魔王デルキラの息子   作:雨鬱

10 / 48
第9話:使い魔の記憶

 

 

 

 

 

黄金の炎に包まれて炭も残さず焼かれた筈だった

 

 

 

「どこだ、ここ」

 

 

 

 

ダキは気がついたらとある屋敷にいた。

きょろきょろと見渡せば、先ほどの使い魔召喚の大部屋とは全く違う場所の様で、目の前にいたはずの不死鳥も、先生も、坊ちゃん達もいなかった。

屋敷にしてはこじんまりとした規模感に、品のある内装、値打ちのありそうな絢爛豪華で格の高い調度品が揃えられていたから最初は貴族の別荘かとも思った。

 

 

 

「ん………?もしかしてどっかの教室かこれ」

 

 

 

しかし、今自身のいる2階から見下ろした先にある1階部分に、幾つかの机と椅子、黒板が置いてあるのが見えて、考えを改めた。

 

 

 

 

「ハハッ、豪華すぎんだろ。何処のVIPの学舎だ」

 

 

 

手摺を撫でると乳白色の大理石の冷たさに、夢や走馬燈にしてはリアルだと鼻で笑った。

 

 

 

 

「ーーーーーキューィクルルル」

 

 

 

 

あの鳥の鳴き声が聞こえる

 

 

 

 

「……上か」

 

 

 

 

ダキはその声の元に導かれるようにレッドカーペットの階段を登った。

登った先の突き当たりにあるベランダには、俺を焼き殺したであろう黄金のクソ鳥がいた。

掴み掛かろうとベランダにズンズン荒々しい足取りで向かうと、先ほどまで死角で見えなかった場所に紫色の髪をした悪魔がその鳥を腕に乗せていた。

 

 

 

「……っ、」

 

 

 

前を向いている為顔は見えないが、

同じ紫色の髪とはいえダキのくしゃくしゃとした雄々しい髪と違い、

目の前の悪魔は絹が流れる様な美しい紫色の髪をしていて、

ツノだって片方が折れてしまったダキと違いしっかりと立派な角が2本聳えている。

 

 

 

 

「なぁ、そこのアンタ」

 

 

 

比較的友好的にダキは目の前の悪魔に声をかけるも、目の前にいる悪魔は後ろにいる声をかけたダキを無視して腕に収まる不死鳥を撫でている。

 

 

 

 

「おい、聞いてんのかッ…!」

 

 

 

ダキがその悪魔の肩を掴もうとするが、掴んだ先から何もそこには無かった様にダキの手は空を切り、手が当たった先から相手の体から黄金の粒子がキラキラと空気に溶けては、元へ戻っていった。

 

 

 

「なっ、」

 

 

 

信じられない様な目の前の出来事にダキは思わず手の内と目の前の男の肩を見る。

ダキの手が通過したのが何でも無かったかのようにそこにある。

ダキはその手をじっと数秒考えると会得がいったのかニヤッと笑った。

 

 

 

 

「……なる程、幻覚、もしくは誰かかの記憶の中にいるのか。めちゃくちゃ高位魔術じゃねぇか」

 

 

 

幻覚、の方がコスパが少ないが、誰かの記憶を見せるともなれば膨大な魔力が必要だ。

普通の悪魔ならできない。

問題は、誰が見せてるのかって話だが。

十中八九この、クソ鳥だろう。

 

 

 

 

「なぁ、俺に何をみせてぇんだ」

 

 

 

ダキは呆れて腕を組んで問いかける。

すると、さっきまで何をしても無反応だった不死鳥がこちらを真っ直ぐとみている。

その不死鳥の熱い眼差しを、俺は何処かで見たような気がする

その熱量は、ダキの記憶の奥底に引っかかる『ナニカ』があった

 

 

【呼んで】

 

 

「……、」

 

 

頭に直接問いかける鈴を転がした様な幼い声に眉を顰める。

 

 

 

「呼んでって言われてもなァ、俺はアンタの名前しらねぇんだよ」

 

 

 

 

 

 

【呼んで】

 

 

 

 

 

詰める様にダキを見つめ続ける不死鳥

本当にしらねぇんだよ、とダキは頭を掻きながらため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、お前は知ってる筈だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今まで沈黙を保ちこちらに見向きもしなかった目の前の悪魔が振り返る。

2本だと思っていたツノは、3本だった。

両方の側頭部に2本、額に1本、ダキと違って傷一つない綺麗な肌に特徴的なまつ毛の覇王然とした美しい悪魔がダキを見下ろす。

 

 

 

 

 

 

「アンタが、俺の何を知ってるって言うんだよ」

 

 

 

 

 

自分自身がデカいため、見下ろされるなんて経験があまりないダキは驚きながらも視線を外さない。

その答えにくっくっくと、喉を鳴らしながら笑う悪魔に薄寒い感情を抱いていた。

 

 

 

 

 

「何を知ってるか、……だっけかァ?」

 

 

 

 

シュッ、

そう言って長い黒い爪で、ダキの制服を切り裂いた。

目の前にいるというのに指すら動けなかったダキは驚きで目を見開いた。

 

 

 

 

(やべぇ、コイツ相当強い)

 

 

 

 

 

体術にもそれなりの自信があるダキは今の一歩間違えば致命傷になりかねない攻撃なのに、何もできなかったことに、目の前の悪魔と自分の格の違いを思い知らされた。

顕になったダキの胸元の火傷と裂傷だらけの凄惨な体を見て悪魔が目を細める。

ダキの胸に手を当てると、悪魔は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「ぜんぶ、だ」

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間噴き出す黄金の炎にダキはまた焼かれる。

 

 

 

 

 

 

 

「なっ、?!」

 

 

 

「戻ったら、呼んでやれ!ソイツの名は___、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焼かれている筈なのに激痛もなく、ただ、ただ暖かい炎に包まれた。

驚いて手を伸ばそうとするも、何も掴めず、目の前の悪魔が笑うのを尻目にダキの意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体にまとわりついていた黄金の炎が完全に消えるとそこは見覚えのある使い魔召喚の大部屋だった。

 

 

 

「もどってk、「ダキっ、?!無事でござるか??!しっかりするでござるよ!ダキっ!!!」ーっうおっ?!坊ちゃん??」

 

 

勢いよくダキの腰に抱きつくゴエモンにびっくりしつつも受け止める。

泣き続けているせいか、受け止めた左足が坊ちゃんの涙でぐっしょり濡れていた。

 

 

 

「ダキ!生きてるでござるか?どこか怪我はないでござるか?!」

 

 

 

 

ペタペタとダキの体を触りながらゴエモンは詰問する。

 

 

「心配かけたな坊ちゃん」

 

 

 

何とか生きてるぜ、とケラケラ笑いながらゴエモンを抱き抱えたダキ。

触った感じ痛がる様子もないので火傷をしているとかでは無さそうなことにゴエモンはホッとする。

 

 

 

 

 

 

「もう!!!心配したんでござるよ!!!」

 

 

 

 

 

しかし、ダキの両頬に触れた時、ある筈の感触がなくなっていることに気がついた。

 

 

 

 

 

「………?!」

 

 

 

「ん、?坊ちゃん」

 

 

 

 

ゴエモンはダキの髪を掻き上げて、普段隠されている顔面を露わにした。

 

 

 

 

 

「ちょっ、坊ちゃん?!」

 

 

 

 

 

そこにあったのは傷ひとつない美丈夫の顔面だった。

ダキの顔面の上部には凍傷によるひどい火傷跡が鼻先まであった。

それが今、額のツノの折れた跡以外何事もなかったかの様に本来の皮膚がそこにあった。

 

 

 

 

 

「ダキ、顔の怪我が治っているでござるよ…」

 

 

 

 

 

 

ゴエモンは唖然としながらダキの顔を信じられないものを見たかの様にぺたぺた触った。

 

 

 

 

 

「はぁ?、!!」

 

 

 

 

 

 

どこからか取り出した鏡を見て自分の顔を確認したダキは本当だ…、と呟いてまじまじと傷のなくなった顔を見た。

傷の無い自分の顔を初めて見た

何だか自分の顔じゃないように思えて、何度も顔をペタペタと触る

そこにはざらついたケロイド状の皮膚の感触はなく、滑らかな肌がそこにあった。

改めて鏡越しに見る自分の顔は

先程の幻覚の中に出てきた3本ツノの悪魔そのものだった。

 

(あれは…記憶を失う前の俺なのか…?)

 

鏡を見てほおけているダキとゴエモンの元にカルエゴがやってきた。

 

 

 

 

 

 

「おそらく、不死鳥の特性の一つだろう」

 

 

 

 

カルエゴがハァ、と腕を組みながらため息を吐いた。

 

 

 

 

「特性………?」

 

 

 

 

「不死鳥の涙には傷を、血は欠損を、肉は不治の病を治し、炎は全てを浄化すると言われている」

 

 

 

 

そう言ってカルエゴが上を見上げると「キュークルルル」と泣きながらダキの周りを旋回している不死鳥がいた。

 

 

 

 

 

「貴様のその髪の下がどんな大怪我を負っていたかは知らんが今後怪我を治すのはお手のものだろう。いい使い魔を手に入れたなダキ。」

 

 

 

 

この悪魔褒めるんだと面食らいながらも

気恥ずかしそうにダキは「あざっす…」と返した。

 

 

 

 

 

「さて、後もつっかえている……早く儀式台のそばから離れろ!!!!」

 

 

 

 

カルエゴの怒号に、ダキは不死鳥とゴエモンを抱えてさっさと儀式の魔法陣前から飛び退いた。

列から遠く離れて、カルエゴに呼ばれたアスモデウスをボーッと見ていた。

 

まさか自分の使い魔が伝説上の魔神とはな……

 

当の本人は本当にコイツ伝説なのかと言いたくなるぐらい、

ぐでんとリラックスした様子でダキの腕の中に抱えられているのだが、

「キュイッ!」と心なしか楽しそうに鳴いている。

 

 

コイツめ……

 

太々しいなコイツ、そう思いながらもダキはとりあえず傷を無くしてくれたお礼も込めて丁寧にマッサージをしていた。

俺の次に召喚を行ったのはアスモデウスだった。

牛のツノ、コウモリの羽、燃える炎の尻尾、そして美しい白い鱗をもつゴルゴンスネークはアスモデウスによく似合っていた。

 

 

 

 

 

 

「凄いねアズ君!」

 

 

 

「有り難き御言葉!しかし入間様がこれから召喚する使い魔に比べれば……」

 

 

 

「それはどうかな…伝説引き当てたダキ君も居るし…」

 

 

 

 

そう言ってチラリと俺の方を見る。

凄い使い魔の括りで言えば俺のほうが話題に上がるだろう。

 

 

 

 

「アスモデウス、中々に美しい使い魔じゃねぇか!」

 

 

 

 

 

 

儀式が終わったアスモデウスにそう声をかけると「当然だ」自慢げに笑いながら使い魔を愛おしげに撫でた。

 

 

 

 

 

「入間も期待してるぜ、俺と同じ伝説を引き当てて話題の種になってくれ」

 

 

 

「いや、そんな凄いのじゃなくても来てくれるだけで充分だよ…」

 

 

 

 

 

そう入間は苦笑するがやはり緊張しているのだろう。

心なしか不安げである。

発破をかけたが難しいか、とため息を吐く。

 

 

 

 

 

「ちょ、いて、悪かった落ち着け」

 

 

 

 

 

 

しかしそんなダキとは裏腹に、他の使い魔を褒めたことで腕の中の不死鳥の機嫌を損ねたのか「キューーー!!!」と鳴きながなから頭を突かれる。

不死鳥を捕まえてポンポン背中を叩いてあやすと、おとなしくなったもののこちらを見る不死鳥が浮気を疑う奥さんみたいな目になっている様な気がした。

圧が強いなぁ、おい。

 

 

 

 

 

「ダキ…自分の使い魔の前で他の使い魔褒めちゃダメでござるよ…」

 

 

 

「…おう、気をつけます」

 

 

 

 

 

浮気じゃないよ、という気持ちを込めて不死鳥の頭にキスを落とすと満足げにまた腕の中に収まった。

 

 

 

 

 

 

「よろしくな、ヴェアトリーチェ」

 

 

 

 

 

 

この後カルエゴが入間の使い魔になるという大惨事が起こり、教師達の間では今年の新入生の中でも問題児達の烙印をめでたく押される事になるのをこの頃のダキ達は知らないのである。

好きなCPは?(市場調査)

  • ダキ×ゴエモン
  • ゴエモン×ダキ
  • ダリ×ダキ
  • ダキ×ダリ
  • ダロキア×ダリ
  • ダリ×ダロキア
  • ダロキア×バール
  • バール×ダロキア
  • ダキ×アスモデウス
  • ダキ×キリヲ
  • その他(自由回答)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。