イタズラ好きで、それでいて少し不器用なキミが好き。 作:Rαυs
と、思って描きはじめました。
ぜひ楽しんでください〜
姫崎莉波
EPISODE
「…ど、どうしよう、道に迷っちゃった…」
18時45分。
夕日を背に12歳くらいの少女が困り果てた様子で道端を彷徨いていた。
しばらくして歩くと、小さな公園が見えてきた。
少女は歩き疲れたのか、公園のベンチで休憩する事にした。
「ネコちゃんを追いかけたらまさかこんな事になるなんて…」
仲のいい男の子と遊び、帰り道で別れたときにネコを発見してついつい追いかけてしまった末にいつもの帰り道から大きく逸れてしまい、結果的に迷子になってしまったらしい。
日もどんどん沈んできており、このままだとあっという間に外も真っ暗になってしまうだろう。
人通りも少なく、周りは建物だらけ。
これから暗くなるであろう道を小学生の少女が1人でうろつくのはあまりにも危険すぎる。
「……っ」
最悪な状況を想像してしまったのか恐怖で体が小刻みに震えてしまっている。
周りを見渡しても人もおらず、見覚えのある通路も、建物もない。
少女の心はもう限界が近かった。
と、そんな所に───
「りなみお姉ちゃん!」
「──っ!?」
今にも泣き出してしまいそうな少女の所に1人の少年が駆け寄ってくる。
身長は少女よりも低く、歳下にも見えなくもない少年で、あちこち走り回って探していたのか全身汗まみれで、肩で息をしている。
「はぁ…や、やっとっ…はぁ、みつけた…」
「あっ…うぅっ…!!」
少年を見るや否や思わず安心したのか、りなみと呼ばれた少女はその場で啜り泣いてしまい、そんな少女に対して少年はあたふたとしたが気を取り直して少女に手を差し伸べる。
「ほ、ほら!暗くならないうちに帰ろう?」
「──!…うん!!」
目元の涙を拭い、少女は少年の手を───
「……っ」
手を伸ばした先は窓から差し込む朝日に照らされた真っ白な天井であった。
「ゆ、め?……そっか、そうだよね…」
まだ見ていたかったな、と気を落としてしまうが、だからと言って二度寝する気にもなれず、もし寝たとして夢の続きが見れる保証もない。
だが、休日だと言うのにいつも目覚ましが鳴る時間よりも早く起きれて少し徳をした気分だ。
「あ、え?…わたし」
そんなことを考えていると生温い雫が頬に流れてきた。
完全に無意識だった為に本人も
「……よし!学校も休みだし、気分転換にちょっと散歩でもしようかな!」
ぱんっ!ぱんっ!と気を取り直すように両手で軽く頬を叩き、足元に被せていた毛布をのけてベッドから立ち上がり、外に出る準備をする。
「〜〜〜♪」
鼻歌で可愛いらしい歌声を響かせながら軽くシャワーを浴びて気持ちを切り替える。
風呂から上がると事前に用意していたバスタオルで濡れた身体を拭き、続けて腰ほどまである綺麗な長い髪をタオルでしっかりと水気を抜き取り、それを終えると髪が傷まないようにトリートメントをつけてからドライヤーで髪を乾かす。
念のためにブラとショーツは運動用の物をつけてスポーツウェアに着替え、続けて歯磨きを済ませて準備を終えると彼女は外に出る。
「ん〜〜っ!休日に早起きするってのもなんか新鮮で気持ちいいかも」
桜が咲き始める季節な上に日が出たばかりな事もあって外はまだ冷えているが、入浴直後で暖まった身体にはそれがどこか涼しく感じる。
「ふぅ……よし!いってきます!」
4月◯日 06時54分。
そうして彼女、
HATSUBOSHI GAKUEN
学園アイドルマスター
THE iDOLM@STER
“clumsy trick”
1990年5月16日に建学された中、高、専門大学が一体となった私立の大学であると共に、国内最大のアイドル養成校として名を馳せている。
組織構造としてはそれぞれ普通科、アイドル科が中等部(正確にはアイドルコース)、高等部にあり、そして大学にプロデューサー科がある。
中等部を卒業すればもちろんの事だが高等部に進学。
(因みに外部からの受験も可。)
そして高等部、もしくは専門大学を卒業すれば学園が経営する芸能プロダクションに所属する事ができる。
また、別のパターンとしてアイドル科の場合、初星学園在学中にアイドルとしてのデビューが決まると学園長である
そんな学園に在籍している花の女子高生でありアイドルの卵、いや原石とも呼べる存在の彼女、姫崎莉波は───
「ん〜……迷っちゃった」
───絶賛迷子中であった。
───第1話『ん〜……迷っちゃった』
寮を出てから2、30分くらい経つかな。
軽くジョギングをしていたら道端でどこか見覚えのあるような、どこか懐かしいような見た目の猫を見つけて後を付けてみたら見覚えのない場所にきちゃった…。学園からそんなに離れてはいないと思うけど…。
学園に入学した時もそうだったけど、私ってもしかして方向音痴だったりするのかな…?
でも、それが真央と出会うきっかけにもなったから、今ではいい思い出でもあるかな。
にしても、あまり人が通らなそうな場所なのに雑貨店やお洋服屋さん、それにカフェとか……ってえ?すごい、コスメ専門のお店なんかもある……と、とにかくオシャレなお店がいっぱい並んでいた。
「…ふふっ、なんか隠れスポットを見つけたみたいで得した気分」
お昼に真央と一緒に回ってみようかなと思いながらお店を見回ってみる。
すると、一番気になっていたカフェの入り口にある木製のベンチの上にさっき見かけた猫さんがゴロンとしながら私のことをジッと見ていた。
色はクリーム色で、よく見たら桜のアクセサリーが着いた首輪をしている。
「あそこで飼われているのかな」
私は怖がらせないようにそーっと近づいて行くけど、意外なことに逃げる様子が一切なく、それどころかまるで「お隣どうぞ」と言ってるように場所を移動して腰をおろした。
「それじゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな?」
私も腰をおろして少し休憩する事にした。
欲望に負けるように猫さんの頭を撫でると、その子は特に嫌がる様子をみせずゆっくりと尻尾をぱたん、ぱたん、と上下に動かしている。なにか考え事かな?
「はあ〜」
朝の空気を堪能するように深呼吸をして空を見上げる。
時間は07時46分、外もだいぶ明るくなってきた。寮を出てからもう1時間近く経ってる、時間の流れって早いなぁ…。
「私ももう3年生か……」
初星学園に入学してさっそく1年生でデビューできて「夢のアイドルに一歩前進できる!」って思ったけど、全然上手くいかなかった。
ユニットとしてのアイドルデビューで、そのユニットは
でも私は他の子よりも身長が高く、雰囲気が大人っぽくて妹というイメージからはすごく遠くかった。
正直な話、すごく浮いてたんだと思う。
だから自分なりに色んな事を試してみた。
他のメンバーの真似をして妹っぽい喋り方にしたり、髪型をツインテールとか可愛い系のものに変えて試して見たり、もし年上のお兄さんやお姉さんがいたらと、イメージトレーニングをしてみたり…。
そうやってみんなと合わせようとすればするほど、どんどん空回りして行って、人気がでないまま結局ユニットから外される事になっちゃった。
「あはは、そんなこんなしていたらもうあっという間に3年生だよ〜」
「〜?」
猫さん相手になに言ってるんだろ私。
卒業したらアイドルはもうやめかな……私にはもう、アイドルは無理なのかな…?
でもしょうがないよね!デビュー出来ずにそのままって人もいるって聞くぐらいだし、私もその1人だったってだけの事だし!
まだあと1年もあるんだから芸能プロダクションに所属するなり、別の進路を探すなりして───
「……あぇ?」
「……」
ぽた…ぽた…と、私の膝に生温い水滴が落ちてくる。
いやこれは、涙?もしかして、私?……なんで?ダメ、だめっ、泣いたら…。
「〜〜」
「…っ?」
堪えるように俯いていると、先程まで隣に座っていた猫さんが私の膝の上に乗っかって、涙を拭うようにそのモフモフな顔を擦りつけてくる。
「んっ……あはは、慰めてくれてるの?」
猫さんにまで気を使わせちゃうなんて、ダメダメだな私…。
ホントにこれでいいのかな、ホントにアイドルを諦めちゃっていいのかな……。
「…っ、いやっ…いや、だなぁっ…」
いままで見ないフリをしていた
視界に映る、私のことを心配そうにジッと見つめる猫さんの姿がだんだんとぼやけて───
「あの、大丈夫ですか?」
「……ぇ?」
まさかこのタイミングで声をかけられるとは思わず、間の抜けた声が出てしながら顔を上げてしまう。
───ドクン
…っと、まるで心臓が跳ね上がるような、そんな音がした。
一瞬、ほんの一瞬、日の光がまるでスポットライトのように私達を照らしているかのような錯覚に陥った。
身長は私よりも少し高い子。
肩ぐらいまで伸ばしたクリーム色の髪に、桜色のつり目をした、一見女の子と間違えてもおかしくないくらい綺麗な子。
でも、私はその子が男の子だって一目で分かった。
髪の毛も、身長も、あの頃よりもすごく伸びてしまっているけど、綺麗な髪と瞳、見間違えるはずはない。
「し、ろ…くん?」
To Be Continued