ブラック・ブレット Devils×Devil  〜悪魔を超えた悪魔、ブラブレ世界に舞い落ちる〜   作:ジョニー一等陸佐

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 今のところ、この二次創作はブラック・ブレット原作1巻の内容でまとめる予定です。
 作者のリアルの事情やチンカスな文章力や想像力ではそれが限界なんだ…だから…すまない
 あと感想くれたらとっても嬉しいのん…


2th MATCH 依頼

 昼下がりの東京エリア、市ヶ谷。

 里見蓮太郎は防衛省にいた。1人ではなく、その傍らには彼の幼馴染であり、彼の属する天童民間警備会社の社長、天童木更の姿もある。本来なら彼は高校で死んだように過ごしているはずだったが、木更からの連絡で急遽彼女と共に防衛省にやってきたのだった。

 庁舎内に入るとそのまま職員に誘導され、第一会議室と書かれた部屋の前まで案内される。

 室内に入ると部屋は思っていたよりもかなり広く、中央には細長い楕円形の卓、奥には巨大なELパネルが埋め込まれていた。

 そして各席には仕立てのいいスーツを着た、民警の社長格と思しき人物たちがそれぞれの指定の席に座っており、その後ろには見るからに野蛮人、荒事専門といった連中が控えている。彼らの傍らには延珠と同年齢くらいの少女達も控えている。

 民警は通常、プロモーターとイニシエーターと呼ばれる少女でペアを組み仕事をする。控えている野蛮人と少女の群れがそのプロモーターとイニシエーターであることは明らかだった。

 なるほど、どうやらかなりの数の自分たちの同業者が招かれているようだ。

 それだけ重要な話があるというのだろうか…

 蓮太郎が部屋に足を踏み入れた瞬間、中に詰めていた人間たちの雑談がぴたりとやみ、殺気の籠った視線が突き刺さった。

 

 「おいおい、最近の民警の質はどうなってんだよ。ガキまで民警ごっこかよ。部屋ぁ間違ってんじゃないのか?社会科見学なら黙って回れ右しろや」

 

 プロモーターのうちの1人がそう言いながらこちらにやってきた。

 タンクスーツに逆立った頭髪、口元は髑髏パターンのフェイススカーフ。吊り上がった眼は三白眼で、その体格は鉄板のように鍛え上げられており十分すぎる威圧感があった。

 手にはバスターソードとでもいうのか、10キロはありそうな肉厚長大な段平。それを軽々と扱っているあたり明らかに只者ではない。

 蓮太郎は木更を庇うように前に出る。相手はそれが気に入らなかったようだ。

 

 「あぁ?」

 

 「アンタ何者だよ、用があるならまず名乗れよ」

 

 「なにが『用があるならまず名乗れ』だよ、ボクちゃん。見るからに弱き者だな」

 

 「別に民警は見た目で実力が決まるわけじゃねぇだろ」

 

 「『別に民警は見た目で実力が決まるわけじゃねぇだろ』?ムカツクなテメェ、斬りてえ、マジ斬りてえよ」

 

 目の前の男は随分喧嘩っ早いようだ。

 品行方正さと知性や理性とはまるで無縁の危険なオーラ…弱者を冷酷非情にぶちのめし見たものに全てに戦闘や喧嘩を挑もうとする精神が“強さ”だと信じている野蛮人。

 それが蓮太郎が目の前の男に抱いた印象だった。

 揉め事を起こすわけにはいかない。一体どこの民警の者だと思い周囲を見渡していると、突如顔面に鈍い衝撃が走った。吹き飛ばされ、背中から倒れる。いきなり顔面に頭突きをかまされたことに、痛みよりも驚きが勝った。飛び上がると同時にベルトのXD拳銃に手が伸びる。

 

  「バァーカ、なに熱くなってるんだよ。挨拶だろ?」

 

 周りからこちらを愚弄するような失笑が起きた。

 

 この野郎、と激高しかけていると不意に新たな声が聞こえてきた。

 

 「ほう、犬は犬でもお前ぐらい脳筋になると立ち振舞や挨拶のやり方も忘れるのか」

 

 「なにっ」

 

 突如放たれた野蛮人への愚弄の言葉。

 声のした方を見るとそこには蓮太郎にとって見覚えのある人物がいた。

 高身長に鍛え上げられた肉体、はためくコート、オールバックの髪型に横一文字の顔の傷跡…

 

 「アンタは…」

 

 蓮太郎はつい先日のことを思い出す。通報を受け現場に駆けつけた時、既に粉砕されたガストレアの側に居た男。彼は名前だけ名乗りそのまま立ち去った。そう、確か名前は…

 

 

 

 鬼

 龍

 !

 

 

 

 「おいテメエ、今なんつったんだあん?」

 

 突然の愚弄に当然ながら野蛮人は額に青筋を浮かべ鬼龍に詰め寄る。

 一方の鬼龍は平然とした様子だ。

 

 「上位の民警が来ていると聞いたが…実際には強いだけのバカしかいないようだな。ああいや、強いと思い込んでいるバカの間違いか。だから誰彼構わず喧嘩をふっかけにいく」

 

 「テメエ…ッ!」

 

 野蛮人が大剣の柄を更に強く握りしめる。暴力沙汰が起こると思われた次の瞬間、別の声が両者に介入した。

 

 「やめたまえ将監!」

 

 声は、席の一つに腰掛けていた彼の雇い主と思われる人物から発せられた。

 「おい、そりゃねぇだろ三ヶ島さん!」

 

 「いい加減にしろ。この建物で流血沙汰なんか起こされたら困るのは我々だ。この私に従えないなら、いますぐここから出て行け!」

 

  将監と呼ばれた野蛮人は一瞬不気味に沈黙する。が、ギロリと鬼龍を、それから蓮太郎を一瞥すると「へいへい」と言って引き下がった。 蓮太郎は体から力を抜き大きく溜息をつく。

 今度は彼の雇い主が両手を広げながらこちらにやってきた。

 三十代半ばくらいのエリート然とした男だった。高級スーツに身を包み、あの野蛮人とは対照的に知的な顔つきをしている。

 

 「ミスター鬼龍、それからそこの君すまないね。あいつは短気でいけない」

 

 雇用主の男と鬼龍は知り合いなのだろうか。

 

 「フンッ、飼い犬の躾もままならないとはな」

 

 「いやいや、本当に申し訳ない」

 

 鬼龍の嫌味にも男は顔色一つ変えない。

 一悶着終わり、挨拶もそこそこに蓮太郎達は席に座る。

 民警の中でも序列の低い蓮太郎達はディスプレイから遠い末席。一方の鬼龍は最もディスプレイに近い上位の席だった。

 遣り手ですと言わんばかりの雰囲気を出す大手の民警関係者達が居並ぶ中、鬼龍の雰囲気はあまりにも異質だった。

 初めてあった時も感じていたが…この男は只者ではない。

 蓮太郎がそう思っていると隣の木更が話しかけてきた。

 

 「里見くん、あの男がこの間話していた?」

 

 「…ああ、この間俺達より先にガストレアを撃破していたオッサンだ。あの人も呼ばれてたんだな。席の位置からして大分序列高そうだけど…」

 

 「でもその割には妙よ。ここにいる民警はみんな少なくとも名前は知ってる大手だけど、あの男のことは全然知らないわ。他のと違って社名も置いてない」

 

 見れば確かに、社長格の座る席にはそれぞれの社名の札が置いてあるが鬼龍にだけそれがない。

 一体この男は何者か…そう思っているうちに、制服を着た自衛官が入ってきた。階級章などの外見から幕僚クラスの高位の自衛官であることは明らかだった。

 自衛官は集まった民警達を一瞥し口を開いた。

 

 「本日集まってもらったのは他でもない、諸君等民警に依頼がある。依頼は政府からのものと思ってもらって構わない…本件の依頼内容を説明する前に、依頼を辞退する者はすみやかに席を立ち退席してもらいたい。依頼を聞いた場合、もう断ることができないことを先に言っておく」

 

 どうやら依頼というよりは任務と言ったほうがよさそうだ。

 自衛官の言葉に、しかし席を立ったり部屋から出る者はいなかった。

 

 「よろしい、では辞退者は無しということだな。では説明はこの方から行ってもらう」

 

 そう言うと、巨大ディスプレイに一人の少女が映った。

 

 『ごきげんよう、みなさん』

 

 そこに映った少女は現東京エリアの統治者であり、最大の権威を持つ者だった。

 聖天子。

 雪を被ったような純白の服装に銀髪のうら若き国家元首の姿がそこにあった。その直ぐ側には彼女の最側近である天童菊之丞の姿がある。

 国家元首の登場に室内は電流のように衝撃が走り、木更や蓮太郎含め一同が立ち上がる。――ただ1人、鬼龍を除いて。鬼龍はそれがどうしたと言わんばかりに卓に脚を掛けて座ったままだ。

 最高の権威者に対し不遜な態度の鬼龍に当然好ましからざる感情のこもった視線が集中する。画面の菊之丞も鬼龍を睨むが当の本人はどこ吹く風といった様子だった。

 

 『みなさん、どうぞお座りください。私から説明します』

 

 聖天子から更に言葉が発せられ再び人々が彼女に注目する。

 

 『といっても依頼自体はとてもシンプルです。民警のみなさんに依頼するのは、昨日東京エリアに侵入して感染者を一人出した感染源ガストレアの排除です。もう一つは、このガストレアに取り込まれていると思われるケースを無傷で回収してください…』

 

 聖天子からの依頼の説明と共にディスプレイにはその情報が映し出される。回収対象のスーツケースの写真、そのケースはガストレアに取り込まれていること、スーツケースの中身については答えられないこと、報酬額等々…特に報酬額は依頼の難易度と比較すると余りにも破格の高さで室内にざわめきが走る。

 不意に声が響いた。

 

 「腑に落ちんな」

 

 声の主は鬼龍だった。

 

 『何がでしょう。依頼内容は余さずお話ししましたが…』

 

 「確かに依頼は単純だ。雑魚を一匹倒してスーツケースを回収する…下位の民警でも出来ることだ。問題は…そんな簡単な依頼を破格の依頼料で――しかもトップクラスの民警やこの俺に依頼するのか、ということだ」

 

 上下関係を無視した傲岸不遜な態度で聖天子に話す鬼龍。画面の菊之丞が更に険しい表情を見せるが、聖天子は手で彼を制する。

 

 「昔からある定石の一つだ…美味い話にはとんでもない裏があったりする…何か隠しているな?」

 

 『…それは知る必要の無いことでは?』

 

 画面を睨め行ける鬼龍、対する聖天子はあくまでしらを切る。

 

 「失礼ながら、私も彼の意見に同意です」

 

 今度は木更が立ち上がり発言する。

 

 「彼の言う通り、任務に比して破格の値段の報酬額…値段に見合った危険がそのケースの中にあると邪推してしまうのは当然ではないでしょうか?確かに知る権利や必要は無いかもしれません。しかし、あくまでそちらが手札を伏せたままならば、ウチはこの件から手を引かせていただきます」

 

  『…ここで席を立つと、ペナルティがありますよ』

 

 「覚悟の上です。そんな不確かな説明でウチの社員を危険にさらすわけにはまいりませんので」

 

 肌がピリピリするような沈黙。

 何か言わなければ…蓮太郎がそう思っていると、突如余りにも場違いなけたたましい笑い声が部屋中に響いた。

 

 『誰です』

 

  「私だ」

 

 全員の視線が声の主に集まる。

 見れば空席だったはずの席に仮面にシルクハット、燕尾服の怪人が、卓に両足を投げ出して座っていた。

 蓮太郎はこの怪人に覚えがあった。

 そう、蓮太郎が鬼龍と初めてあった同日…依頼を受けアパートとに急行した時、その室内に居た男だ。警官数名を殺害し蓮太郎とも交戦した後そのまま逃亡したのだが…一体なぜ彼がこんなところに?

 

 『…名乗りなさい』

 

 「これは失礼」

 

 男はシルクハットを取って体を二つに折り畳んで礼をする。

 「私は蛭子、蛭子影胤という。お初にお目にかかるね、無能な国家元首殿。端的に言うと私は君たちの敵だ」

 

  背筋を走る悪寒が、蓮太郎に拳銃を抜かせた。

 

 「お、お前ッ…」

 

  影胤と名乗った男の首が猛烈な勢いで蓮太郎の方を向く。

 

 「フフフ、元気だったかい里見くん。我が新しき友よ」

 

 「どっから入ってきやがった!」

 

 「フフフ、その答えに対しては、正門から、堂々と――と答えるのが正しいだろうね。もっとも小うるさいハエみたいなのが突っかかってきたので何匹か殺させたけどね。おおそうだ、丁度良いタイミングなので私のイニシエーターを紹介しよう。小比奈、おいで」

 

  「はい、パパ」

 

 いつの間にいたのか、蓮太郎の後ろから少女が現れそのまま通り過ぎると、難儀しながら卓に登る。

 ウェーブ状の短髪、フリル付きの黒いワンピース、両手に握った二本の小太刀。少女はスカートの裾を摘んでお辞儀する。

 

 「蛭子小日奈、十歳」

 

 「私の娘にしてイニシエーターだ」

 

 小日奈と名乗った少女が辺りを見渡す。

 

 「パパ、みんな見てる。恥ずかしいから、斬っていい? それとあいつ、テッポウこっち向けてるよ、斬っていい?」

 

 「よしよし、だがまだ駄目だ。我慢なさい」

 

 「うぅ…パパァ」

 

 とても十歳の少女とは思えない野蛮人のような発言。見れば小太刀の刃は血で濡れ、その切っ先から血が垂れ小さい血溜まりを作っている。

 

 「単刀直入に言おう、あのジュラルミンケースの中身は我らが頂く。名は『七星の遺産』」

 

 影胤の口から出た単語に聖天子は観念したような表情を見せる。

 

 「七星の遺産?じゃあお前があの時あの部屋にいたのは…」

 

 「ああ、私もくだんの感染源ガストレアを追って部屋に踏み込んだんだが肝心の奴は消えてるし、グズグズしてたら警官隊が突入してきたからビックリしてそのまま殺しちゃった。ヒヒッヒヒヒヒヒッ!」

 

 仮面を抑え喉奥から笑う影胤。

 最早彼と彼女に対する一同の印象は一致していた。

 何のためらいもなく人間を殺戮し、あまつさえ快楽を感じる人間…

 

 

 精

 神

 異

 常

 者

 

 

 影胤が手を広げて叫ぶ。

 

 「諸君ッ、ルールの確認をしようじゃないか!私と君たち、どっちが先に七星の遺産を手に入れられるかの勝負といこう。遺産はガストレアの身体に巻き込まれてるだろうから、手に入れるにはその感染源ガストレアを殺せば良い。賭け金は君達の命でいかがか?」

 

 「――黙って聞いてりゃごちゃごちゃ言いやがって…」

 

 テーブルの向こうから声が響いた。先ほど蓮太郎達に突っかかってきた野蛮人、伊熊将監だ。手には巨大な漆黒のバスターソード。

 

 「勝負?賭け金?…笑がすなババタレが―っ、要するにお前が死ねば良いんだろっ」

 

 将監の姿が消えたと思ったらいつの間にか影胤の懐に潜り込んでいた。――速い。

 

 「しばきあげたらあっ」

 

 巨剣が猛スピードで台風のように振り下ろされる。

 避けようのない、必殺の斬撃――のはずだった。

 影胤の身体が真っ二つに引き裂かれ鮮血が飛ぶことは無かった。

 次の瞬間、将監の巨剣が明後日の方向に弾き飛ばされる。

 

 「あががっ」

 

 「ざーんねん!」

 

 何だ今のは。

 巨剣が弾き飛ばされた瞬間、一瞬、青白い燐光が見えたが…

 

 「下がれ将監!」

 

 将監の雇用主――三ヶ島が叫ぶ。彼の意図を察し下がる将監。

 次の瞬間、集まっていた全ての社長やプロモーターが持っていた銃を構え影胤に一斉発射する。木更も撃つ。蓮太郎も撃つ。鬼龍も撃つ。

 耳をつんざく轟音が響き渡る。

 しかしただの一発も影胤に当たることは無かった。

 今度ははっきりと青い燐光が現れる。それはドーム状のバリアだった。バリアに当たるたびに銃弾が弾かれ、部屋の調度品や壁を壊していく。この世のものではない心地が蓮太郎達を襲う。

 やがて全員の銃が弾切れとなる。

 消えるバリア、室内は静寂になる…がそれも一瞬だった。

 

 「パパっ、後ろ!」

 

 小日奈の声が響くのと影胤の背後に何者かが立つのが同時だった。

 鬼龍だ。蓮太郎達の銃の弾切れとバリアが消えたその瞬間に一瞬で、卓の奥から影胤の背後まで距離を詰めたのだ。最早速いなど言うものではない。

 小日奈が言い終わらぬうちに、鬼龍のそのたくましい脚による回し蹴りが影胤の側頭部目掛け繰り出される。

 凄まじい速さと威力。並の人間なら一撃で絶命するだろう。

 嫌な音とともに影胤の首がぐるんと回る。

 …が、信じられないことに影胤は自らの頭を掴み元の位置に回して戻す。

 しかし鬼龍は攻撃の手を止めない。

 次の瞬間、ボッボッ、パンパンッ、という空気を震わす異音が響き渡る。

 目にも留まらぬ速さで鬼龍の拳が影胤に次々と打ち込まれていく。まるでマシンガン…

 その速さと響く異音に蓮太郎は一瞬、鬼龍の拳は音速かそれを超えてるのではと思った。(後で知ったが、それが灘神影流なる武術の一つであり、鬼龍の得意技である霞突きと呼ばれるものだった)

 だが…

 

 「ククク効かないですよォ」

 

 「なにっ」

 

 影胤の周囲に再び青白く光るバリアが浮かび、鬼龍の突きは止められ、阻まれる。

 効かなかった攻撃。

 しかし鬼龍は動揺しない。

 

 「ほう…面白い」

 

 逆に闘気を滾らせるように笑った。

 

 「いやいやこちらこそ。里見に続いてこうして一発喰らうことになるとはね。私の記憶が間違っていなければ確か君は宮沢鬼龍君だったね?お初にお目にかかる」

 

 「フンッ…そのバリア…貴様、『新人類創造計画』の兵士だな」

 

 「御名答、よく分かったね」

 

 鬼龍と影胤のやり取りに蓮太郎や三ヶ島達は目を見開く。

 

 「ガストレア戦争が産んだ対ガストレア特殊部隊だと?実在したというのか」

 

 「今見せたのは斥力フィールドだ。私はイマジナリー・ギミックと呼んでいる」

 

 「い、イマジナリー・ギミック?お、お前人間なのか?それとも変なクスリでもやってるのか」

 

 「人間だとも。ただ、内臓をほとんど摘出してバラニウム製の機械に取り換えてるがね」

 

 影胤は鷹揚に両手を広げる。

 

 「名乗ろう里見くん、宮沢くん、私は元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊『新人類創造計画』蛭子影胤だ」

 

 そう言って再び影胤は鬼龍と蓮太郎に向き直る。

 

 「それにしても里見くんに、あの宮沢くんまでいるとはね。これは楽しめそうだ」

 

 「お前のようなピエロはクズなほど、そして強いほど殺した時愉快なものだ。次は本気で殺してやるよ」

 

 「ヒヒヒッ、そいつは楽しみだね。そんな君達にプレゼントをしよう」

 

 影胤はそう言うとマジックさながら、テーブルに白い布を被せ3つ数える。それから白い布を取るとリボンで結ばれた箱が現れた。

 

 「では私はこの辺りで御暇させて頂こう。絶望したまえ諸君、絶望の日は近い。行くよ小日奈」

 

 「はいパパ」

 

 そう言うと影胤と小日奈の2人は何事もなかったかのように悠然と窓まで歩き飛び降りた。

 誰も、彼を追いかける気にはなれなかった。

 

 「説明なさい、里見くん。あの男とどこで会ったの」

 

 木更が鬼気迫る表情で蓮太郎に詰め寄る。

 

 「天童閣下、『新人類創造計画』は事実だったのですか!?」

 

 『知る必要はない』

 

 ある者は画面の人間に問い詰める。

 室内が再び喧騒に包まれそうになった時だった。

 新たな叫び声と共に、半狂乱の体で男が飛び込んできた。

 

 「た、大変だあっ、社長さんが…社長さんが死んだあっ」

 

 飛び込んできたのは今日招待されながら欠席した民警会社の社長の秘書だった。

 衝撃の言葉に室内に衝撃が走る。

 

 「えっ」

 

 「なにっ」

 

 「なっ…なんだあっ」

 

 「自宅で殺されたっ、しかも社長の首が何処にも無かったですぅ、首無し死体だったですぅ、はひーっ」

 

 秘書の言葉に全員の視線が影胤が出した箱に集中する。

 嫌な予感がした。

 恐る恐る蓮太郎は箱を開け中身を確認する。

 …嫌な予感は的中していた。

 

 「…あの野郎っ!」

 

 怒りがこみ上げた。

 

 『静粛にっ!』

 

 そこへ聖天子の静かな、しかし鋭い声が響いた。

 一同沈黙し画面を向く。

 

 『事態は尋常ならざる方向に向かっています。みなさん、私から新たに、この依頼の達成条件を付け加えさせていただきます。ケース奪取を目論むあの男より先に、あのケースを回収してください。でなければ大変なことになります』

 

 鬼龍が画面の聖天子を睨む。

 

 「ならケースの中身について説明しろ…まさかここまで来てダンマリってことは無いだろ?」

 

 鬼龍の言葉に聖天子は目をつむり唇を噛む。

 

 『良いでしょう。宮沢さんや天童さんの思っている通り、ケースの中身は普通のものではありません。ケースの中身は七星の遺産。邪悪な人間が悪用すればモノリスの結界を崩壊させ、東京エリアに“大絶滅”を引き起こす封印指定物です』

 

 

 

 

 




◇明かされた中身…
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