魔王デルキラの息子   作:雨鬱

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題名を7と8で間違えたので入れ替えました。
嘘やろ工藤……


第8話:黄金の使い魔

 

 

「粛に!!!」

 

 

 

 

 

 

ズドンっと荒々しく開け放たれたドアから現れたのは

階位8のナベリウス家の若き実力者である

名門バビルスの有名教師ナベリウス=カルエゴだった。

鋭い目つきに、真面目で陰険な雰囲気

絵に描いたような厳格さを醸し出す悪魔

他の悪魔ならその威圧的な態度に身が竦むのだろう。

 

 

 

 

しかし、ダキはカルエゴの姿を見て、

怯えるどころか、思わず笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……、?」

 

 

 

 

 

 

何で俺は今笑った?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その疑問がダキを現実へ引き戻した。

首筋に氷を入れられた様な感覚に、懐かしさで緩んでいた口元を咄嗟に隠す様に手で覆う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だって、一目見てうわっ、結構似てんなと思わず思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

……ナベリウス=カルエゴには今日初めて会った筈なのにだ。

でも俺は、カルエゴの姿に重なるように見える長髪の悪魔の姿を知っている気がする。

そう、ふと思ってしまった事実に驚いて顔が険しくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「監督官のナベリウス=カルエゴである…この行事は常に私の担当だ、なぜか?」

 

 

 

 

 

 

 

『ーーー、ナベリウス家は代々、悪魔を取り締まる番犬として長年魔界に貢献し続けている黒犬の家系だ。』

 

 

『ーー、自体がーーって事か』

 

 

『そうだ、ナベリウスの血に刻まれたケルベロスは大抵の使い魔になるような魔獣への抑止力となる強大な力を持っている。』

 

 

 

スラスラと頭の中に誰かの会話が流れ込む。

おかしい

俺は誰かとこんな話をしたことがない。

聞き覚えがない筈なのに聞いたことのある声とダキとの会話が進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺は、お前の理想に全てを捧げる、だからその為にこの世界に迷い込む人間を殺す。』

 

 

 

 

『ハッ、ーーだな、』

 

 

 

 

『何とでも言えば良い、お前の、ーーを守る為になら俺は幾億の屍の山をお前のために築こう』

 

 

 

 

その言葉を皮切りに、プツンッ、と現実に舞い戻った。

ハッ、と意識を戻すとカルエゴが目の前を歩いていて、何やらまだ説明を続けている。

 

 

 

 

ダキは今の白昼夢の様な現象が恐ろしくて、背中にベッタリと冷たい汗が吹き出した。

幻覚が前よりも酷くなってる。

入学する前はこんなにも頻繁に、鮮明な映像や声がフラッシュバックすることは無かった。

じわじわと毒の様に自分が自分じゃないナニカに蝕まれていくのが気持ち悪くて、吐き気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が常に厳粛であるからだ。貴様らが使えないゴミか。はたまた多少は使えるゴミかを判断する」

 

 

 

 

 

 

コツコツと靴を鳴らしながらカルエゴはこちらへと向かってきた。

やばい、真面目に聞いてなさ過ぎたか?

何でもない様なフリをして悠然と目の前に来たカルエゴを見下ろした。

坊ちゃんに近づくカルエゴに、少しだけ警戒をするが、俺はカルエゴの目当ては俺や坊ちゃんではない事はなんとなくわかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「例えば!祖父の威光を借りて映えある場で下品な呪文を唱え、あまつさえその日のうちに乱闘騒ぎを起こすようなゴミがいたら……即処分対象である」

 

 

 

 

 

やっぱりそうか、どうやら特待生入間は早速教師に目をつけられたらしい。

入間の運の無さにダキは心の中で同情した。

昨日の一連の騒ぎがカルエゴにはよっぽど気に食わなかったらしい。

大方、任されていた式の進行をめちゃくちゃにされたとかだろうか。

厳粛ぽっいし、ルールに外れたこととかは苦手そうだ。

 

 

 

 

 

「故に!出来の悪い者は即刻退学処分とするのでそのつもりで」

 

 

 

 

その言葉に周りが退学の言葉にざわめく

退学を言い渡された事がそんなにショックだろうか?

そもそも使い魔召喚自体が悪魔としての資質を問われる重要な試験なのだから結果によっては名門バビルスの門を跨ぐに相応しくないと判断される悪魔がいるなら、他所をあたって貰った方がその悪魔にとっても良い話だろう。

ダキは冷徹に青ざめる悪魔たちを見てそう思った。

 

 

 

 

 

 

「粛に!」

 

 

 

 

 

 

 

そう言って床から出したのは分かりやすくポップなカルエゴのキャラには似合わない説明ボードだった。

カルエゴにはあまりにも似合わない教材の登場に「ふっ、…!」と笑いを堪えて出た息が漏れる。

そんなダキとは対象的に「分かりやすい…!」と目をキラキラさせているゴエモンとイルマをアスモデウスが微笑ましげに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

「今から渡す私の印が入った羊皮紙を必ず使うように、血で丸を描き、魔法陣の中央にある蝋燭の火に焚べれば煙が形をなし使い魔になるだろう。不正はしないように」

 

 

 

 

 

ボードを見せた後はよっぽど気に食わないのかそのまま投げ捨てた。

不機嫌マックスのカルエゴに勇敢にもゴエモンが挙手をする

流石だぜ坊ちゃん。

 

 

 

 

「危険はないんでござるか?」

 

 

 

 

「愚問だ、使い魔の召喚は『隷属可能な種族を呼び出し使役する』もし使い魔が主人に歯向かえば……、」

 

 

 

カルエゴは先程投げ捨てた説明ボードを拾い上げる。

するとたちまち、バチンッッ、鞭で叩かれたような爆音が響き、ボードを焼け焦がした。

 

 

 

 

 

「処罰が下る、それほどまでに濃い血の契約なのだ、心してかかるように。それでは、使い魔召喚の儀を始める。並べ!粛に!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

なんとなく、入間より前に使い魔召喚をした方がいいと思ってダキはゴエモンを連れて前へでた。

 

 

 

 

 

 

 

「ダキ!!拙者の使い魔でござる!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

坊ちゃんが召喚したのは気性はおとなしく、争いごとには向かないがサポートとしては優秀な風属性の魔獣だった。

可愛らしいフォルムでパタパタとまだ小さい羽で飛んでいるのが実に愛らしい。

 

 

 

 

「良い使い魔に出会えたな、坊ちゃん」

 

 

 

 

ニコニコと使い魔とはしゃいでいる坊ちゃんを見ているとこっちまで笑顔になってくる。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ!次ばダキの番でござるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坊ちゃんに押されて、はいはい、と笑いながら、親指の皮を鋭利な八重歯で刺すとぷくり、と簡単に血がでてきた。

そのまま渡された羊皮紙に血の円を描く。

 

 

 

 

 

 

 

「ん……?なんか甘い匂いするな」

 

 

 

 

 

 

 

 

近くにいたダキの血の匂いを嗅いだ悪魔がとろん、とした顔になりながら匂いの元を探している。

 

 

 

 

 

(……危ねぇ、鼻のいい奴がいるみたいだな。)

 

 

 

 

 

 

 

 

ダキの血は実はある特殊な効果がある。

ダキの血を嗅いだ悪魔は、

甘く香るその血に狂わされ、

その悪魔の持つ欲を無理矢理引き出される。

一度、ゴエモンの父君である親方様との手合いで血を流してしまい、悪周期を誘発させてしまった事がある。

 

『ッ、親方様!』

 

『来るなッ!ダキ、ッ!!!』

 

どの悪魔よりも人一倍、自制心の強い親方様だからこそ部屋に引き篭もって寝た事で事なきを得たが、これが歯止めの効かない高位の悪魔だったら俺は貪り食われていただろう。

 

『お前の血は危険だ』

 

『その香りは悪周期を誘発し、欲を満たそうとオマエの血で喉を潤したくなる』

 

それ以来俺は血を流すことは厳格に禁じられ、血が出たとしてもすぐに止められる様止血キットや臭い消しを持ち歩く様になったのである。

 

 

 

匂いの素である俺の血をどうにかしようと文献を漁ってはみた

原因は何となく分かったのだが根本的な改善は難しかった。

だから些細な傷であろうと、血を流してしまったのなら、すぐ止めなくてはならない。

いつ半狂乱になって襲われるとも限らないからだ。

内心ヒヤヒヤしながら

ダキは召喚が終わったらそのままヒールで指の傷をサッサと治してしまおうと思い、火に羊皮紙を焚べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間だった、

会場全体を埋め尽くすほどの巨大な黄金の炎が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ?!、なんだ?!!!」

 

 

 

 

 

あまりにすごい爆風でダキの顔を覆っていた髪や長ランの裾が飜り、

油断していた悪魔達は壁際まですっ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

「キュィーーーーークルルルルルゥー!」

 

 

 

 

 

 

 

現れたのは長身のダキを覆えるほど巨大な鳥だった。

羽は所々燃え、

黄金の両翼が羽ばたくたびに

熱気と膨大な魔力にさらされて、

周りにいた悪魔達は堪えきれず魔力酔いでバタバタと倒れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……不死鳥、!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

使い魔召喚にいた1人の教師が叫んだ。

ダキは魔界でも伝説の炎系の魔神の一柱、

不死鳥を使い魔召喚で呼び出してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「下がれ!ダキ!」

 

 

 

 

 

 

現れた使い魔が不死鳥であることを視認したカルエゴは声を張り上げた。

並大抵の魔獣ならどうにかなるが魔神ともなればカルエゴでも無傷では済まない非常に困難な相手だ。

 

 

 

 

 

(最悪だ、よりにもよって魔神だと…?!)

 

 

 

 

 

他の魔神族と違い、人型ではなく完全に鳥の形をしている為使い魔にしようと危害を加えるものが多くいた為悪魔不信の魔神であり、滅多に心を許さない

また、不死鳥は死んではまた生まれ直すというその特殊な性質から時の権力者の多くが求めたが、

炎の様な気性の荒さと、

膨大な魔力により高められ、

黄金色に輝く灼熱の肢体、

耐えうる悪魔は歴代魔王であってもごく稀であった

また、不死鳥は基本的に癒しを他者に与えるという資質から攻撃性はないと思われがちだがそんなことはない。

 

カルエゴは知っている。

かつて、魔王子の側近の1人だった兄が嬉々として語ってくれたのだ。

かの魔王子は、不死鳥を使い魔にした唯一の悪魔であり、その高熱の火を使い、死ぬほどの痛みを敵に与えられながらも、

治癒の力で焼かれた側から治していくので、

死ぬ事ができないというあまりにも非道な方法で逆らってきた悪魔を倒したのだ。

 

 

 

 

(…クソッ、俺のケルベロスでも勝てるか)

 

 

 

 

教師としてカルエゴは生徒を守ろうと、ダキの前に出ようとした。

 

 

 

 

 

「大丈夫だ、先生」

 

 

 

 

 

 

そう言い終わるや否やダキは不死鳥の黄金の炎に包まれて燃え上がった。

 

 

 

 

 

「ダキっ!!!!」

 

 

 

 

 

燃え上があるダキに、ゴエモンの半狂乱になった叫び声が響いた。

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  • ダキ×ゴエモン
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