処刑玉砲……
定期的に授業内で行われる一年時の「位階昇級対象授業」
飛行試験ではアスモデウスと同率だった事が悔しくて仕方がなかったダキは今回の授業こそ叩きのめそうと意気込んでいた
だが、その思惑は失敗に終わる
(……アスモデウスと敵チームのAだった所までは覚えている)
しかし、クロケルがダキの投げたボールを防ごうと氷を出したその瞬間___視界が、白く染まり
喉の奥で何かが凍ると、心臓が一瞬、動きを止まった気がした
気がついたらダキは保健室で1人横になっていた
何も覚えてないが、
どうやら、クロケルが氷を出した瞬間理性が吹っ飛んだらしく、
クロケルに向かって濃い殺気を出した俺をカルエゴ卿が意識を刈り取ったらしい
授業が終わり、後で保健室に来たカルエゴにあらましを伝えられダキは頭を抱えた
「貴様に何があったかは知らんが、あのままではクロケルを殺しかねなかったのでな、粛正させてもらった」
そういうと、カルエゴの眼光が鋭く光る
「また今度同じことをやってみろ、飛ぶのは貴様の意識ではなく、その首になるぞ」
カルエゴはケルベロスを見せてまでダキに釘を刺した
なまじ力がある為ダキが暴走すると周りへの被害が洒落にならない
それこそ、今回は未遂で終わったものの次はクラスメイトをその場で殺める……なんてこともあり得なくは無いのだ
(クソ…っ、なっさけねぇーーーー!)
ベットに備え付けられていた枕で顔を覆い、声にならない音でダキは心のうちを叫んだ
(俺は、怖いのか?氷が)
クロケルの放つ氷を見た瞬間、
俺の体は確かに動かなくなった
クロケルの出した氷を思い出して、
背筋からぞわっと逆毛が立つ感覚に身震いする
足元から腕にかけて、
じわじわと凍っていく感覚に陥って
息が詰まるほど冷たい
でも、本当に冷たかったのは、氷なんかではない
胸の奥から込み上げた『恐怖』だった
(この俺が臆するなんぞ…恥だ)
悪魔にとって『恐怖』とはその者に敗北した事に他ならない
『恐怖』を『興奮』に変え、相手を臥してこそ『悪魔』なのだ
震える手を止められず祈る様に拳を握る
けど、それだけじゃない
怒り、悲しさ、寂しさ
そして、ぽっかりと空いた心の隙間に、じわじわ染みてきた――
裏切られた、という強い感情。
誰かが自分を見捨てたような、
信じていたはずだった何かに、踏み躙られたような――
そんな理不尽で、でも確かに知ってる、胸を刺す、苦しくて、やりきれない痛みだった
いくつもの感情が渦を巻いて、ダキの胸をかき乱した
(危うく、クロケルを殺しかねなかった…)
ダキはカルエゴの迅速な対処に感謝するしかなかった
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師団見学が始まる少し前、
優秀な一年生をめぐっての勧誘活動が始まる
『ルーキーハント』と呼ばれる師団同士での勧誘は首席2人をどこの師団が手に入れるか、で熱狂していた
「おい、アレ!黒い方の首席だ!」
「間違いねぇ、ダキだ!!!」
「一年首席の片割れ!!!」
「ぜひ我が師団へ…!!!へぶしっ!」
ダキは、周りに結界を張って誰も近づけない様にした
「うるせぇ」
周りの一年がどの師団に入ろうか悩む中、ダキは既にどこの師団へ入るか決めていた
その為、まだ師団を決めていないゴエモンに付き添うつもりでいたのだが、処刑玉砲の事もあってさっさと休む事を厳命されている
ゴエモンのその言葉に甘えてダキは早く帰って休むためにも、師団の入団届を提出しに師団塔にまで行くところだったのだ
その為有象無象の勧誘など意味はなく、ただ目的の師団塔へと小走りで向かう
「ダーキ君、ウチの師団入ろうよ」
そんな所に後ろから抱きつく様に声をかけてきたのはダリだった
「……また、アンタか」
自分の肩を組んできたダリを見てダキは苦笑する
ダリはダロキアの息子であるダキに目をかけていた
それ故に何とかして自分の師団にダキを入れたかった
(絶対、ダキは僕の師団に入れて見せる…!)
「アンタの師団ってどこなんだよ?」
「んー?興味が湧いてきた?僕の師団は魔術開発だよ!設備もいいし、先輩も多いから君も学ぶことが多いんじゃ無い?」
ダリとダロキアとは師団は違ったが、
互いに師団長同士面白おかしくやってきた
魔術開発師団師団長ダリと魔具研究師団ダロキア
あの頃の師団の二大巨頭だったのだ
あの頃の再現を、ーーと野望は抱いてみたが栄華を誇った魔具研究師団も廃れ、今や師団員は1人だけだ
今のダリは魔術開発師団の顧問である
それなら人も環境も揃っている自分の師団に入れた方がよっぽどダキのためになると考えた、という建前とは別に、
ダリはダロキアの忘れ形見の成長を間近で見たかった
「断る」
「ええ?!なんで!!」
「悪りぃが、既に決めてんだよ」
そう言ってヒラヒラとチラシを見せる
そこには魔具研究部と書かれていた
ダリは目を見開いて驚く
「…へぇ〜、魔具研ね」
懐かしむ様に目を細めた
まさか、ダロキアと同じ道を進むと思っていなかった
これはもう運命だろう
「なんで魔具研に入りたいのさ?」
「これだ、」
そう言ってダキは自分の腕についている腕輪をジャラジャラと見せびらかす
「へぇ、ファッションかと思ってたけど、それ魔具なんだ?」
「俺の魔力が外に漏れ出さない為の制御装置だ」
「なに〜?それが無いと暴走するとか?」
魔力のコントロールは幼年の頃に学ばされる
首席ともあろうダキがそんな基礎的なこともできないとは思えなかった、
が、規格外の魔力量を誇るダロキアの息子ならそのコントロールにも苦心するだろうと納得もしていた
しかし、返ってきた言葉はダリの予想を大きく外れるものだった
「身体的な欠陥でな、魔力が流れ出すのを自分の意思では止められねぇんだ」
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ダキが魔具を付けることになった経緯は
ゴエモンに拾われた当初にまで遡る
『ダキ〜、お医者さん来たでござるよ〜』
ゴエモンの声が、客間に響く
あの頃の俺は、魔界で誰よりも弱い存在だった
頬は痩け、腕は骨ばかり
筋肉の衰えた足では長時間立つことすら叶わず、歳の近いはずのゴエモンよりも小さな身体は、明らかに栄養失調のそれだった
助けられたはずなのに、なぜか一向に回復しない俺を見かねて、ゴエモンは医者を呼んでくれたのだ
『ごほっ……ありがとう、ございます。坊ちゃん』
血の混じった咳が止まらず、喉に引っかかる
自力で起き上がることもできず、坊ちゃんに手を借りて起こされる
『君が、僕の患者か』
特徴的な瞳をした医者の目が、俺の全身をまじまじと見つめる
その眼差しは、驚きと――なにか、怯えのようなものを含んでいた
『……よく今まで生きていたもんだ』
その言葉に、苦笑すら浮かべられなかった
俺自身、それが不思議で仕方なかったのだから
ほとんどの悪魔はヒール一発で治ってしまう
そうでもしないと悪魔は魔界では生き残れなかったのだ
また、悪魔そのものが健康体の塊であるが故、医者自体数が少なく、診てもらうのも高額であった
だから、医者が必要になることは稀だ
生まれつきの欠陥や特殊な病――そうした「例外」だけが、医者の診察を必要とする
だから、俺も――“例外”だったのだ
『ふむ、……今の君の状態を言うならば…』
ダキの体の状態をある程度確認した医者は
渋い顔をしながら鞄を漁り始めた
中から袋を取り出すと、
近くの水盆から水を汲んで持ち上げる
『魔力が水、君の体はそれを溜める袋だとしよう』
そう言って針を水袋に刺した
たちまち、穴からピューっと水が噴き出て、下の水盆へと落ちていく
『こんな風にね、君は今非常に外に魔力が出やすい体になってる』
その説明は、酷く現実味がなかった。
けれど、妙に納得もしてしまった
俺の中の魔力は、常に体から抜けていくような、奇妙な空虚さを伴っていたから
『原因は……なんでござるか? ダキは、治るんでござるか?』
ゴエモンの声が震えていた
俺を、ぎゅっと抱きしめるその体温が、冷えた腕にじんわり染みる
『……君は、飢えと渇きの中で生き残るため、自分の魔力を生命維持の代替エネルギーとして使ってきたんだ』
医者が骨の様な俺の腕をとってまじまじと見つめる
『体がその状態で適応してしまっているから、今後も君は、食事を取らなくても、魔力があれば生きていけるだろう』
どうやら、俺は“魔力を消費して生き延びる”という異常な方法で、死を逃れ続けていたらしい
自分自身のことをすっかり忘れてしまった俺だったが、過去の俺は生き延びる為になりふり構っていられなかったのだろう
それは、生き延びるための進化だった。
『驚異的なのは、これだけ多くの魔力を流していても、君自身がまだ魔力枯渇までにあと2、3年はかかるという点だ、普通の悪魔なら1週間も持たない』
その言葉で、ゴエモンが絶句する
魔界の常識に疎い俺でも、自分の異常さにようやく気づいた
『穴を塞がないと、君はいずれ魔力枯渇で死ぬだろう、
ーーーただ、こればっかりは治すのが無理だ』
それは冷酷な余命宣言だった
『そんな! 何とかならないでござるか!?』
『既に体が、"そうあるべき"と進化をしてしまっている以上、魔力を外に出しすぎない様訓練するしか無い』
医者は、低く硬い声で言い切った
魔界の悪魔は『適応力』が異常に高い
それは、過酷な環境を生き延びるために必要不可欠な進化だった
容赦ないこの世界で生きるには、変化に抗うよりも、変化を取り込む方が早い
だがその反面、
一度“クセ”として染みついてしまえば
その適応は、ほとんど矯正が不可能に近かった
『それは…ダキに緩やかに死を迎えろ、と言っているんでござるか?』
医者の言葉に、ゴエモンが噛みつく
怒気と共に吐き出したゴエモンの言葉は、ほとんど喉を震わせていた
その目には、怒りではなく、悔しさが浮かんでいた
険しい表情の医者は、黙ってゴエモンを見返している
けれどその目には、否定ではなく――どこか、同情にも似た諦念が浮かんでいた
『……今、僕が出来るのは君にこれを渡す事だね』
医者が差し出したのは、箱に入った金の腕輪だった
『はめてごらん』
ゴエモンに手を取られ、腕輪を嵌める
その瞬間――ふわりと、温かさが胸を包んだ
指先の冷えが、ほんの少しだけ和らいでいくのが分かった
『その腕輪の金属は、“悪食”と呼ばれる特殊な素材だ。魔力を吸収し、溜め込み、君の外への魔力放出を抑える結界を形成する。……一時的なものに過ぎないけどね』
『じゃあ、ダキは……!』
ゴエモンが喜ぶ
けれど、すぐに現実が追いかけてきた
『君の魔力量なら、この腕輪もすぐに限界を迎えるだろう。これは、あくまで“延命”でしかない』
ゴエモンの顔から、色が失われていく
医者はダキに顔を向けて真剣な眼差しで話し始める
『ダキ君、君が何故そんな状態にまで陥ったのか、僕には分からない、だから君が見つけるんだ君の体にある"穴"を塞ぐ方法を』
『その為に魔法を学び、君の体を知り、魔力をコントロールする術を学びなさい』
そう言い終わると、医者は鞄から一冊の本を取り出した
『だから、君にはこれを渡そう』
『魔具製作のすゝめ』と題名に書かれ、読み込まれたのか所々痛んだ一冊の本だった
『これは僕が魔具研究部ってところに所属していた時に貰った本なんだけどね、当面はこれで学び、やがて君に合う腕輪を自分で作れる様になるといい』
胸が張り裂けそうだった
『ありがとう、ございます_この御恩は一生忘れません』
見ず知らずの俺にここまで心を尽くしてくれる坊ちゃんの存在と、「君は助からない」と告げて去ってしまうだけでも良かったはずなのに、少しでも生きながらえる道を示してくれたこの医者、2人へダキは今後一生を使って何かを返したいと思った
『じゃあ、僕の後輩になってよ』
そう言って笑う医者にダキは目を大きくした
『君みたいな優秀な悪魔が、バビルスに入って、魔具研究部に入ってくれると嬉しいなぁ…なんせ、人気がないからね!』
ケラケラと笑いながらその医者は帰って行った
ダキはその後、
その腕輪の甲斐もあり、
普通の行動ができるまでには回復した
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SDとして正式に
ゴエモンのそばにいることが決まった後は
勉学に励みながらも、空き時間に医者から貰った本を元に
魔具製作を独学で学び始めた
『悪食魔金を主として、他の金属の割合はいくつだ…?同じ性質の貪鉄?真逆な噴魔鋼?どの鉄を使えばこれと同じものが作れるんだ…?』
貰った本には魔具製作の基礎と応用の載った技術本だったもんだから俺が今1番欲している肝心の"金の腕輪"の制作方法はどこにも記載がなかった
言外に示されたメッセージにダキの負けん気に火がついた
(自力で作れってか…やってやろうじゃねぇか)
魔具製作は、素材の性質だけで決まるものではない
どんな術式を、どう組み、どの順番で、どんな意図を込めて支持するのか
そのすべてが、結果を左右する
――トライ・アンド・エラーの連続だ
ーーーボンッ!!
『くそがっっっ!!!!』
当てがわれた空き部屋を作業場にし、
日々試行錯誤を繰り返す
配分を間違えては爆発し、
俺のもじゃもじゃの髪がパンチパーマになる日もあった
『なんだ、この、……くそじゃじゃ馬ァ?!!そこでなんでその反応すんだよぉ!!!』
真反対の性質の金属を融合させようとすれば、
磁石のように弾きあい、
あるいは互いに攻撃し合って爆破を招く
まさにファンタジーな素材で、前世の科学知識が根底から覆る様なトンデモ素材達に踊らされた日々だった
そして――
『やった…やったぞ!!!クソが!!』
大変な苦労の末、
ようやく自作できた金の腕輪を陽にかざして笑う
貰った金の腕輪も再現するのに、2年の月日も要した
『ハハっ、面白れぇな、これ』
けれど、あの日から、
俺はこの厄介で、
奥深くて、
どうしようもなく魅力的な“魔具製作”という世界に、
どっぷりと取り憑かれてしまったのだった
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「つーわけで、俺は魔具研に行く」
そう言いながら肩を組んできたダリの腕をぺいっと剥がす
スタスタと魔具研究部のある塔まで歩くダキの隣をめげずにダリは歩く
「へぇ〜そう…そこまで熱心なら勧誘しても無駄だろうね」
「そうだな」
ダキは一瞥をすると、内心で眉をひそめる
(……なんで、こいつは俺に構いたがる?)
面談のときもそうだった。
妙に距離が近くて、やけに絡んでくる
どうにもダリは、何かとダキにちょっかいをかけたがるようだった
なのに不快じゃない──
それどころか、ダリと一緒にいると、どこか自分までふざけたくなる
(波長が合う……そういうことか?)
「まったく……でも、良いのかい?僕に弱点、教えちゃっても」
意地悪げに笑うダリにダキは鼻で笑う
「お前だから、教えたんだよ、ダァーリン?」
その瞬間、「えっ……」と動揺を隠せないダリの反応に、
ダキは満足げに口元を緩めた
「ダーリン、なんて呼ばれてるんだろ?なぁ、ダリ先生ェ?」
首席でランク5
ダキに取り入ろうとする上級生は沢山いる
新入生の自分が知らないような学園の裏話を、皆こぞって教えてくれる
面談に呼ばれてから『ダリ』という教師が気になったダキは、密かにダリのことを調べていた
この渾名も調査の一環で聞いた噂だった
「…参ったな、一年生がそれを知ってるとは思わなかったよ」
けれど、この噂には“もう一つ”面白い話があった
【ダリは『ダーリン』と呼ばれても、『ハニー』とは返さない】
──それが妙に引っかかった
ふざけたようでノリのいい悪魔。
そのくせ、“その言葉”だけは決して乗らない
だからこそダキはこの悪魔の秘密を暴きたくなった
(誰ならハニーって呼ばせても良いんだ?カルエゴ卿?サリバン様?…いや、そこにお前が俺を面談に呼んだ理由があるんじゃねぇの?)
ダキの胸に、ざらつくような好奇心が芽を出した
(なぁ、アンタは俺に誰を重ねてんだよ)
ダキは自分の過去なんて興味は今までさらさらなかった
坊ちゃんが居ればそれでいいと今でも思ってる
なのに、俺の元にちょこちょこ現れては嬉しそうに構うその姿に絆されて行った
ダリと初めて会った時も執拗に自分の過去を探ろうとして突っぱねたのに、
俺を越して誰かに思いを馳せてるその様子に腹が立った
誰かに対して苛立つ事なんてそんなに無い温厚な性格だとダキは自分を理解している
けど、ダリと出逢って、ダリが自分とは違う誰かを面影を重ねるたび苛々する
自分の玩具を誰かに取られたような、そんな不快感だ
「ダキ?」
押し黙るダキにダリが声をかける
心配げに伸ばされたダリの手を取り、強く引き寄せた
「……ちょっ、?」
ダリの髪からふわりと立ちのぼる、ウッドとダチュラ、そして甘い匂い
それは蠱惑的で、抗えない危険な誘いだった
衝動のままダリの肩を抱き寄せ、ダキはその耳元に唇を近づける
「なァ、俺にはハニーって呼んでくれねーの?」
ダリが微かに怯む
ダキの囁く声は、まるで呪いだった
そっとダリの髪に触れ、指で梳く
こちらがもどかしくなる程丁寧に、優しく、撫でる
ダキの手からサラサラした髪が指の間を滑るようにこぼれ落ちていく
それは、宝物に触れるような、慈しみに満ちた仕草だった
慈愛に満ちたその優しさに、甘えてしまえば抜け出せないほどの深みに嵌ってしまいそうな……
そんな、甘美な誘いがあった
「…俺の、ハニーはただ1人だよ」
だが、ダリには通用しなかった
ほんの一瞬、目を細めると、
髪を梳くダキの手をそっと手に取り、真剣な顔でダキを見上げる
「……だから、君には呼ばない」
ダリは手に取ったダキの指を絡め、
意味ありげに這わせる
ダキとの視線を外さないまま、
艶かしく手のひらをなぞり、
その手の甲に――ちゅ、とキスが落ちた
柔らかな唇が生々しく、
やけにリアルで、
体温が、
薄い皮膚にダイレクトに伝わる
「……っ!」
想像よりはるかに“本気”
喰らったこちらがクラクラする様な大人の悪魔の誘惑だった
想像の何倍も大人びた返しに、ダキは思わず息を呑む
「あんまり、大人を揶揄うんじゃないよ」
そう言って色っぽく笑ったダリは、
近くの窓からひらりと飛び去っていった
揶揄うつもりだったのは、自分だったのに
いつの間にか踊らされていたのは自分だった
「…ちっ、勝ち逃げしやがって」
手の甲に残る感触がまだ熱い
あの唇の柔らかさをなかったことにはできそうにない
(……あーあ、ムカつくぜ)
その余韻に感情が昂ぶるのを、ダキは気づかないふりで押し込めた
見えないナニカの影に追い立てられるように、魔具研究部のある塔へと、小走りで向かった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「またお前らとか……」
魔具研につくとそこには入間軍達がいた
「あ!ダキ君」「ダキっち!」「ダキ…」
最早何も驚くまい
ダキは腐れ縁染みた入間達との縁に溜息を吐く
「もしかして!ダキ君も?」
魔具研のチラシを持つダキを見て入間が目を輝かせる
「そーだよ、元々バビルス入ったら魔具研に入ろうと思ってたんだよ」
「ダキ君は、魔具作ったことあるの?」
「ん?まぁな、例えば、……これ、とかな」
そう言ってダキはじゃらじゃらと複数の腕輪を見せびらかす
「オマエ、その腕輪……」
アスモデウスに入学式の時、感情が高まりすぎて腕輪を壊しまったのを隣で見られていたことを思い出した
「あー、あん時はびっくりさせたな…これで普段魔力の出力抑えてんだよ」
「魔具で抑えねばならんほど貴様魔力量がやばいのか?」
ダキの腕輪は魔具だとしたら尋常じゃないぐらい多い
普通魔具というのは、持って1から2個だ
「俺のこれは生命維持もかねてんだよ」
「、なんだと?」
軽く答えるダキにアスモデウスは訝しげな目で睨む
「あー、これ以上は質問禁止、俺のことはいいだろ、あーそうそう、入間は何で入りたいんだ?」
深く突っ込まれるのも嫌だったダキは無理に話題を変えた
どうせ、アスモデウスとウァラクは入間に着いてきただけだろう
じゃなきゃこの師団に入ろうと思う理由が見つからない
「その、…魔力に頼らない師団に入りたかったんだ」
そう言って落ち着かなさそうに指輪を触る入間にダキは納得した
「良いんじゃねぇの、理由はどうであれ、魔具製作の同好が増えるのは嬉しいぜ」
そう言って入間の頭にぽんっと手を置いた
「で、師団長はどこだよ?」
キョロキョロと見渡すがそれらしき悪魔は全くいない
「も、もしかして、君も入団希望者…?」
細目でひょろりとした、
いかにも幸薄そうな悪魔らしくない悪魔
が、メガネ奥底に隠れる瞳からどろり、と欲望の色が滲み出ているのをダキは見逃さなかった
(こいつ…元祖返りじゃねぇか)
本で読んだことがある"悪魔的衝動が常に高い危険な悪魔"
他人を傷つけることに快楽を覚える凶悪
そんな彼らの特徴として深い"欲に溺れた"瞳が数えられる
「ああ…よろしくな、師団長」
トラブルメーカー入間の引きの良さに最早呆れるしか無い
(表面的に見ればただの弱い悪魔だが…はてさて、どうなることやら)
ダキは目の前の脅威に気付いていないふりをして、入団届を手渡した
【小話:ダリの葛藤】
ダキの手に唇を落とす
視線が交わりながらの少し、長いキス
(僕の、半身はもうこの世にいないのかもしれない…けど、お前がいる、アイツの意思を継ぐその時が来るなら僕は君に尽くすと誓うよ)
それは今は公には言えないけどダリなりの精一杯の忠誠でもあった
熱っぽく見つめるダキに色っぽく笑ってみせる
精一杯の大人の余裕を総動員して
強がって見せる
「…っ!」
ダキを置いて、窓から飛び出す
窓枠に足をかけて後ろを振り返る
寂しそうなダキのその姿に、後髪が引かれる
(ダメだ、そんな顔を見せるなよ)
顔を背け、羽を広げると
ダリはその場から全力で逃げ出した
ーーーーーーーー
人気のない屋上に着地すると、足が崩れるように座り込んだ
「──あっぶねーーー!」
ダリは地面へたり込む
膝に肘をつき、赤く火照った顔を隠す
心臓がうるさい
今にも口から出てしまいそうだ
(よくぞ…よくぞ耐えたぞ!僕!!えらい!!)
涼しい顔をしていたがダキの誘惑は結構効いていた
(まさか、あそこまで攻められるとは)
真っ直ぐに挑んでくる視線も、
手のひらの温度も
あの人と同じ仕草で髪を撫でられて、
……思わず泣きそうだった
(……そっくりすぎるだろ、ダロキア)
そう
君の父親──僕の、たった一人の相棒
君は気づいていないけれど僕は知っている
君のその目に宿る強さも、
声の色も、
あの人と似ている
あの【声】さえ持っていなければ、まだ耐えられる。
けれど、もし
【ダリ…俺の愛しいダーリン】
ダロキアがダリに囁く幻影が見えた
力強く、心臓を掴む、聞く者を心服させるダロキアのあの【声】
あの頃を思い出して興奮で身震いをする
(あの声で囁かれてたら……絶対、抗えなかった)
大人げなく、組み敷いていたかもしれない
笑えない、本気で
ダリは懐からタバコを取り出し、一服する
スゥーーーっと長めに吸って鬱陶しい程青い空へ紫煙を吐き捨てる
「きっっっついわー……」
親子揃って、どうしてこうも魔性なんだ
理性なんて、あってないようなものだ
ぐらついたままの熱に浮かされて、
どうにもならなくて僕は空を見上げた
「お前たちは僕をどうしたいんだ…」
遠ざかる風の音の中、
まだ耳元に残る「ハニー」の囁き
まるで呪いみたいだと思った
(どれだけ時間が経っても、アイツの亡霊は僕を離してくれない)
そして今、その亡霊が、新しい形で
ダリの心を揺さ振り狂わすのだ
好きなCPは?(市場調査)
-
ダキ×ゴエモン
-
ゴエモン×ダキ
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ダリ×ダキ
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ダキ×ダリ
-
ダロキア×ダリ
-
ダリ×ダロキア
-
ダロキア×バール
-
バール×ダロキア
-
ダキ×アスモデウス
-
ダキ×キリヲ
-
その他(自由回答)