白銀のアルビオン   作:りれっと

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冬の朝に

 「おーい、清太!早くしないと先行くぞー!」

 

 十一月半ば、マフラーが欠かせないほど冷えた朝。閑静な家々が立ち並ぶ住宅街の一角で、自転車に乗った同級生がこちらに向かって叫んでいる。

 その声に気づいた清太は、中途半端に制服を着込んだ状態で自室の窓から叫んだ。

 

 「すまん、先に行ってくれ!すぐ追いつく!」

 「またかよー、遅れんなよー!」

 

 浅海清太、十七歳。苦手なもの、冬と朝。そんな彼はこの季節になると決まって寝坊をする。冬の刺すような寒さは彼にとって非常に辛いものであり、ましてやどんな時でも秒単位で長く寝ていたい彼に、もはや布団から出る理由はない。

 そして今日も当たり前のように寝坊をする。ベッドや机の上に置かれた目ざまし時計は、全くもってその役目を果たせていないのであった。

 

 ──いっけね、もう出ないと遅刻する!

 

 時は一刻の猶予も無かった。光の速さで準備を終え、朝食を食べることも忘れた清太は、急いでガレージに止めてある自転車に飛び乗った。

 勢いよくこぎ出した自転車で、刺すように冷たい風を切りながら疾走する。自宅を出て直ぐの角を曲がり、人で込み合う大通りを抜け、そしてお決まりの上り坂へと辿り着く。多くの人はこの急な坂を嫌い迂回するが、清太はある理由から好んでこの坂を選ぶ。

 通常、迂回せずにこの坂を進めば、当然の事ながら時間の短縮にもなるのだが、それとは別に大きな理由がもう一つある。

 それは坂を登りきった時に見れる景色だ。自分が住む街を一望することができるこの景色は、季節に応じて色々な顔を日々見せてくれる。

 そんな辛い坂を登りきった人だけが手に入れることができる喜びを満喫するのが、清太の日課であった。

 

 ──よし、行こう!

 

 ほんの少しの時間ではあるが、今日の景色をしっかりと目に焼き付けた清太は、再び自転車を走らせる。

 当たり前の事だが、登りきった後には下り坂が待っている。そしてその先には清太が通う学校が見えている。しかし学校までの最後の道のりは、少しばかり気分が沈んでしまう。

 

 ──今日も同じ朝か。きっと一週間先も、一か月先も変わらないんだろうなあ。

 

 いつもと変わらない風景が流れていく。それが少しばかり寂しかった。新しい何かをしたいわけでもないし、大きな変化が欲しいわけでもない。ただせめて何か世界の変化を感じたくて、清太は毎朝のようにこの坂を上った。だから次第にいつもの時間へと戻されてしまうこの下り坂が、清太はあまり好きではなかった。

 しかしそういった変化は、突如として現れる事がある。それに巡り会えるのはごく一部だが、いつかそうなりたいと願う強い気持ちはきっと裏切らない。

 

 「うわ!なんだあれ!」

 

 坂を下っている最中、突如として現れたそれに清太は思わず叫んだ。数メートル先に大きな鏡のような物が現れたのである。

 急な下り坂、今からブレーキをかけても明らかに遅い距離。清太はそのままの速度で、鏡らしきものへと衝突する。

 

 「うわぁぁああっ!」

 

 すぐにガラスを突き破るような音が聞こえてくる・・・・・・はずだった。しかし、聞こえてきたのは女の子の驚いたような声だった。

 

 「きゃぁっ!」

 

 驚きのあまり、勢いよく体を跳ねあげる。何事かと周囲を確認すると、先ほどの廊下と驚いた顔をしてこちらを見ている一人の少女が目に入った。

 

 「あれ・・・・・・夢か・・・・・・」

 

 どうやら先ほどリズにやられた爆発の衝撃で、そのまま眠りこんでしまったようだ。

 窓から差し込む光はいつの間にかオレンジ色に変わり、周囲の気温も少し下がってきたせいか、先ほどよりも冷え込んでいる。

 そして自分は何故か長椅子に寝かされ、その体を覆うように見覚えのある白いブレザーがかけられていた。そのサイズはかなり小さい。清太の横で心配そうな顔をしている少女のものだろうか。

 

 「ご、ごめん。驚かせるつもりはなかったんだ!」

 

 少女は大丈夫と言わんばかりに、勢いよく首を横に振った。その様子を見て少し安心する。

 

 「ところでこれ、君の?」

 

 そう言うと、何故か申し訳なさそうに首を縦に振る。明らかに年下と思わせる幼い顔立ちと、大きな瞳。どこか親近感を覚える長い黒髪のツインテールが、彼女の動きに合わせてゆっくりと揺れる。

 

 「本当にありがとう。とても助かったよ」

 「い、いえ・・・・・・」

 

 少し嬉しそうな顔をしつつも、うつむき加減にこちらを確認しながら、少女はゆっくりとそのブレザーを受け取った。その上目づかいのようなしぐさに、清太は一瞬ドキッとさせられてしまう。

 

 「ご、ごめんね。俺のせいで冷えちゃったりしてない?」

 「そ、そんなことないです!全然平気です!」

 「それならよかった」

 

 清太はゆっくりと立ち上がる。しかし先ほどの爆発がよほど効いたのか、足元がふらついてうまく立てない。

 

 「くっそー、ほんと容赦ねえな・・・・・・」

 「何があったんですか?」

 「ちょっと爆発に・・・・・・」

 

 その言葉で思い当たる節があるのか、少女はハッとした顔をする。

 

 「もしかして・・・・・・リズさんですか?」

 「え、知ってるの?」

 「私、いつもお世話になってるアリー・ペントレイトと申します」

 「清太です」

 

 アリーは軽くお辞儀をする。

 

 「ごめんなさい。私、少し人見知りで・・・・・・。リズさんのお友達の方だったんですね」

 「友達というか・・・・・・」

 「違うのですか?」

 

 少し不思議そうな顔をする。実際のところ友達ではないし、ましてや知人といえるほど中も良くない。だがそれを否定するのもアリーに悪い気がして、清太は誤魔化すことにした。

 

 「まあ、そんなところ・・・・・・」

 

 疲れ切ったように呟く清太の様子を見て、アリーは何故かクスクスと笑った。

 

 「ごめんなさい。リズさんは行動こそちょっとアレですけど、本当はとてもお優しい方ですから。どうか許してさしあげてください」

 

 だがその様子は何故か嬉しそうだった。清太もそんな優しい笑顔を見ていたら、どうでもよくなってしまった。

 

 「ところでどうしてさっきから敬語なの?そんな丁寧に喋らなくたって・・・・・・」

 「リズさんと同学年の方ですよね?私、一つ下の一年生なんです」

 

 少し申し訳なさそうにしている様子に、やっと気付く。そもそも、自分もリズと同学年なのだろうかと疑問に思ったが、そこは触れないでおくことにした。

 

 「ああ!でも気にしなくていいよ、俺そういうの嫌いだし」

 「いえ!そんな失礼なことはできません!」

 「どうしても?」

 「は、はい・・・・・・」

 

 アリーは少し困った顔をして、申し訳なさそうにする。そして清太も困っていた。今の状況を傍から見ると、いたいけな少女に変な質問を浴びせているようにも見える。

 この状況、なんだかよろしくない。何故かわからないが、清太の本能がそう知らせる。

 だがその心配もつかの間、突然ゴンッという鈍い音が響き、頭にとてつもない衝撃が走る。

 

 「ぐおっ」

 

 あまりの激痛に思わず頭を抱える。すぐに何が当たったのかと正体を確かめると、足元に辞書ほどの厚さの本が落ちていた。頭をさすりながら、それを拾った清太はゆっくりと顔をあげた。

 

 「アリーに手え出すんじゃないわよー!」

 「うげぇぇええっ!?」

 

 更にそこへ不意打ちで飛び蹴りを食らった清太は豪快に吹っ飛ぶ。その様子をアリーは焦りながら見ていた。

 

 「待て!待ってくれ!待ってくださいお願いします!」

 「いいわ、二秒あげる。その間に懺悔しなさい」

 「言い訳じゃなくて懺悔!?ていうか短くない!?」

 

 そこには怒りで燃えるリズの姿があった。どうやら一番見られたくない状況を覗かれたようだ。

 次こそは終わりだ・・・・・・清太は覚悟した。だが幸いなことに、アリーが間に割って入る。

 

 「ちょっと待ってくださいリズさん!セイタさんは、私に手を出すとかそんなでは・・・・・・ってあれ?手を出すって・・・・・・」

 

 その言葉を少しばかり違う方向に解釈したのか、アリーは顔を真っ赤にする。

 

 「と、ともかくです!そんな変な事はされてないので心配しないでください!」

 「あら、そうだったの」

 

 そんなアリーの言葉で、何事もなかったかのようにリズは落ち着いた。

 

 「ていうかあんた、ここで何してたのよ。せっかく人が色々と用意してあげてるのに」

 

 お前のせいだよ、と喉まで出かかったが、命がいくつあっても足りなさそうなので我慢した。

 

 「用意ってなにを?」

 「ほら、そこに落ちてるじゃない」

 

 先ほど飛んできた分厚い本を指差した。

 

 「これ何?」

 「文字を覚えるための教科書よ。あんた文字読めないんでしょ?」

 「あ、ありがとう・・・・・・」

 

 字も読めないのに本を読めるはずもないが、そこはリズなりに気を使ってくれたのだろう。素直に感謝した。

 

 「セイタさん、貴族の方ではないのですか?」

 

 アリーが不思議そうな顔をすると、リズがやれやれといった感じで説明を始めた。

 説明の最中、リズも把握できていないことがあるのか、時折清太に話を振られる。だが清太自身も、この世界について知らない事が多すぎるため、誤魔化す事が多かった。だがそこはお決まりの“記憶がない”で難を逃れるのだった。

 

 「ていうことだから、アリーも少し手伝ってあげて?」

 「はい!そういうことでしたら喜んで!至らない事が多くあるかと思いますが、これから宜しくお願いします!」

 「こちらこそ宜しく。色々迷惑かけるけど・・・・・・」

 

 そうして一通りの説明と挨拶をすませる。

 

 「ところでセイタさんって、リズさんの使い魔になるんですよね?」

 

 さっき学院長が言ってた使い魔という言葉。その点に関しては曖昧なところが多く、清太も把握しきれていない。だが先ほどの話からすると、すんなりと使い魔になってしまうのもあまり良い事のように思えない。

 だがそんなアリーの質問に、リズは困った顔をして答えた。

 

 「困ったわ。そもそも前例が無いし、ましてや人間じゃ使い物にならないじゃない。契約できるかさえ怪しいのに」

 「わるかったな」

 「ほんとよ。それに万が一契約できたとしても、あんたと一生一緒にいるなんて御免だわ」

 「一生ですと!?」

 「そうよ。サモン・サーヴァントは、一生を共にする使い魔を召喚し、それによって進むべき属性を定める儀式なの」

 「なんとかならないの?もう一回その、サモンなんとかをしなおすとか・・・・・・」

 

 リズは大きく溜め息をつく。

 

 「できたらやってるわよ。もう一度サモン・サーヴァントをするには、召喚した使い魔が死ななきゃだめなの」

 

 清太は固まった。召喚した使い魔の死。つまりオレ、異世界にて死す。

 

 「まあ死んでもらった方が早いけど、それは少し気が引けるわね。幸いまだ契約もしてないし、なんとか方法を探しましょう」

 「さらっとひどいことを言うな・・・・・・」

 「あんたがゲートをくぐったのがいけないんじゃない!」

 

 そこで清太は経緯を説明しようとするが、あくまで自分は記憶喪失の身。設定上、記憶があるかのような話はできない。悔しいが、ここは黙って認めるしかない。

 

 「まあまあ、お二人とも。難しいお話はまた今度にして、食事でもいかがでしょう。そろそろ食堂も開いている頃かと思いますよ?」

 

 見かねたアリーが話題を変える。気付くと窓の外は暗くなっていた。

 

 「そうね。考えても埒が明かないわ。ひとまず食事にしましょう」

 「そういえば朝から何も食べてないや。一緒に行ってもいい?」

 「もちろんそのつもりです!ご案内します」

 

 そうして三人は、本塔の上階にある食堂へと赴く。向かっている最中、数人の生徒らしき人とすれ違った。皆リズやアリーと同じ純白の制服を着ているせいか、一人だけ違う清太の格好を興味深そうに横目で見ているのが感じられた。

 

 「ここです」

 

 到着した食堂は、自分が想像していたそれと全く違った。

 驚くほど広いホールに吊るされている豪華なシャンデリア、丸いテーブルにきっちりと並べられた椅子。どこかのパーティ会場のような雰囲気に、清太は思わず絶句した。時間帯が早いせいか、人はまばらだ。

 

 「そこでいいかしら」

 「はい」

 

 三人は適当に開いているテーブルを選び、腰かける。するとそれを見計らったかのように、どこからともなく給仕と思われる人たちが料理を運び始める。そしてあっという間にテーブルに並べられた料理は、まさに貴族の食事であった。

 

 「これ、全部食べていいの?」

 「もちろんです。足りなければ給仕さんが持ってきて下さいますよ」

 

 元いた世界ですら中々ありつけない豪華な食事に、清太は我を忘れて食べ始める。そしてしばらくすると、リズは食事の手を止めた。

 

 「ねえ、もっと上品に食事できないの?」

 「ご、ごめん。朝から何も食べてなくて・・・・・・」

 

 流石にがっつきすぎたのか、清太は反省した。ここは貴族の食堂、元の世界でいうなら格式の高いホテルやレストランだ。あまりみっともない食べ方はよろしくないのだろう。

 だがアリーは清太のそんな姿を見て、少し嬉しそうな顔をしている。それを見た清太が不思議そうな表情を浮かべている事に気付いたのか、アリーは戸惑った様子だ。

 

 「ご、ごめんなさい。三人でするお食事って、なんだか賑やかでいいなって思って。あ!でもでも、リズさんと二人でするお食事も大好きですよ!」

 

 慌てるアリーを見て、リズと清太は笑った。それからしばらくの間、三人は談笑しながらゆっくりと食事を楽しむのであった。

 

 

 

 「では、私はここで」

 

 上へと続く階段の手前、アリーは立ち止まる。あれから食事を終えた三人は、寮塔へと向かっていた。清太がこれから生活する寮の部屋をリズに案内してもらうのだが、一年生であるアリーは階が違うようでここで別れる事になる。

 

 「今日は色々ありがとう」

 「い、いえ!これから困ったことがあったら、なんでも言ってくださいね」

 「うん、そうさせてもらう」

 

 アリーは優しくほほ笑むと、挨拶をして階段を上っていく。二人はそれを見送ると、再び歩き出した。

 

 「ねえ、あんた一体どんな魔法使ったの?」

 「だから魔法は使えないって・・・・・・」

 「違うわよ。アリーのこと」

 「へ?」

 

 リズは不思議そうな顔をする。

 

 「あの子、すごい人見知りなのよ。だから見ず知らずのあんたとあんな楽しそうに話すなんて不思議で仕方無くて。何か弱みを握ってるようにも見えないし・・・・・・」

 「お前なあ」

 

 どんだけ信用無いんだよ・・・・・・。清太は少し落胆した。だがそれを聞いた清太も、不思議に思うのだった。

 ゆっくりと他愛もない話をしながら、同じような扉がいくつも続く廊下を歩く。そしてリズはある扉の前で立ち止まった。

 

 「ていうかここ、私の部屋の隣じゃない」

 

 リズはゆっくりと扉を開けた。そのまま二人で中に入ると、まずベッドと丸い机に椅子、化粧台が目につく。備え付けられた窓からは、うっすらと月明かりが差し込んでいるのがわかる。清太は早速、その窓からの景色を確認しようと覗いた。

 

 「うわぁぁああっ!」

 「ちょっと!どうしたの?」

 

 焦ったリズがこちらへ駆けよってくる。だが驚きのあまり言葉を失った清太は、その問いに答える余裕すらなかった。

 元の世界でも毎晩のように姿を現す月。本来は白く美しい月が一つ、夜空に浮かんでいるはずだ。清太自身もそれが当たり前と思い、外の景色を覗いた。だが実際目にしたのは、輝く二つの巨大な月だった。

 

 「つ、月が二つ?」

 「当たり前じゃない。あと何個あれば気が済むのよ」

 

 やれやれといった様子で、リズは首を横に振った。

 清太は完全に油断していた。さきほど三人で食べた食事の辺りから、ここが異世界であることを半ば忘れかけていた。そこへ見たことも無い光景が飛びこんできたものだから、一気に現実へと引き戻されてしまった。

 

 「い、いや、なんでもない。ごめん・・・・・・」

 「まったく。どっから来たのよ・・・・・・」

 

 動揺する気持ちをなんとか抑えようと、清太は必死に耐えた。

 もう、戻れないかもしれない。家族や仲の良かった友人、見慣れた街の風景。学校帰りに友人と寄ったファミリーレストランや本屋。それらにもう二度と触れることができなくなるかもしれないと思うと、何とも言い表せない恐怖が襲ってくる。

 

 「ねえ、大丈夫?」

 

 その様子に気づいたのか、リズが心配そうな顔で覗いてくる。怒りっぱなしだった彼女の表情は、心配からか優しいものへと変わっていた。

 

 「う、うん。ごめん・・・・・・」

 「ならいいんだけど・・・・・・。あ、そうだ!」

 

 そういって何かを思い出したように、突然リズは部屋から出ていく。そして数分も経たない内に戻ってきた。

 

 「はい、これ。中庭に置きっぱなしだったわよ」

 

 ぼすん、と清太の目の前に置いたものは、学校の通学に使っていた鞄だった。

 礼を言ってそれを手に取ると、中から携帯電話を取り出した。そこには当然『圏外』の文字が虚しく表示されているだけで、携帯電話という機械としてはもう使い物にならない。だがそれは唯一、清太がこの世界の人間ではないと証明する物である。そしてまた、必ず元の世界に帰ってやると、そう心に決めさせてくれる物でもあった。

 

 「それ、なあに?」

 

 リズが興味深そうに携帯電話を覗いてくる。

 

 「さあ、なんだろう。俺にもわからないや」

 「そうよね。記憶がないんだものね・・・・・・」

 

 怪しまれないようにスイッチを押し、携帯電話の電源を落とす。異世界である以上、これはしばらく必要ない。

 だがリズは、何故か寂しそうな顔をしている。

 

 「どうした?」

 「ううん。なんだか可哀想だなって思って・・・・・・」

 

 その言葉に清太は少し安心する。やはりなんだかんだいって、リズも心配してくれてるのである。まだ出会って一日しか経っていないが、どうやら悪いヤツではなさそうだ。

 

 「か、勘違いしないで!あんたがいつまでもここにいたんじゃ、新しく使い魔召喚できないじゃない!あんたの記憶が戻ったら、まずその方法を一緒に探してもらうんだからね!」

 「はいはい」

 「ちょっとー!何よそれー!」

 

 清太は何だか嬉しくなって笑った。異世界に来てしまった事は今でもまだ信じられないし、決して喜べる事ではない。だが、幸いな事に一人ではない。学院長や先生、アリーにリズ、それぞれに理由はあるだろうが、自分を助けてくれる。そう思うと、先ほどまで心を支配していた恐怖はいつの間にか消えていた。

 それからしばらく経っても、相変わらずリズはがみがみと騒いでいる。そしてそれに釣られ、清太は笑う。テューダー魔法学院の一角、寮塔のとある一室では、双月の夜が更けるまで賑やかな声が響くのであった。

 

 

 

 

 

 




-あとがき-

多くの方に目を通して頂き、またお気に入りへ登録してくださった方、励ましのお言葉を送ってくださった方々に大変感謝しております。
これからも続編をどんどん書かせて頂こうと思っております。時間がございましたら、是非覗いて頂けると嬉しいです。批評等も、もし宜しければお聞かせ下さると幸いです。
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