「飛行試験を開始する!翼を広げろ!!」
カルエゴの怒号と同時に、生徒たちが一斉にバッと広げる
「位置について、用意……スタートォ!!!」
カルエゴの開始の合図と共に、高台から次々に飛び立つ
その中でもアスモデウスは最初からギア全開である
猛スピードで他の生徒たちをぶっちぎり、一位を独走しているのをダキは後方で見ていた
遠くなるアスモデウスの背中から
チラリと、大きな羽に隠れて緑色髪が靡くのが見えた
(……気のせいか?)
ウァラクが奴の背中にしがみついていたように見えた
もしあれがウァラクなら奴は2位だろう
サブノックの姿は見当たらない
あの目立つ金髪の巨躯があれば目につくのだが
どうやら別ルートへ進んだようだ
おそらく、立ち入り禁止とされていた『金剪の谷』へ無謀にも突っ込んでいったのだろう
らしいと言えば、らしい
しかし、最初にカルエゴ卿が忠告するだけある
金剪の谷は危険だ
クラスメイトが入学早々居なくなるのは後味が悪いな
そして問題のイルマは……どこにも見当たらない
一緒に飛んでいたようには見えなかったからおそらくスタートが出遅れているのだろう
(…まぁ、あのイルマならどうにかするか)
さて、ダキはというと――
ゴエモンと並んで後方集団に混ざり、ふよふよと浮遊していた
どう見ても、やる気ゼロである
「ふぁぁあ」
「試験だりぃー!」
「ああ"っ!ボス戦なのにセーブ忘れた!」
飛び始めてしばらくすると、速度を落とし始め、アスモデウス以外のクラスメイト達でゆるーく集まりだした
そうして気づけば、空中にだらけた集団がぽっかりと浮かんでいた
試験に本気を出す馬鹿正直者はここではアスモデウスとサブノックぐらいしかいないらしく
皆思い思いにゲームをしたり、寝ていたり、駄弁ったりしている
(どうすっかな……)
ダキには焦りがあった
同学年では誰にも負けない自信がある
自分は“強い”つもりでいた
だが――上位悪魔に目をつけられたなら、今のままでは到底届かないことは分かっている
彼らと対等であるためには、同じ“土俵”に立たねばならない
位階を上げること
それは、避けられぬ第一歩だった
(アスモデウスと俺の力量は、そこまで離れてる訳じゃない
力を抜いたまま勝てるほど、甘くはねぇ……)
全力で戦うしかなかった
だが、ダキの胸に重く引っかかるものが一つだけあった
隣にいるゴエモンが、わくわくしたように声を上げる
「ピクニックみたいでござるな!」
坊ちゃん――ゴエモンは、位階にさして興味がない
たとえ全力を出せば飛び抜けると知っていても、きっと試練にはそこまで力を注がないだろう
それでも、ダキには全力で挑む必要があった。
……それは、坊ちゃんを“置いていく”ということでもあった
守るべき主人を、置いていく
それはSDとして、失格だった
――それでも、ダキは力が欲しかった
坊ちゃんを守り抜くためにも
「坊ちゃ――」
「ダキ」
呼びかけようとしたダキの声を、遮るように返ってきた名前に、ハッとして頭を上げる
そこにはゴエモンがダキの前を飛びながら、まっすぐに自分を見ていた
その瞳は、ただ穏やかで、何もかも分かっているようで――胸が、チクリと痛む
「クラスで1番の称号、とってきてくれるんでござるよね?」
……見透かされていた、全てを
そして、それを責めることなく託してくれる
――その言葉にふっと心が軽くなる
ダキの目が大きく見開かれる
言葉の意味を飲み込んで、じわじわと湧き上がるのは、深い感謝にも似た感情だった
左胸に手を当て、深々と頭を下げる
微笑みを浮かべた
「御意」
バッ――
背中から小さく折り畳まれていた羽が展開される
夜の闇を切り取ったような巨大な蝙蝠の羽
一拍おいて、それが大きく羽搏き始める
ーひゅお、ひゅお、ヒュオ
音を立ててうねる風の乱気流に周囲にいたクラスメイトがアトラクションに初めて乗る子供のようにはしゃぎだす
「うおっ、なんだ、なんだぁ?!」
「おい、首席が本気だすってよ!皆賭けよーぜ!誰が一位になるか!」
「ここから巻き返し?!んな、無茶な!」
「いーや、ダキならイケるね!アスモデウスぶち破ってこーい!!」
クラスメイトからの熱い応援にダキはニッ、と笑う
「全員、俺が一位を取るに賭けておけよ」
一際大きく羽ばたいたその瞬間__、
呼び起こされた風達が巻き上がり、
空中で軽い竜巻が舞うほどの爆発的な大きな風圧を力に、ダキの体は、空高くへと解き放たれた
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ダキが物凄いスピードで上空へと駆け上がる姿をゴエモンは黙って見ていた
あまりにも速いスピードで、その背中が小さくなって行く
「ゴエモン〜お前もゆっくり行くだろ?」
「菓子持ってきてるから食べながら向かおーぜ」
ジャズとリードに声をかけられた
気楽な雰囲気に、普段なら「一緒に行くでござる!」とついて行ったに違いない
出かかった言葉を飲み込んでゴエモンは笑った
「やっぱり拙者も本気出すでござる」
だが、今日のゴエモンは違った___
自分の為に力を示そうとしてくれるダキの後ろ姿を見たら自分だけのんびりしているわけにはいかなかった
ダキが飛び立ち、空へと消えた後をしばらく見上げると、ゴエモンが拳を固く握りしめる
「拙者はダキの主人でござるから」
その瞬間、ゴエモンの足元から風が沸き起こり、周囲を旋風が包み込み、体がふわりと浮かび上がる
周囲が「えっ?」と驚く中、ゴエモンは空中を蹴った
(ハープナス様、力を貸してほしいでござる)
まるで風そのものになったかのように風に流れ、――ゴエモンは、ダキの背を追った。
「ヒュウ♪いーじゃん、熱いねぇ〜!」
たちまち姿を消したゴエモンの背中を、口笛で囃し立てながら見送ると、徐にジャズは好機とばかりに『パンっ』と手を叩いた
「さあ,乗った張った!誰が一位を獲るか皆賭けようぜ!!」
ヒラヒラと紙束をどこから出したジャズはふよふよと飛ぶクラスメイト達に発破をかける
「ダキに賭けるわぁ〜有言実行する所見てみたいわ」
「アスモデウスだろ!こんだけの差を埋めるのは難しいぜ?」
「大穴、でもそれも悪くない、ゴエモンに賭けよう」
「私は特待生に賭けます!いつも最後には彼が勝ってますらね!!」
「Zzzzz……」
誰が一位になるか分からないカオスな空のレース
アブノーマルクラスらしく、その混沌すら楽しみ始めるのだった
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赦しを得た今、ダキに怖いものなどない
彼の体は、真っ直ぐに上へ上へと向かう
風を切り裂き、
雲を突き抜け、
空気も薄くなる遥か上空へと
一気に翔け上がる
星が見えそうなほどの高さまで昇り、ピタリ、とそこで止まった
悪魔達が豆粒にしか見えないような遥か彼方を見下ろす
狙うは、現在トップ独走中のアスモデウス
ダキの金色の捕食者の瞳が、遠くにいる白い服の悪魔を捕捉した
ニヤリ、と口が裂けそうなほどに笑みが溢れる
「いっ〜くぜぇ〜!!!!」
曇天を切り裂くような雄叫びをあげる
ダキは目標を定めて羽を閉じ、
そのまま――垂直に、急降下する
____キィ、キィ、キィ、キィィィィーン
彼の周囲の空気が、まるで共鳴するように震えていた
ごうごうと、空気が焼けるような轟音と共に、金切りの声のような脳を針に差し続けられるような痛みを伴う高音が試験会場を揺るがす
「う、ぐっ、何だ?!」
「うわぁ、?!お、おちる」
「キャアアア!!!」
「なんだこのッ、すげぇ爆音?!!」
「うるせぇぇえええ!!!」
ダキの遥か後方、ゴエモン達がいる地点までもダキの降下音が響き渡る
重圧に似た"異様な"音に何名かは体が動かせず落ちそうになる
「空が、割れた……」
混乱の中、誰かがそう呟いた
まるで漆黒の彗星が雲を切り裂き、
曇り空に一閃を残していくようだった
のんびりと飛行を楽しんでいた雰囲気はどこかへ消え去り
ジャズ達は天を切り裂きながら流れ星のように落ちて行く漆黒の塊を眺めていた
「あの馬鹿が…」
先にゴール地点に来ていたカルエゴは双眼鏡でダキの動きを見ていた
「あの速さ…高所より降下するだけじゃない、
アレは………"音"を武器にして速さを加速させている」
まるで、高位の音魔の様な"体をも支配する"音圧を見せたアブノーマルな首席の末恐ろしさに、ダキを見る目線が厳しくなる
「何者なのだ…アイツは」
ーーーーーーーーーーーーーー
一方、捕捉されたアスモデウスは後ろから迫り来るその爆音に苦しんでいた
「っ、ぐぅ、な、何だ!この音は!!」
耳をつんざくような酷い音を、少しでも気を紛らせようと、髪をかきむしりながら飛ぶ
音から逃れるように羽根を動かすスピードを早めながら、原因の音のする方をギロリと睨む
見上げた先、
ナニカ落ちてくるのが見える___、
(…怪鳥?いや、違うッ!)
あれは――
彗星の如く一直線にこちらへ向かってくる
___漆黒の、悪魔
「来たかッ! ダキ!!」
顔を隠している長い前髪が風圧ではためき
顕になったダキの殺気のこもった真剣な眼差しにざわり、と心が騒ぐ
「アスモデウスッーー!!!!」
その気迫に、アスモデウスの顔に喜悦が走る
「良いだろう、ここで、貴様と私、どちらが速いか――勝負をしようじゃないかッ!!」
「望む所だッ、アスモデウス!!」
風を裂くように、二つの影が交差する
囀り谷に火花が散るような気迫とスピード
これはもう、飛行試験ではない
――悪魔として誇りを懸けた決闘だった
「いけぇ!アズアズぅ!」
「降りろ!ウァラクゥ!!!」
そんな一触即発の雰囲気の中
元気な応援に間が抜ける
よく見ると、アスモデウスの背中にはウァラクがガッシリとしがみついていた
「おいおい、ハンデか?アスモデウス」
ダキはニヤニヤと笑いながらもスピードを緩めない
「くっ、待て!ダキ!!!」
降りそうにないウァラクを相手取るのは時間がかかると判断したアスモデウスは、背中にウァラクを背負ったままダキを追いかける
猛スピードでのレースは過酷を極め、
次々へと変わる景色の中、
眼前に飛び出る障害物を瞬時に判断し、
避けながらも相手より早く前へ飛ぶことを意識しなくてはいけないからだ
強風に逆らいながら、アスモデウス達は峡谷をスピード狂も真っ青な速さで駆け抜ける
そんな中、ダキがちらりと後ろを見て、山肌に拳を叩きつけた
ーーガッガッ、と鋭い音が響き、アスモデウス目掛けて岩盤が崩れ落ちてきた
「くっ……!」
アスモデウスはとっさに腕を前に出し、降り注ぐ大小様々な大きさ岩礫で咄嗟に頭を守る
ーーーーゴッ、!
「い"っ、…!」
しかし高速で飛ぶ破片が肩に当たり、
肩が外れたような激痛に顔を歪める
ふらり、とバランスが崩れそうになるのをウァラクが引っ張る
「大丈夫?!アズアズ!」
ウァラクに引っ張られたことで持ち直したアスモデウスは額に脂汗を滲ませながら「…っ、ああ」と苦しげに息を吐く
肩を直すにしても空中では無理だった
立ち止まってしまえばもうダキには追いつけない
ズキズキと疼く肩に歯を食いしばりながら、それでも前を向く
「ダキっちがそんな事するんならこっちだって同じことしちゃうもんね!」
ぷんすこ、と怒ったウァラクがスカート脇にあるポッケから謎の緑色の植物を取り出した
先端に鋭利な牙を持つ謎の魔界植物の出現にアスモデウスはギョッと目を見開いた
「なっ、」
「いっけぇ!ニョキニョッキ!!」
ダキ目掛けて投げられた蔦状のニョキニョッキはぐんぐんと伸びていき、ダキの脚をがぶり、と噛んだ
「っ?!ぐっ…!」
血こそ出ないものの、
ふくらはぎを深く噛みつかれた痛みら
筋肉繊維が千切れるような鈍痛となって遅いかかる
思わず苦悶の声が漏れるが、ダキは速度は緩めない
ダキは咄嗟に脚を噛むニョキニョッキを斬り落とそうとするが、むにんっと弾ける弾力で手刀が通らない
「っ〜ーー!はぁ?!おかしいだろ?!」
ダキは叫びながら手持ちのナイフや炎魔法で何とかしようとするがニョキニョッキは無傷である
「何だこのクソ植物!!!」
むしゃくしゃして力任せに引きちぎろうともするが全くビクともしない
その間に、アスモデウスとの距離はじわじわと詰まってきていた
「チッ、!!」
ダキは脚に巻き付いたニョキニョッキを剥がす事を諦めて、飛ぶことに集中し始めた
目を開けるのも辛いほど吹き荒ぶ冷たい風がびゅう、びゅうと肌にあたる
そんな中、血のように真っ赤な大きい旗が見えた
___ゴール地点だ
「負けっぱなしで、いられるものかぁぁあ!!!」
ゴール地点を視認したアスモデウスがすぐさま動いた
____レース最後の妨害をダキへと仕掛ける
アスモデウスはウァラクから蔦を奪い、グッと力任せに引っ張った
「なっ、?!」
凄まじい勢いで引っ張られたダキは、アスモデウスに追い抜かれてしまう
追い抜かれたその瞬間、目の前を飛ぶアスモデウスの背中を見て怒りが爆発した
「ふ、ざ、けん、なよ!!!」
視界が真っ赤に染まり、ダキは目を見開く
自分より前に出たアスモデウスにダキは怒りの咆哮をぶつける
「どけぇぇええッ、アスモデウス!!」
空間そのものが破裂したような衝撃が轟いた。
衝撃をまともに受けたアスモデウスは、まるで鉄球を全身に叩きつけられたような重圧に襲われ、「うっ……!」と声を漏らす。
ただの咆哮ではない
ダキの叫びから放たれた『音』の重みは、体の自由すらも縛る、
____正に『言霊』のようだった
(何なのだ、貴様は…っ!)
燃え上がるような怒気を纏ったダキは、
翼をさらに大きく広げ、
風を裂いて加速する
「失せろォッ!!!ダキィッ、!!!」
ゴール目前、ダキとアスモデウスの肩が並ぶ
競り合う二人は、
カルエゴの立つゴール地点へ、
ほとんど雪崩れ込むように突っ込んだ――
好きなCPは?(市場調査)
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ダキ×ゴエモン
-
ゴエモン×ダキ
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ダリ×ダキ
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ダキ×ダリ
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ダロキア×ダリ
-
ダリ×ダロキア
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ダロキア×バール
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バール×ダロキア
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ダキ×アスモデウス
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ダキ×キリヲ
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その他(自由回答)