魔王デルキラの息子   作:雨鬱

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第3話:思惑

入学式も終わったし、今日は坊ちゃんの好物で揃えた豪勢なディナーの予定もあるから早めに帰って作り始めようと思っていた時のことだった。

 

 

 

 

「おい!中庭で特待生が白い方の首席と決闘だってよ!!!」

 

 

どっかの誰かがそう叫んだのを皮切りに「おい!見にいこうぜ!」と廊下にいた悪魔共はドタドタと中庭の方へと走り始めた。

案の定アスモデウスが動き始めたらしい。

坊ちゃんが悪魔の波で轢かれないよう坊ちゃんを抱き上げて

避難させながら中庭へ目指す有象無象を見送った。

誰も居なくなった廊下で安全の確保がわかると、

坊ちゃんを床へ下ろした。

 

 

「ダキ」

 

 

すると坊ちゃんは俺を見上げて声をかけた。

呼ばれた俺は聞きやすいように少しだけ屈んで坊ちゃんの顔を見た。

 

 

「なんだ?坊ちゃん。」

 

 

「黒い方の首席さんは決闘しに行かなくていいんでござるか?」

 

 

確かに、言われてみれば晴れの舞台を台無しにされたのは何もアスモデウスだけではない。

俺もなのだ。

従者の名誉は主人の名誉で、

主人の名誉は従者の名誉なのだ。

しかし、それよりも何よりも大事なものがある。

 

 

 

「俺は決闘しないぜ」

 

 

「どうして?あんまり気にしてなさそうではござるが、ダキは晴れ舞台を奪われて悔しくないんでござるか?」

 

 

「坊ちゃん、俺の予想だがこの決闘。特待生が勝つと思う」

 

 

思っても見なかった返答に目をまんまるにしてダキを見つめる。

 

 

「どうしてそう思うっすか?どう見ても特待生は理事長のエコ贔屓に見えるでござる」

 

 

チッチッチ、と指を振り「ここからは魔法史と戦略論の話になるぜ」と笑い話を続けた。

 

 

 

「魔王デルキラ様が不在の今、右腕として魔界を治めてくださるサリバン様は実質No. 1とも言えるお方だ。」

 

 

「そうでござるな」

 

 

入学式代表は、手っ取り早く注目を与える絶好の機会だ。

入間のことを目立たせたいなら

元々新入生代表として俺らの名前を呼ばずとも、

最初から特待生を代表として呼べばよかったのに、

わざわざ俺たちを前に出させて注目させた。

それは何故だ?

 

 

 

「そんなお方の御令孫、特待生入間。見る感じ坊ちゃんと同じで争いを好まない穏健派みてぇだ。そんな穏健派の特待生が最初から目をつけられる様な行為をするとは思えねぇ」

 

 

 

実際に名前を呼ばれて壇上にたたざる会えなくなった

あの慌てた時の表情の変わりっぷりや、

自信なさげな風体からしてそんな感じには見えねぇとククッと笑った。

 

 

 

「だから、特待生の意思とは裏腹に、わざわざ学年で1番強い俺らに喧嘩を売ったと言う事は一年生の中でも特待生が強いと言うことを知っている……もしくはそう見せたい。」

 

 

それは、特待生という存在をみんなが認知した上で、

その1年代表たちを下せば、

実質1年生の中でも実力が1番上という認識になるからだ。

つまり、俺とアスモデウスを特待生の従者にしたいのだろう。

 

 

「あの通り、アスモデウスはお行儀良く見えるが喧嘩っぱやいプッツン野郎だ。喧嘩を売れば決闘を持ち込んでくる事は予想通り。」

 

 

色頭アスモデウス・リリスの息子。

受験時に優秀な悪魔で今年の首席の最有力候補とは風の噂で聞いていた。

 

 

「理事長には少なくとも、特待生がアスモデウスには勝てる勝算はあるんだろう。」

 

 

「ええ?!あのアスモデウスにっすか?」

 

 

 

アスモデウスはその気性が知られている為策を講じやすいが、

俺は数年前に災害に巻き込まれた記憶喪失者だ。

天涯孤独といっても良い俺の経歴を辿るのは容易ではなく、

しかも今はガープ・ゴエモンのSD。

すでに他の悪魔の従者になっている俺を特待生の従者にするのは難しいし、

今更他に鞍替えする尻軽悪魔は不要だろう。

だから標的はアスモデウスになる。

俺のことに関しては少しぐらい因縁があった方が何かしら繋がりが持てるから、ぐらいのおまけ程度だろう。

とはいえ、ここで馬鹿正直に俺が喧嘩を買うと厄介なことになりやすい。

ダキは渋い顔になりながらも腕を組んだ。

 

 

「……だから坊ちゃんには申し訳ねぇが、坊ちゃんが名誉を晴らす為に必ず勝て、と命じない限りは俺は少なくとも今回の無礼に関しては武力を行使する気はねぇよ。」

 

 

そう断言した俺に坊ちゃんは少なからずショックそうだった。

 

 

「なんで!?ダキなら挑めば勝てるでござる!!」

 

 

ゴエモンがそう断言するのも無理はない。

いつもの俺なら武力で負けることなんてないからだ。

 

売られた喧嘩は買って倍返し、

自分より大きい大人の悪魔をちぎっては道場へ放り込み、

襲い掛かられたら返り討ちにし、

しょうもない無い悪党どもを改心させたりと

ボコボコにして道場の舎弟にするまでがワンセットなのだ。

 

俺はSDという役目はあるものの、

ランクも社交場もないゴエモンのSDなので

学園に入る前までの俺はただの居候であった。

道場をやっているガープ家に貢献しようと、

あくまで利益を追求した結果そうなっただけ。

嬉しいことに道場の門下生は増えたが、

何故か俺を慕う暑苦しい舎弟まで増えた。

 

まぁ、俺に舎弟ができたことで

坊ちゃんも慕う悪魔どもが増えて俺は大満足だが。

そんな破天荒な俺の背中を見て育った坊ちゃんは

俺を自分だけの無敵のヒーローとして見ている節がある。

 

 

「そりゃ勝てるよ。俺にはその自信と魔力がある。だけどな、」

 

 

 

そういって完全にしゃがむと坊ちゃんと目を見て話を続ける。

 

 

 

「いっときの屈辱で、魔界の一の実質の権力者サリバン様を敵に回す旨味がない。坊ちゃんの将来の為にも俺は諫言するし、俺自身の怒りは鎮める。」

 

 

これも言いにくいが、

坊ちゃんも将来は家を支える立派な悪魔にならねばならない。

自分の感情を抑えなくてはいけない時も来る。

 

 

「だから、坊ちゃん。今回はこの屈辱を飲み込んでくれ。」

 

 

俺が真剣な声音で坊ちゃんと向き合う。

少しだけ長い沈黙の後、

坊ちゃんは視線を落とすと少し泣きそうな声で答えた。

 

 

「………ダキがそこまで考えてくれてる上で、決闘しないって言うなら拙者は飲み込むしかないでござるよ」

 

 

元々坊ちゃんは他の悪魔のことを考えられる強いお方だ。

俺はその寛大な心根に心の底からこの悪魔のSDでよかったと思い直した。

 

 

すこし重くなった雰囲気を吹き飛ばす様に俺は「ん"ん」と咳払いをした。

まだ何か言いたいのであろうことに気がついた坊ちゃんは俺を見上げた。

 

 

「でも、まぁ俺は喧嘩は買わないにしても、とりあえずは……」

 

 

そう言いながら俺は屈んで両手を広げた。

察した坊ちゃんが俺の首に捕まり、俺は落ちないように坊ちゃんを片手で支えた。

 

 

「野次馬しには行きましょうや、坊ちゃん」

 

 

俺は悪戯っぽく笑うと、

パッとさっきの暗さが嘘の様に明るくなった坊ちゃんが「ナイスアイディアでござる!」と笑い返した。

それを合図に羽根をバッと広げると、中庭目指してその場を飛び立った。

 




pixivであげている話分だけ上げ終えたい。

好きなCPは?(市場調査)

  • ダキ×ゴエモン
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