魔王デルキラの息子   作:雨鬱

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2026/01/24 子話追加しました
後、致命的な誤字発見したので修正しました



第32話:解放と呪縛

 

 

 

 

 

 

新しいオトモダチは、中々に活躍を見せた

 

 

「おダキ〜ーー!!!」

 

 

ポロは放課後になるとひょこっと、顔を見せた

 

 

「アンタ暇人かよ」

 

 

「ほほほ、無職最高よ」

 

 

実際、13冠を引退したポロにとって仕事は特になく、各地を研究のため放浪することが許されるほど時間があり、

また、特にあくせく働かずとも、魔界でも有数の侯爵家であるアムドゥスキアス家は、働かなくとも贅沢に暮らせるだけの潤沢な資金があった

 

 

「俺はアンタに構ってらんねーぞ

入間に反対派の懐柔に回れって言われてんだ」

 

 

ただ単に、入間はダキなら反対派のような強固な相手でも説得できるだろう、という自信から遣わされたに過ぎない

普通の学生に過ぎないダキも先生の情報に関しては一般的な事しか知らない

なんせ、情報を集めるにもダキ達には時間がなかったのだ

彼らロイヤルワン反対派は"カルエゴ卿"を敵に回したくない者たちだからだと考えていた

 

 

 

けれどポロは知っていた

ロイヤルワン解放反対派は、

主にカルエゴ卿を敵に回したくない、と考える者と、ダロキアを知っているからこそ、その特別な部屋を開け渡したくないという者で派閥が分かれているのを

 

 

「いいから、ワタシも付き合うわ」

 

 

「勝手にしろよ」

 

 

上機嫌になってダキに抱きつくポロを、特に振り払いもせずダキは目当ての教職員を探しにバビルス内を探し歩き始めた

 

 

 

「ポ、ポロ様ッ?!!」

 

「あら、アンタバビルスに就職したのね」

 

 

目当ての教職員はポロを見るなり驚きの声を上げた

 

 

「知り合いか…?」

 

「まあね」

 

 

ダキはこっそり、ポロへ耳打ちすると、ポロは懐かしそうに顔を緩ませた

とは言っても、他のダロキア配下の幹部のように名も知らなれていない、ただの信者で、話した事もなかったのだけれど、ポロはその顔に見覚えがあった

 

 

(………使えるわね)

 

 

ポロはダキの前に躍り出ると、まるで、本当に親しかったのような態度で笑った

 

 

「久しぶりね、」

 

 

その一言がよほど嬉しかったのだろう

教師は涙を滲ませながらポロへ話しかけた

 

 

 

「ッ…彼の方を、忘れられなくて。

卒業後もここに来てしまいました」

 

 

「そうね、あの子は、きっとそう想ってくれることを喜ぶと思うわ…」

 

 

その一言に胸元へ手を組むと目を潤ませ、おずおずと口を開いた

 

 

「ありがとう、ございます。

あの、ポロ様はどうして、ここに…」

 

 

「サリバンに呼び出されてね

ーーロイヤルワンを解放するって聞いたの」

 

 

「……話には、聞きました。

特待生が、ロイヤルワンの解放に動いてるって」

 

この教師にとってロイヤルワンを特待生入間が開けるという行為そのものが許し難いものだった

 

 

(いくら学園長の孫でも、あれは、あそこは…)

 

 

悔しそうに俯く信者を前に、ポロがダキに目を向けると、ダキはダリのロイヤルワン解放許可証を取り出し、目の前に突きつけた

 

 

「……えっ、」

 

 

その紙を受け取って、驚きでわなわなと手を振るわせる

 

 

 

「主任が……?!」

 

 

信じられないのだろう

ダロキアに一番近しいと言っても過言ではないダリからまさか許しを貰えるとは思いもよらなかったのだ

 

 

「ーーポロ様も、ロイヤルワン解放を、許すんですかッ?あの部屋はポロ様にとっても、デルキラ様の思い出が詰まった大切な部屋ではないですか!」

 

 

ダロキアがロイヤルワンを使う前、

ポロはデルキラと同じ部屋で青春を過ごした

 

ふたりの子供だからこそダロキアがこの部屋を使うことに納得がいった

けれど、なんの実力もないあの七光りが使うことなど到底許したくなかった

ーーしかし、

そんな教師の胸中の激情を諌めるかのように、ポロは目の前の教師を抱きしめた

 

その耳元でポロは静かに囁く

 

 

 

「ええ、託しても、いいと思えたの」

 

 

ちらり、とポロは目線だけ、ダキを見た

その目線に沿って、教師もダキを見た

そこにはこちらのやりとりを仁王立ちでただ見守るダキがいる

 

 

 

 

顔を覆う前髪の隙間から覗く、見覚えのある瞳

"大地に瞬く、朝日が如き黄金色"

 

 

 

 

「まさか、ーー」

 

 

 

信者から思わず声が漏れる

しかし、その言葉を信者は続けることはできなかった

 

 

「シー、」

 

 

ただ、静かに、ポロはその信者の唇に自身の人差し指を唇に押し当てて微笑むと、流石に教師から離れた

 

 

 

その圧に全てを察して、静かに教師はうなづいた

 

 

そのやりとりを、ダキはしっかりと、見ることはできていなかった

大きなポロの背中は、目の前の教師とのやりとりをまるで壁のようにダキの視線を塞いでいたのだ

 

 

 

 

 

 

「ーーー、わかりました。

私も、許可します。カルエゴ派閥の説得にも、まわりましょう」

 

 

 

「……いいのか?」

 

 

 

 

ポロの抱擁から解放された教師は、

あまりにあっさりと許可をくれた

その様子に流石のダキも疑ったが、そんなダキに名も知らぬ教師は綺麗に笑った

 

 

「はい、勿論

ーー頑張る生徒の為なら」

 

 

そう言って新しい許可証にサインを解こす

筆跡は丁寧で、迷いがなかった

それが、ひどく不自然だった

 

その紙を受けとったが、胸に残るざわめきが言い知れない気持ち悪さを残していた

 

 

「………………、協力感謝する」

 

 

ダキは、自分の預かり知らぬところで、

かつての“ダロキア”の名を、

再び動かしてしまったことに、まだ気づいていなかった

 

 

 

「ね、友達になってよかったでしょ?」

 

 

 

ポロはダキの腕に手を絡めて微笑んだ

ただ褒めて欲しいだけの善意の微笑み

ーーそう、見えるのに

ダキは眉間を揉むと、「はぁ、」と重くなった息を吐いた

 

 

 

「…………、明日も頼む」

 

 

 

あまりにもスムーズで、何か裏があるのではとダキは訝しみながらも、認めるしかなかった

 

 

なんせ、時間がなかった

疑わしくもポロという貴重な戦力を利用しないワケにはいかなかった

 

 

残りの反対派もポロを帯同し、説得して回る怒涛時間を過ごすことになった

 

 

 

 

そして、約束の3日目が訪れた

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入間は許可証を全て手に取り、カルエゴ卿の前に立つ

 

 

「これで、全部だ――

約束通り、ロイヤルワンを解放してもらおう」

 

 

 

受け取った36枚分の許可書をカルエゴは検分する

 

 

「………ああ、確かに教職員36名分は問題ない」

 

「残りは貴方のサインだけだが、厳粛に評価してこの期に及んでサインしない、なんてことはありえない……だろ?」

 

 

入間が畳み掛けるようにカルエゴに詰め寄るが、カルエゴはこの後に及んでも余裕たっぷりな姿だった

 

 

「………ああ、他が揃っていれば私もサインする」

 

 

「ーーいま、他って、言ったか」

 

これで全部の筈だ

ダキはカルエゴの言葉に違和感を感じて呼び止めた

 

その察しの良さにカルエゴは「フッ」と笑った

 

「ああ、お前達が集めたコレは数が足りない」

 

「……そんな筈!」

 

「私が指定したのはこのバビルスの教職員全員の許可だ……教職員には、

ーー食堂従業員、売店員、清掃員、図書司書など、このバビルスに従事する者達全て含まれる」

 

 

 

そんなことを思いもつかなかった

してやられたと、悔しそうな顔で、奥歯を噛みしめ、入間はカルエゴを睨み返す

 

 

 

「なんだ!それは!」

 

「ずっる!!!そんなこと、一言も言っていないのに!!!」

 

「ふん、認識の違いだな」

 

 

契約の穴をつくようなカルエゴの言い分に、

サブノックやリードから怒号に近い不満の声が上がる

 

 

「カルエゴ卿、それは、いくらなんでも……」

 

 

入間が苦しげに食ってかかる所を「粛に」とカルエゴの声が制止をかける

 

 

「粛にせよ、貴様らはいつもそうだ。

物事を深く考えない」

 

 

カルエゴは、両手を顔の前で組みこちらを厳粛な目で裁く

 

 

「面白そうだと、簡単に手を出す

ーー火を掴もうとする子供のようにだ」

 

 

カルエゴの魔力が外気に触れる

こちらをチクチクと刺すような痛みが叱責されているようで息苦しい

 

 

「貴様らが手を出そうとしているのは業火だ

ーーこの魔界の礎を築いた御方が遺した高貴な業火……この学園側守ってきた尊き遺り火に触れようというのなら、」

 

 

もし、ここで本当にロイヤルワンを開けてしまえば、それだけで"ハイランクの悪魔"を敵に回してしまうことなんて知らないのだ

教師として、生徒が危険なことをするのなら

身を挺して教えるのが教師だろう

 

 

「ーーー、私は学園の門番として、

その首を噛みちぎる義務がある」

 

 

カルエゴの剣幕は、静かでいて、喉仏に牙を突き立てられたような、命の危険を感じた

 

 

「思考力の無い道化は、ただの道化だ

そして、火の輪で身を焦がす

ーーーだが、ここまで許可証を集めたことは評価しよう、現教室の補修ぐらいは…」

 

 

ーーーぱちぱちぱちぱち

 

 

職員室に静かに拍手の音が響く

 

 

「何の真似だ、ダキ」

 

 

拍手の主は、ダキだった

ぎろ、とカルエゴは睨み上げると面白そうにダキは口元の笑みを深くした

 

 

「いやはや、素晴らしい

ーーさすが生徒想いの模範的な教師だなァ

カルエゴ卿」

 

 

ダキは安心させるかのように入間の肩を叩くと、「あとは任せろ」と呟いた

 

 

「なんとも、素晴らしい教えだ

 

ーー契約は認識を合わせろ、裏を読め

 

ーー安易に触れば大怪我をするぞ

 

ーー何も知らない馬鹿はいいように捨てられる

 

良い教訓になるだろうなァ、カルエゴ卿」

 

 

入間の隣にドカッと座り込み、足を組んでカルエゴ卿と対面する

 

 

「マ、普通の悪魔ならな」

 

 

そう言ってダキは差し出したのは数枚の紙束

 

 

「それは…!」

 

 

それは、足りなかった分の教職員の許可証だった

カルエゴはその紙を受け取った

書かれてある紙の名前と筆跡を確認して偽証では無いことを確認したカルエゴは苦虫を潰したような険しい顔になった

 

 

「貴様……ッ、」

 

 

「SDたる者、備えあれば憂いなし

念のため、バビルスで雇われている全員から許可証を貰ってきたぜ」

 

 

「流石ダキ!!」「サイコー!!」「よくやった首席!」

 

後ろで控えてたアブノーマルクラスの面々が沸き立つ

 

 

「なぁ、入間。

ここにある追加分はな、みんな、入間の為だって言ったら、快く書いてくれぜ」

 

 

ダキだってこのことを思いついたのは、直前のことだった

だってあのカルエゴがこんな簡単なことでロイヤルワンを開けるワケがないと思ったからだ

到底成しえないことをして、初めて開けられるものだろうから

 

 

 

「清掃員のおじさんも、用務員のあんちゃんも、"入間のファン"だからって"応援してる"からだってさ

ーーお前の人徳だからこそ成し得たことだよ」

 

 

その言葉に入間はもらった許可証に並ぶ名前を見て、肩を振るわせた

 

 

「……ふ、フッフッ、アッハッハっは!!

ーーーそうか!ファンか!!!」

 

 

顔を上げた入間は破顔した

自分のやってきたことが、無駄ではなかったのだと、見ている人はちゃんといて、その行動からファンとまで呼んでくれるひとがいること

どれもがとても誇らしく、嬉しくて仕方がなかった

 

 

「ーーさて!カルエゴ卿

貴方の主張は全て正しい…我々は確かに未熟で、爪が甘い」

 

 

入間はくるっと、振り返るとカルエゴに向き合った

 

「皆に笑われ、馬鹿にされて……

確かに、アブノーマルクラスは道化のようだ」

 

実際、寸での所でダキが気づいたから良いものの、本当ならカルエゴにしてやられる所だった

 

 

「だが、この一件に限っては、

ーーこれがバビルスの総意らしい」

 

 

入間が話すのをみんなが静かに見守る

隣に座っているダキも、

後ろで誇らしげな顔で控えるアスモデウスも、

いつもなら騒がしいウァラクも、

 

「ーー道化師は愚者だが、民衆の心を動かすんだ

みんな、アブノーマルクラスが、『王の教室』に入るところが見たくなった、"興味の勝利"だ」

 

 

入間は懐からペンを取り出す

 

 

「書類が揃ったら…

サイン、してくれるんだろ?カルエゴ卿」

 

にやり、と笑いながら入間はカルエゴに詰めかけた

 

 

「〜〜〜〜ーーーっ!」

 

 

これ以上の言い訳も思いつかず、カルエゴは唸る

しかし、入間からペンを受け取り、几帳面な性格らしいカチッとした筆跡で自身の名を許可証に綴ると、ハンコを押した

 

 

「やった!!!アブノーマルクラス!!

ロイヤルワンへ移動決定ーーー!!!」

 

 

「うおおおおおーーー!!!」

 

「うそだろ!」「あの、アブノーマルが!!」

「ロイヤルワンが開かれるぞー!!」

 

 

最後の一枚をもらった入間が声高々に宣言する

その号外に行く末を見守っていた野次馬達も自分のことのように喜び雄叫びをあげる

 

 

歓声の中、カルエゴは頭が痛そうに額を抑える

 

 

「やられましたね」

 

主任のダリがカルエゴの背後から労うように声をかける

 

「ーー…主任、よろしいんですが、本当に」

 

カルエゴは知っていた

ダリがあのロイヤルワンの"前使用者"だった事を

 

「……うん、僕も前を向かないとね」

 

今回のロイヤルワン解放許可の騒動も、この男が許可を出さなければ、反対派は決してサインを書かなかっただろうに

 

 

「………ハァ、全く」

 

 

首席のダキが、ゴエモンと一緒になって笑い合う姿を険しい顔で見る

この騒動で、ダキの望む将来が危ぶまれるものだと分かるからこそ心配せずにはいられなかった

 

 

(ーーロイヤルワンを解放したら一番失うのは"ダキ"、貴様なのだぞ)

 

 

ロイヤルワン解放は翌日には魔界中に知られ渡るだろう

その注目が、前使用者達を刺激する

 

 

カルエゴの目線に気がついたダキはフッと目元を緩ませて笑った

それは、嘲笑うようなものでは無く、カルエゴが心配していることも含めて、知っている、とでも言いたげに

 

 

(……やはり、道化師だ、貴様は)

 

 

かつてのロイヤルワンの主だった"魔王子"によく似ているダキは、もっと、大きなことに巻き込まれる

カルエゴはそれを阻止したかった

 

 

「ーーー……全く、いつも思うようにならん

アブノーマル共め」

 

 

お祭り騒ぎの中、カルエゴは立ち込める暗雲に顔を顰めた

 




【小話】片鱗 


ロイヤルワンが解放された

アブノーマルクラスの面々が、物珍しそうに、少しはしゃぎながら教室へ入っていく
ダキはその背中を、少し距離を置いて見送ってから、最後に足を踏み入れた

ーーその瞬間だった

懐かしい匂いが、胸の奥にまで染み込んでくる
理由もなく、心臓が早鐘を打ち始めた


「………っ、は、はぁ、は、!」


入り口から、足が動かない
床に縫い止められたみたいに、膝が小さく震えている


(ああ……)


言葉になる前に、感覚だけが先に理解してしまう


(やっぱり、“見たことがある”)



「ダキ、大丈夫でござるか?」



隣からゴエモンの声がした
けれど、今のダキには、その声に応える余裕がなかった


(さみぃ……)


体が、ゆっくりと冷えていく
指先がかじかみ、無性に、なにか温かなものが恋しくなる

クラスメイトたちが装飾や設備に目を奪われている、その間に
ダキの視線は、自然とひとつの場所に吸い寄せられていた

ーー教室の奥
日の当たる、窓際の、一番後ろの席

何の変哲もない、ただの席
それなのに、そこだけが、ひどく落ち着いて見えた


「ダキ……?」


ゴエモンの声に応えることもできず
気がつけば、ふらり、と足が勝手にその場所へ向かっている
抗うこともできず、導かれるように


(あたたかい……)


日差しがいちばん柔らかく届く、その席に、ダキは静かに腰を下ろした


(なんだろう、俺は、ここに来たことがある)


そこから見える教室の景色は、驚くほどしっくりきた
まるで、最初からこの位置で眺めるように出来ていたかのように


ーーーーズキンッ

「っぁ……ッ、」


一拍遅れて、鈍い痛みが脳髄をかき混ぜる
杭を打ち込まれたような衝撃が、視界を白く塗り潰していく

「ハッ……、くそ……」


視界が歪み、床が遠のく
息を吸ったはずなのに、肺に空気が入らない
足元からどろりと重さが這い上がり、
体が、言うことをきかなくなる

頭を押さえた拍子に、指先が机を滑った
支えきれず、そのまま前のめりに、
ダキは机に額を伏せた


ーーーけれど



(……違う)



呼吸が、浅い
胸の奥が、ちり、と小さく疼く

ぞわり、と背筋を撫でるような感覚
何かが、ひとつだけ欠けている気がする

無意識に、顔を上げる
視線が、勝手に動いた

——桃色、黒、金色、白
色だけが、流れていく



(……違ぇ)



どれも、手応えがない


そして、ふと、視界の端に、
亜麻色の髪が引っかかった


「ダリ」


気づいたときには、もう名前を呼んでいた
これだ、と思ったのだ
それが、どういう意味かも分からず、ただ本能のままに、ダリから目が離せなかった
入り口付近に立っていたダリが、こちらを見る


「なんだい?」



ダリは"その席"に座るダキを見るだけで胸が張り裂けそうだった
それを、悟られないよう、精一杯、大人の余裕を貼り付けた
何事もないふうを装っているのが、逆に痛々しいと、ダリ自身でも思うのに



ダキは、黙って自分の前の席を指さす



「ここに、座れよ」


「っ………、」


そこは、かつてダリが、この教室を使っていた頃と同じ席だった
顔に出そうな感情を必死に抑えて、
ダリがその席に腰を下ろすと、
ダキは手のひらを差し出して、「ん」と一言だけ言った



説明なんて、必要なかった



当然のように、ダリは自分の手を差し出す
ダキがその手を掴んだ瞬間、
感触を確かめるように、ぎゅっと力を込めた



温もりが、確かにそこにある


その感触にダキはホッとする


(ねむい…)

襲いかかる眠気に身を委ね、
逃がさないように、その手を抱え込んで
ダキは机に顔を伏せると、静かに目を閉じた


(ああ……)


その仕草にダリは胸が、きゅっと締めつけられる
懐かしすぎて、泣きそうになった


(なんで、知ってるんだよ、ダキ)


この席は、ダロキアとダリの特等席だった
任務で外に出ることの多かったダロキアが、戻ってきては、こうして体温を分け合い、短い休息を取っていた場所だ

ーーーーーーー

疲れ果てたダロキアの姿がリフレインする
戦い傷つき、それを表に出さない
体では無く、精神が疲弊しようとも、それを周りに知られる事をダロキアはよしとしなかった


『ダリ、手を出せ』

そう言って何の疑問も持たず差し出された手をダリは掴む

つめたい

まるで背筋が伸びきるようなツン、とくる冷たさにダリは驚いた



『ダロキア、君、なんでそんなに冷たいんだい?!』



反射的に引っ込めようとした手は、そのまま引き寄せられ枕にされてしまった



『暖取らせろ』

『はぁ?いやだよ、冷たいじゃん!』

『いいから、……さみィんだ』


普段弱さを見せない癖にこういう時に限って甘えてくるから、ダリはそれを拒めずにいた


『……まぁ、いいけど』


その言葉に安心すると、ダロキアはそのまま安心したように眠ってしまった

それが何回も、何回も続いた

主に、長期にわたって学園を留守にした後はよく、ダロキアはダリを枕に寝ていた
そんな、ダロキアをただダリはジッと側に居てあげるのだ
時には、本を片手に
時には、その髪を撫でながら



ーーーーーー


あの時のダロキアのように眠るダキ





陽でキラキラと光る紫色の髪
誘われるがままに、あの頃のように
優しく、髪を撫でる
かつての絹のような髪とは違う、
少し癖のある感触

それに対してダキは何も言わず言われるがままに撫でられていた



(はやく、思い出せ、ダロキア)




そう呪いをかけたくなる
同じ行動を、同じ仕草でなぞっているのに
あの頃の記憶だけが、すっぽりと抜け落ちたままのダキ



(早く、はやく、はやく)



その願いは今を生きる"ダキ"という存在の幸福を否定する事だった
教師なら、何よりも生徒の将来を守りたいと思うはず
ーーでも、


(早く、君に会いたい)


その矛盾が
ダリの胸を、静かに、深く、締めつけた



好きなCPは?(市場調査)

  • ダキ×ゴエモン
  • ゴエモン×ダキ
  • ダリ×ダキ
  • ダキ×ダリ
  • ダロキア×ダリ
  • ダリ×ダロキア
  • ダロキア×バール
  • バール×ダロキア
  • ダキ×アスモデウス
  • ダキ×キリヲ
  • その他(自由回答)
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