該当する人物が居なくなった場合のアナウンスを記録する事が目的となりますので、その場で待機してください。

 今後は基本的に指示を行いませんし、もし私達があなたを知覚不能になっても代理は立てません。脱走は無駄なものと考えてください。十分なデータが取れたと判断出来たら帰還してください』

 

 調査員『分かった。んじゃあな』

 

 研究員『 ええ、では』

 

 調査員はその場に座り込んだ。

 

 お知らせです。調査員さん、勤務先の皆さんがお待ちでした。

 

 通信が途絶。調査員は財団の人間からも忘れられた。

 

 調査員『……これでもう誰も俺を見ていないのか。でも、お前はずっと俺を見ているんだろ?』

 

 本日はご来店頂き誠にありがとうございます。

 

 調査員『そりゃどうも』

 

 しばらく沈黙が流れた”

 

 ミカ「2度も目の前で……辛いなぁ」

 

 サオリ「全ての人から忘れられることがこの人にとっての贖罪なのか?」

 

 “辛いだろうが、贖罪じゃない。それに彼はまだ全ての人間から忘れられたわけじゃない。続けようか。

 2分ほど立った時、調査員は話し始める。

 

 調査員『なぁ、部屋の中に誰か居るか?子供がアナウンスをするなんて普通じゃないぞ、それにハードウェアは……』

 

 音源不明の映像からも音源は視認出来ないノイズが響いた。

 

 調査員『今のは返事か?』

 

 お知らせです。調査員さん、友達の皆さんがお待ちでした。

 

 調査員『……いよいよ俺は生きてる意味が無くなってきたな、えぇ? なぁ、誰か居るのか?』

 

 再び、音源不明のノイズが響く。

 

 調査員『しっかり話してくれ』

 

 ???『ずっと、一人』

 

 少女の声が聞こえた調査員は立ち上がり、放送室の扉の前に立つ。

 

 調査員『なんだ、ちゃんと返事出来るじゃんか。ずっと一人……か、俺ももうすぐそうなるぞ』

 

 ???『 ……なんで?』

 

 調査員『 なんでってそりゃ……このアナウンスのせいだ』

 

 お知らせです。調査員さん、知り合いの皆さんがお待ちでした』

 

 調査員『ほらな』

 

 ???『なんで逃げないの?私と同じになっちゃうのに……』

 

 調査員『……お前と同じ?お前は誰なんだ?早くここを開けてくれ、直接話したい』

 

 ???『私はこのデパートの、最後の迷子だった』

 

 調査員『……続けてくれ』

 

 ???『皆が私を忘れたの……お母さんもお父さんも、皆。そして私は出られなくなったの』

 

 調査員『……そして、俺もそうなろうとしてるのか』

 

 ???『 だから早く逃げて。ここは辛いの、ずっと出られない』

 

 調査員『ああ、本当に辛いな、良く分かるよ。でも俺は自由に逃げ回れる身じゃないんだ』

 

 ???『 逃げて、逃げて。ここが開いたらもう手遅れになっちゃう』

 

 調査員『もう十分手遅れだ。それに放送室に二人はちょっと狭いだろうし、アナウンス役は一人で十分だ。そう思わないか?そしてアナウンスをやるのは普通は大人だ、子供に任せる仕事じゃない』

 

 ???『……なにをするの?』

 

 調査員『俺は犯罪者だから償いをしなくちゃダメなんだ。でも皆は俺を忘れちまっただろうから、代わりにお前に償う事にする』

 

 2分の沈黙の後、最後のアナウンスが流れる。

 

 お知らせです。調査員さん、皆さんがお待ちでした。

 

 カチャンっと鍵の開く音が鳴る。

 

 調査員『博士。博士、扉……開いたぞ』

 

 2,3秒間の激しいノイズ 映像が途絶した。

 

 調査員『よう、お嬢ちゃん』

 

 数分後、待機していた警備員が廃デパートから幼い女性が出て来たのを発見し、保護された。彼女は調査員に携帯させたカメラ、マイクを所持していた。

 そして、この調査以降、「少女の声」と形容されていたアナウンスが調査員の声質に変化しました。調査員はいまだ行方不明になっている”

 

 ミカ「これが、調査員さんの償い方なんだね……ぐすっ」

 

 サオリ「そうか。彼は少女の身代わりになる事にしたのか」

 

 ミカは涙を流し、サオリは天井を見上げる。そんな2人に対して私は話を続けた。

 

 “彼は、罪から逃げるために調査に同意した。だけど、『忘れられる』ことの恐怖を知った。恨まれていてもいいから忘れないでと願うほどに。

 少女を助けたのは被害者の娘への、家族への贖罪のためだったのかもしれない。同じ立場になった少女を憐れんだのかもしれない。

 だけど、彼の選択は廃デパートの被害者である未来のある1人の少女を自由にした。

 もし、君たちが償いをするのなら、過去に囚われるのではなく、未来のために何かをしてほしいと思う。それがいつか、他の誰かを助けることになると思っている。調査員の彼のようにね”

 

 キーンコーンカーンコーン♪

 

 チャイムが鳴る。昼休みは終わりのようだ。

 

 “さて、学校に戻ろうか”

 

 ミカ「ぐすっ……このままじゃ人前に出られないから、ちょっとお手洗いに行ってくるね」

 

 “分かった。少し待っているよ”

 

 サオリ「なあ、先生」

 

 “どうしたんだい?”

 

 サオリ「助けられた子はどうなったんだ?」

 

 “知りたい?”

 

 サオリ「ああ。教えてくれ」

 

 “じゃあ、今日の夜にアリウスの皆のところに行くから、ついてきて”

 

 サオリ「分かった」

 

 私はサオリと別れ、後にミカと合流した。

 




タイトル: SCP-544-JP - 孤独な放送室
 作者: DocRone
 ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-544-jp
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