「特賞ーーー!ファイッ!」
遠くからすごい熱気のこもった悪魔たちの雄叫びが聞こえる
師団披露でランク昇格を狙う彼等の熱意は凄まじい
祭りにもってこいのカラッと晴れた青空、
今日は師団披露、前夜祭なりや
「あ"ーなんとか間に合ったなぁ」
感慨深い気持ちでダキはアスモデウスと一緒に魔具研の展示スペースに砲台を設置する
「ギリギリだったな…」
そう答えるアスモデウスの顔は同じく少し疲れ気味だった
流石に師団披露で花火を作ると決めて、花火が実際に披露できる様な出来にするには時間が足りなさすぎた
主に制作は頭脳陣のキリヲ、アスモデウス、ダキで頭を抱えながら試行錯誤し、今日の朝方、ようやく完成したのである
「ふぁーーー、」
最後の詰めで徹夜したせいで、目が霞んでしょぼしょぼしているダキが上手く作業出来なくなり、見かねたウァラクに「チョンボあーげる!」と髪をかきあげて前髪を括られたのだ
『うわ………顔、やばやばのやば』
そこで顕になったダキの疲労困憊な顔を見たウァラクがおもむろにポケットからあるものを取り出す
『……ウァラク?』
取り出したそれを握りしめて勢い良くウァラクが振りかぶる
『眠っちゃーやーよ!』
びたーーんっと小気味良い音を響かせて
ダキの額に極寒布(魔界版最凶冷えピタ)を貼りつける
貼った瞬間、目に染みるほどのメンソールが噴き出し、強制的に体温を容赦なく奪っていく凶悪さ
その悪魔の所業にダキから断末魔が上がる
『ぎゃああ!目がぁ、目がぁ!!ふざけんなウァラクゥ!!!』
普段の紳士さはどこへやら
あまりの痛みに暴言を吐きながらのたうち回るダキ
『あははは!ざまあないな!!』
深夜テンションでおかしくなったアスモデウスが腹を抱えてダキの醜態を笑っていたが、アスモデウスの顔もだいぶ疲労でヤバかった
次なるターゲットを見定めたウァラクがまたポッケから2枚目の極寒布を取り出す
『おい、まて、何2枚目取り出してるんだウァラク???』
『アズアズも貼っちゃえ⭐︎』
『おい、ばか、やめっ、(ーービタァン!』
『ーーーぐぁぁぁあ!!』
『ダキ君ー!アズ君ーー!!!』
『なにやってんねん、君たち…』
ちなみに、この瞬間冷却布・通称「極寒布」は悪魔界で大ヒットした魔道具である。
主に悪周期や拷問に使われるが、その実用性から学生たちがテスト前に乱用したせいで品薄になったこともあるほどだ。
おかげで目はギンギンである
その甲斐あって無事夜を乗り越え、真っ黒なクマを目の下にこさえることになったダキは欠伸をする
師団披露とは言えダキがここまで頑張ったのにも理由がある
「悪いが、俺はこれが終わったら坊ちゃんの所行くからな」
坊ちゃんと前夜祭を楽しむ、その為だけに仕事を急いで終わらせたのだ
焦点が合っていないのに無理やり睨みを利かせるダキに呆れるアスモデウス
「キリヲ先輩も、個人的な用事で抜けると聞いているしな、さっさと行けば良い、私も入間様と前夜祭を楽しむしな!」
「そーかよ、」
互いにこの後の楽しみがあるのだ
さっさと終わらせるに限る
ダキは特にキリヲが『個人的な用事で』抜けるということに疑問も持たずに手を動かす
ーーカチッ
「うっし、」「完成だな」
花火を夜空に打ち上げるための砲台の設置が完了した
後は夜を待って、火を火縄に灯すだけ
「……じゃ、あとは頼んだぜ」
そう言って立ち上がると、ダキはゴエモンが待つ校舎の方へとふらふらと歩いて行った
「またねー!ダキダキ〜!」
「ありがとう、またね!ダキ君!!」
後ろから聞こえる声には振り返らず手をヒラヒラとと振って返すと、そのまま人混みの中へ姿を消した
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前夜祭で盛り上がる校舎内
煌びやかに飾り付けられた出店に興奮する悪魔ども声と、美味しそうな香りが周りを漂う
食堂前でゴエモンはダキを待っていた
互いに別々の師団に入ったせいで中々会えず仕舞いで、久しぶりにダキに会えるという興奮もあって上機嫌だった
そわそわと時計を見る
(…そろそろきてもおかしくない時間帯でござるが)
けど、待ち人は、来ず
約束の時間を過ぎた辺りでゴエモンは心配になってきた
一回電話でもしようかとスマホを取り出したその時だった
「お待たせ、坊ちゃん」
ダキの声が背後からした
やっときたな!とウキウキでゴエモンは振り向いた
「!もぉ〜遅かったで……」
が、そこにいたのは赤いチョンボで前髪を可愛らしく纏めたダキがそこにいた
随分と普段のダキとは違う浮かれっぷりにびっくりする
「ダキ??どうしたんでござるか???可愛い!!!」
「……?、あ、」
そこでダキはようやくいつもより視界が明るいことに気がついて前髪のヘアゴムを取った
「……失礼しました、くそっ、ウァラクにやられたんだよ」
早口で弁明しながらも、「気が抜けすぎだ」と羞恥で耳が赤くなるダキを見て、胸がチクリと痛む
(…ダキと普段過ごしていてもそんなに気の緩んだところを見た事ないのに、入間達には見せたんでござるね)
「……坊ちゃん?」
少し様子のおかしいゴエモンに気がついてダキが声をかける
「……なんでもないでござる」
前髪から覗く金色の瞳がいつもよりも疲れの色が見える。連日の作業、無理したのだろう目の下のクマが濃い
「……お疲れでござるな?大丈夫?」
「いやぁ…正直、久しぶりに追い込みましたよ。先輩以外は魔具制作のド素人、それに加え、今回は魔界初の――」
ケラケラと楽しげに語るダキ
自分のいない所で楽しそうにしているのだろうダキを思うと苦しくなる
ダキと自分の関係は一言では表せない
主従、恩人、兄弟弟子、幼馴染、ヒーロー
ーー唯一無二の存在
複雑な立場と感情が絡まり合っている
ダキの命を助けたのは自分だ
けれどもその事実を抜きにして、ダキには自分に縛られず生きてほしいと思ってる
ダキには才能がある
こんな主人に支えるのではなく、魔界を導くことのできるリーダーの素質が
それこそ、魔王を狙える器だとゴエモンはひとりでに思っている
そう、思っているからこそ、バビルスに入ったら徐々に距離を置こうとして、入りたい師団が別にある、なんて嘘をついた
(縛り過ぎない様にって思ってるのに…)
こんな思いを抱くなら、変な意地を張らずに、一緒の師団に入ればよかった
自分の器量の狭さが嫌になる
楽しげに笑うダキの顔が見れなくて、ゴエモンはうつむいた
「と、まぁ、あのな、坊ちゃん、俺がこんなにも頑張ったのはーー、」
グッとダキがゴエモンを持ち上げる
「ちょ、わっ!ダキ!!」
ゴエモンとダキの距離が近くなる
先程の疲れ切ったダキの金色の瞳が輝き、無邪気で、誇らしげで、まっすぐなその笑顔を向ける
「坊ちゃんと前夜祭を楽しみたかったから後顧の憂いは絶っておきたかったんだよ」
これで気兼ねなく遊べる、そう牙を見せて笑うダキに、自分が恥ずかしくなった
(そうだよ、ダキは、いつだって拙者のことを一番に思ってくれるでござるよ)
心の奥で、自分の存在がダキにどれほど大切に思われているのかを、改めて実感した
胸の奥がじんわりと熱くなる
ギュ、とゴエモンはダキの首に抱きついた
「どうした?坊ちゃん」
ゴエモンの甘えた様子に驚きながらも、優しい声でダキは尋ねる
そう言うところ、好きでござる
「ねぇ、ダキ!拙者屋台全制覇したいでござるよ!!」
ゴエモンの野望にダキが大口開けて笑う
「ハハッ!そう来なくっちゃなァ!!!」
前夜祭はまだまだ始まったばかりだ
ーーーーーーーー
ゴエモンのおねだりにダキは忠実に従う
片っ端から屋台を巡り、その屋台を悉く制覇していく
何もかも楽しくてしょうがない
ダキはゴエモンと一緒になってこの祭の雰囲気を心底楽しんでいた
その時だった
___来る
強烈な魔力の波動を感じた瞬間、考えるより早く体が動いた
ダキはゴエモンの襟を掴み、その小さな体を背後へと放り投げる
「なっ、ダキ?!!」
ーーーがしゃんッ! がしゃんッ!!
空間が軋み、ゴエモンの立っていた場所に透明な壁が突如として現れた
「ちっ、」
(閉じ込められたか…)
ダキとゴエモン、透明な壁によって完全に分断された
「ダキ!!!!」
「俺は大丈夫だ、坊ちゃん」
自分の前に立ちはだかる陽炎のように揺らめく透明な壁を叩く
ーコツコツ、
分厚い…が、破れないほどじゃない
「坊ちゃん、下がってろ」
「わ、わかったでござる!」
ゴエモンが下がったのを確認すると
壁に拳を当てて、位置を見定める
「すぅーーーーー、フンっ!!!!」
思いっきり透明な壁を殴る
ーーーガァァアン!!!
「ちっ、!!」
しかし、拳大の大きさの穴が空いただけで、完全に壊すことなどできなかった
「ああ!戻っていくでござる…!」
しかも、うにょうにょと、透明な壁は自己再生を始め、数秒後には完全に閉じてしまった
「断絶(バリア)……!(団長の家系魔法か…、)」
ダキは、キリヲがこの事態を引き起こしたのだ瞬時に理解した
それと同時にやはり、とキリヲに対して落胆に気持ちを抱く
(だが、団長には、ここまで大きな魔力は持っていないはずだ)
この威力を維持するのはかなりの魔力が居るはずだ
それこそ、魔王レベルの
(……一体、何が目的だ)
これは突発的な犯行なんかじゃない
緻密に練り上げられた計画的犯行だ
「ど、どうしよう、ダキ…」
心配のあまりべしょべしょと泣くゴエモンに、顔を拭ってやることもできない
(どうするか…)
ダキは自分の腕輪をチラッとみる
(…‥解放すれば、いけるか?)
自分の両腕には10個の魔具がついてる
どれもダキがこの世に留まるために魔力がそれ以上外に出ないよう張られた腕輪式の結界だ
(外して…何秒持つか?)
外した瞬間、ダキの膨大な魔力が体外へ放出される
しかも、今、この壁を打ち破るのに、さらに魔力を使う
(俺自身、その後のことも考えれば外せられるのは片腕分だけだ)
ただでさえ、『魔力が体内から常に放出される』疾患なのだ
魔力を使い続け、器に魔力が無くなる、なんてことになれば、それはダキの死を意味していた
(どうする…考えろ、俺)
ダキは閉じてしまった透明な壁に手をつき険しい顔を浮かべる
指に冷たい重みを感じる
「……?」
そこでようやく、自分の指に見覚えのない黒虹の指輪がハマっているのに気がついた
(なんだ、これ、俺はこんな景品取った覚えは…)
「なんでござるか、それ?」
「いや…これは…」
自分の中指に嵌められた指輪をしげしげとみる
そこに刻まれた文字に、ダキは目を見開く
「おいおい、……まじかよ」
それはダキが魔王の宝庫に仕舞ったはずの七変化の最凶魔具
「……七つの大罪」
「ええ?!!それって、あの最凶兵器の?!」
ゴエモンの悲鳴染みた驚愕の声が響く
国宝級の兵器と言っても過言ではない魔具をこんな一介の悪魔が持っていいものではない
宝庫の時は『強欲』モードで再臨していたが、今回はその初期形態の状態でダキの中指に収まっていた
初めてそれを本の中で見た時、あんなに強力な武器をここまでコンパクトに持ち運びやすくできるのか、と同じ魔具作りを志す同志として感動したのを覚えている
《Los siete pecados capitales》
光に当たり、指輪の側面に刻まれた銘が輝く
この世界では、もう見ることのない、人間界の文字だ
その意味を知るのは、人間だった記憶があるダキだけだ
(何故それが、"魔王子"の作った武器に刻まれてる…、?)
ダキの背筋に冷たい汗が一筋流れ落ちる
(俺と魔王子との間には、何かある…)
この顔も、使い魔も、この魔具も
ぜんぶ、魔王子の影がよぎる
今まで目を逸らしたかった事実が突きつけられる
(魔王子が何か、を企んでいるにしろ、俺は乗っかることしかできない)
まるで、最初から全部仕組まれていたかのような、道筋にゾッっと震える
しかし今ここで、この武器を使わない選択肢は無かった
「……いいぜ、使わせてやるよ、精々俺の役に立ちやがれ!!!!」
ダキはヤケクソになりながらも
その指輪に魔力を込めた
「っ、」
ーーードクンッ!!!!!
指先から熱が無くなっていく
「っカハッ!!」
「ダキ!!!!!」
急激な魔力の減少に体が拒絶する
代わりに、指に嵌められた黒虹の指輪が、心臓の鼓動に呼応するように脈打つ
(まずい…!)
ダキは自身の腕輪を片腕分外そうと手をかける
「やめろ!!ダキ!!!!!」
ゴエモンは半狂乱になってダキを止めようとするが、2人を阻む壁は厚く、ゴエモンにはその壁に穴を開ける事すらできなかった
がしゃん、
「ダキ、やめるんでござる!!」
がしゃん、
「だめだ、そんな外したら…!」
がしゃん、
「ダキ!命令でござる!!今すぐやめるでござる!」
がしゃん、
「ダキ!!!!!」
ーーがしゃん、
ダキは5つ目の腕輪を外すと、押さえつけられてきたその膨大な魔力が解き放たれ、バビルス全体が大きく、揺れ動いた
ーーーーーズンッ!!!!!
石壁にヒビが走り、窓ガラスが割れる
ダキの凄まじい魔力の圧がバビルスの校舎にいた悪魔達を襲う
「わぁっ!!!」
「ぎゃあああ!身体が潰れる…!」
「な、なんだこの重圧…息が…!」
生徒たちは耳を抑えながら、次々と膝をつき、体を襲う圧迫感に息が吸えず悲鳴をあげる
別階で避難誘導をしていたカルエゴは、上階から襲いかかる異常な魔力圧に顔を上げた
「……、この魔力は…!」
別階で、生徒たちの避難をさせていたカルエゴは上階の異常な魔力圧に視線を向けた
(アイツ……!)
苦虫を潰したような顔で歯噛みする
数日前の処刑玉砲の授業――あの時と同じだ
クロケルの氷に触れた瞬間、理性を失ったあの姿
そして弾け飛んだ腕輪と共に現れた、
魔王級の魔力量
(あの魔力が暴走すれば学園ごと吹き飛ぶぞ!)
生徒たちを飼い慣らすはずの教師が、あの瞬間――身のすくむ恐怖で足を縫い付けられた
それはカルエゴにとって屈辱でしかなかった
自分よりもハイランク悪魔と対峙した時と同じ、背筋を這い上がる戦慄
『抑え込む立場』の自分が、震えて見上げるしかないなど許されるものか
「あの、問題児(アブノーマル)め!!!
歯を噛み砕きそうなほど強く噛み締め、カルエゴは天井を睨みつけた
上の階に立っているだろう自分の生徒
陽炎のように見えるのは、紛れもなく魔王の幻影だった
___一方、その上階では暴れるダキの黒い魔力が指輪に収縮していく
ーぴしっ、ぴしっ、ぴしっ!!
ダキを隔離していたバリアが魔力圧に耐えきれず、悲鳴を上げ、黒い圧力に押し潰されるように罅割れ始めた。
「……す、凄い……!」
ゴエモンは声を呑む。
恐怖で心臓が凍りつくのに、同時に胸が焼けるほどの昂揚感に震えていた
ダキを中心に魔力が渦巻き空気を焦がす
制服の裾がバサバサと翻るほどの熱風が吹き荒れる
ダキの影が大きく揺らぎ、
まるで魔王の幻影が重なったかのように見える
「来いッ!!!」
喉を裂く咆哮
天井を突き破るかのように鳴動し、
空気そのものが震動する
ーーその瞬間、
ダキの声に呼応するかのように
緑色の稲妻が轟音を立てて天を裂き、ダキの頭上へと叩き落ちた
ーーーーピシャァァンン!!!
「ダキ!!!!!!!」
土煙が立ち込め辺りが静寂に包まれる
バリアは完全に壊れたのか、破片があちこちで砕け散っていた
雷が直撃したであろうダキが心配で、ゴエモンは胸がキュッと摘まれたようだった
身じろぎ一つ、呼吸の音さえしない
「ダ、ダキ…?」
震える声でゴエモンはダキの名を呼ぶ
だが、返事はなく、ただ黒煙がじわじわと広がるばかりだった
——その時だった
バチバチッ、と緑の光が煙を裂いた
稲光を纏った鋒が突き破り、災厄の胎動のように閃く
「ダキ!!!」
吹き荒れるような緑の炎光と雷鳴を従えながらダキは黒煙の中から現れた
新緑の螺旋状のランスを背負い、
鱗で鍛えた鎧を纏う騎士
「嫉妬の騎槍《ランサ・デ・エンビディア》」
圧倒的な威圧感と、ひと睨みすれば頭を垂れるその支配者としての雰囲気に呑まれる
そこに立っていたのは、
誰もが畏怖する「魔王の化身」だった——
好きなCPは?(市場調査)
-
ダキ×ゴエモン
-
ゴエモン×ダキ
-
ダリ×ダキ
-
ダキ×ダリ
-
ダロキア×ダリ
-
ダリ×ダロキア
-
ダロキア×バール
-
バール×ダロキア
-
ダキ×アスモデウス
-
ダキ×キリヲ
-
その他(自由回答)