夢だった赤色バーだぁ!!!!
すげぇ!!!ありがとう!!!!めちゃくちゃ嬉しい!!!
「レッツ!お泊まり!!!」
「やかましい!!!」
ウァラクが元気にパジャマ姿ではしゃぐ
師団披露に向けて『花火』を作る為に夜の作業を行う事になった
今日は魔具研の部室でお泊まり会である
「魔くら投げ!悪魔怪談!!!」
「気が早ぇよ」
フンフンと鼻息荒く騒ぐウァラクを捕まえる
「その前に花火の実験しないとーー」
ーーーードォンッ!!
入間達の後方で爆発が起きる
どうやら実験を1人で黙々とやっていたようで配分を間違えたのか吹っ飛び、
ウァラクが敷いた布団に奇跡的に不時着していた
「っ!団長」
「キリヲ先輩!!」「「先輩!!」」
青ざめた顔で口端から血を一筋垂らすキリヲ
肺を強く打ったのか、げほっ、と咳き込むキリヲが喀血する
ダキはキリヲの元へ駆け寄り、肩を抱く
「おい、大丈夫か、」
「や〜……また失敗してしもうたわ」
キリヲの掌から溢れた血が、
指の隙間からポタポタと落ちて布団を真っ赤に染める
「っ…、手当するぞ」
ダキの掌から黄金の炎が揺らめく
不死鳥の治癒の炎をキリヲに施そうとすると
「ああ、ごめん、怪我はしてへんねん」
へらりと何でもないように笑うキリヲ
重症だろうに、何でもないように振る舞うその姿にダキは深くため息を吐く
「無理すんな、別に後から治療代をぼったくったりしねぇよ」
「ええねん、大したことないんやから」
治療を拒むキリヲに
ダキは苦しそうに顔を歪ませた
「強がりにしちゃ口から赤いの出てんぞ」
ダキは小さく息を吐き、
そっと震える指でキリヲの口元を拭った
拭われた場所がじんわりと熱を帯びる
息を呑んだキリヲの目に、
すぐ目の前で覗き込む蜂蜜色の瞳が映る
心配そうに、優しく、そして……酷く温かい
「……良いから俺に、治療させろよ」
声は低くて、やけに柔らかいのに、
ひどく胸の奥を抉った
(なんや、何なんや今のは)
たった一瞬、
こちらを見たその甘い瞳に鼓動が跳ねる
ふとした仕草に現れるこちらを沼に引き摺り込む魔性、
まさしく目の前いるダキのいう悪魔はその類だと実感した
「……っ、あ、ありがとな、でも、大丈夫や、ほんまに、平気なんやって、こんなん、いつもやから…!」
何故か罪悪感の様なものに駆られ、
ダキの顔をキリヲは見れなくなる
(末恐ろしい悪魔や…)
キリヲは「ふぅ…」と息を整えると、ダキに向き合う
「説明するのも面倒臭いし、触った方が早いな、手ぇ出してみ?」
言われるがままにキリヲに触ろうとする
ーーーぴたっ
その瞬間――
指先のすぐ手前で、何かがはじかれた
「これは…」
空気がぴたりと止まり、
まるで目に見えない壁にでも阻まれたかの様に、ダキの手が届かない
「僕の家系能力"断絶"や」
そう言って目の前に透明な壁を出現させる
「この魔術のおかげで魔力が少なくても今まで大怪我せずに来れたんよ
ーー爆発の反動と驚きで吐血はするけどね」
えふっ、とキリヲはまた口から血を垂らす
「なら、それこそ俺の出番だろうが」
そう言ってまたキリヲにダキは近づく
「えっ、いやでも、」
「良いから、甘えとけよ、
ーーー別に獲って食いやしねぇよ」
そう言って、ダキはキリヲを黄金の炎で包む
ーーーーボッ!!
「っ………!!!!」
一種の出来事でキリヲは抵抗すらできなかった
熱くない、
けれど、包まれた瞬間
ーー内から熱が湧き上がってくるようだった
熱が伝播し、指先まで魔力が澄み渡る
苦しかった胸も、
冷えた肌も、
貧血で揺れる頭も、
何もかもがスッキリするような感覚に目覚めた
「どうよ、キリヲ団長」
身体が軽い
熱も痛みもない
心の奥から、何かがじんわりとほどけていく
キリヲは生まれて初めて"体の調子が良い"と言う状態を知った
「まさか、こんなことが…」
呆然と佇むキリヲにダキは笑った
「当たり前だ、魔神"不死鳥"の炎だぞ
ーー全てを浄化する治癒の炎、万病に効き、多くの権力者が求めた伝説の力だ」
そう言ってダキは炎をさらに大きくし、不死鳥ヴェアトリーチェを顕現させる
キラキラと黄金の炎がゆらめき、羽ばたくその姿はまるで神話の絵画のようだった
「アンタの体が生まれつき弱くとも、ヴェアトリーチェなら治せるんだよ」
入間たちも思わず息を呑む中、キリヲの口から感嘆の「ああ…」が漏れた
「礼はいらねぇよ、これは俺の自己満足だ」
そう言い切るダキに
キリヲは一瞬、
何かを言いかけたが、言葉にはしなかった
「おひとよし」
聞こえるか分からないぐらいの小さく呟く
そして照れ隠しのように目をそらし、わざとらしく話題を切り替えた
「しっかし、やっぱ難しなぁ、見た事ないもん作るのは!!!」
キリヲが言うことはごもっともだった
ダキは「ま、そうだよな」と軽く呟くと魔具が積まれた方に歩く
「現物を見せた方が早い…か」
ガサゴソとダキは魔具の山を探す
「ダキ君、何探してはるの?」
「いや、"追憶の水鏡"を探してるんだが」
「ああ、それならこっちや」
「助かる団長」
キリヲがダキに渡したのは水が止めどなく溢れ出る鏡だった
「追憶の水鏡…?」
鏡のようなその魔具
一等不思議なのは、
零れ落ちる水は床に落ちることなく消えていくことだった
「水ばしゃばしゃ面白そー!!」
ウァラクが水を触ろうとするのを、
ダキは手を掴んで止める
「やめとけ、魔力のある水だから触るとビリビリするぞ」
そう言ってダキが片腕を鏡の中に突っ込む
ただの水ではない、魔力を帯びたそれは、
皮膚に針を刺すようなひりつく感触を与えた
「今から俺の記憶を見せる」
しかし、ダキそんな痛みに顔色一つ変えずに肘上まで水鏡に腕をつける
「この"追憶の水鏡"は対象者の体液と魔力を媒体にして、過去の記憶を見せるシロモノだ」
そして何処からともなく、
ダキはナイフを取り出した
「えっ、ダキ君?!!」
ダキがこれから何をしようとしているのか瞬時に察した入間は焦って止めようとする
ニンゲン同盟結成の夜
入間はダキの血の副作用について聞いていた
ダキの"血"は悪魔が嗅げば悪周期に堕ちるとても危険な物だと
しかし、そのことをよく知っている筈のダキは躊躇なく自分の手の甲を切った
____じわり、
と水鏡の中で赤が一筋、花のように舞う
「ヒール」
深く切った手の甲を水鏡から出す瞬間に直す
懸念していた血の匂いは無く
ダキの血の匂いを嗅いだら危険だと言うのに
生粋の悪魔のアスモデウス達は何も感じていなかった
(そっ……そっか、水の中だからか)
水に溶け出した血液の匂いは、空気中より拡散しにくく、匂いも感じにくい
入間は焦った自分が恥ずかしくなった
「これで、見せたい記憶が見えるはずだ」
そう言ってダキは入間を見る
「こっちに来い、水鏡に顔をつけたら、中で目を開けろ」
入間はダキに言われるがまま
赤黒い水に怯えながらもそのまま顔を水鏡に突っ込んだ
ーーどぷん、
入間は恐る恐る目を開けるとそこは薄暗い部屋の中だった
「ここ、は?」
脱ぎ捨て散らかした服と、下着
食べかけのカスが僅かに余ったポテチ袋
溢れかえったゴミ箱
行き場のない汚れたテッシュと、ゴム風船
真夏の蒸し暑い風のせいで強まる、
すえた腐敗臭とカビの青い匂いで咽そうになる
窓から漏れる隣家の明かりに、
床に転がるひしゃげたビール缶が鈍く光り
どうでもいい様なゴミばかり積もっていた
人が住むには粗悪な一畳間
そんな場所に、1人の子供がいた
「ダキ、君?」
呼びかけられた声に反応を示さず
俯いたまま少年は分厚い図鑑の様な本を読んでいる
「ねぇ、」
ーーードンッ
爆発音と共に一瞬部屋が赤くなる
耳の奥で爆ぜるような鳴動に
入間は窓へ反射的に振り向いた
ーーードンッ、ドドンッ
打ち上げられた次弾
黄と青が混じった火の粉が弾け
鮮やかな光の波が空いっぱいに広がり
朝顔を模した満開の花火が夜空に描かれた
パラ、パラ、パラ、
美しく咲いた一輪の華は一瞬にして枯れ落ち
瞬く火光となって、空から落ちてくる
花弁は地上へ落ちる前には儚く消え、
立ち上る火薬の煙となって風へ流れて
甘く焦げた匂いが鼻先をくすぐる
ーードンッ、
入間は花火のあまりの美しさに、つい見惚れていた
ふと隣を見れば、同じように少年もジッと外を見つめている
「えっ…、」
ようやく見えた少年の顔は
ダキの顔とは全く違う顔だった
(ニンゲンだった頃の…ダキ君だ)
はっきりとした目鼻立ちは愛くるしく
花火に見惚れる強い意志のこもった瞳の
その年頃らしくない大人びた様子に入間は今のダキと同じナニカを感じた
明かりに照らされ、
少年の酷い有様がはっきりと浮かび上がる
その姿に、入間の顔が痛ましげに歪んだ
ヨレヨレの白いタンクトップ
何かで汚したのか黄ばんだ跡が取れてない
髪はくしゃくしゃに絡まり、
ところどころ白いフケが雪のように積もっている
ダキはその細い腕を、
伸びきった爪で搔いていた
ーーガリガリガリガリガリガリガリガリ
瘡蓋になった部分が痒いのか、
無心になって掻きむしる
白い肌に浮かぶ赤い線
皮膚が剥がれ、
じわりと赤い血が滲む
「ダキ君!!!」
見ていられなくなって入間はダキのその腕を引ったくった、
ーーーそのつもりだった
「戻ったか、入間」
ダキの声が耳元で聞こえ、暗がりの視界が一気に明るくなった
「え、あ、?」
掴んだはずの腕は宙を切り、
入間は現実へと戻ってきていた
「……刺激が強かったか?」
戻ってきた感覚に入間は慣れず
周りをキョロキョロと見渡す
見慣れた魔具研の部室だった
現実へ戻ってきた、その筈なのに
まだ心だけが、あの部屋にまだ取り残されたままだった
「……ッううん、大丈夫、」
白昼夢の様な体験に
胸を叩く鼓動がうるさいほど響いて、耳の奥が痛い、じわりと目元に涙がたまる
胸を抑える入間の姿にアスモデウスが眉を顰める
「おい、入間様に何をした」
入間の尋常じゃない様子にアスモデウスがダキを睨む
「何もしてねぇ、花火見せただけだろ」
「なら何でこんなに、…!」
「ハァ、めんどくせぇ……」
肩を落とし、心底だるそうにため息を吐くと、
ダキは掴みかかってくるアスモデウスの首根っこを軽々と持ち上げた
「アスモデウス、お前も行ってこい」
「ちょ、貴様何すッ、」
抵抗するアスモデウスの顔面をそのまま水鏡に押し付けた
「がぼぼぼぼっ?!!!」
「アズ君ーーー?!!!」
ボコボコと水泡が激しく水面を揺らすが、
ーーしんっと、何も音を立てなくなった
「アズアズーーー!!」
「え、……ダキ君?アズ君大丈夫だよね?」
先程まで元気に反抗していたアスモデウスがいきなり静かになった
入間達は死んでないか不安になる
「おらよ」
ーーーザパッ
そう言ってアスモデウスを水鏡から引っこ抜く
「アズ君!!」「アズアズ!!!」
引っ張り上げられたアスモデウスは先程はショックを受けたのか俯いてる
「……す」
「す?」
「素晴らしい!!!」
「え?」
思っていた反応と違って入間は驚く
「耳に響く爆裂音!夜空に咲く火の花!
入間様が感動で胸を抑えるのも無理もないド迫力でした!!!アレが花火なのですね!!!」
アスモデウスは目をキラキラと輝かせ
興奮のままに今見たことをペラペラと絶賛し始めた
「えーー!私も行くーーー!!!」
そう言って水鏡にダイブしようとする、ウァラクの肩をダキは掴んだ
「馬鹿野郎、全身で行こうとするな戻って来れなくなるぞ」
「えー!じゃあ飛び込むから、ダキっち、足持ってて〜〜!」
「ド阿保、淑女が恥じらいを持て」
怒られたウァラクはしょんぼりしながらぽちょんと顔を少しだけ水鏡につけた
しばらく経って記憶を見終わったウァラクが「すごーい!!」とアスモデウス同様に興奮して部室内を駆け回る
「じゃあ、僕もいかせてもらおうか」
そう言ってキリヲも水鏡に顔を突っ込む
数分経って顔を上げたキリヲも「凄いなぁこれ!」とワクワクした様子で起き上がる
(みんな、見えて無かった…のかな?)
あの寂しい部屋の、子供のことが
「あ、あのさ」
「?どうした、入間」
自分がおかしいのか、
わからなくなった入間は思いを吐き出したくて声を上げたが、続く筈の言葉は、出されることはなかった
アレがダキにとって見せる筈のなかった過去ならこの場で言うのは傷つける事になる
「ううん、何でもない」
「なんだそれ」
胸の奥に湧いたざらついた感情が、
行き場を失って燻っていた
ーーパンッ
ダキが手を叩き、空気を一新した
「さて、これで各自花火がどんなもんか分かっただろ?」
ダキは迷いなく、キリヲを見据えた
「団長、この"花火"を作るのに必要な材料はあるか?」
「そうやねぇ、黒王火薬と、魔紙、縄辺りはあるねぇ、他の火薬も……揃えてるわ、後は配合次第ってとこやね」
「アスモデウス、お前の"火"はどれぐらいまで操れる?」
「舐めるなよ、我が誇りは、一瞬で灰燼に帰する事でできれば、その胸に抱いても焼ける事のない温度にすることもできる」
「つまり、自由自在ってことな、オマエは頭良いし、火薬配合を一緒にやるぞ」
「ウァラク、オマエの家系能力は何だ」
「私〜?見たことある物ならなーんでも取り出せるよ〜!」
「分かった、ウァラクは団長と組め、材料調達班な」
そして最後に入間の方を向くとダキは指を刺した
「入間は手先器用だから、魔具作り覚えてもらうぞ」
「う、うん!」
「スパルタでいくから覚悟しておけ」
そう言って笑うダキに入間は嬉しそうに頭を横に振った
「よし、お前ら…奴等の度肝、ーードでかい花火で撃ち抜いてやろうぜ」
一瞬の沈黙の後、
「おーーーっ!!!」とウァラクが拳を突き上げる
それに続いて、入間も、アスモデウスも、それぞれの思いを胸に頷いた
魔具研の夜が、熱を帯びていく
ーーーーーー
「じゃあ、まず火薬の配合からだな」
魔具研の一角
あり合わせの机と瓶、
謎の液体の入った試験管が並び、
即席の調合台が組まれていた
棚には、淡く光る粉末や球状の鉱石がごちゃ混ぜに置かれており、
作業に集中するには少々…不安な環境だ
「配合はただ材料を混ぜるだけじゃない、ミリ単位で材料を組み合わせ、定着させるために魔力を込める」
そう言ってダキはアスモデウスを見る
「配合は繊細さが大事だ、大雑把に配分すれば…ドカンッだ!」
真面目に聞いているアスモデウスに、
ダキは意地悪く笑う
「配合に成功すると、それぞれの色と混ざり合うか、同じ色になるか、虹色になる
………一番やばいのはバチバチ光始めることだ」
「……光るとどうなる?」
真剣な眼差しのダキにアスモデウスが恐る恐る聞く
その神妙なアスモデウスの顔を見てダキは「ふっ」と笑う
「……そうだな」
何か思い出すかのように目を細め、
ダキは天井を仰ぎ見て黙り込む
「……………、」
「……おい、ダキ?」
「………………………、」
長い沈黙が続く
ダキは過去の失敗を思い出しぶるり、と身震いする
「おい、黙るな!何があったんだ!!」
その様子に怖くなってアスモデウスはダキを揺さぶる
ダキは死んだ目で入間を見た
「あれは酷かった…失敗すると……見えるぞ、お前の人生の走馬灯が」
「走馬灯がか?!!」
ダキの脅しに怯え切ったアスモデウスは青ざめて、ダキにしがみついた
「ま、トライアンドエラーだ
ーーーまずはやってみようじゃねぇか」
ダキはアスモデウスの頭を乱雑に撫でて笑った
「持ってきたよ〜!!!」
ウァラクの元気な声が部室に響く
素材を運んでいた入間とウァラクとキリヲが戻ってきた
ウァラクがダキの前の机に鉄粉を置く
「これが"ぱちぱち"で、これが"かたいやつ"こっちが"あついやつ"でこっちが"こおりちゃん"!」
「???」
「雷鉄鋼と、剛石と、灼焼玉、冷徹鉄やね…で、もともと目の前にある黒いのが黒王火薬、白いのが白兎塊や」
ウァラクの説明が理解できなかったアスモデウスに、横からキリヲの説明が入る
「団長、俺で設計図を作ったが、理論上どうだ?」
そこへダキがキリヲへ図案を見せた
キリヲは紙を受け取るとその内容に驚愕する
(……凄いな、この子)
分かりやすい上に、初心者でも出来るように無駄を省いた洗礼されたダキの図面に、
魔具を作る同士として類い稀ない才能を感じた
「……流石、魔具作ったことある人やな
ーうん、ええね、これで、いこうか」
キリヲは黒板にダキの図面を貼る
「じゃあ、まず今回の花火作成だが、時間がないため各自役割を分担する」
「重要な火薬の配合については俺、アスモデウス、団長で色々やってみる」
「入間とウァラクは花火玉と打ち上げ台を作ってもらうが、未経験者ばかりのチームになっちまうから俺がこっちのチームを見つつ、実験をするつもりだ」
周りを見渡すと、キリヲも「ええね、それで行こうか」と賛同する
「じゃ、各自別れ、夜の七時には、
ーーーーーー外で花火の試験と行こう」
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
紆余曲折あり、魔具作りの洗礼を受けた初心者入間達は所々怪我をしながらもようやく試作と言える段階の花火玉の完成にまで至った
「これで、火薬玉の充填、完了っと」
ウァラクと入間が暴れる魔紙と格闘し、
どうにか作ることのできた打ち上げ台を設置する
「アスモデウス、」
「分かってる」
そこにキリヲ、アスモデウス、ダキが作りあげた火薬玉を入れる
何度爆発を起こし、壁と床に打ち付けられ、髪をアフロにしたか…アスモデウスの顔は歴戦の兵士のようになっていた
「いきます…!」
アスモデウスが装填台から伸びる紐に火をつける
ジジジと縄が燃え、短くなる
ーーーポンっ!
「「「「できたーーー!!!」」」」
小さな音を立てて夜空に上がる小さな花火
人間界の花火とは違い、
何色もの色の光を纏う夏の花が咲き誇る
一夏の夢のようなその花火は
七色の残光がキラキラと消えて落ちる
記憶で見た通りの美しい光景に皆が抱き合って完成を喜びあった
ーーーー
「これをもっとこれをでっかくするぞ」
「そうやな、でも、今日はとりあえずここで仕舞いやな」
「スースー、」
「うわっ、寝てる?!」
花火の試作品が無事に完成し、
ウァラクが寝落ちしたことで
今日の作業はひとまず終了となった
「じゃ、お泊まり会と行こうぜ」
夜風に吹かれながら部室へ戻る道すがら、
皆の顔には満足げな疲労と、ほんのりとした高揚感が残っていた
部室に入ると、各々が寝巻きに着替え始める
作業が終わり、完全オフのお楽しみである
「へぇ、入間、パジャマ可愛いじゃねぇか」
入間のパジャマは明るめの紫のオーバーサイズのネグリジェだった
萌え袖、と一般的に呼ばれる丈の長さから覗く小さな入間の手が愛らしく
また、襟の部分に大きめの黒いリボンがあって可愛らしい
「入間様よくお似合いです!」
アスモデウスの寝巻きは一目で高級品と分かる代物だった
深みのあるマルーン色のシルクがふんだんに使われ、胸元にはアスモデウス家を象徴する蛇の意匠が銀糸で刺繍されている
明らかにオーダーメイド品だと分かる貴族らしい装いだった
「こ、これしかなくて」
「リボン!」
入間のパジャマを指差すウァラク
アスモデウスの寝巻きとは対照的なウァラクの寝巻きは、庶民的なリップル生地に、お星様が幾重に散りばめられ、胸元にさくらんぼの様な赤いボンボンがちょこんと可愛らしい
全体的に少し…ダサい、
否____子供らしいパジャマだった
どこかしらゆるんだ空気が
"お泊まり”の夜を盛り上げる
「ダキ君も良く似合ってるよ」
「かっこいー!ダキっち良く似合うね!」
「そうか?坊ちゃんの見立てだ、良いだろ?」
ダキは、藍染の着流しに袖を通していた
落ち着いた藍の麻が
夜の闇と溶け合い
大胆に開いた胸元の肌の白さを際立たせる
「っ、///貴様…前を閉じんか…!破廉恥だぞ」
アスモデウスが怒りながら襟を閉じる
(何なのだ…!何なのだ此奴は!!)
ダキの着崩しは、一見すると粗野だ
だが、どこか洗練された大人びた装いには
いつもの威圧的な印象とは違い、
滲むような色気すら帯びていた
(普段は野暮ったい癖に…!)
アスモデウスは昼間のダキの熱い瞳を思い出して耳を赤くする
「いやぁ〜!しかし、ほんま夢みたいやわ」
和装に着替えたキリヲが、心底嬉しそうに呟く
(透けそう)
(儚い)
(消えそう)
(…幽霊)
その姿を見た各々が一斉に思った
ダキとは対照的に、
白い着流しは幽霊のように儚く、
今にも透けて消えそうな幸薄さを感じさせる
まるで誰かに忘れられることを、もう慣れてしまったような…そんな寂しさをダキは感じた
思わず出かかった、率直な言葉を飲み込み、ダキはキリヲに尋ねる
「……何が、夢みたいなんだ?」
「だって、師団に新入生が3人も入って、
お泊まり会して、
新しいもの作って…
ーーー今まで1人やった去年の僕には考えられへんかったわ」
噛み締めるように笑うキリヲの瞳が、
少しだけ潤んで見えた
「きっと披露も最高のものになる筈や…」
その声はどこか遠い昔を懐かしむような重さがあった
キリヲは、入間とダキを見る
「ほんま、ありがとうな」
「…はい!」
入間はまっすぐに、その言葉を受け止める
一方で、改まって真正面から言われるにしては小恥ずかしい感謝の言葉に「どーも」とダキはそっぽを向いたまま照れくさそうに返した
ーーーペルルル
キリヲの携帯から音が鳴る
「おっと、ごめんな、みんなは先に休んどいて」
そう言って外に出るキリヲを入間達は見送った
「……なぁ、頻繁に電話鳴るみてぇだが団長には恋人でもいるのか?」
「ううん、キリヲ先輩の保護者みたいな…魔具研の先輩なんだって」
「………そうか」
ダキはキリヲに初めて会った時を思い出した
あの先祖返り特有の
どろりと欲が溶けた本能剥き出しの目
"ナニカ"をやらかさないかダキは警戒していた
仲間を与え、
体を直せば、
キリヲの抱える闇は晴れるかと思った
(はぁ…影のある美人に俺弱いんだよな)
もし、キリヲが何かをやるつもりなら、
止めなくてはならない
ダキはその場でスッと立ち上がる
「……魔獣仕留めてくるわ」
「えっ?!今から???」
「入間様、トイレの事です」
「トイレに行く事魔獣を仕留めるって言うの?!!」
入間の驚愕の叫び声を後ろ背に
ダキは部室から出てキリヲの後をつけに行った
ーーーーーー
静まり返った夜の廊下
誰もいない石造りの回廊に、
足音がひとつ、ふたつ――と響く
冷気が壁伝いに肌をなぞり、
背中が無意識に強張る
突き当たりの壁から覗き、キリヲを視界に捕捉する
ぴっーー、
「はい《てめぇ!!!かけたらワンコールで出ろつったろボケメガネェ!!!!》」
廊下に響き渡る若い男の怒号
その暴力的な怒声が、耳の奥を殴るように響く
その声に、ダキの全身がビクリと跳ねた
どこかで聞いた声だった
(あ、やばい)
苦しい、
まるで、見えない誰かの手で、首絞められた様な圧迫感に呼吸が詰まる
「やぁ〜後輩達と楽しく作業をー、」
《うっせ知るか!!ちゃんと準備進んでるんだろうな!!!》
「ーー勿論ですよぉ」
呼吸が、うまくいかない
ひゅう、と吸い込んだ空気が喉の途中で止まり、視界が一気に狭くなっていく
目の前に揺れる金髪の男の幻想が見える
その男の向ける眼差しから、目が離せない
愛憎入り混じったどろり、とした熱
ーーーーーキィィィィィーン
(くそ……また、発作かッ)
耳鳴りがする
足元がぐらりと揺れて、壁にもたれかからないと立っていられない
ツノの欠損部から、
脳髄まで凍てつくような痛みが駆け抜ける
まるで氷柱を突き刺されるような激痛に身体が引き裂かれるようだった
(ここで、気を失うのはマズイッ!)
足がもつれ、膝が折れかける
だがダキは、必死に手を伸ばし、石壁にしがみつくようにして立ち上がる
チラリと壁越しで、キリヲの姿を見る
こちらには気が付かずに、まだ遠くで話し込んでいる
その顔は魔具研で見せていたものとは違い、
まるで子供のような無邪気な笑顔だった
ーーーーーーー
「あ、おかえり、ダキ君」
意識を手放したくなる激痛に耐え、
何の収穫も得られぬまま
ダキは逃げ帰るように部室へと這うように戻った
「悪りぃ、俺は寝る」
ダキは端っこの布団に気絶するかのように倒れ込み、意識は過去の記憶へと落ちて行った
好きなCPは?(市場調査)
-
ダキ×ゴエモン
-
ゴエモン×ダキ
-
ダリ×ダキ
-
ダキ×ダリ
-
ダロキア×ダリ
-
ダリ×ダロキア
-
ダロキア×バール
-
バール×ダロキア
-
ダキ×アスモデウス
-
ダキ×キリヲ
-
その他(自由回答)