人でなし、魔でなし、されど誰の敵にもあらず   作:偽鏡

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緋の魔法使いで往く一級魔法使い試験
4. 緋の魔法使いと魔法都市


 

 

魔法都市オイサースト。

 

 

街並みを足取り軽く行く、『シャーラ』。

緋色の瞳が日差しを受けて細められる。

 

 

「ううん、オイサーストも久し振りだね…」

 

 

すっかり消えかけの土地勘を頼りに、細い道を揺らぐように曲がる。

中央広場に出れば、上にそびえたつは__大陸魔法使い連盟、本部。

 

白いスミレの花があしらわれた杖。

何故か主に使う人間達の物には、白いスミレが使われていることが多い。

リートのハープ然り、シャーラの杖然り、ザフィアの錬金用手袋然り。

 

対照的にクラウンを始めとした魔族の象徴があるなら、彼岸花だろうか。

クラウンの全てを無に還す魔法(ニヒツィレーベ)を全力展開した時は、赤い花火のようなエフェクトが出る。

他の魔族も然り。今は死んだ設定にしているのでクラウン以外を出すことは少ないが。

 

 

「一級魔法使い試験は二日後か…先に申し込んどいてよかった。」

 

 

宿屋を取って、中に入って、ベッドに倒れ込む。

嗚呼、人間の文明の何と素晴らしいことか!

ずうっと大樹の洞の中で、コケのベッドで寝て居た訳で。

勿論ふかふかで文句は付けようが無いのだが。

それでも人間用ベッドは素晴らしいのだ。前世はきちんと人間だったし。

 

 

「あー、ねむ……」

 

 

欠伸を一つ、お上品なシャム猫のようにした。

魔法の気配が混じった夢を見る。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そして、試験当日。

 

配られた腕輪には1の文字。

第1パーティーは原作ではメトーデ、レンゲ、トーンの筈だが…そこに入ることになったのだろうか。

メトーデは零落の王墓攻略で重要になるので、そこだけは変わってほしくないが。

 

 

「メトーデと申します。宜しく御願い致しますね。」

「あ……えと、レンゲ、です…」

「シャーラです。宜しく。」

 

 

結局はメトーデ、レンゲ、シャーラ。

ううん、トーンが抜けたか。ぶっちゃけメインウェポンであろうメトーデが居れば良いのだが。

 

 

「第一試験は隕鉄鳥(シュティレ)の捕獲…お二方、得意魔法はありますか?」

「……えっと、水魔法が得意です…」

炎の剣を操る魔法(フランベルジュ)が得意。…鳥は焦がしちゃう。」

 

 

対人戦極振り魔法。創り出した人間の殺意の高さが伺える。……まあ私なんだけども。

まさか『シャーラ』を1級魔法使い試験に出すとは当時想定していなかったものでして。

ううん、想定済みであれば汎用性の有る魔法持ちを取っておいたと思うんだけどなあ。

 

居ない訳では無いのだが、私の変身する人間の魔法使いには何故か極振りした魔法が多い。

うーん、純粋になんでだ?

 

 

「得意魔法は特にありませんが、扱える魔法の種類だけなら自信があります。」

隕鉄鳥(シュティレ)を捕獲したパーティーから奪うのがメイン戦法かな。このメンバーだと捕獲は難しいだろうね。」

「あの…!空に、屍誘鳥(ガイゼル)も居ます…!気を付けて下さい…」

 

 

ああ、とメトーデと私で空を見上げた。

成程、本当だ。隕鉄鳥(シュティレ)探しにばかり探知を回していたから気付けなかった。

同じくメトーデも。レンゲには魔力探知の才があるかもしれないね。

 

 

「早い所、何処かのパーティーが捕獲して下されば良いのですが……」

「分かればあとは楽だね、対人戦であれば負ける気がしない。」

 

 

中央の湖で水を確保して、念のため煮沸消毒。

喉が渇いたのでごくごくと飲み干した。

ついでにレンゲにも渡しておく。可愛い。

 

 

「…お、アレが隕鉄鳥(シュティレ)?」

「そのようですね。」

 

 

頑丈で、飛行速度は最大で音速超え。

湖の氷から産まれた拘束をぶち壊して飛んで行く。

アレは原作でフリーレンが居る第2パーティーだったかな。

 

 

「……あ!」

「レンゲ、どうした?」

 

 

小さな声を上げたレンゲが、対岸の人影を指さした。

 

 

「あっちのパーティー、さっき捕まえてました…!」

「ナイス!急ごう、メトーデ!」

「そうですね。空は……やめておきましょうか。徒歩で向かいますよ。」

 

 

まあね、屍誘鳥(ガイゼル)居るし。

変な鳥は隕鉄鳥(シュティレ)程度で勘弁してほしいんだが。

 

少し長い道を歩くために、湖を沿って大回り。

灰色のブーツの踵を鳴らして地面を歩く。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

オイサーストに多くある宿屋、その一つの中の一室。

隣はフリーレンとフェルンが借りる部屋。なら、その部屋が誰の部屋かは知れたこと。

 

 

「兄貴、この斧大丈夫かな?」

「大丈夫だろ」

「見てないのに?!」

 

 

心配そうに己の獲物である斧を見るシュタルク。

自分よりかは武器に詳しい兄に聞けば、見もせずに是の返事。

 

兄は弟が武器をどう使っているか、知っているから言えるのだ。

毎度毎度、宿で心配そうに斧を見る本人を見て、今日も人知れず呆れている。

 

 

「此処は魔法都市だからな、武器屋は少ないだろうが…見に行くか?」

「いや、俺はいいよ。外で特訓してる。」

「そうか。…にしても、暇になるな。」

 

 

魔法使い二名の試験が終わるまでは、このオイサーストから出るにも出られない。

お互いを知り尽くした兄弟なので話題も少なくなる。

 

此処に酒好き賭け好き女好き、と破戒僧三拍子の揃ったザインが居れば…そう変わらないか。

暇潰しに何が出来るだろうか。この魔法都市オイサーストで。

 

 

「…シュタルク、此処に図書館ってあったか?」

「魔導書専門のならな。フリーレンが目を輝かせてたよ。」

「流石に魔導書を読んでもなぁ……」

 

 

一応これでも戦士なんだから、と苦笑するシュトルツ。

暇だ。どうにも、暇だ。

 

 

「街巡りで少し潰せるが……あとは依頼だな。シュタルク、鍛錬の合間に受けないか?」

「兄貴がそう言う時って、俺に拒否権ねえだろ。…やるよ。」

 

 

はは、と今度は普通の笑みを溢すシュトルツ。

諦めたように溜息を吐いたシュタルクを他所に、荷物の中から取り出した剣を眺める。

 

白い服はとうに汚れている。村一番の戦士の証は欠片も無い。

それでも、気にしていなかった。元からでもあるが。

 

 

「早速だ、依頼を取りに行くぞ。」

「え、今!?」

 

 

やめてくれ、と騒ぐ弟を引きずって、部屋を後にした。

残ったのは広げられた荷物と、少し舞う埃と、薄暗い部屋。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

炎の剣を操る魔法(フランベルジュ)

 

 

炎が舞い、剣が刺さり、森が燃える。

オレンジ色の業火は、全てを食い潰さんとその切っ先を人間に向ける。

 

 

一般攻撃魔法(ゾルトラーク)っ…!」

 

 

白い一筋の光線が宙を焼き、展開された水晶のような壁に阻まれて消える。

それでも光線は一本のみならず、数本、数百本と空に穿たれる。

 

 

見た者を拘束する魔法(ソルガニール)

 

 

黄色く光る輪が、三名を拘束して膝を着かせる。

攻撃をやめたレンゲが近付いてカゴを取った。

 

 

「さて……メトーデさん、すぐ行くんで殿は頼みます。」

「お、お願いします…!」

 

 

レンゲの手を引いて走り出すシャーラ。

見た者を拘束する魔法(ソルガニール)を持続させるために視線は動かさず、メトーデは頷いた。

 

 

「レンゲ、体力は持つ?」

「は…はい、大丈夫ですっ…!」

 

 

駆けていく、遠くまで。

そこらの森を焼き払うことで牽制も兼ねて。

 

レンゲの怯えは恐らくシャーラに対する物が大半だと思うのだが。

 

 

 

 

 

 

 

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