FIERCE GOOD -戦国幻夢伝記-   作:izuminnー3305

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第 参拾参 話:瀬戸内海大合戦

 翌日の早朝、作戦通りに九鬼水軍は官兵衛と清正の軍と共に四国へと攻め込み、一方の鬼龍水軍は半兵衛と三成の軍と共に瀬戸内海へと攻め込んだ。

 

 そして昼近くに塩飽(しわく)諸島へと着き、そこから備後灘(びんごなだ)燧灘(ひうちなだ)を埋め尽くす様に村上水軍と毛利・小早川水軍の艦船が海上で停泊していた。

 

「うわぁーーーーーっ!凄い数だなぁ‼やっぱり隆景殿(どの)は陸での戦力分散を避ける為に海上決戦に踏み切ったか」

 

 安宅船(あたけぶね)の艦首から折り畳み式の単眼鏡で前方を確認する真斗。

 

 そして真斗は単眼鏡をしまうと左側に居る左之助に命を下す。

 

「左之助!法螺(ほら)貝を吹け‼(いくさ)を開始する!」

「はい!(わか)様‼」

 

 左之助は持っている法螺(ほら)貝を力強く吹き、そして別の安宅船(あたけぶね)の艦首に居る忠司が陣笠を被った足軽が背中に背負う陣太鼓を力強く鳴らし、(いくさ)の開始を告げる。

 

「掛かれぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」

 

 真斗は大声で指示をしながら采配(さいはい)を振るう。それと同時に鬼龍水軍の船舶は前へと進み始める。

 

 一方、左右に村上水軍陣旗と置楯を配置した小早船(こばやぶね)の艦首から鬼龍水軍の船舶が動き出したのを鉢金を巻き袖、籠手、草摺(くさずり)臑当(すねあて)を着こなし左肩に愛用の薙刀である蒼鰐(あおわに)を担いだ(きょう)は笑顔で見ていた。

 

「はっ!ようやく動き出したか。定伍(じょうご)‼こっちも法螺(ほら)貝を吹け‼」

 

 (きょう)は振り向き、彼女の付き人である鉢金を巻いた武士、定伍(じょうご)が笑顔で頷く。

 

「はい!姫様‼」

 

 定伍(じょうご)は手に持つ法螺(ほら)貝を力強く吹く。それを聞いた鉢金を巻き軽装の甲冑を着こなした村上水軍の足軽達が天に向かって拳を掲げ、大声で返事をする。

 

 そして村上水軍の足軽達は(かい)を両手で持ち、自分達の乗る小早船(こばやぶね)の艦尾に設置された大太鼓を一人の足軽がリズミカルに鳴らし、(かい)を持つ足軽達は太鼓の音に合わせて向かって来る鬼龍水軍の艦船に向かったて力強く漕ぎ出す。

 

「さぁーーーーーーっ!義兄貴(あにき)‼今から我ら村上海賊団が誇る海の(いくさ)を見せてあげるわ‼」

 

 両軍の進む艦船によって起こる波と共に鬼龍水軍と村上水軍が今、衝突するのであった。

 

⬛︎

 

 初戦は村上水軍が優勢であった。小早船(こばやぶね)の速度と機動力を活かした鬼龍水軍の関船(せきぶね)安宅船(あたけぶね)に接近し船上戦へと持ち込んだ。

 

 激しい火縄銃と和弓(わきゅう)による撃ち合いや刃物がぶつかり合う事で起きる金属音と血肉が飛び散り、兵士達の悲鳴が上がっていた。

 

 一方、両軍の激しい戦闘を安宅船(あたけぶね)の艦首から兜と甲冑を着こなし折り畳み式の単眼鏡で見ていた隆景は単眼鏡を畳み、隣に足軽隊長に渡す。

 

「頃はよーーーし!掛かれぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

 

 隆景が大声で軍配を振るうと毛利・小早川水軍の足軽達は大声を上げる。

 

「「「「「おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」

 

 毛利・小早川水軍の艦船は鬼龍水軍と村上水軍の乱戦に向かって進み始めるが、奇跡(いたずら)が起こった。

 

 人がまだ知らない神の御業か、それとも鬼龍水軍と村上水軍が同時に船を進めた為か、突如、毛利・小早川水軍の前に多数の渦潮が起こり次々と関船(せきぶね)安宅船(あたけぶね)小早船(こばやぶね)、そして足軽達が呑み込まれた。

 

 隆景はすぐさま停止の合図を出し、その場に留まる。

 

「一体これは何だ⁉まるで我らの参戦を阻む様に・・・ッ⁉‼」

 

 驚く隆景であったが、今度は艦船の中に渦潮が起こり次々と船を襲い始めた。

 

 そんな事が起こっている事すら知らずに鬼龍水軍と村上水軍の合戦はお互いに譲らない熾烈な物で真斗が乗る安宅船(あたけぶね)の船上では両軍の足軽達が激しく斬り合っている中で真斗と(きょう)は、それ以上に激しい白兵戦を繰り広げていた。

 

 二人は愛用の赤鬼(あかき)蒼鰐(あおわに)を力強く振い、またお互いに人間離れした動きをしていた。だが、真斗と(きょう)はお互いに笑顔で奇妙な事に嬉しいそうであった。

 

「おう!流石だ(きょう)だ‼今までの(いくさ)の中で物凄く楽しいよ‼」

「ええ!私もだよ義兄貴(あにき)‼︎こんな戦いは生まれて初めてだ!」

 

 斬り合うだけでなく、時には拳を時には蹴りを繰り出してはまるで子供の喧嘩の様な憎しみも恨みもない白兵戦を行う真斗と(きょう)

 

 するとそこに砲弾が真斗が乗る安宅船(あたけぶね)の付近に着水し、高い水飛沫(みずしぶき)を上げる。

 

 真斗と(きょう)は何事かと思い砲弾が飛んで来た方を見ると突如、発生した渦潮を何とか抜け出した毛利・小早川水軍の安宅船(あたけぶね)が横に並び、砲撃しながら近づいていた。

 

「撃てぇーーーーーーっ!撃ちながら鬼龍水軍の横っ腹を突くのだぁーーーーーーっ‼︎」

 

 隆景は大声で言いながら渦潮で戦力が減ってしまった自身の艦隊を鬼龍水軍の艦船にぶつけて行く。

 

 真斗が乗る安宅船(あたけぶね)にも毛利・小早川水軍の安宅船(あたけぶね)がぶつかり、物凄い衝突音と揺れが起こる。

 

 そしてぶつかった安宅船(あたけぶね)の艦首から隆景は飛び出し、揺れで()いた真斗と(きょう)の間合いに降り立つ。

 

「おい!隆景のおっさん‼︎何のつもりだい!私と義兄貴(あにき)の勝負を邪魔すんのかい!」

 

 険悪そうな表情で問う(きょう)。すると隆景はゆっくりと左右に腰に下げている打刀の黒汐(くろしお)と脇差の赤汐(あかしお)を鞘から抜く。

 

「当然だ。私も一度、真斗殿(どの)(いくさ)で手合わせをしたいとかねてより思っておってな」

 

 そう笑顔で答える隆景は右に向かって体を回し、真斗に向かってを黒汐(くろしお)下段、赤汐(あかしお)を上段にして構える。

 

「真斗殿(どの)!お二人の真剣勝負を邪魔して申し訳ないが、私とも手合わせを願いたい‼︎」

 

 隆景の真剣な眼差しと表情に真斗は笑顔で頷く。

 

「分かりました隆景様。しかし、一人一人を相手にするのは面倒だ!二人共!まとめてお相手しよう‼︎さぁーーーっ!どっからでも掛かってきんしゃいーーーっ‼︎」

 

 真斗はそう言いながら左腕で口元を隠す様に八相(はっそう)の構えをする。

 

 (きょう)は少し呆れた表情で隆景の左隣に着く。

 

「たく!せっかくの義兄貴(あにき)との真剣勝負が隆景のおっさんのせいで台無しだよ」

「それは申し訳ありません姫様!しかし!私はどうしても‼︎」

「最後まで言わなくていいよ。でもまぁ二対一の闘いもそう悪くはなさそうだ!」

 

 (きょう)は笑顔でそう言いながら蒼鰐(あおわに)を構え直す。

 

「んじゃ!私はおっさんに合わせるから、思う存分!楽しもう‼︎」

「ええ!そうですなぁ姫‼︎それでは・・・おりやぁーーーーーーーーーーーーーっ‼︎」

 

 隆景は大声を上げながら物凄い速さで間合いを詰め、(きょう)も後に続く様に間合いを詰め、同時に真斗へと斬り掛かるのであった。

 

⬛︎

 

 人の域を超える様な動きで激しい斬り合いをする中で真斗、(きょう)そして隆景は時々、割り込む様に目の前に現れる両軍の足軽を斬り捨てては一歩も引かない闘いを繰り広げていた。

 

 そしてお互いに力強く一振りをし、まるで海が真っ二つに割れる程の耳がつんざく金属音が瀬戸内海に響き渡る。

 

「さすがですね隆景様!(きょう)との連携がここまで凄いとは‼」

「なーに!真斗殿(どの)もお一人でここまでやり合えるのとは流石だな‼︎」

「本当だよ!流石‼︎私の憧れの義兄貴(あにき)だ‼︎」

 

 鎬を削る状態から(きょう)と隆景は息を合わせて押し除け、真斗を大きく後退させる。

 

 すると隆景が乗っていた安宅船(あたけぶね)の艦首から足軽が慌てながら身を乗り出す。

 

「隆景様ぁーーーーっ!大変です‼︎我が水軍が劣勢に!次々と鬼龍水軍に押されています‼︎」

 

 身を乗り出し大声で言う足軽からの報告に隆景は目を閉じ、構えの姿勢を解き黒汐(くろしお)赤汐(あかしお)を鞘に戻すのと同時に目を開ける。

 

「もはやこれまでか。真斗殿(どの)、この(いくさ)は貴方の勝ちだ。我らはここで引きます」

 

 隆景は笑顔で言うと真斗も笑顔で構えを解き、赤鬼(あかき)を鞘に戻す。

 

「分かりました隆景様。しかし、今回の(いくさ)は良い物でした」

 

 だが、一方で(きょう)は構えを解かずに真斗を睨んでいた。

 

「おい!まだ勝負は終わっていないわよ‼︎さぁ!決着をつけましょう義兄貴(あにき)‼︎」

 

 すると隆景が(きょう)の前に立ち、真剣な眼差しと表情で彼女に向かって語り掛ける。

 

「姫様!お気持ちは分かりますが、勝負は時の運‼︎我らが敗れた以上!これ以上の勝負は武士道に背く事となりますぞ‼︎」

 

 それを聞いた(きょう)は悔しそうに構えを解き、蒼鰐(あおわに)を左肩に乗せる。

 

「分かったわ。義兄貴(あにき)!我ら村上水軍も隆景に従って引くわ」

「そっか。まぁいずれは何かの形で決着を着けようなぁ(きょう)

「ええ、それじゃ」

 

 (きょう)は笑顔で空いている右で真斗に向かって手を振り、飛び移る様に隆景が乗っていた安宅船(あたけぶね)に乗る。

 

「ではな真斗。また」

「ええ、隆景様。それでは」

 

 真斗と隆景はお互いに笑顔で一礼をし、隆景も飛び移る様に自身の安宅船(あたけぶね)に乗る。

 

 そして突っ込んで来た安宅船(あたけぶね)は後方へと動き出し、去って行った。

 

「左之助ぇーーーーーーーーーっ!」

「はっ!」

 

 真斗からの呼び出しに左之助は素早く艦首の方から現れる。

 

「左之助!(いくさ)の終わりを告げる法螺(ほら)貝を吹け!それと(じい)に深追い無用の太鼓を鳴らす様に指示を出せ!よいな」

「はい!(わか)様‼ただちに!」

 

 左之助は真斗に向かって一礼をし、艦尾の方へと走って行った。

 

 真斗は辺りを見渡す。自身の乗る安宅船(あたけぶね)の船上には両軍の足軽の屍が転がり、あっちこっちに血肉が飛び散り合戦の熾烈さを物語っていた。

 

 そして地獄絵図の様な船上に向かって真斗は静かに何も言わずに目を閉じ、浅く頭を下げて合掌するのであった。

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