【宇宙から】ブルアカ✖️恩人三部作のクロスオーバー【キヴォトスへ】 作:財団先生
シャーレの部室。先生とサオリは業務をこなしていた。
“少し休憩しようか”
ある程度片付けた書類の山を見て休みを提案する。私は立ち上がりシャーレ備え付けの冷蔵庫から缶コーヒーを二つ取り出し、サオリに渡した。
缶のプルタブを開けて一口飲む。
“ふぅ…付き合せちゃってごめんね。サオリ”
サオリ「謝る必要はないぞ先生。このくらい容易いことだ」
『謝る必要はありません(先生)。このくらいは容易いことです』
脳裏に浮かぶ雛倉先輩の声。彼女を見ているとどうにも先輩を思い出してしまう。
もう一口、コーヒーを飲む。
サオリ「少しいいか?先生」
“どうしたの?”
サオリ「先生に聞きたいことがあるベアトリーチェのことだ」
“アレがどうしたの?”
サオリ「先生がベアトリーチェに激昂したことがあっただろう?その時の先生の表情がどこか私怨を感じられたんだ」
“……”
私怨があった。そう言われると否定できない。アレは私が最も嫌う存在だ。恩人達を否定し、雛倉先輩と同じ目に合わせた。冷静でいられた自信はない。
サオリ「もしよかったら話してほしい。先生がどうしてそこまで激昂したのかを」
“……君と同じような環境にいた人を知っているからかな…”
サオリ「私と?」
サオリの問いにこくりと頷いた。
……先輩。すみません。彼女が前に進めるようにあなたのこと話します。
“雛倉先輩…前職で新人教育をしてくれた先輩がいたんだ。先輩の教えのおかげで助かった経験は数えきれない”
“雛倉先輩は本当に君によく似ている。冷徹なようでどこか激情家。責任感も強い。そして何より彼女の過去も虚しいものだった”
サオリ「Vanitas vanitatum et omnia vanitas」
“君たちがよく言っているその言葉。『全ては虚しい。どこまで行っても、全てはただ虚しいものだ』という意味だったね。前職の経験上、私は否定できない。でも君は…君たちは前に進もうとしている。だから君に話すよ。私の尊敬する雛倉先輩の話”
“始まりは10代前半の女児がドレスを着用し儀仗を所持した状態で街中で発見されたことから始まった。彼女のことを警察が保護、その後私の前職場で調査をすることにした。前職の研究者達は最初、彼女は異世界からやってきたと考えていた”
サオリ「異世界?先生のようにか?」
“そう。私がキヴォトスにやってきたように彼女もまた異世界からやってきたと考えられていたんだ”
サオリ「それならば私より先生の方が似ている環境なのでは?」
“最後まで聞けば分かるよ”
“研究者達は彼女にインタビューをした。彼女が王国第一皇女であること、両親である国王と女王の元で5人の家臣と20人の召使と生活していたこと、そして皆が狂ったように笑ったあと気が付いたら路上にいたことをそのことを話した彼女は不明瞭な呟きを繰り返し始めたのでインタビューを一時中断した”
サオリ「…よく分からないが嫌な感じがするな」
“彼女を落ち着かせてからインタビューを再開した。彼女の国は荒れ果てた大地の中に建つ唯一の王国であること、周りは過去の魔法大戦で荒廃してしまったことそして彼女は炎の魔法を使えることを話した”
サオリ「魔法か。そんなものがあるのか?」
“その事を調べるために実際にやってもらった。彼女は2時間かけ魔法陣を作った後、魔法の呪文を唱えた。『火と炎を司る我が友よ、今一度我に力を貸してほしい。その聖なる火を持って敵を打ち砕け、Mein Leben war sinnlos』。彼女が呪文を唱えた結果……何も起こらなかった”
サオリ「どういうことだ?魔法を使えるじゃなかったのか?」
“当然、魔法を使えなかった少女は混乱した。何度も何度も同じ言葉を繰り返した。『Mein Leben war sinnlos! Mein Leben war sinnlos!』っと。そんな彼女に研究者は聞いたんだ。その言葉の意味を理解していますか?っと”
サオリ「意味?魔法の呪文ではないのか?」
“『Mein Leben war sinnlos』この言葉はドイツという国の言語だ。それを翻訳すると、『私の人生は無意味だった』という意味になる”
サオリ「は?」
“ほかの呪文も似たようなもので『私は愚かな犬』『私はただの人間』といった意味になる”
サオリ「先生。これは一体どういう事だ?」
呪文に隠れた悪意の言葉。その意味に彼女は絶句していた。私も初めて聞かされた時は意味が分からなかった。
“『私の14歳の誕生会の時です。久々に王国内の全ての人間が城に揃い、私の誕生日を祝福してくれました。両親が"今日はあなたのために最大のサプライズを用意した"と言い、皆が微笑みながら何か準備を始めたところまでははっきりと覚えています。』
『おそらくそこから先は私は夢を見ていたのだと思います。あんなことがあるはずもない。』
『あれは夢です。夢なんですよ。』
『何か仕掛けを作動させた途端に城がパタンと倒れました。城はただの板でした。私が狼狽えているとその瞬間全員が一斉に笑い出しました。そして皆が、声を揃えて、揃えて…』
『 「ドッキリ大成功」と…そして私の顔を指さして皆がゲラゲラと笑い出して…あれは夢です。夢に決まっています。』
後の彼女へのインタビューで語った事だ。”
サオリ「何だそれは!?ドッキリだと!?そんなくだらない事で彼女はこんな目にあったというのか!?」
サオリの嘆きにも近い叫び声がシャーレの部室に響く。
“後の調査で彼女の供述に合致した廃遊園地跡とされていた土地が発見された。魔法の練習場所としていた箇所を調査したところ、特撮に用いられる火炎の発射機構が発見され、廃遊園地の存在していた土地の持ち主の調査を行ったところ、彼女の養育者とみられる人物の存在が浮上した”
サオリ「そいつはどうしてそんなことをしたんだ。場合によっては…」
“落ち着いてくれサオリ。奴のことは大丈夫だ”
先輩の話によるとDクラス職員になったらしい。少なくとも楽には死ねないだろう。
“そいつへのインタビューで言っていたことだ。
『仲間内で面白いことをしようと色々話してたんだが、ある日新しく入ってきた奴が人間を”飼育”したら面白いんじゃないかと提案したんだ。そしてその飼育した人間に今まで飼育していたことをバラすとどんな顔をするか、とね。面白いことに飢えていた私たちはそれに飛びついたわけだ、本当に凄いこと考える奴がいるもんだと感心したよ。』
『商売柄今まで人が嘆き苦しみ絶望する姿を多く見ていたが、純粋な子供が絶望する姿を見るのが最も面白かったんだ。そして最高のお膳立てをしてその顔を見られた。大変だったがその苦労に見合うだけの価値はあったと思うよ。』
地獄に堕ちろやゴミどもが[検閲済み]にして[検閲済み]してやる…じゃなくて結論としては彼女は醜い大人によって10年以上も無駄な人生を歩まされたんだ”
つい口から本音が出てしまった。全く教育に悪い。
サオリ「確かにベアトリーチェに散策利用されてしまった私たちに繋がるものがあるな」
“雛倉先輩は当時のことを話してくれたよ。
『自分が信じてきたものが虚像であり、歩んでいた人生が悪意によって作られた無駄な物だった。私の心は虚しさでいっぱいだった。自分が生きている意味すら見出せなくなっていた』
『自分自身が分からなくなって、迷って悩んであの時の私は絶望と虚しさの中で生きていた』
『そんな私を救ってくれたのが立花先輩だった』
『彼女のおかげで今がある。だから今度は私が後輩の手助けをしたいんだ』
サオリ。君は今、自分探しをしていて分からないこともたくさんあるだろう。でも大丈夫。君にならできるよ。先輩が自分を見つけれたように”
サオリ「……先生。ありがとう」
“業務、再開しようか”
サオリ「そうだな」
サオリなら大丈夫。人生は長いからいつかきっと…。
立花先輩はこれに出てきます。事件の黒幕が出てきますが、本来の目的の為に事件を起こしています。つまり黒幕にとって彼女たちはどうでもいい存在なのです。
SCP-014-JP-EXのtale『君のその顔が…』
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SCP-014-JP-EX 『君のその顔が見たくて』
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