【宇宙から】ブルアカ✖️恩人三部作のクロスオーバー【キヴォトスへ】 作:財団先生
ツルギはキヴォトスに来て初めての趣味仲間だ。私達は恋愛小説や漫画を交換してよく読み、感想を言い合うような関係だ。
ツルギ「せ、先生。き、今日交換する本、も、持ってきました」
“ありがとうツルギ”
気に入った本を交換して読み合う交流をして以来、よくツルギはよくシャーレの部室にやってきてくれる。
私と同じように彼女も趣味仲間ができて嬉しいのだろう。
“はい、これが私のオススメだよ”
ツルギの本を受け取った私は代わりに私のオススメを差し出す。
ツルギ「あ、ありがとうございます」
ツルギは嬉しそうな顔でお礼を言った。
ツルギ「先生」
“どうしたの?”
ツルギ「先生は、その…えっと…決まった恋愛ジャンルしか読んでないですよね。ぜ、前回のは『記憶喪失の恋人が思い出すまで待ち続ける恋愛小説』でしたし、前々回もその…『遠距離恋愛の小説』でした。そ、その…どうしてで、しょうか…」
“あー…意識してなかったけど考えてみればそうだね”
考えてみれば私は待ち続ける恋愛ものを好んで読んでいる。それは佐々木先輩の影響なのだろう。
“ツルギ。少し恋話をしようか”
ツルギ「こ、コイバナ…恋話!?えっと、その、あの…ぎゃあああああ〜〜!」
“ちょっ、ツルギ落ち着いて!”
嬉しさか恥ずかしさか、声を荒げたツルギをどうにか落ち着かせた。
考えれば恋話なんて青春そのもの。青春したい彼女にとって嬉しいことだったのだろう。
ツルギ「せ、先生…すみません…」
“大丈夫。気にしてないよ。それよりもとある先輩の恋の話をしよう。恋愛ものが好きな君なら気に入ってくれると思う。私には佐々木という名前の先輩がいる。彼は妻がいてね。その二人のお話だ”
“中学を卒業する子供たちの卒業式が行われた日。佐々木先輩は、一枚のラブレターを好きな人の下駄箱に入れました。春から違う高校に通ってしまうのでその前に思いだけを伝えようと好きた人が来るまで校門でまちつづけていました”
ツルギ「せ、青春だ。ほ…本当に小説みたいな恋愛をしてる…」
ツルギの顔からは楽しみなのが分かる笑顔をしていた。怖い笑顔だけど、それが可愛くも思えるから不思議だ。
“ですが、その青春は一つの境界によって引き裂かれてしまいました。佐々木先輩の目の前に境界の膜が現れ、学校全体を覆ってしまいました”
“慌てて境界に入ろうとした佐々木先輩でしたが、入ることができませんでした。どうにかしようと境界を触っていると、不可解な点に気がついたのです”
ツルギ「ふ、不可解な点?そ、それは一体…」
“佐々木先輩は驚きました。なぜならば幕の中にいるあらゆるものが止まっていたからです”
ツルギ「と、止まっていた?じ、時間停止?先生…これは一体」
“この異常な事態に私の前職の組織が解明に取り組みました。そして、境界内の時間が恐ろしいほどにゆっくりになっていることが分かりました。内部で一番近い人間が境界に触れるのに200年かかる程に”
ツルギ「そ、そんな、に…200年!?それじゃあ、先生の先輩は告白なんてできない…」
“先輩は故郷で待ち続けた。ずっとずっと…気づけば30年経っていた”
“ある日。前職の研究者が異常が無いか確認しにやってきた。案内役として佐々木先輩を同行させた。その状況を先輩と記録の録音を交えて話そうか。
研究者「佐々木さんはいつもこんな坂を登っているのですか?」
録音は、研究者の質問から始まった。
佐々木「いえ、私も学校まで足を運ぶのは5年ぶりです、仕事が忙しくなりまして…固定カメラでの記録は今も継続していますし、前任はそれでも良いとのことでしたが定期報告の頻度を増やしますか?」
研究者「一応、現状を確認してから判断しましょうか………何か不満でも?」
佐々木先輩の表情がそう見えたのか、研究者は少し不貞腐れた声で聞きました。
佐々木氏「いえ、ただ今までの人達も似たようなことを言っていたもので。頻度を増やしてもすぐに減らすように指示がありその担当者は長くて3年で他の研究所に移動していってしまいましたから」
研究者「それはなぜです?」
佐々木「無駄だからですよ、あの空間には変化が無いんです」
研究者の質問に佐々木先輩は諦めの声色で答えた。
研究者「無駄?いや、前任の残した資料では時間の遅延であると書いてありました。対象達は動いているのでしょう?」
佐々木「1年で数センチの移動を変化と言えるんですかね?貴方達だって時間がゆっくり進むようになっただけの学校より、他のものを研究したいはずです。前の博士が言っていました。もっと刺激的な物を研究したいと私だって同じ選択をするはずです」
研究者「我々が他の研究を優先したからと言いたいのですか?」
佐々木「別にそこまでは言ってませんし、責めてるつもりもありません。ただ、僕は夢を見ていたんです。科学は人を幸せにするのだと。ですが、実際には今を維持するのに精一杯なのだと、未来を夢見ることも難しいのだと知ってしまったんです」
研究者「この一件を研究することで危険な物品の進行を抑えることができるようになるかもしれません」
佐々木「その研究ができないんですよ。境界の中には入れない。変化は無いから観察も無駄。恐らく変化があるであろう境界と中の学生の接触だって200年は先なんです。そもそも変化があるってのも予想でしかない。境界と接触することで境界は消滅するのか。境界の範囲が広がるのか。少なくとも、今この瞬間に出来ることなんて何もないんです」
研究者は彼の言葉に沈黙した。
佐々木「中の人達はね、みんなが時間に取り残された30年の間に何が起こったのかを知らないんです。……生徒会長の妹さんは今度孫が生まれるそうですよ。
研究者「え?」
佐々木「3組の藤田さんは甥っ子が海外で個展を開くようなカメラマンになりましたし、新婚だった古文の水嶋先生の旦那さんは再婚して幸せな家庭を築きました。出入り業者の宮永さんは津波で実家を無くしています。校長先生の奥さんは最期まで校長先生が出てくることを願っていました」
彼の口から出る真実の一つひとつがどうしようもない残酷な現実で30年という年月の恐ろしさに研究者は何も話せなくなってしまいました。
佐々木「それを、みんな知らないんです。それを知らずにあの日の真っ只中にいるんです。それをみんなが知るのは数百年先なんです。僕らに出来ることなんて何もなくて、ただ、楽しそうにしてるみんなを外から見てるしかないんです。みんなそれが辛くて街を離れていきました。今も活動してる人なんてほとんどいませんよ」
研究者「…貴方は他の現地協力者と違い家族が巻き込まれた訳ではない、クラスメイトが巻き込まれただけだ、ならば、なぜ貴方はこの街に留まっているのですか?」
研究者にとってそれは知りたいことだった。どうしようもない状況で、皆が絶望する中でなぜ彼はここにいるのかと。
佐々木「きっと笑います」
研究者「笑いません」
佐々木「……ラブレター、ラブレターを出したんです、同じクラスの委員長に。昔は今みたいな携帯端末も当時はありませんでしたから、文房具屋で買ったレターセットに中学生の拙い文章で一生懸命書きました。委員長は今も下駄箱で私の書いたラブレターを読んでいるんですよ。30年もかけてね」
佐々木「別に委員長に告白の答えを求めている訳じゃない。ただ、一目見たいんです。願わくば、出てきた彼女を助けたい。40を過ぎたおっさんが、中学生の女の子を想って、科学者になる夢を諦めて、やりたくもない仕事をしながらこの寂れた街で老いて死んでいく。…気持ち悪いでしょう?」
「そんなことはありません。貴重なご意見です」
佐々木先輩の自虐とも言える言葉に真正面を向いて返しました。惚れた女を一途に思い続けるなどできることではないからだ。
佐々木「……そろそろ見えてきますよ。外に出ている2人が橋本さんと平手さんで、他の人は校舎の中に…」
研究者「…3人いませんか?」
境界内の情報を話し始めた佐々木先輩。しかし、研究者の気づきによって発された言葉によって止まってしまう。
佐々木「そんな、どうして…」
研究者「報告では校舎外にいるのは2名だけのはずです。後の1人は誰ですか!!」
研究者の質問に佐々木先輩はありえない筈の光景を目にしながら口から声を出しました。
佐々木「…どうして…委員長です、さっき話した、まだ下駄箱にいるはずなのに」
二人が疑問を抱く中、研究者は彼女が持っているものに気づきました。
研究者「あれは手に何か持って…手紙?」
そう。彼女が持っていたのは一通の手紙でした。その手紙に佐々木先輩は、見覚えがありました。
佐々木「…読み終えたのか? いや、それにしてもなんで外に出ているのか…」
佐々木先輩の疑問に研究者が答えました。
研究者「…走ってるんですよ」
佐々木「え?」
研究者「あの体の傾け方、手の角度、間違いありません。境界の中の時間は一定です。ならば、他の人より速く動いているとしか考えられません」
佐々木「だとしても、急に走り出した理由なんて…」
どうして彼女は走っているのか。佐々木先輩には理由が思いつきませんでした。その疑問は、研究者によって答えられた。
研究者「顔を見ればわかります。貴方に伝えたい事があるんですよ。手紙の返事を伝えたくて、思わず走り出してしまった。30年前の貴方の手紙が彼女を走らせ境界への接触を早めた。貴方は結果的に境界内の全ての人の時間を進めたんです」
佐々木先輩の思いが彼女を、世界を動かしました。それは偶然か必然か……もしくは『奇跡』ともいえるこの光景に、佐々木先輩は何かを悟ったように泣きながら声を荒げた。
佐々木「…そんな…今更…30年だぞ!!私は今まで何を…あの笑顔に応えられるものか!! 彼女は生きている、それなのに!!時間を止めていたのは…俺の方じゃないか!!」
記録は佐々木先輩の心からの叫びで終了した。
後の研究結果では、中の生徒は20年以内に境界線にたどり着くと考えられているよ”
ツルギ「あああああ〜〜!!」
ツルギは声を上げながら大号泣していた。
“よしよし”
ツルギを落ち着かせるために頭を撫で続ける。すると、ツルギが質問をしてきた。
ツルギ「ひぐっ…それでそのあとどうなったんですか?」
“その後は、空間内にいた猫が飛び出し茂みの葉が境界線に接触したことで境界が消失したよ。中にいた生徒たちは保護され社会復帰のための講義を受けさせることになったんだ”
ツルギ「そ、それはよかったです。ひぐっ」
“最後にそのプログラムの説明会の一人の男のある挨拶を紹介させてくれ”
ツルギ「ぐすっ、?ある挨拶?」
“「今は混乱していることだろう、だが、私達はただただ嬉しいのだ、何よりも、同じ時間を共有できることが」
「貴方達が下校している間に世界はとても便利になった、全部教える、何が起こってしまったのか、少しずつ、一緒に前に進もう、ただ、まずはこれだけ言わせてほしい」
「ようこそ未来へ 」
佐々木研究員補佐の言葉より抜粋”
“どうたい?良い話だろう”
ツルギ「ひぐっぐず…ばい。とてもいい話でじた。佐々木は前に進んで夢を叶えたんですね」
“ツルギ。私がなぜ誰かを想い待ち続ける恋愛ものを好むのか。それはね、実際に知っているからなんだ。人を想う心は時空を越え、未来さえ変えることができるということを”
ツルギ「ひぐっ、先生がどうして好きになったのか、ひぐっ、その理由が分かって良かったです。ありがとうございました…ひぐっ」
SCP-2040-JP 『ようこそ未来へ 』
by mojamoja
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2040-jp
SCP-2040-JPのtale『最近の女学生のガラケー事情 』
by mojamoja
http://scp-jp.wikidot.com/galapagosphone