魔王デルキラの息子   作:雨鬱

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書きたいシーンが多すぎて話が進まねぇ!!!
ちょっと入りきらない部分は小話か幕間にして、
そろそろ終末期のイベント2つ分書きあげてぇよ!!!
若王編を書かせてくれよ!!!
ウォルターパーク編が長ぇよ!


第38話:凱旋パレードと消えた影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダキが表通りに出てみれば全てが終わった後だった

周りに悪魔達が、壊れた遊園地の市街を練り歩き、

英雄達を乗せた御輿のパレードに歓声を上げている

 

 

辺りにひらひらと紙吹雪が舞い、

色鮮やかなライトの洪水に飲み込まれている

歓声の中心、ひときわ豪華な神輿の上で、

泥と煤にまみれながらも輝く入間達の浮かれ顔を見た瞬間、

ダキは呆れ半分に苦笑した

 

 

 

「何やってんだァ?あいつら」

 

 

 

バッと、自分の背中の羽を展開すると、

少しの飛翔で、風に乗る

 

 

上から見た景色は壮観だった

悪魔達が歓喜に沸き、讃えるその姿は見ていて気持ちが良かった

 

 

(……ん?)

 

 

しかし、全員が全員無傷なわけではない

スタッフなんかは、傷を負いながらもそれを感じさせない笑みで場を盛り上げている

 

 

(プロだな…….、アンタ達)

 

 

 

神輿の上ではしゃぐゴエモンの側に音もなく降り立った

 

 

 

「ヴェアトリーチェ」

 

 

 

ぽつり、と

誰に届くとも知れない小声で、その名を零した

 

ーーその瞬間だった

 

 

 

 

 

 

「キェェェェエーーー!!!」

 

 

 

 

歓声を裂くように、甲高い鳴き声が響く

ダキの背後に、

太陽にも似た圧倒的な光彩が爆ぜ、

黄金の炎を纏った巨鳥が現れた

 

 

 

あまりの神秘的なその姿

騒がしかった会場全体に

不自然なほどの静寂が、落ちる

 

 

「よくやったな、お前ら」

 

 

拍手する手が止まり、ただ一点、

まるで時が止まったかのように、

ダキと、不死鳥に皆の視線が釘付けになった

 

 

 

 

ひとつ、巨鳥が、ゆるやかに翼を広げる

 

ーーーばさり、

 

その一振りだけで、世界が変わった

 

 

 

「うわっ、!」

 

「なんだ?!!」

 

「きれい…」

 

 

金色の羽根が辺りに散る

神輿の上から降り注ぐ、

キラキラと輝く炎の粒子

 

それは風に乗り、

パレードを見守る客も、

疲れ果てたキャストも、

会場の隅々にまで、

ーーー皆、平等に行き渡った

 

 

 

「あつ……ッ!くない…?」

 

 

炎の粒子が皮膚に触れると、

じわり、と

それは優しい温もりとなり、

 

裂けた皮膚が、

打ちつけた身体が、

流れた血が、

まるで最初から無かったかのように治していった

 

 

「すげぇ、!」

 

「傷が!治っていく!!」

 

 

それは癒やしであり、勝利を讃える至高の祝福

 

 

 

「……勝利の凱旋だ」

 

 

 

ダキが、ゆっくりと口を開いた

その声は、静かで、

だが抗えない重さを持っていた

皆が光悦とした表情でダキを見上げる

 

 

 

「もっとド派手に祝わなくてどうする」

 

 

 

ダキはにやり、と牙を見せ

黄金の不死鳥を背に堂々と笑った

その言葉を合図にしたかのように

 

 

 

ーー止まっていた世界が、再び動き出す

 

 

 

歓声が爆ぜた

 

 

誰もが叫び、笑い、泣き、

祝福の光の中で手を伸ばす

パレードは、更に熱狂的な熱を帯びて祝福される

 

ダキはその眼下に映る光景に、

ただ笑っていた

 

 

 

 

「!ダキ!!」

 

「心配じたでござるよォ"!!」

 

「ダキ!!テメェどこ行ってたんだよ!」

 

 

ダキだとわかった途端、

その足元に掴み掛かるようにジャズ達が群がる

 

 

「はいはい、おつかれさん」

 

 

そのジャズ達の手をぺいっと剥がし、

泣き続けるゴエモンだけを抱き上げた

 

 

「どうして、いなくなったんでござるか!!

拙者の活躍!ちゃんと見たでござるか!!

頑張ったでござるよ!!!」

 

 

ダキの首に手を回し、肩に顔を埋めながら泣きじゃくるゴエモンにダキは「わりぃ」と笑いながら背を撫でて慰める

 

 

「そーだ!テメェが居なくてこっちは大変だったんだぞ?!!」

 

 

 

「ハッ!文句ならそこの陰険教師に言えよ

なんせ、俺が戦闘に参加する事を禁じたのはあのお方でね」

 

 

その言葉に「はぁぁぁあ?!」とリードが奇声をあげてカルエゴの方を睨んだ

 

 

「先生???

なんで、1番の強ぇ奴を参加させないんだよ!!!」

 

 

その問いにさも当然だと言わんばかりにカルエゴは足を組み直した

 

 

 

「ハッ!愚問だな。

ダキにばっか頼ってばかりでは貴様らが成長しないだろう」

 

「ぬぐぐぐ!!」

 

 

そう言ってカルエゴはダキの方をそっと見た

その視線だけで何を問いたいのか察したダキはかぶりを振った

 

 

「そうか」

 

 

カルエゴは腕を組み、

深く吸った空気がため息となって溢れた

眉を顰めてカルエゴは考え込む

その眉間に、ぷすっと、ダキは指で指した

 

 

「……何の真似だ」

 

 

不機嫌そうな声音で威圧するカルエゴだったが、そんな事お構いなしにダキはグリグリと眉間をほぐす

 

 

「今ははしゃぐ時なんじゃねぇの?

眉間に皺なんて寄せてないで勝利に笑えよ、カルエゴ卿」

 

 

「そうでござる!もっと笑うでござる!!」

 

 

 

そう言ってケラケラ笑いながらダキはゴエモンと一緒に神輿の前方へ走って行った

 

 

「……まったく」

 

 

2人が去った後ろ姿をジッと見続けるカルエゴ

その口角は、わずかに緩んでいた

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

陽が落ちて、辺りが赤焼けに染まった頃

遊園地のオーナーの厚意により、

アブノーマル+教師陣は高級ホテルのVIPルームに泊まることになった

 

 

 

「おい、ダキ」

 

 

 

低く押し殺した声

気づいた時にはもう遅く、

酷く不機嫌な顔のカルエゴが、すぐ目の前まで詰め寄っていた

 

 

 

「あ"?なんだよ」

 

 

「こっちに来い」

 

 

有無を言わせない声音と同時に、

手首を掴まれる

 

 

 

「は、ちょ、ま、」

 

 

「カルエゴ卿の誘拐犯!

ダキを返すでござるよ!!!」

 

 

「五月蝿い、コイツを借りるぞ」

 

 

そのまま、引き寄せられる

逃がす気など一切ない力だった

 

 

「っーー、!」

 

 

半ば引きずられるように、

エレベーターへ押し込まれ、

 

 

 

「まっーー、」

 

 

ゴエモンがエレベーターに乗り込もうとする姿を、扉越しに呆然と見送ることになってしまった

 

 

ーーーゴウン、

 

動き出したエレベーターは5階へと向かう

駆動音しかしない静かな密室で、ふたりは無言で向き合う

カルエゴは、まだダキの手首を離さない

 

 

(……いつまで掴んでんだよ)

 

 

振り払おうとわずかに力を込めるが、

びくともしない

むしろ、指が食い込む

 

 

「で?なんのつもりだ」

 

 

睨み下ろすと、至近距離で視線がぶつかる

逃げ場のない距離

カルエゴの瞳が、じっとこちらを見上げていた

 

その目がゆっくりと、つま先からてっぺんまで視線を這わせる

何かを確認するように、品定めする目

 

しかし、再びダキの視線に戻るとくしゃり、とカルエゴは顔を歪ませた

 

 

 

「汚い、風呂入ってこい」

 

 

「は?」

 

 

 

 

しかし、カルエゴの口から出てきたのは予想だにしない言葉だった

 

 

(汚い…?汚いと言ったか?今、おれに?)

 

 

ダキは自分の服をチラリと横目で見た

確かに、何処かで転びでもしたのか泥と砂塵に塗れて薄汚かった

 

 

「ここは高級ホテルだぞ、場所にふさわしい格好でいろ」

 

 

「……チッ」

 

 

 

カルエゴのごもっともな言葉に、

ぐうの音も出ないダキは口を閉ざした

 

 

「理解したならいい」

 

 

その従順な態度に満足したのか、

ほんのわずかにカルエゴの指の力が緩んだ

 

 

 

ーーチンッ

 

 

5階につくなり、再びダキの腕を引っ張り再び歩き出す

今度は抵抗もなく、ダキも素直にその後ろについていく

カルエゴが向かった先には大浴場と書かれていた

 

 

 

事件のこともあってか、誰も利用していないようだった

 

 

 

脱衣所に着いた途端、

カルエゴはダキをロッカーに押し倒し、

その腹部に手をかけ、袴の紐を解く

 

 

「なっ、」

 

 

シュッ、と布ずれの音を立てて、袴がずり落ちる

 

 

「っ……、ばっ、!」

 

 

カルエゴの手をひったくるように袴が落ちるのを反射的に食い止める

 

 

「てめぇ、」

 

「動くな、脱がせられんだろう」

 

 

低く脳髄を撫でるような声で、ダキの耳元で囁く

更にカルエゴはダキの股に太ももを差し込み、必死になって掴むその硬く握った拳を解こうとする

 

 

「自分で脱げる……早く出てけ」

 

 

低くカルエゴを威圧したというのに、

構わず脱がそうとするカルエゴの力は強い

こんな細い体の何処にそんな力があるというのか

 

 

「いや、ここで脱げ」

 

 

「……はぁ?

生徒の裸体を見る趣味でもあんのかァ?」

 

 

 

いやん、とわざとらしく体をくねらせて揶揄するが、心底どうでも良さそうにカルエゴはダキの上着に手をかけた

 

 

 

「いいから、脱げ」

 

 

有無言わさない命令口調

だが、その声の底にあるものは嫌悪ではなかった

焦りに近い何かだと、ダキは直感した

 

 

 

「……へぇ」

 

 

 

ダキは口角を上げた

 

 

 

「……そこまで見たいなら、見せてやるよ」

 

 

カルエゴの胸をトンっと押すと、

袴を掴んでいた手を離す

カルエゴには"何か考え"がある

だから、素直に従ってやることにした

 

袴は呆気なくするり、と

脚をつたって落ちていく

裾が足首に絡みつくその一瞬すら見せつけるように、わざとゆっくりと足を抜いた

 

ーーぱさ、

床に落ちる音が、やけに大きく響く

 

 

(ふん、どうせなら、色っぽく脱いでやる

精々顔赤くしやがれ)

 

 

そんな悪戯心で、ゆっくりと、

見せるように一枚一枚丁寧に脱いでいく

ちらり、と試すように、流し目をする

 

 

「…………、」

 

 

カルエゴは、微動だにしない

 

ただ、じっと見ている

 

逃げもせず、逸らしもせず、

まるで観察するように

 

 

(チッ、やりずれぇ)

 

 

こっちは挑発しているのに、向こうは崩れない

羞恥ではなく、主導権を奪えないことが癪だった

 

わずかに眉を顰めながらも、

次に手をかけるのは上着

 

肩から滑らせるように落とし、

布が腕をなぞっていく感覚すら、わざと残す

 

 

 

「どこまで見たいんだよ、カルエゴ卿」

 

 

 

これ以上は、裸を晒すことになる

流石に、下まで見られるのは気分が悪い

 

腕をさすりながら吐き出した声音は、わずかに神経質だった

 

 

「いや、全部だ」

 

 

「……ッそうかよ」

 

 

ヤケクソに晒しを解く

布が床に散るたび、外気に触れた肌が冷える

まるで、何かを暴かれるような冷さだった

 

 

ーーシュッ、ーーーシュルッ、

 

 

最後の一枚が、床に落ちる

 

完全に、何も纏わない身体

股下の性器も隠さず立ち続ける

それでも、カルエゴは視線は逸らさない

まるで、肌を舐めるのではなく、傷の有無を数えるような目だった

 

 

「後も向け」

 

 

ダキは黙って従った

くるり、と後ろを向くと、

長い髪を持ち上げて、

無防備にも、うなじまで見えるように見せつける

 

背中越しに感じるカルエゴの視線が、

上から下へと、もう一度なぞる

隠すことも、遠慮もない視線だった

 

 

 

「もういいぞ」

 

 

 

嫌悪も、好感も、わからない淡々とした声だった

ただ落ちたダキの衣服を拾うと、そのままダキには何の興味の無いとでも言うように、出口へと歩いて行った

 

 

 

「っ…………、!」

 

 

 

何も語らず去ろうとする背が

堪らなく苛立たしい

 

沸騰するかのような怒りに突き動かされて、

一歩踏み出し、カルエゴの行く道を塞いだ

 

 

 

「理由ぐらい教えろよ」

 

 

真正面から、カルエゴを見返した

そのダキの真剣な顔に、

カルエゴも同じく真剣な顔でジッと見つめ返す

 

 

 

 

「………貴様には、傷が一つもないのだな」

 

 

 

そう言って、ダキの隠れていた前髪をさらりと手の甲でカルエゴは撫でた

 

 

 

「汚れを落としたら私の元に来い」

 

 

 

そう告げると、

カルエゴは何か思い詰めたような顔で外へ出て行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんなんだ、あの変態教師」

 

 

 

 

 

ダキはただ呆然とカルエゴの不可解な行動を見送ることしかできなかった

 

 

 

 

 

(傷……?俺が怪我をしたとでも思ったのか?)

 

 

 

 

 

心配した、の一言も言えないのか

それとも、何か裏があるのか

 

 

 

 

「わかんねぇ」

 

 

 

 

誰もいない大浴場でひとり、

ダキの呟きだけが響いた

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

長湯から上がれば、別で用意されていた黒い室内着に着替え、大浴場から出た

ロビーに戻れば知っている奴らは誰もいなかった

 

 

(あの野郎……

ひとを裸にひん剥いておいて何処行きやがった)

 

 

きょろきょろと辺りを見渡すが、

それらしき悪魔はいない

大人しく部屋に戻るかと、踵を返そうとした

その時だった

 

 

 

 

 

「おお!そこにいるのはダキ君じゃないか!」

 

 

 

 

 

聞き覚えのある声に振り向けば

特徴的な口髭の、ダンディな悪魔

ーー否、ローズベルト・ロノウェがそこにいた

 

 

「いやぁ!まさかあの時の君とこんな形で会えるとはね!」

 

 

 

 

 

ダキが、くろむの魔苦針ドームのコンサートでバイトとして働いていた時に出会ったコンサートのパトロンであり、ここのホテルのオーナーである

 

 

 

「くろむのコンサート以来だな、

ーーローズベルトさんよ」

 

 

「ローズで構わんよ!

魔獣を倒した英雄入間くんもそうだが、

客のみならず、私の大切な宝物であるキャスト達の怪我までも治してくれたダキ君にも頭が上がらんよ!!」

 

 

 

ローズはダキを熱烈にハグをして、笑う

むせ返るような薔薇の匂いに顔が引き攣りそうになった

ぱっと離れると、何事もなかったかのようにダキは静かに微笑んだ

 

 

 

「君たち英雄には楽しい思い出を持って、このウォルターパークに帰って欲しいからね!

ゆっくりと過ごすといい!」

 

 

ダキの腕を豪快に叩きながら

ローズは機嫌良さそうに笑う

 

 

 

 

「ご厚意感謝する…

あーー、ところで、事情聴取に呼ばれてんだが、カルエゴ卿は何処にいる?」

 

 

そっと、ダキはローズに耳打ちすると「ぬ?」と奇声をあげて辺りをキョロキョロ見渡した

 

 

「おらぬな…

もしかしたら部屋にいるかもしれない」

 

 

そう言って近くにいたスタッフを手招きした

 

 

「カルエゴ卿達には君達の上の部屋を用意している、確か…1028号室かな!

君!案内したまえ」

 

「かしこまりました

ーーお客様、こちらへ!」

 

 

「では!ダキ君!!

また会おう!!!」

 

 

「ああ…」

 

 

スタッフに引き継がせると、振り向きざまにローズはダキへウィンクをして去って行った

 

 

(親子揃ってキザな奴…)

 

 

スタッフについてカルエゴのところまで行こうとした

が、視界の端に捉えたある影に気づいて、もう一度振り返った

 

 

 

(……?サリバン様)

 

 

 

入間を心配してやってきたのか、ホテルにはサリバンが居た

ローズはサリバンと顔を寄せ合ってなにかこそこそと小声で話している

 

 

 

(……なんだ?)

 

 

ダキは音魔だ

サリバンの会話を盗み聴こうと、音を意識した

 

 

 

「ちなみ、例の準備は?(ひそひそ」

 

「勿論!OKさ!(ひそひそ」

 

 

たった二言、

その言葉だけで何もかもわかるとでもいうよりふたりはニンマリと笑い合い、忙しなくばたぱたと廊下の奥へと走って行った

 

 

「ーーお客様?」

 

「……ああ、悪いな」

 

 

そのふたりを追いかけて聞くわけにも行かず、ダキは目を細めただけで、すぐ別の方へと視線を戻した

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

カルエゴとバラムは自室として当てがわれた1028号室へ向かっていた

事情聴取が終わり、

魔関に調査を引き継ぎがやっと終わったのだ

 

 

 

「で、どうなの?鑑定出たんでしょ?」

 

 

 

カルエゴはダキから服を奪い、

その服から犯人の手がかりがないか鑑定に出したのだ

 

 

「ダキの服からは犯人らしき血痕もなかった」

 

 

しかし、結果は"何もなし"

出てきたのはゴエモンの髪や、ジャズ達の涙ぐらいだった

 

 

「んー、ダキ君ってかなり強いよね?」

 

「バビルスでも、強者の部類に入るだろうな

……まだランク5のひよっこだが」

 

 

実際、ダキが闘ったところを見たことがないカルエゴにとって、その実力は測りかねた

だが、魔具"七つの大罪"を使える魔力量や筋力を加味しても、ダキは強い

逆に今のランクが追いついていないぐらいだろう

 

 

(新学期が始まったら、ランク昇格の試験を行うか、はたまた、力のコントロールを学ばせる必要があるな…)

 

 

凝り固まった眉間をほぐしながら

いつだってアブノーマルの奴らのせいで、カルエゴは頭を悩ませていた

 

 

「でもさ、そんなに強いダキ君が、犯人と対峙して無傷っていうのは怪しいよね」

 

 

カルエゴはその場で立ち止まってシチロウを見上げる

 

カルエゴは浴場でダキの裸を検品した

傷ひとつない、肌だった

 

しかし、そんなもの

ダキの使い魔なら簡単に治してしまえる

 

あの派手なパフォーマンスは、もしかしたら負った怪我を隠したかったから、なのかもしれない

そう考えれば、シチロウがダキの事を怪しく思って当然だ

ーー当然、だと言うのに

 

 

 

 

 

 

「疑っているのか」

 

 

 

 

 

けれど、"面白くない"のだ

自分の生徒を疑われるのは

隠せないケルベロスの威圧がカルエゴから漏れ出て、シチロウに向けられる

 

 

 

「生徒を疑いたくは無いよ、

けど、あの子、"彼の方"に関わりがあるんでしょ?」

 

 

バラム・シチロウはカルエゴの学生時代からの付き合いだ

信頼できる男だからこそ、カルエゴはダキがポロの孫になる、ということを話していた

 

 

「……そうだな、」

 

 

ダロキアの名の影響は未だ強い

だからこそ、この後継が現れたとなれば、また魔界は吹き荒れるだろう

今回のことも、魔王子ダロキアの思想を示す為に、魔界の重要拠点を潰すことをメインとした破壊工作、なのだとしたら?

 

 

 

 

「ーーーだが、シチロウ。

お前も知っての通り、一連の犯人に関わった者、みな犯人達の記憶が無いと言う」

 

 

 

カルエゴはそこで目を伏せた

ダキという男は、ゴエモンという悪魔に実直で、生き抜くために強かな男だ

だからこそ、バビルスを裏切る悪魔ではないこと信じている

 

 

「ダキは、もしかしたら、同じく洗脳をされて犯人を逃した可能性がある」

 

 

その言葉にシチロウも溜息を吐いた

結局、いくら疑おうとも、ダキが"黒"だと言うことも断定はできないのだ

 

 

 

 

 

「厄介だね」

 

「ああ」

 

 

 

互いに無言のまま、

赤いカーペットの廊下を歩いていた、

その時だった

 

 

 

 

 

「お、」

 

「む、」「あ、ダキくん」

 

 

 

 

廊下でばったりと、ダキと出会った

風呂から上がった体は綺麗に整えられていて、ホテルの備え付けの黒いパジャマを着ていた

 

 

 

「貴様何処に行っていたのだ」

 

「こっちはアンタを探してたんだよ」

 

 

 

肩をすくめながらカルエゴと、バラムの隣をダキは歩く

 

 

 

「で、先生方は事情聴取どうだったんだよ」

 

 

 

その言葉にカルエゴはシチロウの方をちらり、と見て言おうとしていた言葉を飲み込んだ

 

 

 

「ーー……生徒に話す事はしない」

 

 

 

突き放すような声音になってしまった

しかし、いち生徒に言えることではない

カルエゴは組んだ腕をグッと力を込める

 

 

 

「……そうかよ」

 

 

 

その答えに、ダキの歩幅が少しだけ速くなる

カルエゴ達よりも前に進み、その顔がどんな表情をしているのかなんてわからない

けれども、どう思ったか、なんて手に取るように分かった

 

 

 

(わかりやすい奴め)

 

 

 

ダキはそんじょそこらの生徒より頼りになる

頼りになるからこそ、相談してほしいと思う気持ちが大きいのだろう

自分ならもっとできる、もっと、役に立ちたい、そんな風に

 

 

 

「ダキくんこそ、犯人らしき悪魔を追ってたんだって?」

 

 

 

そんなダキにバラムは柔らかく問いかけた

 

 

「ああ」

 

 

「ーー……その時のこと、教えてくれるかな?」

 

 

 

 

シチロウのその問いにダキの足がピタリと止まる

ジッとバラムを見つめると、重々しく事のあらましを語り始めた

 

 

 

「……俺は、空からウォルターパークの様子を見ていた。

ーーそん時だ、フードを目深に被った不審者を見つけたんで、カルエゴ卿に坊ちゃん達を任せて、その不審者の跡を追った」

 

 

ダキの言葉は澱みなく続く

その語りにバラムもカルエゴも静かに聴き手に回る

ダキはその時のことを思い出しながら、手を彷徨わせる

 

 

「カララギ通り、って書いてあったな

奥の奥、遊園地とは思えねぇ薄汚い廃墟みたいな街をーー、歩いて、……」

 

 

その言葉の後、不自然に動きが止まった

ダキは頭を掻きむしりながら、

赤いカーペットただ一点を凝視している

 

 

「…?どうしたんだい、ダキくん」

 

 

「ーーそれで、おれは……、」

 

 

思い出せないのだろう

記憶の濁流をこじ開けようと、縋り付くようにダキは自らの頭を抱え込んだ

 

 

 

「っ、………?、」

 

 

 

声が出ない

まるで、言葉を失ったかのように、

口を開けては、閉じて、

つい数時間前に起こった事を思い起こすことができず、眼はうろうろと宙を彷徨った

 

 

 

 

 

 

「やはり、な」

 

 

 

 

そのダキの不自然な様子に

カルエゴはため息を吐いた

 

 

 

 

 

「お前ならば、あるいはと思ったのだが」

 

 

「……どういうことだ」

 

 

 

 

カルエゴの落胆した表情に、

ダキは噛み付くように問いかける

前髪越しからギラギラと睨む黄金の瞳から怒気を感じた

 

 

(………話していいものなのか)

 

 

先程のシチロウの会話を思い出して、カルエゴは口を噤む

 

 

 

「話してあげれば?

結局この子も当事者なんだから」

 

「しかし、」

 

「こういうタイプは勝手に調べ上げてくるから、危ないことする前に情報を与えた方が良いって」

 

 

シチロウのその一言に、カルエゴは「チッ」と舌打ちをしながら「確かに、コイツならやりかねんな」と渋い顔でダキを睨んだ

 

 

 

 

「………ダキ、」

 

 

 

「なんだ、」

 

 

 

 

「今回の主犯格はウォルターパークのスタッフ数名らしい。

ーーだが会ったであろう同僚スタッフ、囚魔も、そいつらの名前を、姿を、何も覚えていない」

 

 

「記憶の抹消…いや、認識阻害、か?」

 

 

「恐らくは」

 

 

 

それは、ありえないほどの大規模な魔術の行使

同僚スタッフのみならず、囚魔と、数は数十人にも及ぶ

 

 

「そんなことができる悪魔を、心当たりがあるのか?」

 

 

ダキの核心に触れるような話題に、カルエゴは眉を顰めた

 

 

 

「いや、そんなことができていればソイツをすぐにでも魔関に引き渡している」

 

 

「……そうだな」

 

 

重々しい話題のまま、目的地の1028号室へ辿り着いた

 

 

「私達はこのままディナーまで休む

事情聴取は終わりだ」

 

 

そう言いながらカルエゴは1028号室の鍵を開けた

 

 

「…‥及第点だな」

 

「ケルベリオン…!」

 

 

そこにいたのは、ベットの上に立ちモノマネを披露する、ゴエモン、ジャズに爆笑するリード、カムイの4にんだった

 

好き勝手に、お菓子を広げ、ベットの上には色々な菓子の食べカスが散乱していた

 

 

 

「何やっとるんだ貴様ら!!!!!」

 

 

「あ、やべ」

 

「もうご本人帰ってきた!」

 

「あ、ダキ!!」

 

 

片せ!と慌ててベットの上を綺麗にする

 

 

「貴様らの部屋は下にあるだろうが!!」

 

 

「いやぁ、ウチのSDを勝手に連れて行ったから、何処にいるのか探している内にカルエゴ卿の部屋はここだと聞いて…

さすが、上の部屋の方が豪華でござるなぁ」

 

 

「これは、荒らし…いや、遊びに行きたいってね」

 

 

 

そう言ってニコニコ笑っているように見えるのに、ゴエモンの目は笑ってなかった

要は『何、ひとの従者を好き勝手使ってんじゃい』っということだろう

その腹いせに便乗したリード達は、ジャズのピッキングで部屋に侵入し、わざわざおちょくるかのようにカルエゴのモノマネ大会を開いたのだ

 

 

(普段、温和なやつを怒らせると不味いとはこのことか)

 

 

笑顔の裏で収まる気のない怒気に、カルエゴは少し反省した

 

 

「坊ちゃん……!」

 

 

自分の主人の怒りに、ダキは瞳を潤ませ感動に震えていた

 

 

 

 

「ダキ、大丈夫でござるか?

何か嫌なことされていないでござるか?」

 

 

「嫌なこと…、」

 

 

ゴエモンは主人らしく、ダキを気遣うように腕を撫でる

 

 

(まて、ダキ!!!言うんじゃないぞ!!)

 

 

その問いにカルエゴは脂汗がどっぱり、体全身から噴き出た

カルエゴ自身やましい気持ちなどなく、ただ単に怪我の確認と衣服を鑑定に出したかっただけだった

 

 

ダキは、ちらり、とカルエゴの方を見てニヤッと牙を見せた

 

 

「実は……あの後浴場で、か、カルエゴ卿の前で服を脱がされ、隅々まで……ッ!」

 

 

「は?」

 

 

泣き真似をしながらしおらしく、しかし決定的な単語を並べるダキ

大事な"従者(モノ)"に無体を働いたと聞き、ゴエモンの髪の毛が怒りで逆立つ

 

 

 

「カルエゴ・ナベリウス卿

拙者のダキに、一体何を……?」

 

 

抜刀せんばかりの勢いで詰め寄るゴエモン

その背後から、ダキはカルエゴにだけ見えるように、ペロッと舌を出してウィンクしてみせた

 

 

 

(この、クソガキ……ッ!!)

 

 

否定しようにも、物理的に服を脱がせたのは事実

嘘を吐こうものなら、隣の幼馴染のシチロウには家系能力でわかってしまう

 

 

 

「言葉を選べ貴様ぁ!!!」

 

 

その怒号にさえも、

 

 

「きゃ、こわい」

 

 

と一言、明らかに棒読みな悲鳴をあげ、

ゴエモンの背中に隠れるはずのない図体でダキは縮こまった

 

 

「うわぁ」

 

「やだ、変態教師(ひそひそ」

 

 

外野もカルエゴの教師らしからぬ所業に侮蔑の眼差しを向け、リードがスマホを構える

 

 

 

「カルエゴ君、それはマジでヤバいよ」

 

 

 

バラムの手が、そっとカルエゴの肩に置かれた 

 

 

 

「誤解だッ!!!」

 

 

 

「うわ、顔真っ赤、これ絶対クロじゃん」

 

 

「魔関呼びます?」

 

 

 

ジャズが追い打ちをかける

ゴエモンは自身の背中に隠れ、震えるダキのその姿にますますゴエモンの怒りがヒートアップする

 

 

 

 

「見損なったでござる!!!

それでも貴殿は教師かぁ!!!!!」

 

 

 

カルエゴの胸ぐらに掴みかかるゴエモン

シチロウは暴れるゴエモンを止めにはいるが、

ジャズ達外野は、ダキをカルエゴから隠すように前に立ちつつも、「いいぞー!もっとやれー!」とヤジを飛ばし観戦し始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自首するなら、付き添うよ?」

 

「シチロウ、貴様まで……ッ!!!」

 

 

 

生徒達から変態扱いされた事より

幼馴染のシチロウからの言葉が何よりも効いた

1028号室に、カルエゴの絶望の咆哮が虚しく響き渡った

 

 

好きなCPは?(市場調査)

  • ダキ×ゴエモン
  • ゴエモン×ダキ
  • ダリ×ダキ
  • ダキ×ダリ
  • ダロキア×ダリ
  • ダリ×ダロキア
  • ダロキア×バール
  • バール×ダロキア
  • ダキ×アスモデウス
  • ダキ×キリヲ
  • その他(自由回答)
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