人でなし、魔でなし、されど誰の敵にもあらず   作:偽鏡

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何もしていないのに上がって行く吟遊詩人の市場価値に驚きを隠せません。
というわけでどうぞ、何も知らない主人公&戦士兄弟です。






5. 緋の魔法使いと戦士と、ときどき北部魔法隊

 

 

 

 私が炎の剣を操る魔法(フランベルジュ)をぶっ放し、レンゲが人を殺す魔法(ゾルトラーク)…ああ違った、それではなく一般攻撃魔法(ゾルトラーク)をぶっ放し、メトーデが何か色々な魔法をぶっ放し……と隕鉄鳥(シュティレ)を狙いに来る他のパーティーを空に打ち上げて居れば、当然の様に誰も来なくなった。

 

 寝る時に万一を考えて一人ずつ不寝番には立っているが、矢張り来ない。 なんだそんなに腰抜けなのか。

 原作ではこの頃、第二次試験に進む主力パーティーが各々でドンパチやっている状況なワケだが…そのうち一つでも来るかと思っていたけれど、一つも来ない。

 まあこの辺りは歴史の修正力とでも言うものなのだろうか。

 

 

 

 そうして、第一次試験は終了。

 

 

 合格パーティーは原作と同じ。

 第二次試験までには少し時間がある。

 

 さて、どうするかな。

 

 

 

 

 そう思っていたら、第8パーティーにお誘いを受けた。

 

 

「森燃やしてたのアンタだろ。 良ければ依頼、受けちゃくれねえか?」

「ああ……ちょっとやり過ぎたか。 まあいいよ。」

 

 

 既にシュタルク……と、シュトルツは居る。

 ええ、なんで君まで旅に出てんのさ。 初耳なんだけど。

 

 今は『シャーラ』なので、『リート』の分も呆れておく。

 『リート』と会った時と同じ剣を使い続けている彼は首を傾げた。

 

 

「また魔法使いを増やすのか?」

「お前の弟だけだったら丁度良かったがな。 お前が来ると前衛2と後衛2で変に防御に気が回せねえ。」

「前衛より後衛の方が多い方がやりやすい。」

「……そうなのか。」

 

 

 目からうろこが落ちたような驚愕の表情を出す戦士兄弟。

 ああ、あれか。 『リート』は二人の戦士のカバーを一人でやってたから…

 吟遊詩人と魔法使いの「後衛」はまた話が別なのだ。

 

 

「…シャーラ。炎の剣を操る魔法(フランベルジュ)が得意。宜しく。」

「俺はヴィアベル。得意魔法は見た者を拘束する魔法(ソルガニール)。」

「シャルフだ。花弁を鋼鉄に変える魔法(ジュベラード)を使う。」

「……ああ、俺か。シュトルツだ、宜しく。」

「え、シュタルク…です……」

 

 

 なんで私選んだんだよヴィアベル。

 表情を変えぬまま内心で呟いた。

 

 

「さて、依頼って……」

 

 

 途端に巨大な獣の影が飛び出して来た。

 シュタルクが斧を構え、シュトルツが剣を構え、ヴィアベルとシャルフが杖を出す。

 

 

「喋ってる暇は無いな、合わせろ!」

「そんな無茶な!?」

 

 

 慌てて出した、白いスミレの装飾が施された長い杖。

 溢れ出した炎が鋭い剣を形作る。

 

 森が燃えたらヴィアベルの所為にしてやろう、と思いながら魔法を発動した。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「はあ……事前に言ってよ、びっくりした…」

「悪いな、ついうっかり。」

「うっかりで死んでたらどうしてくれんの?」

 

 

 いのちだいじにせなあかんて、とぼやきながら焚火に炎の剣を放り込む。

 ぼっと音を立てて燃え出した木の束。死んだ魔物の上で何やら解体を始めるシャルフ。

 焚火の傍に座ったヴィアベルとシュタルク、それにシュトルツ。

 

 この絵面は確か原作でもあったような気がする。

 

 

「お前ら強いじゃねえか、助かったぜ。」

「いや、俺達こそ。」

 

 

 違うのはシュトルツが居ること、だろうか。

 本当になんで君は旅に出ているんだ、そのままどこかでのほほんと暮らしていれば良かったのに。

 まあ弟が旅に出ると言われたら着いて…着いて行くのか……?

 

 謎生命体ライフ、計数千年とちょっと。

 最早人間らしい精神性も消え失せている訳で、もう普通の人間の思考や趣向が分からなくなってきた。

 寧ろよく此処まで保ったと言うべきか。

 

 

「なんで二人は旅をしてるの? しかも兄弟で…」

「ちょうどその話をしたかったんだ。 …兄貴、良いよな?」

「ああ。」

 

 

 聞きたかった質問をしてみれば、意外にも快く返答を返してくれた。

 

 

「探している人が居るんだ。 銀髪に青の目を持つ吟遊詩人で、『リート』って人なんだけど。」

「吟遊詩人……また随分と希少なヤツだな。 直ぐ見つかりそうなモンだが…」

「それが、かなり前に魔物と戦った後、行方が掴めなくなってな……死んだわけでも無さそうなのに、一向に会える気配が無いんだ。」

 

 

 死んだわけでも無さそうなのに、って。

 まさかあの後『リート』の姿で様子を見に行ったときに気付かれたのか…? 戦士怖い…。

 

 『クラウン』であの事実を消しておこうか、とも思ったが。

 それが無ければどんな影響が出るか分からない。 不確定要素は早急に排除したいところだが、それの消失による影響がどんなものかが分からないという更なる不確定要素が出来ているので無理だ。

 ううん、まさかこんなところで私の心配性が仇になるとは。

 

 

「……銀髪青目の吟遊詩人、か…そういや、そんなヤツが北部高原に居たな。」

「!?」

「本当か?!」

 

 

 あ、やべ。

 ちょっと前に北部高原に『リート』で出張してたんだった。

 しかしそれを覚えているとはなヴィアベル。 まあ吟遊詩人レアだし覚えるか…

 

 

「居たよな、シャルフ?」

「…ああ、二カ月ほど前か…?北部高原の依頼を受けた時に一緒になった記憶がある。」

「二カ月前……なら、まだ北部高原に居るか……?」

「居るんじゃねえか?最北端に行くっつってたからな。」

 

 

 言ったねえ、言ったよ?

 「(クラウンの姿で)最北端行く」って言ったよ?

 別に本当に旅するつもり無かったし移動魔法とか飛行魔法使って行ったよ???

 

 ああ墓穴が増えていく。

 

 

「にしても吟遊詩人が北部高原かぁ…物好きな人も居るんだね。」

「そう言うお前は如何して一級魔法使い試験を受けるんだ?」

「北部高原に入るためだよ。 ……大概、私も人のこと言えないけどね。」

「そうなのか…」

 

 

 たった今できた目標ですけどね!!! と、内心涙目で叫ぶ。

 本当は黄金郷編でワンチャン出番あるかもなと思ったからです。

 無くても、どのみち『クラウン』で動こうとは考えていたけれど…『シャーラ』で行くのもアリかと思い。 ついでに一級魔法使いの資格って便利そうだし。

 

 

「ま、目的はみんなほとんど一緒ってワケね。……仲良くやろう、死なない程度に。」

「ははッ、面白ぇな。そうしようぜ、お互いにな。」

 

 

 ぱん、と乾いた音を立て、拳を打ち付け合う。

 楽し気な笑みと声が空に響いていた。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、フリーレン様。」

「何?」

 

 

 杖のメンテナンスを続けていたフェルンが、ふと口を開いた。

 読みふけっていた魔導書から目を離し、フリーレンがそれに応える。

 

 

「シュトルツ様とシュタルク様が探していらっしゃる“吟遊詩人”とは、どのような職なのですか?」

「…そうだね……【女神様の魔法】と同じで、原理が殆ど解明されていない魔法を扱う人の総称だ。

 少し前までは吟遊詩人、数が少なくとも最盛期だったんだけど…ここ最近はまた人数が少なくなってきて、絶滅危惧種のような存在だよ。」

 

 

 なお、フリーレンの言う「ちょっと前」は五十年かそれ以上に前である。 流石にリートも活動してない時期だ。

 人数が少なくとも、その魔法は僧侶の【女神様の魔法】とは別ベクトルに希少性がある。

 

 例えば、有名なのは簡単な未来予知。 風、水、地、炎といったものを操る【詠みの歌】。 音や声を媒介として打ち付ける、決して見えない攻撃。 音速と同じほどの速度。 複数人に同時にかけられるバフ魔法。

 

 

「吟遊詩人は今では本当に少なくなってね、宴や夜会では貴族たちが血眼になってでも呼び出そうとしているんだ。」

「している、ということは…矢張り本当に少ないのでしょうか。」

「いや、それもあるけど…元来ふらふらとした気質な者が多くてね、誘い出すにも居場所が分からないし、快い返事が貰えても当日にキャンセルすることだってある。」

「ドタキャンは嫌われますよ?」

「それ以上に、貴族からしてみれば希少性が重要なんだろうね。」

 

 

 中でも、あの二人が探している『リート』は、恐らくだが【詩人の魔法】創成者と同等、若しくはそれ以上の才がある。

 戦士の村一番の戦士、それからその弟。 強い相手にかければかけるほど消費の激しくなるというのに、苦にもせずバフを与え続け、『血塗られし軍神リヴァーレ』を【風詠みの歌】で吹っ飛ばす。

 

 さて、今まででリヴァーレを風で吹っ飛ばした人間が居ただろうか。 アイゼンでさえも足止めが精一杯だったと言うのに。

 

 

「そんなに詩人の魔法に愛された吟遊詩人が、一か所でじいっと留まっていられると思う?

 まず吟遊詩人の才がある人間自体、そこらをふらふらしてふと消えるような風来坊ばっかりなんだから。」

「……そうなると、シュトルツ様とシュタルク様は随分と大変なことをする気で居るんですね。」

「蒼月草の中から藍月草を探し出す以上に難しいだろうね。 それでもあの二人が決めた、ちゃんとした目標だ。」

 

 

 ただ一言、感謝の言葉を言う為に、あの二人は私達に着いて来ている。

 

 もしかしたら__本当にもしかしたらだが、ザインの目標と似ているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 







「蒼月草の中から藍月草を探す」

 砂浜の中から一粒のガラスを探し出す、と類似したような意味。
 この場合「うろちょろする凄腕吟遊詩人の中でも屈指の自由人であろう人物を見つける」ということ。
 それなんて無理ゲー?




・藍月草

 蒼月草の亜種。青色の原種と違い、藍色をしている。見分けがつき辛い。
 と或る樹海ダンジョンの最奥に大量に咲き誇っている。が、それ以外では蒼月草の花畑の中にぽつんと混じっているばかり。
 とても強い毒性がある。飢えて食べた大魔族が死んだ。
 人の手では育てられないが、魔族には育てられる。また、花畑を出す魔法で出したら一瞬で枯れてしまう。

 植物学者が言うには「絶対に自然では産まれない、人工的に改良された植物」とのこと。
 わーいったいだれがかいりょうしたんだろうなー


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