FIERCE GOOD -戦国幻夢伝記-   作:izuminnー3305

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第 陸 話:夏の告白

 翌日の朝、ずっと屋敷の(かま)屋で作業をして真斗が屋敷の風呂に入り体を洗っていた。

 

「ふぅーーーーっ久しぶりの風呂は気持ちいいなぁ」

 

 ホッとした表情で湯船に入りながら言う真斗は柵が付いた窓から青空を見上げる。

 

 すると左にある脱衣場の戸が三回、ノックされ源三郎の声がし始める。

 

(わか)!湯加減はどうですか?」

「ああ、とてもいいよ(じい)!出来た品は包んであるか?」

「はい。勿論ですが、(わか)は徹夜明けですので今日はゆっくりお休み下さい。品は私が竹取(かぐや)様の元に届けますので」

 

 源三郎からの提案に真斗は天井を見上げて少し考えるとニヤリと笑う。

 

「そうだな。分かった(じい)、お前に任せる。今日はゆっくりと骨を休めるよ」

「はい(わか)。ごゆっくりとお休み下さい」

 

 風呂場に入る脱衣場の戸の前で笑顔で正座していた源三郎は立ち上がり脱衣場を後にするのであった。

 

 そして真斗は風呂を出て、体全体を乾かすと浴衣に着替え大広間の縁側(えんがわ)で胡坐をしていた。

 

「さぁてと・・・(いくさ)や農作業の手伝いなどで忙しかったから久しぶりに俳句でも作るか」

 

 落ち着いた表情で言う真斗は(すずり)に水を入れ固形墨(こけいぼく)(すみ)を作り、筆に馴染ませる。

 

 そして真斗は和紙に竹取(かぐや)に対する自分の想いを書き始める

 

“我の恋想い、時が流れても変わらない。美しき君の為であれば命惜しまず守ります”

 

 真斗は作った俳句を綺麗に折り畳むと晴れた大空を見上げながら清々しい笑顔になる。

 

⬛︎

 

 その日の夜、竹取(かぐや)は真斗から受け取った全ての品を並べ、そして先日、(おうな)と共にこっそり見た真斗の頑張る姿を思い浮かべながら夏の満月をうっとりした表情で見ていた。

 

(やっぱり私のこの胸の痛みは恋の痛み。そして同時に私は真斗の事が好きになってしまった。それもずっと居たいと思っている)

 

 竹取(かぐや)はそう心の内で語っていると(おきな)が笑顔でゆっくりと彼女の側に近づき座る。

 

竹取(かぐや)、もしかて真斗様の事を考えているのかね?」

 

 優しく問う爺《おきな》に対して竹取(かぐや)は顔を赤くしハッとなる。

 

「え⁉・・・ええ。それもずっと彼の側に居たいと思っています。お爺様、この気持ちはどうしたらいいでしょうか?」

「素直でいいんだよ竹取(かぐや)。わしも若い頃、婆様に恋を抱いた時は素直になった。子は作れなかったが、それでもお互いに居るだけで今でも幸せじゃ」

 

 (おきな)は笑顔で胡坐で答え、それを聞いた竹取(かぐや)は初恋で盲目になっていた心が晴れる。

 

「ありがとうございます、お爺様。分かりましたわ!私は直接、明日(あす)にでも真斗様の屋敷に向かいますわ」

 

 竹取(かぐや)の決意に(おきな)はニッコリと笑う。

 

「ああ、頑張りなさい竹取(かぐや)

 

 そして竹取(かぐや)は立ち上がり(おきな)に向かって一礼をし、自室へと向かう。

 

「どうやら姫は決意したようですね。お爺様」

 

 屏風(びょうぶ)の影に隠れ二人の会話を聞いていた(おうな)が笑顔で現れ、(おきな)の側に座る。

 

「ああ、婆様。でもなんだか懐かしいのぉ。竹取(かぐや)と真斗様の恋は」

「ええ、そうですね爺様。あの()は幸せになりますよ」

「ああ、婆様。竹取(かぐや)は私達の様にずっと幸せになりますよ」

 

 笑顔で(おきな)(おうな)竹取(かぐや)の恋の未来の行く末を温かく見守るのであった。

 

⬛︎

 

 翌日、真斗は武家屋敷の茶室で正座して自ら茶を入れ源三郎に腕の評価をしてもらっていた。

 

 真斗は茶を入れる動きには一切、無駄がなくむしろ逆に澄んだ気持ちで美しく茶を入れる。

 

 出来た茶を正座をする源三郎はゆっくりと深く飲みながら味わう。

 

(これは!今まで(わか)が入れた茶は強く固い舌触りだったのが、今回の茶は優しくて柔らかい舌触りになっている。やはり恋は人の心を変えるのか)

 

 そう源三郎は心の内に語ると笑顔で目の前の真斗に飲み終わた湯呑茶碗をそっと出す。

 

(わか)、今日の茶はなかなか美味しゅうございました。腕を上げましたね」

「おそまつさまです。それとありがとう、(じい)

 

 そして二人はお互いに深く一礼をするのであった。

 

 その後、二人は片づけをし茶室を後にし廊下を歩いていると一人の女中が慌てて現れる。

 

「真斗様!大広間に今すぐに来て下さい‼竹取(かぐや)様が居られます!」

 

 女中からの知らせに真斗と源三郎は驚きハッとなるが、すぐに冷静な表情に戻る。

 

「分かった!ありがとう!(じい)!行くぞ‼」

「はい!(わか)!君は持ち場に戻りなさい」

「はい。ご家老様」

 

 女中は一礼をし反対方向へ向かい、真斗と源三郎は大広間へと向かうのであった。

 

 そして真斗と源三郎が大広間に着くとそこには(おきな)(おうな)を連れた竹取(かぐや)が正座をしていた。

 

「遅れて申し訳ありません!竹取(かぐや)様‼」

 

 真斗からの謝罪の言葉に竹取(かぐや)は笑顔で右手を軽く横に振る。

 

「いいえ、構いませんよ。急に押しかけたのはこちらですので」

 

 そして真斗とは竹取(かぐや)の前に正座で座るのと同時に彼の左隣に源三郎も正座で座る。

 

「それで竹取(かぐや)様、今日は何用で我ら伊達家武家屋敷に足を運ばれたのですか?」

 

 すると竹取(かぐや)は左右に正座で座る(おきな)(おうな)に向かって軽く頷くと前を向き、真剣な表情で答える。

 

「真斗様、私は初め貴方様の事は他の殿方と同じ私など(まこと)に想っていない者と思っていました。ですが、貴方様が作って持って来て下さる品から温かみが伝わって来ました」

 

 そして竹取(かぐや)は目を閉じ、一呼吸すると顔を少し赤くしながら目を開ける。

 

「真斗様!私は貴方が好きになりました!どうか私と婚姻を前提にお付き合いして下さい‼︎」

 

 竹取(かぐや)からの突然の告白に真斗は不意を突かれ呆気に取られる。

 

(何ぃーーーーーっ⁉︎ 竹取(かぐや)が俺と付き合いとぉーーーーーっ!ヤバい‼︎ 竹取(かぐや)と付き合う事を望んでいた俺自身が冷静を失ってやがる‼︎)

 

 などと心の内で慌てる真斗の左肩を源三郎は自身の右手で優しく置き、真斗はハッとなり振り返る源三郎は笑顔で軽く頷く。

 

 それを見た真斗は冷静さを取り戻し笑顔で源三郎に向かって頷き、竹取(かぐや)の方を向く。

 

「私は、いや俺は(いくさ)や自分が治める会津を守るなどで恋愛に目を向ける暇がなかった。でも興味本意でお前の姿を見た時に生まれて初めて恋を抱き、竹取(かぐや)が好きになった」

 

 真斗は大きく深刻をし気持ちを落ち着かせ、真剣な眼差しと表情となる。

 

竹取(かぐや)!こんな俺でよければ是非、お付き合いさせて下さい‼︎」

 

 そう言いながら真斗は両手を拳にして軽く頭を下げる。

 

 真斗の姿と答えに竹取(かぐや)は嬉し涙を流す。

 

「はい!こちらこそ、よろしくお願いします!」

 

 竹取(かぐや)は笑顔で真斗に向かって軽く頭を下げるのであった。

 

 そんな竹取(かぐや)の告白と真斗に愛人が出来た光景に源三郎と(おきな)(おうな)が微笑ましくなっていた。

 

「うぉほほほほほほほっ‼︎(わか)に仕えて二十年‼︎ついに(わか)伴侶(はんりょ)が!この(じい)!とても嬉しゅうございます!」

 

 源三郎が大泣きで喜ぶ一方で(おきな)(おうな)も少し涙を流しながら竹取(かぐや)の恋に喜ぶ。

 

「婆様!人生でここまで嬉しい事は初めてですじゃ!」

「ええ爺様!竹取(かぐや)の晴れ着が楽しみですね!」

 

 こうして真斗は竹取(かぐや)の心に自分の想いを伝え、掴む事が出来たのであった。

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