FIERCE GOOD -戦国幻夢伝記-   作:izuminnー3305

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第 弐拾漆 話:紀伊水道合戦

 真斗は自身の安宅船(あたけぶね)に招き入れ、船上で元親から“ある”提案を聞いていた。

 

「なるほどなぁ。俺を殺したくないから今すぐ毛利側に下れと」

 

 笑顔で問う真斗に対して元親は笑顔で頷く。

 

「ああ、そうだ。お前は俺にとっても実の弟の様な存在だから殺したくはない。だから下ってくれ、俺達と共に天下統一なそう」

 

 元親から申し出に真斗はフッと笑い、首を横に振る。

 

「ありがとうございます義兄貴(あにき)。でも俺は家族を、そして主君の信長様を裏切るわけにはいきません」

 

 真斗の固い意思を聞いた元親は大いに涙を流す程に笑い出す。

 

「そっか!やっぱり俺じゃ駄目か‼でも安心した!分かった。武士として友人として全力で相手をしよう!」

「ええ!俺も全力で義兄貴(あにき)のお相手をしますよ!」

 

 そして二人は笑顔で厚い握手をする。

 

「それじゃまたな。真斗」

「ああ、またな。義兄貴(あにき)

 

 元親は乗って来た小早船(こばやぶね)の乗り、自分の艦隊へと戻る。その姿を真斗は艦首から温かい眼差しで見送る。

 

「ねぇ(わか)様、なんで親しい相手には“さらば”ではなく“またな”なんですか?」

 

 真斗の右隣に現れた鬼華(きっか)に真斗は笑顔で答える。

 

「うん、それはなぁ。友情と言うな絆はそう簡単には千切れない。例え敵同士になっても(いくさ)の後、必ずまた会える予感がする。だから、お別れの“さらば”ではなく生きて会える“またな”なんだ」

 

 真斗は信条を聞いた鬼華(きっか)は納得した笑顔をする。

 

「なるほど。流石、真斗様ですね」

 

 そして真斗は振り向き、腰に提げている赤鬼(あかき)を抜き高々と上げながら勇ましい表情でその場に集まった源三郎達に大声で号令をする。

 

「皆の者!これより長宗我部との大戦(おおいくさ)だ!小賢しい手は無用だ‼真向から正々堂々と四国の鬼武者を打ち破るぞぉーーーーーっ‼」

 

 それを聞いた源三郎達や他の船の船上に居る鬼龍軍の足軽達も手に持つ刀や和槍、和弓(わきゅう)、火縄銃を高々に上げ、気合の入った返事をする。

 

「「「「「「「「「「おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」」」」」」

 

 一方の元親も真斗と同じで船上で(いくさ)への気合を入れる。

 

「お前らぁ!奥州の鬼神はやる気満々だ‼例え敵同士でも武士として四国の物として誇りに掛けて正々堂々と戦うぞぉーーーーーっ‼」

 

 元親は腰に提げている愛刀の荒切(あらきり)を抜き、高々と上げると元親の家臣達や長宗我部軍のの足軽達も手に持つ刀や和槍、和弓(わきゅう)、火縄銃を高々に上げ、気合の入った返事をする。

 

「「「「「「「「「「おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」」」」」」

 

 ここに奥州の鬼神、真斗と四国の鬼武者、元親との海上の決闘が始まるのであった。

 

 

 それから一時間後、両軍の戦闘準備を終えたのと同時に雨が降り始める。海は荒れてはいないものの降る雨はまるで始まる(いくさ)の緊張と興奮を一層、増させる。

 

 真斗と元親は艦首に立ち、お互いの艦隊を見ながらニヤリと笑う。

 

「「さぁ‼鬼同士の大戦(おおいくさ)を始めよう!」」

 

 そう同時に真斗と元親が言うとお互いの足軽が大太鼓と法螺貝(ほらがい)を力強く鳴らし、真斗と元親は愛刀の刃先を真っ直ぐ伸ばす。

 

「「いざぁ!出陣‼」」

「「「「「「「「「「おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」」」」」」

 

 真斗と元親の号令で両軍の艦隊は一斉に動き出し、大戦(おおいくさ)へと挑む。

 

 鬼龍水軍と長宗我部水軍が衝突してから約一時間、紀伊(きい)水道(すいどう)は激しい戦いを繰り広げる合戦となっていた。

 

 両軍の家臣達や足軽達の叫び声、和弓(わきゅう)から放たれた矢によって切り裂かれる風の音、火縄銃や大砲のけたたましい発射音、船体がぶつかり合い木が引き裂かれる音、お互いの船に乗り込み船上で繰り広げられる白兵戦で波や雨音すらかき消す刀や和槍がぶつかり合う金属音が戦場となった紀伊(きい)水道(すいどう)を包んでいた。

 

 真斗が乗る安宅船(あたけぶね)は二隻の長宗我部水軍の関船(せきぶね)に左右を挟まれ、激しい接近戦を繰り広げていた。

 

「流石!元親の義兄貴(あにき)だ‼そう簡単には通してくれないかぁ!」

 

 真斗は笑顔で左右の船の手摺に配置された置楯の影に身を低くして隠れ、手に持つ火縄銃一型に火薬と弾を素早く装填する。

 

 すると二隻の長宗我部水軍の関船(せきぶね)から返しの付いた縄がいくつも投げ込まれ、しっかりと手摺(てすり)に引っ掛かる。

 

「よーーーーし!船を寄せろぉーーーーっ!乗り込んで敵将の首を討ち取るぞぉーーーーーーっ‼」

「「「「「おぉーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」

 

 頭形兜(ずなりかぶと)を被った長宗我部水軍の足軽隊長が大声で号令し、長宗我部の足軽達は力強く縄を引っ張り自身の関船(せきぶね)を真斗の安宅船(あたけぶね)へと寄せる。

 

 それを置楯の物影から見た真斗は立ち上がり、物影から出ると火縄銃を手放し赤鬼(あかき)を抜く。

 

「皆の者‼長宗我部軍が乗り込んで来るぞぉーーーっ!鬼龍軍の一兵として返り討ちにしてしまえーーーーーーーーっ‼」

「「「「「おぉーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」

 

 真斗からの大きな号令で鬼龍軍の足軽達は火縄銃や和弓(わきゅう)を手放し刀や和槍に持ち替え、白兵戦に備える。

 

 そして二隻の長宗我部水軍の関船(せきぶね)が真斗の安宅船(あたけぶね)に接舷し、左右から渡し橋が架けられると同時に長宗我部軍の足軽達はなだれ込む様に乗り込んで来る。

 

 真斗や他の鬼龍軍の足軽達は仲間が打ち倒さる中でも鬼神の如く、次々と乗り込んで来る長宗我部軍の足軽達を倒して行く。

 

 血しぶきや斬られた腕や足、首が飛び交う中で真斗は自分に襲って来る長宗我部軍の足軽達を斬る伏せ、時には刺し海上に向けて蹴り飛ばしいた。

 

「首を置いて()けっ!首を置いて()けっ!その首を!置いて()けぇーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」

 

 真斗は大量の返り血で汚れた事で鬼の形相がより一層、恐ろし物となり長宗我部軍の足軽達は、そんな真斗との姿に恐れ生唾を飲みながら後ろにジリジリと下がる。

 

 一方の元親の乗る安宅船(あたけぶね)にも二隻の鬼龍水軍の関船(せきぶね)が接舷し、激しい船上戦を繰り広げていた。

 

「流石!伊達と島津の流れを組む鬼龍の足軽達だ‼でも!我ら海と共に生きる長宗我部だって負けられるかぁーーーーーーーっ!」

 

 元親は笑顔でそう言いながら愛用の一つである十文字槍を両手で持ち、迫って来る鬼龍軍の足軽達を次々と倒して行く。

 

 水柱が上がり、お互いを沈めようと激しい砲撃戦の中で平助が乗る安宅船(あたけぶね)が素早い舵取りで長宗我部水軍からの砲撃を躱しながらコルベット艦へと向かう。

 

「よーーーーーし!船首砲台!砲撃よーーーーーーーーい‼」

 

 艦首に立つ平助からの号令に艦首の二門の砲門が開き、日本でライセンスと改修生産されたイギリス製の24ポンド長身砲が押し出される。

 

 そして素早く24ポンド長身砲の後方にある装填口から紙に包まれ一体化された弾頭と火薬を装填する。そして砲の上にある穴に細い串棒を入れ、火薬の詰まった紙に穴を開ける。そして更に砲の上にある穴に火薬を入れる。

 

「砲撃準備完了ぉーーーーっ‼」

 

 頭形兜(ずなりかぶと)を被った鬼龍水軍の足軽隊長が大声で言うと平助は頷き右腕を前に出す。

 

(はな)てぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

 

 平助からの伝令に一人の足軽が火打石で火薬が詰まった穴に向かって火花を飛ばし、発射する。

 

 物凄い発射音と共に煙と火を噴き、球体型の砲弾が長宗我部水軍のコルベット艦に向かって高速で飛んで行く。

 

 平助の安宅船(あたけぶね)から発射された二発の砲弾は見事、長宗我部水軍のコルベット艦の側面に命中し、さらに格納庫に山積みになっている火薬樽に当たり大爆発を起こし船体の真ん中から真っ二つになる様に撃沈する。

 

 それを見た多くの鬼龍水軍の足軽達は歓喜の声を上げる。

 

 一方、返り血で汚れながらも殆どの鬼龍水軍の足軽達を倒した元親が、その光景を見て少し愕然とする。

 

「くそ!俺の大事な船が‼︎しかし弱ったなぁ!こんなに倒してもまだ敵の勢いが弱まらないなぁ!」

 

 するとそこに頭形兜(ずなりかぶと)を被った長宗我部水軍の足軽隊長が慌ただしい表情で現れる。

 

「元親様!大変です‼︎我が水軍が劣勢に!しかも残ったコルベット艦や他の船も次々と鬼龍水軍に拿捕されております!このままでは全滅します‼︎」

 

 足軽隊長からの報告に元親は苦虫を噛む様な表情で歯軋りをしながら拳を手摺(てすり)に叩き付ける。

 

「仕方ない!勝負は時の運だ‼︎全て家臣と足軽に伝えよ!安宅船(あたけぶね)関船(せきぶね)を捨て!皆!速やかに小早船(こばやぶね)に乗り換えよ‼︎鳴門(なると)海峡(かいきょう)を通って紀伊(きい)水道(すいどう)を離れる!よいな‼︎」

「はっ!」

 

 足軽隊長は軽く一礼をし、素早く伝令を伝えに向かった。そして元親は前を向くとニヤッと笑う。

 

「アッパレだ、真斗よ。この四国の鬼武者、長宗我部 元親を打ち破るとは」

 

 向こうに居ると思われる真斗に向かって元親は賞賛の言葉を送った。

 

 一方、返り血で汚れた真斗は倒した長宗我部水軍の足軽達で(おびただ)しい量の血と屍で汚れた船上の艦首から折り畳み式の単眼鏡で長宗我部水軍が引く光景を目にする。

 

「皆、小早船(こばやぶね)に乗り換えているな。元親殿(どの)は引くつもりだ」

「では深追いしますか?」

 

 真斗と同じく返り血で汚れた頭形兜(ずなりかぶと)を被った鬼龍水軍の足軽隊長が提案すると真斗は首を横に振る。

 

「いいや。深追いは無用だ。元親殿(どの)の首を打ち取れなかったのは無念だが、合戦には勝った。すぐに勝鬨(かちどき)法螺貝(ほらがい)を鳴らせ平助」

「はっ!直ちに!」

 

 足軽隊長は軽く一礼をし、艦尾へと向かう。そして法螺貝(ほらがい)を手に取り、天に向かって力強く鳴らす。

 

 すると真斗の勝利を祝福するかの様に雨雲が晴れ、神々しい()の光が射し、真斗は単眼鏡をしまい、鞘に納めた赤鬼(あかき)を抜き、刃先をてんに向かって高々しく上げる。

 

「長宗我部水軍は引いた!皆の者‼︎これにて合戦は終わりっ!我らの勝利だぁーーーーーーーーーーっ‼︎」

 

 紀伊(きい)水道(すいどう)に響き渡る真斗の勝鬨(かちどき)に鬼龍水軍は歓喜の声が一斉に上がる。

 

「「「「「「「「「「えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」」」」」」

 

 こうして紀伊(きい)水道(すいどう)の合戦は大きな損耗を出しつつも獅子奮闘した鬼龍水軍の勝利で幕は閉じたのであった。

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