朝日に照らされながら、きらきらと一面に広がる白銀の世界。昨晩から降り始めた雪は、昨日まで窓から見えていた色とりどりの景色を、ほんの数時間でそんな光景に変えてしまった。
季節は冬真っ只中で、始祖ブリミルの降臨祭が始まってから三日目の朝。刺すような寒さに思わずうんざりしてしまいそうになる。更にそこへ雪なんて降ったものだから、余計にそれを感じずにはいられなかった。
一面に雪化粧をされたアルビオン大陸の首都ロンディニウム。普段は石造りの建物が並ぶだけのこの街も、雪によって白く彩られたその姿は極めて幻想的で、且つ美しいものへと変わっていた。
そしてそれは、ロンディニウム郊外に位置するテューダー魔法学院の付属寮も例外ではなかった。
寮のとある一室。控えめな装飾が施された大きなベッドに窓から朝日が差し込む中、その中心で一人の少女が眠たそうに瞳を擦りながら目を覚ました。
本当ならもう少し眠る事ができたのだが、今朝はいつにも増して冷え込んでいる。
何やら嫌な予感がする。そう感じた彼女は、ベッドから勢いよく起き上がるとそのままの足で窓へと向かった。そして案の定、外の景色を見た彼女はすぐに落胆する事になる。
「最悪だわ・・・・・・」
昨日まで眼下に広がっていたはずの芝生は見る姿も無いほど白く、西洋風の建築を施された建物も同様、白一色と化していた。
その光景を目の当たりにした彼女は、思わず大きな溜め息をついた。
普通の人間からしてみれば、季節の節目を感じる事ができるこの景色に抗議する者は少ないだろう。しかし彼女にはそんな光景に心を踊らす余裕も無く、再び大きな溜め息をつく事しかできない。
しかしそれは、何も目の前の景色に文句をつけたかったわけではない。なぜなら彼女自身も、目の前に広がっている光景が否定のしようがないくらい、幻想的で美しい事はわかっている。
ただ彼女からすると、目の前に広がる美しい景色と共にやってきた、この寒さに腹が立っただけなのだ。
「いったいどうして、私が嫌いな冬がやってくるのかしら。景色だけならこんなにも美しいのに・・・・・・」
窓から外の景色を確かめながらぶつぶつと独り言を呟き、眠そうに瞳を擦る。そしてゆっくりと、近くにあるクローゼットへと重い足を向けた。
──どうして今年に限って雪が積もるのかしら
そもそも寒さが極端に苦手な彼女にとっては、真冬の朝が一番辛い。
今朝がここ最近で一番冷え込んでいるのは、外の様子を見れば誰もがわかる。そしてそんな朝だから、彼女の機嫌は絶好調に悪い。
「もう!どうしてこんなに寝グセがついてるのよ!」
まるで雪のように長く美しい白銀の髪にクシを入れながら、不機嫌そうな顔で身支度を始めた。
クローゼットから引っ張り出した純白の学生服に素早く身を包み、準備しておいた杖をポケットにしまう。
そうして一通りの身支度を済ませると、テーブルの上に無造作に置かれた鞄を手に取り、部屋の出口へと向かった。
よし、出よう。そう思い部屋の扉に手をかけたとたん、大事なものを忘れた事に気づく。
────いけない、ブローチ!
すぐさまクローゼットの横の化粧台に駆け寄り、小物入れに大切に入れておいたシルバーのヘアブローチを手に取る。それを慣れた手つきで前髪を脇に寄せ止めると、再び部屋の扉へ向かう。
────嫌だわ。こんな寒い日に限って使い魔召喚の儀式なんて・・・・・・
なんだか嫌な予感がする。そう思いつつも、彼女は駆け足で寮の廊下を駆けて行くのだった。
-あとがき-
はじめまして。数ある作品の中より、当作品に興味を持って頂けた事に大変感謝しております。
この度自らの中で妄想していた世界を書き留めておきたいと思い、書かせて頂きました。個人的趣味のレベルで、誤字脱字や誤った文法等とても読めた物ではないかと思いますが、もし宜しければ一読頂けると幸いです。ついでに感想とか置いていって頂けたらもっと嬉しいです・・・・・・。
これから少しずつ連載させて頂きますので、どうぞ宜しくお願い致します。