音を踏み台にして、誰よりも早く、風に乗る
世界が悲鳴を上げるほどの烈風を
切り裂きながら、
ポロはただ一つの存在へと突き進んだ
ーーそして、辿り着く
強風に煽られ、宙を舞う紫と黄色の髪
逆巻く風の中心で、ひとり立つ悪魔
こちらをまっすぐに見返す驚きに満ちたその顔は、
何年も、何年も、失われたと思い込み、
探し続けた"ダロキア”そのものだった
「……ダロちゃん……!!」
叫びは、祈りのように震え、風に攫われる
次の瞬間、ポロは衝動のままにその胸へ飛び込んでいた
拒まれる可能性など、考えもしなかった
腕に力を込め、壊れてしまうほど強く、ぎゅっと抱きしめる
(ああ………!)
いる
確かに、ここに
布越しに伝わる体温
胸の奥に響く、確かな鼓動
失われた時間も、積み重なった絶望も、
すべてが一気に胸へ流れ込んでくる
言葉にならない感情が、喉元まで込み上げてきて、息が、詰まる
「あ、あい、たかった、ダロちゃん、ダロ、ちゃん…ッ!!!!」
ぼろぼろと、見ていられないほど大粒の涙がポロの目から零れ落ちる
大の大人が、いきなり抱きついて泣き続ける
その異様な光景にダキはぎょっと身構えた
けれど、
目の前の見知らぬ大人は、
それほどまでに"再会"を喜んでいて
突き放すことなんて、到底できなかった
ダキはただ、茫然と抱きしめられたまま、
ポロの温もりを、受け止めていた
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
突然自分に抱きついてきた悪魔
尋常じゃないスピードで、抱きつかれた側のダキは誰なのか全く顔も見えなかったが、自分を抱きしめて泣き続ける異様な姿に咎めることも突き放すこともできなかった
「落ち着いたかよ」
脱水症状になるんじゃないかってぐらい泣き続ける目の前の悪魔にダキは声をかける
ずっと肩を貸していたせいで襟が涙で冷たい
「ッ……ええ、」
ようやく顔を上げると、ダキの方をまっすぐと見返してはまた、涙ぐんでジッと潤んだ瞳で何か言いたげな熱をこちらへ向けてきた
(あ……、)
その顔に、見覚えがあった
ダロキアの新聞を集め探している中で、幾度と無く見かけた"魔王の伴侶"
つまりーー、
「アムドゥスキアス、ポロ……様」
ーー魔王子ダロキアの、母親
そう理解した瞬間、
胸の奥で、何かが静かに音を立てた
「!私のこと、覚えて、いるの?」
何かを期待する目
ソレが自分の中の"嫌な予感"を形を帯びて、現実に現れようとしているのが気持ち悪かった
「……知らないはずが、ないでしょう。魔王デルキラ様の、伴侶でいらっしゃる貴方を」
形ばかりの笑みを顔に貼り付けて、丁寧に返せば、一層傷ついたように顔を一瞬、歪ませて、「ええ、そうね…」と落ち着いた様子で言葉を返した
(やめてくれ)
初めて会ったはずの目の前の悪魔に、どうしても心が揺らぐ
心の奥にしまって、仮面をかぶって、誰にもいうつもりのなかった言葉を、まるで幼い子供が親に甘えるみたいにぶつけてしまいそうになる
その感情自体が気持ちが悪い
まるで、記憶はなくとも、魂が目の前の男を"母"だと覚えているようで
ーーーその瞬間
フラッシュバックのように、ポロの姿が重なって見える
その目線は、
まるで、その腕に抱かれ、あやされていた過去を思い出すような、あまりにも温かな、"親という存在"の眼差しだった
(ッ………!)
苦しくなる程の懐かしさに、ダキは息を呑んだ
ニンゲンだった頃の悲惨な人生の記憶があるダキにとって、その目は、自分がニンゲンだった頃に一番欲しかったものだった
(ああ…くそ……ッ)
もし、もしも、生きているうちに、こんなにも深い愛しさを向けられていたなら、
この人生に、悔いなどなかったと、きっと思える程の、無償の愛がそこにあった
ーーそんな目線を向けられる程に"ダロキア"は愛されたのだろう
その事実を何も覚えていない自分が、
どうしようもなく、惨めだった
(………ごめん、)
口が震える
その言葉は、誰に向けたものなのか自分でもわからなかった
目の前で必死に感情を堪えているこのひとにか
それとも、記憶の奥底で眠ったままの“ダロキア”にか
「貴方が俺を誰と、見間違えているか知らないですが、ーー」
今からいう言葉が、目の前で自分を心底心配していた親の気持ちを切り捨てる行為でしかない
ーーーけれど、言わなきゃいけない
「俺は、死にかけていた時に、自分を助けてくれた、今の主人に報いる為に、SDとして、今世を捧げると、決めた
ーーー平凡な悪魔です」
ここで何も言わなければ、
この人はきっと、また期待してしまう
そして自分は、その期待に応えられないまま、
さらに深く、ポロを傷つける
ーーそれだけは、してはいけない
「貴方が、誰と間違えたのか何も聞きません」
言葉を重ねる
一つひとつが、
彼女の望む“答え”から、確実に遠ざかっていくのを感じながら
どうか、これ以上、
自分に何かを期待しないでほしいと、切に祈る
泣きそうな顔でこちらを見るポロのその姿が、
胸の奥を、ぎり、と締めつけた
ーーどんなに、このひとはダロキアを探したのだろうか
何十年と、欠片さえ見つからない痕跡を頼りに
ーーどんなに、苦しんだだろうか
愛する家族が目の前から忽然と去って
例え、本当に、俺が、ダロキアだったとしても
記憶もない、力もない、オマケにニンゲンだった記憶がある歪な存在を、貴方の息子と同一の悪魔だなんて"嘘"は言えない
ダキは自身の手を包んでいたポロの手を丁寧に離す
その様子に、ポロは泣きそうな顔を隠しもせずにこちらを見る
「俺は、ーー俺は"ダキ"です」
涙で揺れる瞳がこちらに訴えかける
その先を、言わないで、と
(ダリもアンタも、俺に同じ目を向けてくる)
でも、もう、ダキはウンザリだった
自分の過去なんて知らない
覚えもない過去が、自分の未来を閉ざすのは御免だった
「俺はアンタの息子じゃない
ーー過去を、俺に求めないでください」
目の前の無垢な存在を傷つけるのは、胸が張り裂けそうなほど辛かった
けど、ここでポロを受け入れてしまったら、
ーーダキが、"魔王子ダロキアと同一悪魔"だと認めることになる
そうなれば、きっと自分が死んでも守りたかった"今"はもう2度と、手に入らない気がした
長い沈黙が2人の間に降りた
ダキの言葉を受け止めきれないのか、
ポロは俯いたまま、ダキの腕を掴んで話さなかった
項垂れたように考え込む姿は、自分より大きいはずの体躯が頼りなくなるように思えるぐらい小さく感じた
「………そうね、」
数時間もそこに居たかのような熟考の果てに、
ポロは先ほどと打って変わって静かな声で返事をした
どこまでも凪いでいて、大きな海のような、広さのある声だった
(ああ……、)
きっと、何もかもを知った上で、ポロは目の前のダキが選んだ道を、受け入れたのだろう
ポロの絞り出したその一言は、ポロの心情を察せられる程に柔らかかった
「……ごめんなさい、とっても、よく似てたから、ワタシ、間違えちゃったみたいね」
ポロは優しく微笑んで、ダキの髪を撫でた
柔らかくて、コシのある紫の髪に触れて、何かを思い出したようにふっと笑う
「はじめまして、ワタシはアムドゥスキアス・ポロよ」
ポロはそう果敢に告げると、
痛々しく赤く腫れた目を緩ませ、綺麗に笑った
「ーー良かったら、私達友達にならない?」
ポロの言った言葉が飲み込めなかった
(友達?だと)
てっきりポロは、ダキを"ダロキア"だということを諦めたのだと思ったのだ
それが何故、いきなり友達になろう、だなんて提案をするのかダキにはてんで分からなかった
まとまらない思考はダキの口を閉口させ、唇から出る言葉が彷徨う
「……………なんで、友達に」
ついに口から出たのはダキらしくない、ただ疑問を繰り返しただけの言葉でしかなかった
そのダキを慰めるかのように、ポロは優しく笑った
「そう、友達
ーーきっとね、私達過去に何かあったとして、その関係を、覚えてなくても
………今を新しく関係を築けると思うの」
そうぽつぽつと語る言葉が、ダキの心に、同じ温度が宿る
くすぐったくて、わらっちゃうほどの、ちいさな"希望"
(つよいな、アンタは)
ポロは、息子の在り方を受け入れた上で、
この縁が途切れないように
“友達になろう”と提案してくれたのだ
まるで、ごっこ遊びをしたがる子供に付き合って「じゃあワタシはお友達の役をやるわ」なんて、優しさを出したかのように
「だから、ーーだからね、」
自分の手の中で震えるポロの手
続きを言おうとするポロの言葉を遮って、ダキはその手をぎゅと握りしめた
「ーーーいいぜ、」
反射的に上がるポロの顔
泣きそうで、でも、嬉しそうなその目
「トモダチなろうぜ」
その顔を見れただけで、なんだか満足だった
好きなCPは?(市場調査)
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ダキ×ゴエモン
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ゴエモン×ダキ
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ダリ×ダキ
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ダキ×ダリ
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ダロキア×ダリ
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ダリ×ダロキア
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ダロキア×バール
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バール×ダロキア
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ダキ×アスモデウス
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ダキ×キリヲ
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その他(自由回答)