FIERCE GOOD -戦国幻夢伝記-   作:izuminnー3305

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第 陸拾零 話:銀の仮面の王

 ジュスランに連れられた真斗とジョナサンはエルサレム城へと着いた。

 

「ほぉーーーーっここがエルサレム城か。城と言うよりはまるで要塞だなぁ」

「本当だな。噂だとかつて存在していたエルサレム神殿をモデルにして作られたとか」

「ふぅーーーーーーーーーん。まぁ確かに言われてみれば何か神秘感を感じるな」

 

 ジョナサンからの説明に感心しながら周りを見る真斗。そして城の入り口前まで着くと真斗、ジョナサン、そして先導していたジュスランは乗っていた馬を降り、城内へと入った。

 

 西洋式の造りでありながらアラブとユダヤの文化を感じられる飾りつけとデザインとなってる廊下を進んだ先にある両扉が開かれると火の点いた大量の蠟燭で明るされた大きな客間に入る。

 

 高い美術力を感じる客間に驚く真斗とジョナサンながら縦長のテーブルへと向かい、椅子に座る。

 

「何と見事な作りだ!異なる文化の美術をここまで上手に組み合わせるとは!ジョナサン、こんな作りは欧州にはあるか?」

 

 真斗が左隣に座るジョナサンに問い掛けるとジョナサンは首を横に振った。

 

「いいや!フランスやドイツ、ローマ、ましてやバチカンですら異文化と調和が取れたデザインは見た事がないよ!」

 

 二人が驚きながら会話をする光景を向かいの椅子に座って見ているジュスランがクスクスと笑う。

 

「いやぁーーーっそこまで言われると何だか嬉しくなるなぁ」

 

 などとしていると先程、入って来た扉が開き、一人の黒い生地に白色で書かれたクロスパティーのサーコートを上にしたチェイン・メイルを着こなした茶髪の男性が笑顔で入って来た。しかも頭にはトイプードルの様な垂れた耳とお尻からは尻尾が生えていた。

 

「お!これはこれは、来ていましたか」

 

 入って来た男性に真斗、ジョナサン、ジュスランは立ち上がり一礼をする。そして真斗とジョナサンは自己紹介をした。

 

「初めまして。日ノ本から来ました武士、鬼龍 真斗と申します」

「お初にお目にかかります。キリスト騎士団の聖騎士(パラディン)、ジョナサン・ロンデバルトと申します」

 

 また入って来た男性も二人に向かって丁寧に自己紹介をした。

 

「初めましてバチカンの聖騎士(パラディン)、そしてジパングの騎士。トリポリ伯国の領主であります“レイモン三世・トゥールズ・ロイ”と申します」

 

 名前を聞いたジョナサンはジュスランの時と同じく驚く。

 

「ええ⁉貴方様があの!“商戦(しょせん)王”の異名を持つ‼あのレイモン三世様ですか!」

 

 そう言いながらジョナサンは彼の側まで近づき、片膝を着いてレイモンの右手にキスをした。

 

「貴方様の噂は聞いております。凄腕の商人でありながら(いくさ)上手であると。まさかここで出会えるとは!光栄です‼」

 

 溢れ出す嬉しさを涙を流しながら語るジョナサンに対してレイモンは笑顔で彼の両肩を優しく掴み、ゆっくりと立たせる。

 

「そうか。私もそう言われると凄く嬉しいよ。ありがとう」

 

 レイモンがそう言った後にジョナサンは手で流れる涙を拭いた。そしてレイモンは彼に向かって用件を言った。

 

「ジョナサン君、それと真斗君、すまないが私と一緒に来てくれ。エルサレム王が君達にお会いしたいそうだ」

 

 それを聞いた真斗とジョナサンはキリッとした表情で頷く。

 

「「はい、分かりました」」

 

 そして次にレイモンはジュスランに向かって言葉を掛けた。

 

「じゃあジュスラン。二人を陛下の元に送るから先に晩餐室に行っていてくれ。ロバート達も待っているから」

 

 それを聞いたジュスランは笑顔で頷く。

 

「ああ、分かった」

 

 そして真斗とジョナサンはレイモンの後に付いて行く事となった。

 

⬛︎

 

 レイモンに連れられ廊下を進む真斗とジョナサン。表情からは落ち着いてはいるが、実際は表に出さずに心の内では緊張していた。

 

「なぁジョナサン、現エルサレム王ってどんな人物なんだ?」

 

 歩きながら小声で真斗は左隣を歩くジョナサンに問い掛けると左で口も隠して答えた。

 

「実は俺も噂程度なんだが、聞いたところだと体を病に蝕われながらも鋼の意志と自己の犠牲を厭わない心を持った王だと聞く」

「へぇーーーーっそういつは凄いなぁ」

 

 などと真斗とジョナサンがヒソヒソと話していると二人の先頭を歩くレイモンが大きく咳き込み、それを聞いた二人はハッとなって真っ直ぐ前を向いた。

 

 そして両扉の前に着くと立ち止まり、レイモンは後ろを向く。

 

「ここが王の部屋だ。残念ながら私はここまでだ。では二人共、心構えはいいかな?」

 

 レイモンからの問いに真斗とジョナサンはビシッとした表情で頷く。

 

「大丈夫です」

「私も」

 

 二人の返事を聞いたレイモンは笑顔になって右手で扉を三回、ノックする。

 

「陛下!レイモンです‼︎ジパングの使者とキリスト騎士団の騎士を連れて参りました!」

 

 レイモンが扉に向かって大きな声で言うと部屋の中から男性の声が返って来た。

 

「分かったレイモン!ご苦労であった!すまぬが、政務が立て込んでいてな‼︎私に構わず、お二人を部屋へ入れなさい!」

「分かりました!陛下!」

 

 そしてレイモンはエルサレム王の指示に従い、両扉を押して静かに開け脇へと避ける。

 

「どうぞ二人共、中へ」

 

 レイモンがそう言うと真斗とジョナサンは静かに深呼吸をして中へと入り、それと同時にレイモンが再び両扉の前に立ち静かに閉める。

 

 王の部屋は以外とシンプルな落ち着いた雰囲気で権力を示す様な品は殆ど飾られていない。

 

 真斗とジョナサンはそんな王の部屋を進んで行くとレースのカーテンが架けられた仕切りの向こう側で後ろ姿で大きなテーブルに向かって黙々と右手に持つ羽ペンで資料に事細かい指示を書き込んでいる男性が居た。

 

 真斗とジョナサンがゆっくりと仕切りまで進むとその男性は政務の手を止め、二人に向かって声を掛けた。

 

「本来であれば客人をもてなすはずなのだが、なにせ政務が立て込んでいてね。こんな形でご挨拶をする事をどうか、許してもらいたい」

 

 声を掛けられたので真斗とジョナサンは進む事を止め、部屋中央に立つ。

 

 すると男性は持っていた羽ペンをテーブルに置くと椅子からゆっくりと立ち上がり、真斗とジョナサンの方を向く。

 

「改めまして。ようこそエルサレムへ。お初にお目にかかれて光栄です」

 

 男性は二人の元に向かって歩きながらレースを潜り、真斗とジョナサンの前に姿を現す。

 

 真斗とジョナサンは驚いた。なぜなら全身はおろか両手と頭までも白い生地の帽子と手袋で隠し、さらに顔を銀の仮面で隠していたからだ。

 

 そして男性は二人に向かって一礼をする。

 

「私が現エルサレム王の“ボードゥアン四世”と申します」

 

 驚いていた真斗とジョナサンもハッとなり、ボードゥアンに向かって一礼をする。

 

「初めましてボードゥアン陛下、日ノ本から参られました鬼龍 真斗と申します」

「お会い出来て光栄ですエルサレム王、キリスト騎士団の聖騎士(パラディン)、ジョナサン・ロンデバルトと申します」

 

 自己紹介を終えた真斗とジョナサン。すると真斗がある事を聞いた。

 

「失礼を承知でお聞きしたいのですが陛下。なぜ仮面を着けているのですか?」

 

 真斗からの問いにボードゥアンは落ち着いた口調で答えた。

 

「失礼、普通なら仮面を着けた状態で客人と会うのはマナーに反する行為だが、九歳の時にハンセン病(和名:癩病)を患ってしまってね。医学療法と魔法医療で病を治す事は出来たが、病が体を蝕んでいる間に全身の皮膚が焼け爛れた様になってしまってね。人前に見せるのも憚られる程に酷いものだから仮面をしているのだよ」

 

 理由を聞いた真斗は申し訳ない表情で深々とボードゥアンに向かって頭を下げる。

 

「失礼しました陛下。知らなかったとは言え無礼な質問をしてしまいました。お許しを」

 

 謝罪をする真斗に対してボードゥアンは首を横に振った。

 

「気にしなくてよい。誰しも疑問を抱くのは当たり前な感情なのだから」

「ありがとうございます。陛下」

 

 感謝を述べた真斗はゆっくりと頭を上げた。それと同時に再び扉が三回、ノックされた。

 

「陛下!レイモンです‼︎お食事の用意が出来ました!」

「分かったレイモン!では晩餐室へ向かおう。話はそれからで」

 

 ボードゥアンからの提案に真斗とジョナサンは頷く。

 

「「はい!陛下」」

 

 そして真斗とジョナサンはボードゥアンと共に部屋を出て、部屋の外で待っていたレイモンと共に晩餐室へと向かった。

 

⬛︎

 

 再びレイモンを先頭に晩餐室へ着くと室内に置かれた縦長のテーブルの上には銀の皿に乗せられた豪勢な料理と食器、そしてテーブルを挟んで置かれた人数分の椅子にはジュスランとロバート、そしてもう一人、白い生地に緑色のマルタ十字が書かれたサーコートを上にし、チェイン・メイルを着こなした茶髪でしかもお尻から犬の尻尾を生やした女性が座っていた。

 

 ボードゥアンが来た事で待っていたジュスランとロバート、そして女性は立ち上がり一礼をする。

 

「陛下。お元気そうでなによりです」

「陛下。ご機嫌でなによりです」

「陛下。お疲れ様です」

 

 笑顔で出会いの言葉を述べるジュスラン、ロバート、女性に対してボードゥアンも軽く一礼をして優しい口調で感謝を述べた。

 

「ありがとう、三人共。そうだ。真斗殿(どの)、ジョナサン殿(どの)、紹介しよう。こちらの女性はアンティオキア公国君主、“フルク五世・ユリア”である」

 

 ボードゥアンが振り向いて後ろに居る真斗とジョナサンに彼女、ユリアを紹介する。

 

 すると名前を聞いたジョナサンは目が飛び出る程に驚く。

 

「貴女様が!あの“ハーフリグクィーン”の異名を持つ‼フルク五世様ですか⁉」

 

 驚くジョナサンの姿に真斗を含めた皆はついクスクスと笑っていた。

 

 それから真斗とジョナサンは十字軍国家の首脳達と交流を兼ねた夕食会に参加した。

 

「ほぉーーーっジパングの食文化には魚を生で食べる料理があるのですね」

 

 椅子に座り右手に持つパンを食べながら笑顔で関心するロバートに対して、彼の向かいに座る真斗は笑顔で頷く。

 

「ええ、そうなんですよ。寿司や刺身、それとご飯の上に乗せて食べる海鮮丼などがありますね」

 

 するとロバートの右側の椅子に座り、二人の会話を聞いていたレイモンが笑顔でレバノン料理である“シャワル”を食べながら真斗に問う。

 

「なぁ真斗殿(どの)、もしよろしければジパングの料理を作っては貰えないでしょうか?」

「ええ、いいですよ」

 

 真斗は笑顔でレイモンからの頼みを二つ返事で承諾した。一方でジョナサンはジュスランとユリアはバチカン及びカトリック内での派閥争いを聞いていた。

 

「それで俺を含めた改革派は本来あるべきカトリックを目指していたんですが、やはり現教皇様を含めた腐敗派、ふふふっ保守派は俺達を第十次十字軍に入れて始末しようとしたんですよ」

 

 それを聞いたジュスランとユリアは“なるほどね”と言う表情で頷く。

 

「やっぱり噂は本当だったのか。だとすればカトリックの改革が上手く行けば我々、正教会派とカトニック派との和解が実現出来るかもしれないなぁ」

「そうね。そうしたらこの長いキリスト教内の不毛な争いにも終止符が着くわね」

 

 ジュスランとユリアは僅かではあるが、確かにキリスト教内の内紛を終わらせる希望を見出した。

 

 皆が会話を楽しんでいると上座に座るボードゥアンが右手に何かが書かれた紙を持った状態で皆に向かって声を掛ける。

 

「皆!楽しい会話の途中、すまない‼実は先月、“ダビデの塔”の地下で発見された迷宮(ダンジョン)の件だが、先行隊の報告によると予想以上に広く本格な探索には騎士団の助力が必要となった。手を貸してはくれぬか?」

 

 ボードゥアンからの頼みにロバート、ジュスラン、ユリア、レイモンは立ち上がりボードゥアンに向かって一礼をする。

 

「「「「仰せのままに陛下」」」」

 

 すると真斗とジョナサンも笑顔で立ち上がりボードゥアンに向かって言った。

 

「ボードゥアン陛下、もしよろしければ私とジョナサンを迷宮(ダンジョン)探索のお手伝いをさせて下さい」

 

 真斗からの申し出にボードゥアンを含めたロバート達は驚く。

 

「いいのかね?貴方様とジョナサン殿(どの)は大切なお客人です。お客人に我々のする事を手伝わせるのは・・・」

 

 困った口調で問うボードゥアンに対して真斗は笑顔で右手を横に振った。

 

「構いません。それに助けられた恩もありますので何か恩返しをさせて下さい」

「ええ、私も真斗と同じ気持ちです。陛下、どうか恩返しをさせて下さい」

 

 純粋で士道精神を見せる真斗とジョナサンからの願いにボードゥアンは頷いた。

 

「分かった。ではお二人にも地下迷宮(ダンジョン)の探索をお願いします」

 

 ボードゥアンからの新たな頼みに真斗とジョナサンはボードゥアンに向かって一礼をした。

 

「「仰せのままに陛下」」

「では諸君、探索は明日の早朝に開始する。よいな?」

 

 ボードゥアンが問い掛けると皆は深々と頭を下げた。

 

「「「「「「ははぁーーーーっ!」」」」」」

 

 そしてボードゥアンは政務の続きがあると言って一人、王室へと戻り、一方の真斗達は再び椅子に座り食事と会話を楽しむのであった。

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