魔王デルキラの息子   作:雨鬱

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第33話:テストと終末期

最近のダキは変だ

ーーいや、「変だ」だなんて言葉で済ませてしまってもいいのかも、分からない

 

 

 

ダリ先生にロイヤルワンの解放許可証を貰ってから、どこかずっと、落ち着きがない

焦っているようで、急いでいるようで、

それでいて、何かから逃げ遅れているみたいな

そんな、見ていて胸がざわつく不安定さだった

 

いつもの余裕あるダキが、

どっか行ってしまったみたい

代わりに隣にいるのは、

同じ顔をしているのに、少しだけ遠い存在のダキ

 

ロイヤルワンでは、教室に入るなり、

ダリ先生を枕にして、気絶したみたいに眠っちゃった

 

 

 

あんなダキ、今まで見たことないでござる

 

 

 

バビルスに入ってから、

ダキはおかしくなった気がする

 

 

 

「ダキ…大丈夫でござるか?」

 

 

「……問題ねぇ、」

 

 

心配だからそう声をかけても、

なんて事ないように笑って返してくれる

ーーでもね、

そんな青い顔で言っても説得力がないでござるよ、ダキ

 

 

 

(ねぇ、ダキ……)

 

 

 

胸の奥が、きゅっと縮む

 

 

 

(拙者は、ダキの主人でござるよ)

 

 

 

頼って欲しい

守らせて欲しい

拙者は、ダキの唯一のはずなのに

 

それなのに――

 

事実のはずなのに、

どうしてこんなにも、手の届かない場所へ行ってしまいそうで、

こんなにも、怖いんだろうか

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

(……落ち着かないのは、ダキだけじゃないでござるな)

 

 

ゴエモンは周りを見渡してため息を吐いた

教室の空気も、どこか張り詰めていた

世は、今まさに『終末期テスト』の時期である

 

普段の授業を全く聞いておらず嘆く者がいれば、

問題の難解さに苛立つ者もいる

また、ランク昇格がかかり、焦りを隠せない者もいた

 

様々な悪魔達の思惑が入り混じり、

バビルス全体はいつになく勉学に励む熱気で満ちていた

 

 

 

 

 

ロイヤルワンに教室を得た彼らも状況は同じで、プリントと教科書を片手にあちこちからアブノーマルどもの呻き声が上がっていた

 

 

 

 

「ギリギリまで粘ったが…」

 

「やる気が出ない」

 

「我々はもうダメだぁ〜」

 

 

あちこちから、情けない呻き声が上がる

 

 

 

 

 

「いや、勉強始めたのは昨日からだろうが」

 

 

 

 

アスモデウスが呆れたように突っ込む

普通の試験ならここまで皆も頑張ってはいない

今回の終末テストには、ランク昇格と、ロイヤルワンの維持がかかっているのだ

 

 

 

 

「ええ〜?でもさっぱりわかんないんだってぇ〜」

 

 

 

 

プリントの山に顎を乗せて嘆くリードにアスモデウスはため息を吐いた

 

 

 

 

「もっと効率良く勉強出来んのか、できる者に教わったり…」

 

 

 

 

アスモデウスの天啓にリードが「できる者…」とチラリ、とダキやアスモデウスを見た

 

 

 

 

「よし!バカはこっちに集合」

 

 

 

 

ジャズの一声に勉強していた面々は立ち上がりゾロゾロと集まり始めた

 

 

一番端に錚々たる"優秀者達"が並ぶ

入試座学一位のアロケル、

二位のアスモデウス、

そして、三位ーーダキ

 

意外にも勉強ができるサブノック、

 

可もなく不可もない点数ラインの

ゴエモンと、現在不在のクロケルとプルソン達

 

それ以外は、赤点組、ボーダーラインの"下"

ーージャズ、カムイ、アガレス、リード、ウァラクと続き

 

その中でも特に勉強ができないのは

ーーエリザベッタと入間である

 

 

明らかに赤点組が多いその現場にアスモデウスは腕を組んだ

 

 

 

「よし!!解散!!!!」

 

 

「おおおーーい!!見放すな!!」

 

 

 

 

早々に見切りをつけ去ろうとするアスモデウスの足にリードがしがみついた

 

 

 

 

「この人数教えるのは無理だろ、私は入間様に付きっきり、ダキはゴエモンにつくだろうし、他2人は教えるのに向いてない、あとクロケルは不在がちで教えてもらえる暇がない」

 

 

「正論!」

 

 

 

アスモデウスの正論にあえなく撃沈する

しかし、そこでめげるリードではなかった

コチラを傍観するゴエモンを見て、その足に縋り泣いた

 

 

 

 

「頼むぅ〜ゴエモン!!平均ならそんなに必死にならなくてもいいだろ〜!お願いから、ダキを貸してくれよ!!!」

 

 

「平均だからこれ以上は落ちれないんでござる!!」

 

 

 

 

ゴエモンも頭が良い方とは言えない

ダキがSDとして主人を鍛えたからこそ平均のちょっと上を毎回ちゃんとキープ出来ているのである

 

 

 

 

「一緒に落ちよう!!!」

 

 

「不敬」

 

 

 

 

ーーべしん、

戯言を言うリードの頭をダキが引っ叩く

 

 

 

 

「大体なァ…俺がいるのに坊ちゃんに赤点なんて無様な点数取らせるわけが無ェだろうが」

 

 

 

「でもぉ〜ーー!!」

 

 

 

 

ダキはめんどくさそうにため息を吐くと、

ゴエモンにしがみつくリードの首根っこを掴み、ひょいと引きはがし、そのまま床にポイッと放った

 

 

 

 

「わりぃが、俺は坊ちゃん以外に教える気は無いぜ」

 

 

「うわぁぁぁーーん、薄情者ォ!!」

 

 

「黙れバカども」

 

 

 

頼みの綱も失い、冷徹に下されたダキの一言にリードは顔を真っ青にしながら「休みが潰れるぅ〜!」と呻く

この終末テストが終われば『終末期』

 

日頃、学業という檻に閉じ込められている学生たちにとって、ここは心の羽を伸ばせる貴重なロングバケーションである

 

 

「みんなの休みの予定って…」

 

「「「よくぞ聞いてくれた!!」」」

 

 

 

入間の何気ない一言に、待ってましたと言わんばかりにクラスが爆発したように盛り上がる

リード達が机に乗り出し、目をきらきらと輝かせる天井を指差す

 

 

 

 

「魔界には遊び場がいっぱい!!」

 

「なんと言っても外せないのはウォルターパーク!!血みどろプールに、絶叫フェス!ショッピングなら吸魂の館!」

 

「あちこちも祭りやってるし、身体が足りないよ!」

 

「師団で合宿とか」

 

「師団合宿!良いですな〜!拙者達も故郷に帰って道場で合宿があるでござる!」

 

「忙しいわよねぇ〜!」

 

 

 

 

 

キラキラ目を輝かせながら、学生らしく騒ぎ立てるリード達

人間界にいた時もバイト三昧で友達と遊ぶなんてことがなかった入間にとって『ともだちとおでかけ』は夢のような話だった

 

その光景に入間はぽつりと、漏れるように呟いた

 

 

 

 

 

 

「……たのしそう」

 

 

 

その寂しそうな一言に、リードがバネ仕掛けのように椅子を蹴り飛ばして立ち上がり、勢いよく入間の手をぎゅっと取る

 

 

 

 

「え!なに?!入間くん、ウォルターパーク行った事ないの?!一緒に行く?」

 

 

「い、いいの?!ほんとに?!」

 

 

「勿論でござる!一緒にお出かけしようでござる〜!」

 

 

「なんならクラスみんなでいこーぜ」

 

 

「うむ、悪くない」

 

 

 

 

人間界でも、入間はクラスメイトと遊ぶなんて経験をした事がなかった

初めて過ごす魔界での長期休み

その予定を遊びでいっぱい詰めて、ワクワクしながらその未来を想像するのは楽しくて仕方がなかった

 

 

 

 

「まぁ、テストを乗り切ればの話だがな」

 

 

 

 

しかし、そんな入間の夢想を打ち壊すかのように、無情にもカルエゴの言葉が教室に響く

先程まで楽しい雰囲気でいっぱいだったのに、一瞬にして現実に引き戻され赤点組が床に沈んでいった

 

 

 

「ちなみに、補習の監督官は私だ」

 

 

「あ"あ"あ"あ"!!デス・ロード!!!」

 

 

 

 

カルエゴのトドメに教室が阿鼻叫喚の修羅場と化す

 

 

 

 

「何が楽しくて長期休みに陰険教師と教室で顔を突き合わせて補習を受けなくてはならにゃならんのかーー!」

 

 

「貴様らが馬鹿だからだ」

 

 

「ムキーー!!!」

 

 

 

 

嘆く赤点組をダキは「アホらし」と鼻で笑った

 

 

 

「こんな馬鹿ども放っておいて、勉強しますよ坊ちゃん」

 

「うん!」

 

 

ニコニコと勉強道具一式を抱えダキの後ろをついて行くゴエモン

その姿に辟易した顔でジャズは頭の後ろで腕を組んだ

 

 

「なんでそんな機嫌がいいんだよ…」

 

 

 

「最近のダキは忙しかったから、嫌な勉強でも一緒にいれるのが楽しいでござる!」

 

 

勉強という苦行だが、ゴエモンにとっては久しぶりにダキを独占できる機会

最近まで師団に、バイトに、ロイヤルワン騒動と、ダキは色んなところへ奔走していた

だから、一緒に過ごせる、ただそれだけで、ゴエモンは嬉しそうにダキについて行く

 

 

 

「ねぇ、ダキ」

 

 

 

少しだけ声を潜めて、ゴエモンはダキを呼んだ

 

 

 

 

「ああ?」

 

 

 

 

一瞬、ダキの足が止まる

ダキは隣の方へ身を傾けると、ゴエモンはその耳に小声で告げた

 

 

 

 

 

「勉強、頑張ったら……拙者、ご褒美が欲しいでござる」

 

 

 

どうせだったら、楽しみが欲しかった

この苦行を乗り越える為にも

 

 

 

「ほぉ……?ご褒美、ね」

 

 

 

 

顎に手を当て、値踏みするようにゴエモンを見下ろす

わざとらしい沈黙が落ちたあと、ダキはふっと笑った

 

 

 

「……いいぜ」

 

 

 

 

まさかOKをもらえるとは思っても見なかった

意外とこう見えてダキはゴエモンを甘やかすことはない

むしろ、親方様に頼まれているからこそムチ6:飴4の教育というそこそこ厳しめの教育を普段から受けている

だからこそ、ゴエモンは耳を疑った

 

 

 

 

「ほ、本当でござるか?!」

 

「あァ」

 

「やった!!」

 

 

勢いよく前のめりになり、ダキに抱きつく

間近で見上げたその瞳は、期待で宝石みたいにきらきらしていて微笑ましかった

 

興奮し切ったその姿にダキの笑みは悪辣に歪む

 

 

 

 

 

「ただし……上位50人に入れたら、な」

 

 

 

「え"!」

 

 

その言葉にゴエモンの顔が苦渋に歪む

今バビルス1年生は300名

平均よりちょっと上の順位のゴエモンは100位ギリギリ

悪くはないが誇れるほどでもない成績だ

 

50位以内ともなれば

バビルスの一年生の中でも成績上位者と言っても過言ではない

それは努力だけでは届かない、才能と根気が要求される領域だった

 

 

 

 

「ぐ…っ、中々に厳しいでござるな」

 

 

「これぐらい頑張って貰わなくちゃ困るぜ、坊ちゃんよ」

 

 

ニタニタと意地悪げに笑うダキに、

ゴエモンは悔しそうに唇を噛みしめ、指を突きつけた

 

 

 

 

「……わかった、頑張るでござる

その代わり!絶対ご褒美貰うでござるよ!!」

 

 

 

その必死な宣言を、

ダキはどこか面白そうに腕を組んで見下ろした

ーーとはいえ、

わざわざ"ご褒美"という形で欲しがる程に、

手に入れたいモノを

ダキは想像できなかった

 

 

 

 

 

「はいはい…で、何が欲しいんだァ?」

 

 

 

 

そう問いかけると、

ゴエモンは一瞬だけ言葉を飲み込み、

ジッと見つめる

何かを伝えたいような、そんな視線をダキはただ静かに見つめ返した

 

 

 

 

 

「へへ、秘密でござる!」

 

 

 

そう言って、ゴエモンは笑って誤魔化した

ダキはそんなゴエモンを見て、

一瞬だけ視線を逸らし、

それ以上は何も聞かなかった

 

 

 

 

「ふぅーん…

マ、俺が出来ることなら、何でも叶えてやるさ」

 

 

 

その一言にゴエモンの瞳が揺れる

もしもダキが、自分に向けられる視線の意味を量れる悪魔だったなら

ゴエモンが向けるその熱が、

ただの憧れや家族の情ではないと、

きっと理解できたはずだった

 

 

 

 

「言質とったでござるからな!」

 

 

 

ダキのその一言に舞い上がって、顔まで真っ赤にしたゴエモンはぎゅっと文房具を抱きしめて笑った

 

 

些細な願いだった

そんな願いも簡単に叶えられると、

ずっとこの日々が続くものだと、

この時のゴエモンは信じて疑わなかった

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー放課後

 

 

 

 

「あら、ダキちゃん」

 

 

ダキとゴエモンが、教室で残りながら勉強をしていると後ろから声がかかった

 

 

「ポロ……」

 

「お、王伴様ッ?!」

 

 

長くしなやかな体がダキにしなだれかかると、使っていた教科書を摘んでぺらぺらとページを巡り微笑む

 

 

「あらまぁ、お勉強?

懐かしい内容勉強してるのねぇ〜」

 

 

「一年生だぞ、内容なんてこんなもんだろ」

 

 

ダキは呆れながらポロから教科書を引ったくった

 

 

「ダ、!ダキ!!そんな、王伴様に不遜すぎるって!!」

 

 

ダキの態度に青い顔になりながら、その腕をゆさゆさ揺さぶった

そんなゴエモンに、めんどくさそうに後ろのポロを指差した

 

 

「あー、大丈夫だよ、このひとは」

 

 

ダキの紹介を遮り、ポロはゴエモンを見てニッコリ笑った

 

 

 

「あら、アナタがダキちゃんの主人なの?」

 

 

ポロはダキから離れると、背筋を正してゴエモンに向き合う

 

 

 

 

「初めまして、アムドゥスキアス・ポロ

ーーダキちゃんのお友達よ」

 

 

 

 

礼儀正しい自己紹介に

ダキの中でポロの評価が少し上がった

本来なら歳もランクも何もかも上であるポロがこうして頭を下げる必要はない、

それなのに、友人の主人に敬意を示してくへたのがこの上なく嬉しかったのだ

 

 

 

 

しかし、そんなポロに対し、ゴエモンは困ったように眉尻を下げて、ダキの耳元で囁いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー、ともだち?って何でござるか、ダキ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ど、くんーー

ダキの胸が奥へ押し込まれるような嫌な軋み方をした

 

 

ーーしまった

 

 

魔界は弱肉強食

クラスメイト、同志、相棒、そう言った言葉で関係性を示し、仲間意識を集うことはあれど『友達』なんて言葉は魔界の常識には無いものだった

 

 

(やばい、やっちまった、どうしよう)

 

 

そのことに瞬時に思い至ったダキは顔をサッと青ざめた

らしくも無い、ダキの失態だった

 

 

ゴエモンには、ダキが"ニンゲンだった記憶がある"なんて事、知らないのだ

ニンゲン自体が夢物語のように存在を語られる魔界で、その事実を言うのは気が触れてるとしか思われない世迷言だからだ

 

 

(入間は言ってた、サリバンに、攫われて魔界に来たと)

 

 

ニンゲンは極上の餌だ

口に頬張っても溢れる欲の果実

体から香る甘美に溺れれば

押し寄せる快楽の海に、気が触れそうになるほどだと体験したものは嗤う

けれど、実際にニンゲンを見たものはいないのだ

ーー上位悪魔以外は

 

 

(おれが、転生者ってバレたら、どうなる?)

 

 

喉の奥が、きゅ、と鳴った

喉奥から異様な渇きに、掻きむしりたくなる

 

 

ーー監禁、実験体、食用愛玩動物

 

上位悪魔の玩具になるだろう

そんな嫌な未来を想像して、胃液が迫り上がる

 

 

「ゥ"ッーーー、」

 

 

今まで見ないふりをしてきた、ニンゲンだった頃の死に際を思い出してしまった

 

 

 

 

碌な人生じゃなかった

 

 

 

 

最後まで親は、他人だった

 

『たすけて』

幼い自分の声が、耳奥に残っている

 

手を、合わせるふたつの影

歪なまでに上がった口角

泣くどころか喜んでいた、気がする

 

 

(……思い出すなッ!)

 

 

目を固く閉じる

それでも瞼の裏に焼きつく嫌な記憶

振り下ろされる銀の刃

いたい

ちが、

とおさん、かあさん

 

 

 

(くそッ……せっかく忘れていたのに)

 

 

ダキの指先からどんどん温度がなくなる

暖かさを求め、さするように手と手を重ねる

 

 

 

「……友達ってのはなーー」

 

 

 

自分の声で、はっと現実に引き戻される

 

 

 

「……知り合いの中でも、特別仲が良い奴のことだ。アー……どっかの本で書いてあったんだよ」

 

 

 

 

 

それでもなお、普段から培われた弁舌のおかげで、口からするり、とそれらしい言い訳が滑る

 

 

 

 

 

「ーーーー、そっか」

 

 

 

 

 

 

その言葉にゴエモンは一拍、考えて

ニコッといつものように笑った

 

 

 

「流石!ダキは博識でござるね!!」

 

 

 

目をキラキラと輝かせ、全力の肯定を見せる

その陽日のような明るい笑顔が、何よりもダキの心を癒した

 

 

 

 

「ーーさ、勉強しようぜ坊ちゃん」

 

 

 

 

 

ゴエモンのノートをペンで突くと、「わかったでござるよ…」と机に再び向かう

無心で、ゴエモンの勉強に付き合う、けれどどうしても脳の片隅である疑問が浮かぶ

 

 

 

(なんで、ポロは"友達"なんて単語を知っていた?)

 

 

 

人間界のことを知る者しか知り得ない概念

それを、わざわざ使った

 

 

 

 

(なんの、ために?)

 

 

 

その疑問に辿り着いた時に、

ぶわっとダキは背中に冷たい脂汗が吹き出る

途端に、自分の背中に抱きつくポロの事が怖くなった

 

 

 

「………ゴエモンちゃん」

 

 

後ろからポロに声をかけられた

甘く、耳奥に響くねっとりとした音階が、ぞわり、と真皮を舐る

 

 

 

 

「ーー終末期、ダキちゃんと一緒に私の家に遊びにきて」

 

 

 

ーーずずずず

ダキの肩の上をしなやかにポロの指先が這う

まるで大蛇の腹のように絡みつくみたいに

 

 

「っ………、」

 

 

何かを、言葉にしようとしても、

見えない牙を首元に突き立てられている

 

動けば、終わる

 

そんな感覚で、声が出せない

 

 

 

「ええっ?!ポロ様の家にでござるか?!」

 

 

目の前で何も知らない、ゴエモンが無邪気な反応をする

「やめろ」とも制止する声も出せない

後ろにいる得体の知れない存在に睨まれたかのようにダキは体が動かなかった

 

 

「ええ、ウチのシェフが用意したとびっきりのお菓子も用意しておくわ」

 

 

「わー!やったーー!!」

 

 

 

心底楽しみにしている、弾んだ声音

上機嫌に飛び跳ねるゴエモン

ただ、何もできずに目の前の出来事を見ていることしかできなかった

まるで、人質を、喜んで差し出してしまったかのような気分だった

 

 

 

「ダキちゃんも、ちゃんときてね」

 

 

ポロは目尻を緩ませ嬉しそうに笑う

自分より遥かに歳上と思えない綺麗な笑顔

 

 

 

「………ああ、勿論」

 

 

笑顔のまま、従順な言葉を返した自分がひどく、惨めだった

タールのような黒い粘着質な感情が胸の奥でどろり、とたまるのを感じる

 

 

 

(まだ、ーー俺は弱い)

 

 

ぎり、奥歯を噛み締める

口の中の、自分の血ごと屈辱を呑み込んだ

 

好きなCPは?(市場調査)

  • ダキ×ゴエモン
  • ゴエモン×ダキ
  • ダリ×ダキ
  • ダキ×ダリ
  • ダロキア×ダリ
  • ダリ×ダロキア
  • ダロキア×バール
  • バール×ダロキア
  • ダキ×アスモデウス
  • ダキ×キリヲ
  • その他(自由回答)
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