魔王デルキラの息子   作:雨鬱

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第14話:入間の正体

 

 

 

 

「お前ら、位階発表するぞ、先着順に並べ馬鹿共」

 

 

 

 

 

入間とサブノック以外は既に飛行試験のゴール地点に到着していた

 

 

 

「まだ、入間様が来ていないだろう!!」

 

「時間が押している、貴様らの位階発表が終わり次第捜索隊を出す」

 

 

 

いくら弱肉強食といえど入間は学園長の孫である

既に死体になっているであろうと探しに行くぐらいはせねばならぬ

 

 

 

 

「チッ、行くぞ、ダキ」

 

「指図すんな」

 

 

 

 

アスモデウスとダキがカルエゴの前に立つ

一位を巡って血肉湧き踊る戦いを繰り広げたはずの2人は不服そうにムスッとした顔をしている

 

 

 

 

「おいおい、どっちが勝ったんだよ?」

 

 

 

お小遣いがかかっているジャズは目をきらめかせてダキ達に問う

ダキとアスモデウスがぶっきらぼうに互いに指を刺す

 

 

「まさか…」

 

 

 

「「同率1位だ」」

 

「あははは!またかよ!!!」

 

 

入試でも同率一位、飛行試験でも同率ときた

あまりの仲の良さにジャズは爆笑しながら地に沈んだ

 

 

 

「チッ、またテメェと並ぶのか」

 

「それはこちらのセリフだ!!!次だ、次こそは貴様は完膚なきまでに叩きのめす!!」

 

 

「ばーか、やってみろよ」

 

 

 

火花が散るような睨み合いに、周囲のクラスメイトたちも呆れ顔である

 

 

「早く、袋に手を入れんか貴様ら」

 

 

位階袋鳥を手に持ち、カルエゴの冷たい声に2人の睨み合いが止まる

 

 

 

 

「、チッ、どっちが先にするか?」

 

「順番争いをする気は無い、さっさと貴様が先に引け」

 

「はいはい、…」

 

 

 

そう言って、位階袋鳥の胸の袋に手を突っ込んだ

袋の中に小さいバッチのような物が手に当たる

そのまま勢いよく引き抜いて天に掲げる

 

 

 

バッチには『5』が刻まれていた

 

 

 

「お、おおお!5(へー)だ!!」

「ハイランクだ!!!」

 

 

 

 

ランクは全てで10

10を手にするのは魔王ただ1人、

学園長のサリバン様がランク9、

バビルスを卒業するのに必要なランクは4、

有象無象の一般悪魔と違い、

ランク5というのは高位悪魔と呼ばれる存在の一角であった

 

 

 

 

「まずまず、かな」

 

 

 

 

手元のバッチを見てニヤニヤしていると後ろからアスモデウスに蹴飛ばされた

 

 

 

 

「どけ、さっさと終わらせるぞ」

 

 

そう言ってアスモデウスは躊躇いもなく袋に手を突っ込む

アスモデウスはバッチを取り出し中身を確認すると「ふんっ、」と鼻を鳴らした

 

 

 

「貴様と同じだ」

 

 

 

 

 

そう言ってダキへバッチを見せる

 

 

 

 

「ランク5が2人目?!!やべーぞ今年は!」

 

 

「じゃあ、次は私!」

 

 

 

次々とランクが決められる中カルエゴは各生徒のランクをメモしながら感心する

 

(今年は意外と豊作だな…)

 

バビルス一年生ともなれば普通なら『1』よくて、『2』だというのに今年は2以上が沢山いる

 

首席コンビはランク5

 

次に引いたウァラク

ガープ・ゴエモン

アンドロ・M・ジャズ

___ランク『3』

 

クロケル・ケロリ

プルソン・ソイ

___ランク『2』

 

その他『1』が5名

残るサブノックと入間のみとなった

 

 

 

 

「カルエゴ卿!私は入間様を探しに行くからな!」

 

 

「金剪の谷に行って貴様もサブノックの二の舞になりたくば行くが良い」

 

「っ、」

 

「落ち着けよ、アスモデウス、学園長を呼んで来た方が、__」

 

 

 

 

ビュオオオオ____

 

 

風を切るような突風が谷奥から巻き起こる

 

 

 

 

「みんなーー!」

 

 

 

 

声のする方を向くと

入間とサブノックが金剪の長の背に乗って戻ってきていた

 

 

「……!、!!!」

 

「はははははは!!!」

 

「ヤベェーー!金剪の長だ!」

 

「入間様!!!よくぞご無事で!!!」

 

「入間っちーー!」

 

 

 

 

思っても見ない登場にカルエゴは絶句

クラスメイト達は普段見ることのない貴重な長の出現にテンションが爆上がりだった

 

 

 

 

 

「くくく、相変わらず見ていて飽きねぇ奴」

 

 

 

 

 

ふと、入間が振る手に何かが巻かれていることに気がついた

 

 

 

 

 

(…怪我したのか?)

 

 

 

 

 

入間の手に乱雑に巻かれた包帯

そこから滲む血が痛々しく視界に映る

おおかた金剪の長出会った時にでも無茶をしたのだろう

 

 

 

 

「まったく…無茶をする」

 

 

 

 

ダキは軽くため息を吐いた

 

 

「おーい、入間、治してやるから手を、…、」

 

 

ダキは手当てをしてやろうと、入間に近づいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グラッ__

 

 

血液特有の鉄が錆びた様な匂いが鼻腔を掠める

 

 

 

「っ、?!」

 

 

その匂いを嗅いだ途端__、

ダキは度数の高い酒を一気に煽ったかのような、強烈な目眩に視界が歪んだ

 

 

 

 

「…、っ、なん、だ?」

 

 

 

 

熱い、体が___熱い

体の奥から沸々と湧き上がる、

のぼせそうなほどの熱気が体を支配する

突然の異常事態にダキはよろめきながらも膝をつくことはしなかった

 

 

 

 

「ダ、ダキ君?」

 

 

 

そんなダキを心配して入間が無防備にも近づいてきた

入間の血の匂いが更に強くなり、

くぅ、と喉が鳴る

 

 

丸みのあるあどけない頬、

白く柔らかな首筋、

未だ血の滴る手、

 

歯肉が疼く

極上の獲物を前に、本能的に牙が更に鋭くなっていくのを感じた

 

 

 

『入間の首に牙を立てろ!!!』

 

 

 

 

 

そう耳奥から"ナニカ"が叫ぶ声が聞こえる

 

 

 

 

『ナァ、力が欲しいんだろ?他を許さない、圧倒的な力が!!』

 

 

 

「うるせぇ…」

 

 

『さぁ、喰えよ、悪魔の本能に身を任せろ!』

 

 

 

「うるせぇ、よ!!」

 

 

 

 

自分の声とよく似たナニカの誘いは蠱惑的だった

抗いがたいその魅惑の提案に乗って

今すぐ、入間に飛びかかって、

その柔らかな肉を喰いちぎってしまいたい衝動に駆られた

 

 

 

 

(クラスメイトを喰うなんて事できるかッ?!ふざけんなよ…っ!)

 

 

 

 

だが、ダキの微かに残った理性が入間を襲うことを拒否した

 

 

 

(クソが…ッ!落ち着け、っ落ち着けってんだよ俺!!!)

 

 

ドドドド、と馬の早掛けの様な心音が響く

必死に吸って、吐いて、を繰り返す

 

 

___が、その行動はむしろ逆効果だった

 

 

呼吸の度に、まるで吹子で火を熾すかのように

ダキの体温はどんどん上がっていく

 

 

 

 

 

 

「っ、はぁ、!」

 

 

 

 

 

 

吐く息も熱い

体の内で暴れ回る熱に浮かされ

ダキの理性は溶けていく

 

 

 

 

(ああ、いいにおいだ)

 

(美味そう…ああ"あ"あ、たべたい、たべたい、たべたい)

 

 

 

 

 

目の前にこんなに美味しそうなものがあるに

手を出せないストレスで髪を引っ張る

 

 

 

 

 

(…あれ?俺、なんでがまんしてるんだろ?)

 

 

 

 

最早何の為に本能を抑え込んでいるのかも分からなかった

目の前のこの『肉』に手を出せば全てが楽になる

本能の赴くままに動こうとしたその瞬間

 

 

 

 

 

『やめてよ、ダキ』

 

 

 

 

 

 

 

 

___聞き覚えのある、けれど今はもう思い出せない程遠く、幼い声

その幻聴にダキの体が強張った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダキ?」

 

 

 

 

様子のおかしいダキに気がついたゴエモンがダキに声をかける

ただ、今のダキにはゴエモンに反応する余力すら無い

ゴエモンの声にも反応できずに、ダキは一直線に入間を見つめている

 

 

「ダキ、ダキ?本当に大丈夫でござるか?」

 

 

ゴエモンが小声で呼びかけながらダキを揺さぶるも、獲物を逃がさないとでもいうようにその目線は入間から外れない

 

 

 

 

「ダ…っ、!」

 

 

 

 

 

前髪からチラリと、見えたダキの瞳は異様だった

黄金色の瞳が蜂蜜の様にどろり、と甘く蕩け、

顔を抑える指の隙間から、ボタボタと涙が零れ落ちていた

ダキ自身どうして泣いているのか分からない

けど、ただ、懐かしい誰かに触れたような気がして、湧き上がる涙を止められずにいた

 

周りを憚らず泣き出したダキをゴエモンはただ慰めの言葉を投げかける事もできず、初めて見るダキの姿にゴエモンの手が止まった

 

ダキが入間を見つめる姿が、渇望と安堵が入り混じった、見てるこちらが切なくなる程に無垢な顔で、まるで、その姿がやっと、母親を見つけた様な迷子の子供のようだった

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪い子だーれだ」

 

 

 

 

 

 

突如、ダキの背後に学園長サリバンが現れた

その声に反応して振り返ろうとするダキ

 

 

 

 

 

 

 

「こら!メッだよ!」

 

 

ドスッ、

しかし、サリバンの方が一手早い

素早く、正確に、手刀がダキの急所を打ち抜いた

 

 

 

「ガッ、」

 

 

 

重く入った一撃

ダキの目がサリバンを捉える前に意識が落ちた

だらり、と力無く地面に伏すダキ

先ほどの狂躁は消え、穏やかな顔立ちで横たわっている

 

 

 

 

 

 

 

「ダキ君!」「ダキッ!」

 

 

 

 

 

駆け寄る声を背に、

サリバンは静かに膝をつき、ダキを抱き上げた

「よいしょっと」と、軽口を挟むその声はいつも通り陽気だが、

その目元は、ほんの一瞬だけ揺らいでいた

 

 

 

まるで、ようやく旧知の友に会えたような

 

 

 

ゴエモンはその一瞬を見逃さなかった

いつもの“おちゃらけた大人”の仮面の奥に、

言い知れぬ嬉しさと、哀しさが滲んでいたのだ

 

 

 

 

 

(学園長は、ダキを知ってる?)

 

 

 

 

 

そんな予感が、胸をざわつかせた。

旧知の仲――あるいはそれ以上の何か。

感情の波に気圧されるように、ゴエモンは無意識に背筋を伸ばし、

サリバンの前に立った

 

 

 

 

 

 

 

「ガープ君だったかな?悪いけどダキ君はこちらで一晩預からせてもらうねぇ」

 

「……っ」

 

 

 

 

 

 

反論の言葉が喉まで上った。

ダキは自分のSD

何かあれば責任を持つべきは自分のはずだ

 

けれども、この頃頻発する発作と苦しむダキの姿が脳裏によぎる

ダキの発作は過去の記憶が絡んでいる

最近のダキは頻繁に発作を起こしている

過去のダキがこの地に思い入れがあったことには違いなかった

 

 

もしこの地に縁があるなら、学園の“長”であるこの男が、その過去を知っている可能性も高い

 

 

 

 

 

 

 

「……、傷つけないでござるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

しばしの沈黙のあと、ゴエモンは問う

その声には、微かに震えがあった

 

 

 

 

 

 

「うん、約束するよ」

 

 

 

 

 

サリバンの返事は、優しく、確かなものだった

 

 

 

 

 

 

 

「……ダキを、よろしくでござるよ」

 

 

 

 

ゴエモンは深く、深く頭を下げた。

言葉の代わりに、信頼を預けるように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(知らねぇ天井だ…)

 

 

 

サリバン邸の客間の一つ、

一際大きな、ダキの巨躯が余裕で入る、ふかふかの天蓋付きベットにダキは寝かされていた

事態が飲み込めずしばらくぼーっと豪奢な天井の模様を見ていた

 

 

(確か…俺は…)

 

 

ぽつぽつと、気を失う前の痴態を思い出して「は"ぁーー」とダキは深いため息を吐いた

 

 

 

 

 

 

「ダキ君!良かった〜起きたんだね!」

 

 

 

憂鬱なダキとは裏腹に、

元気な声と共にパジャマ姿の入間がベッド脇に駆け寄ってきた

あの時の自分の今にも入間に襲い掛かりそうな鬼気迫る態度を思えば、

もう少し警戒してもいいはずなのに入間は、あまりに無防備だった

 

 

 

 

 

「っ、馬鹿野郎、そんな近づくな!」

 

 

「わっ、ご、ごめん」

 

 

 

 

ダキの怒号に、びくりと肩をすくめて後ずさる入間に、ダキは息をついた

血の匂いどころか体臭が全くしない

匂い消しの香水でも普段使いしているのだろう

薄々気付いていた入間の正体を思えば納得だった

ちらり、と入間の左手を見た

包帯が巻かれていた手は全くの無傷だった

サリバンに治してもらったのだろう

入間が近づいても来るかと思っていた“あの衝動”は来なかった事にホッとする

アレは『血』が原因だったのだろう

 

 

 

 

 

 

「なぁ、入間…」

 

 

ダキは今日の一件で入間の正体に確信を持った

だが、それを告げる、と言うのは自分が隠してきた事も告白することと一緒だった

緊張に指先が冷たくなるのを摩り、顔を上げて、入間の目を真っ直ぐと見た

 

 

 

 

 

 

 

 

「おまえ、ニンゲンだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダキの告げた言葉が衝撃的すぎて、入間は動揺のあまり青ざめてその場で固まってしまった

ダキのその問いに否定でも肯定でも、何か返そうと思うのに何も発せない

驚きと恐怖で言葉にしようにも音にならず、ぱくぱくと口を開いては閉じた

 

そんな入間に苦笑しながらダキは話を切り出した

 

 

 

 

 

「転生、って知っているか?」

 

 

「し、知らない」

 

 

 

 

突然変わった話題に困惑しながらも入間は頭を振った

 

 

 

 

「転生っつーのはな、ヒトが死んだ後、別の何かに生まれ変わるって考え方だ、なんで俺がこんな話をするか分かるか?」

 

 

「……ううん、ごめん、分からないや」

 

 

 

淡々と、けれど自分の芯から絞り出すように言葉を重ねる。

 

 

 

「それはな、俺が元ニンゲンだからだ」

 

 

 

ダキから告げられた言葉に入間の「えっ、」と言葉を溢し、目を見広げた

 

 

 

 

「元……ニンゲン?え、でも、ダキ君は、どう見ても悪魔に見えるけど…」

 

 

 

 

告げられた言葉が飲み込めないのか、入間の表情には迷いがあった

 

 

「今は悪魔だが、ニンゲンとして生きて死んだ記憶がある、いわば人生2週目、とでも言えばわかりやすいか?」

 

 

"ニンゲン"だった、と言うだけで俺自身ニンゲンだった頃の名前も、好きだったものを覚えちゃいない

けれども魂にこびりつく人間としての善性が捨てきれなかった

 

 

「もともと、なぜ自分だけ悪魔らしくねぇのか、ずっと引っかかってた。罪悪感を覚えるのも、痛みに同調するのも、弱者に手を差し伸べたくなるのも……悪魔らしくねぇって思ってた。でもな…」

 

 

 

 

 

声に力がこもる

 

 

 

 

「お前の血の匂いを嗅いだ瞬間、思い出したんだ。俺は“ニンゲン”だったってことを」

 

 

 

 

 

言葉にした途端、胸の奥に張っていた靄が、するするとほどけていく

正確に言えば、ダキはおそらく今の自分が悪魔に転生、というより"元々魔界で生きていたある悪魔に憑依している"、つまり『憑依型転生』いう転生の中でも亜種のような状態に近いのだと考えたが

けれども、複雑にその状態を説明するよりも元ニンゲンが気がついたら悪魔に転生していた、と伝えた方がシンプルだった

 

 

 

 

 

「悪魔として生まれた時の記憶がねぇのも、納得がいく。俺が入る前のこの体の主がどんな奴だったかは知らねぇが──魂は、確かに俺のものだ。ニンゲンだった俺のな」

 

 

 

 

 

 

 

 

入間の心臓をトンっと指先で小突いた

 

 

 

 

 

 

 

「お前のその血が俺の魂を呼び熾した」

 

 

 

 

 

 

入間の血を嗅いだ瞬間、

悪魔としての本能が呼び起こされると共に、ニンゲンだった自分を呼び起こされたのだ

今まで漠然と、悪魔らしくない悪魔として、どこか世界を俯瞰で見るような、異物だった自分の、はっきりとしたオリジンを掴み取らせてくれたのだ

 

 

 

 

 

 

「ニンゲンだったことも忘れていた俺を、再び燃え上がられせくれた、……感謝してる、入間」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう語るダキの真剣な眼差しに入間も腹を括った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだよ、僕も、ニンゲンなんだ」

 

 

 

 

言葉は震えていたが、

その瞳は揺るがなかった

 

 

 

 

 

 

 

「…おじいちゃん、サリバンさんに拾われて、ニンゲンだけど、悪魔としてこの魔界で生きようって、決めたんだ」

 

 

 

 

 

ニンゲンが、魔界に居るなんて事は危険極まりない

もし無理にでもサリバンに連れてこられて、

入間を心配する人が1人でも人間界にいるのであれば

ダキは人間界へ送り届けてやろうと思っていた

 

 

 

 

「人間界に戻りたいとは思わねーの?家族とか、あっちに残してきた大事なものとかは?」

 

 

「それがね、僕、両親に捨てられたも同然だから人間界に未練なんてないんだ」

 

 

「…ソイツは悪かった」

 

 

「で、でもね、今が楽しいから気にして無いんだ!ダキ君も気に病まないで」

 

 

 

 

 

その言葉に、バツが悪そうにダキはため息を吐いた

ダキも自分の親なんて存在は知らないが、

家族同然に迎え入れてくれたゴエモンや親方様がいる

改めて、入間と同じ様な境遇なのだとダキは入間に対して無視出来ないほどの親近感を抱いていた

 

 

 

 

 

「…チッ、しょうがねぇ、」

 

 

 

 

 

 

 

 

少しだけ、視線を逸らしてから、また入間を見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

「入間、テメェは危なっかしい。見てらんねぇ」

 

 

 

「ええ?!」

 

 

 

 

 

入間を指差しながらダキは呆れ顔で入間を見る

 

 

 

 

「大体なぁ!ニンゲンが魔界でホイホイ血を流すんじゃねぇーよ、マジで食われるぞ?今回は俺の理性が寸前で働いたからよかったが、マジでがぶりだぞ?!」

 

 

 

ジェスチャーで噛み付く仕草をダキを見て入間も青い顔で呟いた

 

 

 

 

「やっ、やっぱり?ニンゲン我らの供物、だもんね…」

 

 

 

 

バビルスの校歌を思い出して改めて入間はニンゲンが魔界で生きていく厳しさを実感した

 

 

 

 

「とは言っても魔界はふつーに危険だからな、怪我しないってのは正直難しいだろ、…おらよ、」

 

 

 

 

そう言ってダキが入間に皮袋を投げ渡した

 

 

 

 

「え、これ…「開けてみろよ」、う、うん」

 

 

言われるがままに皮袋を開けると幾つかの薬瓶と包帯と裁縫道具だった

 

 

 

 

「やるよ、俺特性の緊急セット」

 

 

「えっ、?でも、」

 

 

「良いから持っとけよ…俺もニンゲンだったからなのか、血を流すと入間程じゃねぇが嗅いだ悪魔を悪周期に堕としちまうらしくてな、匂い消しやら、医療キットとか持ち歩いてんだよ」

 

 

「あ、悪周期って…?」

 

「…欲が溜まりすぎて、悪魔の本能が暴走しちまう事だ」

 

 

 

ダキは入間が魔界に住むにはあまりにも無知すぎて本気で心配になった

 

 

 

 

 

「いいか、わからない事とかあったらアスモデウスとか俺とかサリバン様にでも聞けよ…」

 

 

「ありがとう、ダキ君」

 

 

 

 

 

入間はそう言って大事そうに皮袋を抱きしめる

ダキは頭を乱雑にガシガシと掻くと気恥ずかしいのかぶっきらぼうに言った

 

 

 

 

 

「アー、俺の第一優先は坊ちゃんだけどな……正直、もうテメェにゃ情が移っちまった」

 

 

 

 

照れ臭さいのか、長い前髪で隠れていても分かるほどにダキの顔が赤くなった

 

 

「ニンゲンってこと、バレたら危ねぇだろ。だったらよォ──」

 

 

 

 

 

 

 

ダキは片手を差し出した

 

 

 

 

 

「お互い秘密を守るために助け合う、同盟組もうじゃねぇか、“ニンゲン同盟”ってやつをよ」

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に、入間はぱっと笑って、

しっかりとその手を握った

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん!一緒に組もう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシリ、と力強く握手を返した入間にダキは嬉しくなって痛くなりすぎない程度に力を込めた

 

 

 

 

 

 

「…おう、よろしくな」

 

 

 

 

 

手と手が触れ合いじわり、と互いの体温が溶け合う

胸がくすぐったくなるような気恥ずかしさに絶えきれなり、ダキは繋いでいた入間の手をぐいっと引っ張った

 

 

 

 

 

「わわっ?!」

 

 

 

 

 

ぽすん、と入間は大きなベットの上にダイブした

ダキと横並びに寝転ぶ形で向き合うとダキはニッと無邪気に笑った

 

 

 

 

「じゃあ、こっからは親睦会とでも行こうか入間!今夜は寝かせねぇからお前のこと教えろよ」

 

 

 

 

どこからか、ポンポンと、お菓子と飲み物を用意して入間に渡す

友達のいなかった入間にとってお泊まり会なんて事は初めての事でその甘美な響きに入間の顔は喜びでいっぱいになった

 

 

 

 

 

「!いいね!友達と夜更かしするの初めて」

 

 

「おう、じゃあまずは男らしく猥談でもするか」

 

 

 

 

 

 

ケラケラと笑いながらも話のタネは尽きない

ニンゲン同盟の初集会の夜は深まって行くのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

楽しくお泊まり会し始めるダキ達を、ドア越しに聞き耳を立てていたサリバンはその場を離れた

 

長い廊下をサリバンは颯爽と歩く

 

 

(ダキ君、君は自分が悪魔に転生した元ニンゲンって考えたんだね)

 

 

窓から差し込む赤い光に気がついてサリバンは窓の外を見た

夜空には大きく赤い満月が浮かんでいる

……あの夜もこんなに月が赤かった

 

 

(君の考えは間違ってない、けど、正しく言うのであれば…、)

 

 

 

サリバンは鎮痛な面持ちで満月を見上げる

まだ魔王デルキラが失踪する何百年も前の夜を思い出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

『おサリ、ようやく、ようやく見つけたの、私達の子供になれる素質のある魂を!』

 

 

 

ポロに腕を引かれて人間界へ降り立ったあの夜

 

薄暗い地下室へと連れられた

 

進むほどに強まる血臭にサリバンは顔を顰める

 

足元をぐにっ、という不快な感触がした

思わず足を止め、下を向く

そこにあったのは小さな白い腕だった

爪は無惨にも剥がれ、後ろを振り返れば、助かるためにドアを掻きむしった血の無情な跡が残っていた

 

 

 

 

 

『…、』

 

 

 

 

中へと進むと同じように息絶えた子供達が部屋全体をぐるりと囲む屍の山になっていた

未知なる力を前に恐怖に顔が強張り絶命し、大きく見開いたままの目をサリバンは手でかざした

 

 

屍の中央ある魔法陣

そこに立っていたのはデルキラだった

 

 

 

 

『デルちゃん!』

『デルキラ様』

 

 

 

 

1人のニンゲンを大事そうに抱えている

 

 

 

 

 

 

『来たか、ポロ、サッちゃん』

 

 

 

 

 

見ろよ、そう言って腕の中のニンゲンをこちらに向けた

 

 

 

 

 

『その子は…、』

 

 

『ああ、やっと見つけた』

 

 

『この子が、私たちの…、!』

 

 

 

 

凄惨にも、何人もの血で真っ赤に染まったその子供の髪を優しく撫でながらデルキラは微笑む

 

ポロが血眼になって探し出した古の禁書

『悪魔が人為的に悪魔の子を成す所業』

それは、同姓の悪魔が命を得る唯一の術

だがその術の為には人間の魂が、必要だった。

しかし、その人間の魂は誰でも良いというわけでは無い

悪魔の子に選ばれる条件は、まるでお伽話のように難題であった

 

六月六日、

午後六時ぴったりに、

逆子として産まれた子供を、

 

七歳の誕生日を迎える前夜、

満月の下

十三人の血の海に沈め

溺死させること

 

その魂は血を孕み、死を孕み、呪いを孕む

まさに『魔の子』の核となるに相応しいモノになるのだ

 

デルキラに抱えられた真っ赤な子供

死んではいるものの、魂はまだその体に抜けないようデルキラで処置されていた

このまま身体ごと魔界へ持って帰るのだろう

 

 

 

 

『っ、…う』

 

『ポロ、泣いてんのか?ふはっ、』

 

 

 

 

泣いているポロをその子供ごと抱きしめてデルキラは笑う

 

 

 

 

 

『この子がこれから俺たちの子供になる魂だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サリバンは懐から携帯を取り出し、電話をかけ始める

 

 

 

 

 

 

「あ、もしもし、ポロ君?」

 

 

 

 

 

 

廊下にサリバンの声が静かに響く

 

 

 

 

 

 

 

「君達の息子のね、手掛かりを見つけたよ、うん….、すぐに帰って来れるかな?」

 

 

 

 




小話

「くそが、この植物どうやって取るんだよ…」


アスモデウスとの死闘後、
ふくらはぎに噛みついて離れないウァラクの謎植物にダキは苦戦していた
なんせ、叩いても、切ろうとしても、締め上げても、むにん、とふざけた感触でダキの攻撃全てを弾いてしまうのだ


「ニョキニョッキはこしょこしょしないと外れないよ〜?」

「何だそのクソ仕様」


ダキはウァラクの言葉通りに噛み付くニョキニョッキの腹のような太い茎をこしょこしょと掻く
すると「ヒヒひっ!」と不気味な笑い声と共に抜け落ちた



「きも………」


ドン引きするダキにウァラクは無邪気に笑う


「これ、食べると美味しんだよ?」

「まじか、世界は広いな」


そう言いながら齧る
確かに、ウァラクの言う通り、美味かった
噛みついた瞬間にじゅわり、と甘みのある果実のような味わいが口いっぱいに広がる


「うまっ、」


「貴様…よく食べれるな」


「そう言うならオマエも食べてみろよ」


「ちょ、私は、いら、「おい、ウァラク、アスモデウスに食べさせてやれよ「了解であります!」ばか、やめ、グッ!!」


満身創痍のアスモデウスの口に無理やりウァラクニョキニョッキを突っ込んだ

好きなCPは?(市場調査)

  • ダキ×ゴエモン
  • ゴエモン×ダキ
  • ダリ×ダキ
  • ダキ×ダリ
  • ダロキア×ダリ
  • ダリ×ダロキア
  • ダロキア×バール
  • バール×ダロキア
  • ダキ×アスモデウス
  • ダキ×キリヲ
  • その他(自由回答)
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